認知行動療法は、障がい者支援はもちろん、それ以外でも使えるテクニック。
そのため、当事業所の社内研修でも合計2年ほど費やして勉強してきました。
そして今回も補足記事の一つです。というのも認知行動療法は素晴らしいし非常に使えるけど、これだけできりゃ~他のテクニックなんていらんしょ…!とはならないよーという話になっております。
使えるテクニックという手札はいくらでも持っていた方が支援の幅が広がって良いといったところです。
では、早速見ていきましょう…!



認知行動療法は昔よりも今の方が確実に効果量が減少していた…!

2015年のトロムソ大学の研究によると、うつ病の治療法として認知行動療法(CBT)が有名だけど、その効果って昔と今とで違いがあるのかをメタ分析で調べてみたそうです。
まず研究者たちは、1977年~2014年までの間に発表された心理療法の臨床試験を検索したそうで、結果、該当する研究が70件見つかったとのこと。続いてこれらの研究から認知行動療法とその効果量を比較したそうです。
因みに効果量は、


を用いたそうで、ついでに寛解率もチェックしたそうな。
では結果を見てみましょう…!

  • ベックうつ病尺度の平均効果量は1.58だった…!
  • ハミルトンうつ病評価尺度の平均効果量は1.69だった…!
  • 男性よりも女性の方が認知行動療法の治療効果をより多く受けていた…!
  • ベテランの心理士さんに認知行動療法を行ってもらう方が、経験の少ない心理学を勉強中の学生に行ってもらうよりも、効果が高かった…!(その差は約2倍…!)
  • 時間経過に伴うメタ分析では、ベックうつ病尺度、ハミルトンうつ病評価尺度、寛解率の全てで、認知行動療法が登場した昔よりも今の方が確実に効果量が減少していることが分かった…!

とのこと。
この結果に研究者も、現代の認知行動療法による臨床試験は、初期の試験と比較して、抑うつ症状の改善度が少なくなっているように思われる、としています。
では、なぜ昔よりも今の方が認知行動療法の効果が低くなってしまったのでしょうか…?
研究者たちは効果の低下原因を探るのは非常に難しいと述べつつも、以下の2点ではないかとおっしゃっております。


原因①:質の低下

原因の一つ目は、質の低下です。
認知行動療法の実践マニュアルの原型は1970年代に作成され、その後、多くの心理療法家の間で使われ、ゴールドスタンダードとなりました。しかし、広く多く使われるということは、つまり、質が落ちるということで、簡単に学習して使えると誤解を生んだ可能性があるとのことです。また、認知行動療法を使うには適切なトレーニングやかなりの練習、エビデンスに基づいた介入を意識することが必要だとしています。
これらから、認知行動療法は広まってしまったがために質も低下したのが治療効果の低下の原因ではないかとしています。


原因②:プラセボ効果

原因の二つ目は、プラセボ効果の可能性です。
認知行動療法は登場したときは期待度も相まって高い効果が出た可能性がありますが、時間の経過とともに、当初の強い期待は薄れて、結果、効果も低下した可能性があります。
というのも登場初期の時代には、認知行動療法は精神疾患の治療の金字塔として紹介されることが多かったみたいなんですよね。そして実際、多くの治療でゴールドスタンダードとして紹介されたそうな。
しかし、近年研究が進み、認知行動療法だけではなく、他の方法でも同等か認知行動療法以上の効果が出たという報告が増えているそうです。そして、インターネットの普及も相まって皆がこの情報を入手したことにより、患者の認知行動療法に対する希望や信頼が、ここ数十年の間に、いくらか低下したことが考えられるとのことです。


上記2つの原因から効果量が減ったと思われております。



個人的考察

流行り物は廃り物ではないですが、やっぱ新しい治療方法が見つかると皆、期待しちゃうんですよね。そのため、別に認知行動療法に限った話ではございません。実際、他のテクニックや治療薬でも結構ありがちな話ですからね。
そのため、色々あって一周したときが本来の効果を見定める時期と言えるのではないかと思っております。新しいお店が出来た時は皆、興味本位で最初は食べに来てくれるけど落ち着いてきたときのリピーターの数でその店の味が本当に認められたかどうかわかる…!ってのに近い感じとでも申しますか…。
そう考えると、今でも認知行動療法は一定の効果を発揮し、様々な方法も考案されておりますんで、やっぱりしっかり押さえておきたいテクニックだよなーと私は思います。



参考文献