【まとめ】認知行動療法だけじゃない!抗うつ薬・向精神薬の効果も減少しているよ!って話
向精神薬の効果が減少している…!
まず研究者たちは、1960年から2013年7月までに発表された向精神薬のランダム化比較試験をMEDLINE、PsycINFO、PubMedを使って検索して見たそうです。
次に、その中で、
- 向精神薬とプラセボのランダム化比較試験又は、向精神薬の実薬対照試験
- 18歳以上の統合失調症又は感情障害の患者を対象としている
- 実験期間が4~24週間
という基準を満たした研究をピックアップしたそうな。
最後にピックアップした研究のデータを統計処理したとのこと。つまり、ランダム化比較試験のメタ分析の研究となっております。
んで、結果はこのようになったそうです。
- ピックアップした105件の研究のうち、プラセボ群で観察された平均変化は、出版年とともに有意に増加していた…!
- 逆に有効用量投与の平均変化は有意に減少していた…!
- 薬とプラセボの平均差は時間の経過とともに大幅に減少していたが、これはスタート時の重症度が低下し、研究期間が長くなったことを示している。
- 比較研究の投薬治療は、プラセボ対照試験の投薬治療よりも明らかに多くの改善と関係していた…!
とのこと。
つまり何が言いたいのかと言いますと、
- 向精神薬の効果が1960年以降増加したが、その後徐々に減少している…!
ということです。
つまり、向精神薬の効果はプラセボも混ざっていた…!ってことですね。
これについては研究者曰く、プラセボ対照試験からランダム化比較試験に変更してきたことによって、
- ベースラインスコアの上昇
- 重症度の低い参加者の増加
- 患者の期待の高まり
が原因ではないか…?と推測しております。
この間紹介した認知行動療法の効果が減っている…!って話もそうでしたが、やっぱり最初は盛り上がっているせいもあり、どうしても効果が高めに出ちゃうみたいですね~。これは仕方ないかと…。
それと上記を見て思うのが、やっぱ思い込みの力はすごいな~ってことですね。
抗うつ薬のプラセボ効果は高い…!ではどうすべきか…?
というのも、臨床試験で抗うつ薬の効果をチェックしてみると結構プラセボ効果が起きるみたいなんですよね。しかも年々増加しているらしいとのこと。
では早速レビューのポイントを見ていきましょうか。
- 成人を対象とした抗うつ薬の試験では、プラセボ効果が平均31%もあり、投薬による反応率の平均は50%もあった…!これは過去30年間で10年あたり7%もアップしていることを示している…!
- 大うつ病の小児~青年を対象とした場合は、プラセボ効果がさらに高くなっていた…!具体的には平均で46%、薬物療法の反応率だと平均59%もあった…!しかも時間とともにプラセボ効果が上昇していた…!
- 抗うつ薬試験の薬物療法とプラセボの平均差は、1982年のハミルトンうつ病評価尺度で平均6ポイントだったのに対し、2008年には3ポイントに減少していた…!(=薬の効果とプラセボ効果の差が減っていた…!)
- 以上から抗うつ薬の新薬開発に更に時間がかかるようになった…!(平均13年かかるらしい)
- 費用もかかるようになった…!(新薬一つで8億~30億ドルもかかるらしい)
- うつ病は世界で約1億2000万人を悩ませている病気であり、現在の治療法では多くの患者が寛解レベル(=症状が超落ち着いた状態)に達することはほとんどなかった…!
- ほとんどの臨床試験では患者の自己申告に基づいた評価によって、うつ症状の重症度の変化を評価している。そのため、コレステロールや血圧などの客観的な測定値とは違い、バイアスを影響を受けやすい状況にある…!
- メディアは小規模研究のサンプルに焦点を当てて、抗うつ薬は全く治療効果がなくむしろ服薬した方が悪くなるとしている。こうした誤った解釈がうつ病患者の治療を妨げている可能性がある…!
- 実際、臨床試験で抗うつ薬を投与された患者は大幅に改善している。抗うつ薬治療の平均効果は1.24であり、これは効果が大きい事を示している…!
