認知行動療法を一から学ぼう!その3「オペラント学習と行動療法」
毎月恒例の月1社内研修が令和3年11月19日にありましたので、内容を備忘録としてブログに残しておきます。過去の社内研修内容を確認したい場合は下記からご覧ください。
1. オペラント学習とは
オペラント学習を明らかにしたのがスキナーである。オペラント学習とは、行動療法のABC分析のことを言う。行動療法のABC分析は、きっかけ(Antecedent)からターゲット行動(Behavior)を行い、結果(Consequence)が良ければ行動は増えるし、悪ければ行動は減る(癖や習慣が身に付いていく)。これを見つけられると介入できる。また、オペラント学習に基づく行動療法の大きな原則は望ましくない行動を減らすではなく代替行動を増やすのが一般的な戦略である。オペラント学習の代表的技法は「随伴性の操作による随意行動の増加と減少」である。レスポンデント学習同様、オペラント学習も、無意識でも起きる、動物でも起きる事が分かっている。
2. 方法論的行動主義と徹底的行動主義
スキナーが提唱するのが徹底的行動主義である。徹底的行動主義とは、外から観察できなくてもその本人だけが観察できるもの(私的出来事=思考・感情・記憶・身体感覚など)も行動として扱おうという立場のこと(外顕的行動だけでなく内潜的行動も対象にしていく)を言う。方法論的行動主義と徹底的行動主義との違いは以下のようになる。
- 方法論的行動主義:皮膚を自分と環境の境界とした
- 徹底的行動主義:心の目を自分と環境の境界とした
徹底的行動主義で想定している自分とは今この瞬間の体験を観察する働きのみとしている。理由は、体で起きていることが自分の中で起きている事とみなすことが本当にいいのかという問題があるため。例えば腹痛があった時、なぜそれが起きたのか自分で理解できない場合、その腹痛は原因が分からないしコントロールできないという点では、皮膚の外で起きている、分からない・コントロールできない環境と変わらないため。
上記のような心の使い方はマインドフルネスとほとんど同じ(マインドフルネスの心の使い方は仏教に由来している)である。
3. 正の強化・負の強化・正の弱化(罰)・負の弱化(罰)
行動に影響を与える基本的な方法は4つ(正の強化・負の強化・正の弱化(罰)・負の弱化(罰))ある。強化・弱化・正・負については、以下のようになる。
- 行動が増えることを「強化」
- 行動が減ることを「弱化(罰)」
- 結果がプラスのものを「正」
- 結果がマイナスのものを「負」
また、正の強化・負の強化・正の弱化・負の弱化の意味とそれぞれの例を挙げると、
- 正の強化→行動して、結果が得られて行動が増える場合(例:お手伝いをして褒められたからもっとお手伝いをする)
- 負の強化→行動して、結果が減って行動が増える場合(例:嫌な思いをしなくてすむからひきこもる)
- 正の弱化→行動が減って、結果が得られる場合(例:遅刻が減ると褒められる)
- 負の弱化→行動が減って、結果が減る場合(例:勉強しないとテストの点数が下がる)
というようになる。
気を付けるべきポイントは、結果から行動の良し悪しは判断できないという事。結果から行動が増えたからあれは良い結果だったんだと判断する。
また、強化が強化として機能していたかは観察する必要がある。仮定した強化・弱化→結果→意図した強化・弱化になったか判断し仮定した強化・弱化が正しいのか間違いなのか観察する必要がある。オペラント学習を理解する上でここは重要なポイントとなる。
4. ソーンダイクとスキナー
ソーンダイクは効果の法則を明らかにした人。1920年にかの有名なハロー効果も発表した。ソーンダイクは、- 行動→好ましい環境変化:行動増加
- 行動→嫌悪的な環境変化:行動減少
とした。
一方、スキナーは
- 行動→環境変化:行動増加→好ましい環境変化であったとみなした
- 行動→環境変化:行動減少→嫌悪的な環境変化であったとみなした
