認知行動療法を一から学ぼう!その4「情報処理理論と認知療法」
毎月恒例の月1社内研修が令和3年12月15日にありましたので、内容を備忘録としてブログに残しておきます。過去の社内研修内容を確認したい場合は下記からご覧ください。
1. 行動療法の問題点と認知行動療法
レスポンデント学習やオペラント学習のような行動というのは周囲とのかかわりによって生じたり維持されたりする。つまり従属変数である。しかし、人間は動物と違い、予期、期待、信念などによって行動を自発する。そのため、認知の内容や頻度を変えることが目的になった(独立変数)結果、認知行動療法が登場した。認知行動療法の特徴は行動が変わらなくても考え方(認知)が変われば治療効果があるとみなしたところにある。しかし、認知は行動に影響を与えているので認知が変われば当然行動は変わるとも考えた。
また、認知の歪みから(思考パターンの処理が偏っていると)、抑うつ、不安がでてくる。結果、回避行動をとってしまうため、認知の歪みを正す(認知を再構成する)のがポイントとなる。
認知行動療法は行動と認知の両者を治療効果の評価の対象としたため、行動療法が完全に使われなくなったわけではなく、情動(急激で一時的な感情。例:怒り)や顕在的行動(目に見える行動のこと。例:ウロウロする)にはレスポンデント学習やオペラント学習を使い、認知の問題には認知療法が用いられるようになった。以上から、行動療法と認知療法はどっちが優れている、悪いということではない。
2. 認知療法とは
認知療法は、アーロン・T・ベックによって考案された心理療法である。うつ病の心理療法として1970年代にうつ病のマニュアル(日本語翻訳の書籍は「うつ病の認知療法」)が出版され注目を浴びた。このマニュアルに沿って治療研究が行われ薬物療法と同じ治療効果が得られた。その後RCT(ランダム化比較試験)によってパニック障害や摂食障害にも効果があることが分かった。認知療法のABC分析は、活性化する出来事(Activating event)から思考パターン(Belief)が活性化されて、結果(Consequence)が起こることを言う。
また、認知療法のABC分析では反応強化子随伴性(結果が良ければ行動が増えること)が考慮されない。なぜなら、「自分って駄目だよな~」と考え、「落ち込む」という結果がある時、「落ち込む」という悪い結果がでるなら「自分って駄目だよな~」という思考が減るはずだが、実際は減らないため。そのため機能分析は行わない(機能分析ではない)
公的環境と私的環境については皮膚をその境界とし、皮膚の内側を認知療法でカバー、皮膚の外側を行動療法でカバーすることとした。
認知療法は認知モデルに基づく。認知モデルとは、人の感情や行動が、その人の出来事に対する理解の仕方によって(決定的に)影響を受ける、という仮説。つまり、人の感じ方は解釈の仕方で決定するということ。
また、認知療法は、診断は何かを重視する(行動療法はしない)。そのため、医学モデル(病気の診断をして共通の治療を行うこと)と相性がいい。
代表的技法は「認知再構成法」だが、効果を疑問視する声もある。また、各診断に対してのマニュアルを使うと効果はあったが実際は合併症(うつ病+パニック障害など)がほとんどでどのマニュアルを使っていいか困るなどの問題もあった。
3. 自動思考
認知療法の大きな特徴は自動思考に注目したことである。自動思考とはある場面でふっと浮かび、状況から離れると消えていく評価的な思考のこと。感情や行動も影響を受ける。この感情や行動が後に残るので、何故か今日イライラするなど起こる。認知療法はこの自動思考に気付き、変えることができれば感情や行動を変化させることができる、だから自動思考に気付いて変えていこうというのが基本的な考え方となる。しかし後に自動思考は変えられないことが研究で分かる。それを踏まえた治療法がメタ認知療法。
信念を含めた認知療法のABC分析は、A活性化する出来事、B思考パターン=自動思考、C結果となる。更に中核信念から媒介信念となり自動思考となる(下記画像参照)
4. 認知療法を使った代表的技法
代表的技法については下記となる。(1) 週間活動スケジュール表
セルフモニタリングを行い、認知と事実の活動量の違いを客観視できるようにする。行動のセルフモニタリング機能もある。似ているが行動活性化療法とは別(但し、活動記録表でも代用は可能のように感じる。こちらからダウンロードできる)(2) 思考記録表
自動思考をとらえるためのセルフモニタリングシートを使用する(厚生省の提供シートはこちらからダウンロードできる)。答えは会話として自問自答で「」で書くと良い。自問自答をしていくことによって極端な考え方から離れ、柔軟な考え方ができるようになる、考え方がいくつもできるようになるのがポイント。
個人的考察
以上、「情報処理理論と認知療法」でした…!
是非、自分や支援で実践し、結果を実践報告書にまとめてみてください。
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参考文献
http://hikumano.umin.ac.jp/hosei/CBT5.pdf