これらをみていると、プラセボ効果ってのはやっぱり高いみたいですし、年々増加傾向にあるみたいですね。しかもそれによって新薬開発や費用に問題が出たり、メディアが変な放送をして患者を混乱させたりもしているそうな。
う~ん。精度の高い臨床研究が出来るようになっているとも言えるし、だからこそ、新薬が出てこない、治療への誤解も起きているともいえ、なんとも難しい話ですねー。
ではどうしたらいいか…?ということで、研究者たちはこのような方法を提案しておりました。
- 抗うつ薬の医薬品開発環境ではプラセボ反応を最小限に抑える必要がある。
- 一方で、プラセボ効果がこれほど高く治療に使えそうなのであれば、うつ病患者の臨床治療では、プラセボ反応を最大化するようにした方が良いかもしれない。
つまり、実験デザインは、患者を対象として、複数の治療薬グループとプラセボグループをRCTで行って精度を上げ、プラセボ効果を出来るだけ排除、逆に治療現場では、抗うつ薬+プラセボ効果を高めるプレゼンで薬の効果以上の効果が出るようするのがベストな戦略なのではないか…?ってことですね。
確かに医者のプレゼン力で抗うつ薬の効果が3倍変わるって話もありますし、うつ症状が良くなるならプラセボでも使えるもんは使った方が良いですよね…!
統合失調症における抗精神病薬の効果が昔と今では違うのか…?
2017年のミュンヘン工科大学の研究によると、統合失調症における抗精神病薬の効果が昔と今では違うのかRCTの二重盲検の系統的レビュー・メタ分析を行ってみたそうです。
なんでも抗精神病薬の有効性の基準としてよく使われるのが1964年の研究なんだとか。この研究はアメリカ国立精神衛生研究所が関わった初期の大規模研究とのことで参加者463人を調べたところ、抗精神病薬だと61%症状が改善、プラセボだと22%の改善だったそうな。
ただ、近年は治療薬がプラセボの効果を上回る結果が出ない事も多いらしく、そのため抗精神病薬の有効性が、ここ数十年で低下している可能性があったらしい。そこでこれが本当なのか調べたのが今回の研究になります。
まず研究者たちは、2009年8月までに発表された該当研究をコクランで検索、更に2016年10月までに発表された該当研究をMEDLINE、EMBASE、PsychINFO、コクラン、ClinicalTrials.govで検索してみたそうな。
すると全部で9,212件の研究がヒットしたとのこと。続いてこれらの研究を適格基準と除外基準に従って精査していったらしい。
最終的にピックアップされたRCTの二重盲検167件でして、特徴は、
- 総サンプル数:28,102人
- 平均罹病期間:13.4年
- 平均年齢:38.7歳
- 実験期間の中央値:6週間(範囲3~28週間)
って感じでした。
それでは結果を見てみましょう。
- 全体的な有効性の標準化平均差(SMD)は0.47だった…!
- 抗精神病薬は、プラセボよりも約2倍(1.93)の反応率だった…!
- 全症状の20%以上(最小限)の回復をしたのが、抗精神病薬だと51%、プラセボだと30%だった…!
- 全症状の50%以上(良好)の回復をしたのが、抗精神病薬だと23%、プラセボだと14%だった…!
- プラセボの参加者は、何らかの理由や治療の無効性により、研究を早期に中止する可能性が高かった…!
- 統合失調症の陽性症状における抗精神病薬の標準化平均差(SMD)は0.45だった…!
- 統合失調症の陰性症状における抗精神病薬の標準化平均差(SMD)は0.35だった…!
- うつ病における抗精神病薬の標準化平均差(SMD)は0.27だった…!
- 抗精神病薬はプラセボよりも生活の質が良かった(SMD=0.35)
- 抗精神病薬はプラセボよりも社会的機能が改善した(SMD=0.34)
- 抗精神病薬の副作用として鎮静作用や体重増加などがあった。
- 効果量の有意な変数は、企業のスポンサー問題とプラセボ効果の増加のみだった…!
- 抗精神病薬の効果は時間の経過とともに安定していた(効果の減少はなかった)
- 小規模研究の影響と出版バイアスを考慮すると、全体的な有効性の標準化平均差(SMD)は0.38だった…!
上記を見ると、抗精神病薬はちゃんと効果があるし、効果も減っていないみたいですね。
また、効果量が変わる原因も企業のスポンサー問題とプラセボ効果のみって感じなんで、特段、取り立てて騒ぐほどでもないかと…。
あとは小規模研究の影響と出版バイアス問題ですが、これにより効果が低くなっちゃいましたがこれは仕方ないですね。
ということで、主治医の指示の下、抗精神病薬を服薬していくと良さそうです。
気になるのはプラセボ効果が結構侮れないってことですが、プラセボ効果も上手く利用していくって方向性でいけば良いのかな~と思います。