2021年に世界ADHD連盟が示したコンセンサスを見てみよう! その3「毒性物質への曝露」
「2021年に世界ADHD連盟が示したコンセンサスを見てみよう!」シリーズの続きです。
ADHDの環境要因:毒性物質への曝露
34. 2つのメタ分析により、鉛と不注意・多動性・衝動性には小さな相関関係がありそうだった。また17,000人以上の子供を対象としたメタ分析によると、血中の鉛濃度が高いとADHDリスクが4倍も高くなることが分かった。更にアメリカ国民健康栄養調査(NHANES=アメリカ国民の代表的な健康調査)を使い、2,500人以上の青少年を対象に調べた研究によると、血中の鉛濃度が高かった上位の3分の1の人は下位3分の1の人に比べてADHDリスクが2.3倍も高かったみたい。更に更に同じくアメリカ国民健康栄養調査で4,700人以上の若者を対象にした研究を見てみたら、血中の鉛濃度が高かった上位5分の1の若者は下位5分の1の若者に比べてADHDリスクが4倍高かったとのこと。
35. 300万人以上を対象とした3つのメタ分析によると、妊娠中の母親の喫煙・副流煙は、ADHDリスクが50%以上も増加するんだとか。妊娠中の母親の喫煙とADHDリスクの関係は、喫煙とADHDの両方のリスクを高める家族要因又は遺伝要因によるものであるとのこと。
36. 10万人以上を対象としたメタ分析では子ども時代の受動喫煙はADHDリスクを60%もアップさせるそう。
37. 219人を対象としたメタ分析によると、人工着色料と子供の多動性はわずかな増加と関係があったみたい。また、794人を対象にしたメタ分析では、ADHD症状のごくわずかな増加が見られたそうな(親による評価のみで判断)
38. 1万人以上の出産者を対象にした台湾の研究によると、妊娠中の母親におけるアセトアミノフェン(解熱・鎮痛剤)の使用は、子どものADHDリスクを33%増加させたとのこと。また、ノルウェーの研究(11万3000人の出生児、うちADHDを持つ方2,246人)でも、母親による出生前のアセトアミノフェンの使用とADHDには用量反応関係があったそうな。
39. デンマークにおける全国規模の研究では、1997年から2011年の間に生まれた91万3000人の乳幼児を対象に、抗てんかん薬バルプロ酸ナトリウムへの出生前曝露を調べたところ、ADHDリスクが50%も増加していた。他の抗てんかん薬については関係がなかった。
40. ノルウェーの研究(ADHDの子供297人と対照群553人を対象)によると、フタル酸エステル(PAE:香水や化粧品、ボディケア製品などに使われる)の濃度が最高5分の1の母親の子どもは、最低5分の1の母親の子どもに比べて、幼少期にADHDを発症するリスクが3倍高かった(出産時の母親の年齢、子供の性別、母親の学歴、婚姻状況、妊娠中の母親の喫煙などといった変数は調整済み)
41. アメリカ人の子ども1,139人を対象に調べた結果、有機リン系農薬(ジメチルアミノピリジン)の濃度が10倍増加すると、ADHDリスクが55%も高くなっていた。また最も高レベルな子供は、検出されないレベルの子供に比べて、ADHDリスクが2倍高かった。
42. 2020年のメタ分析によると、粒子状物質(PM2.5やPM10など。サンプル数51,000人以上)、窒素酸化物(サンプル数51,000人以上)に有意な関係は見られなかった。また、16,000組以上の母子と大気汚染物質レベルの関係を調べた台湾の前向きコホート研究でも、妊娠中における粒子状物質、二酸化硫黄、二酸化窒素のレベルと、子どもの生後8年間のADHD診断に関係性はなかった。ただし、一般的な交通汚染物質である一酸化窒素(窒素酸化物)への曝露はADHDリスクを25%高くしていた。
43. 2013年から2015年にかけてADHDと診断された青少年を調べた韓国の研究によると、二酸化窒素、二酸化硫黄、粒子状物質が増えると、数日後にADHD関連の入院が二酸化窒素47%、二酸化硫黄27%、粒子状物質12%も増えていた(男女や年齢の有意差はなし)
44. 4,826組の母子を対象としたメタ分析によると、乳児期の母乳を介した有機フッ素化合物(PFAS)の曝露とADHDリスクは関係がみられなかった。
45. 3大陸6カ国から合計25,000人以上を対象としたメタ分析によると、若者の砂糖の摂取とADHDリスクは関係がみられなかった。
個人的考察
長くなったので今回はここまで。
続きは来週です。
参考文献
最後にまとめてご紹介します。