ソーンダイクとの違いは満足をもたらしたかどうかという計測不能な事象に触れることなく外から観察するのみで判断できるようになったという点。
5. オペラント消去
オペラント消去とは、行動の後に結果が伴わなければ行動が減っていく事を言う。学習の間隔は徐々にランダム化していくことにより消去されにくくなる(例:ギャンブルでたまに勝つからやめられなくなる)。また、消去バースト(例:この方法でかまってもらえなくなるとやめるではなく、他の方法でかまってもらおうとするような現象。エスカレートした行動になっていくこともある)が起こることもある。これは人間に限らず動物でも起こる。但し、消去バーストは悪い事ばかりではない。良い事でも起こる(例:勉強したら褒められていたけど、同じことを続けたら褒められなくなった。だからもっと勉強する。違う方法で勉強するなど行動の多様性が起こる)。行動の柔軟性・多様性を育てる場合は効果的となる。
患者さんの中には目先の楽を手にしてしまうために長期的な不都合がコントロールできなくなっている人達(セルフコントロールが低い人)がいる。
6. 機能的分析(機能分析)・文脈
機能的(=効果や影響がある事)と言えるかどうかの基準は文脈となる。文脈とは広義の意味での環境のことを言う。支援者が介入できるのは文脈だけ(行動自体を変えるのは本人の為)となる。そして、機能的分析(機能分析)ができるとどこに介入すべきかすぐ分かるようになる。望ましくない行動を減らすにはきっかけ(直前のトリガー)を取り除く、結果を取り除く、他の行動に置き換える、確立操作を解消する。
例えば、ダイエット中についついお菓子を食べてしまうで考えると、
- 空腹で家に帰る(E)→見える所にお菓子がある(A)→食べる(B)→お腹が満たされる(C)→太る(D)
となる。
上記を機能的分析して介入(対策)するとなると、
- 見える所にお菓子を置かない(きっかけ(直前のトリガー)を取り除く)
- お菓子じゃ全然お腹が満たされていないことに気付く(結果を取り除く)
- お菓子の代わりにフルーツを食べる(他の行動に置き換える)
- 空腹状態で家に帰らない(確立操作を解消する)
というようになる。
機能的分析は仮説に沿って初めは行うため、記録を取って仮説の検証を行うのも大事である。また、結果を見て判断する。
このように、機能的分析がオペラント学習を基にした行動療法の要であり、これが理解できれば行動療法の8割は分かったことになる。
7. レスポンデント学習とオペラント学習の違い
レスポンデント学習は、その行動に先行する誘発刺激との関係によって分類される。オペラント学習は、行動と後続する結果との関係性が重要となる。例えば、レスポンデント学習では、
- ベルの音→犬にエサを与える→唾液が出る
- ベルの音→唾液が出る
のように、ベルの音(先行する誘発刺激)がポイントとなる。
一方、オペラント学習は、
- ベルの音(A)→ベルの音を聞く(B)→犬はエサがもらえる(C)
のように、エサがもらえるというプラスの結果(正)が得られるので、犬はベルの音をより速く、正確に聞こうとする(強化)
8. モデリング
モデリングとは、他人の行動を見るだけでその行動ができるようになるという学習形式である。詳しい理屈はよく分かっていないがどうやらミラーニューロン(相手が行動している姿を見ると自分が行動しているのと同じように脳が反応する)が関係していると思われる。モデリングは非常に強力な学習で筋肉を使った随意行動に成り立ちやすい。成り立たせるには入力を多くするのがポイント。非言語学習で動物でも成り立つ(例:親がエサの取り方をみせて子どもが真似してエサを取る)
但し、モデリングは自閉症の人は成り立ちにくい。理由はちゃんと見ていない、自分が興味のあるものに注意がいっているため。
個人的考察
以上、「オペラント学習と行動療法」でした…!
是非、自分や支援で実践し、結果を実践報告書にまとめてみてください。
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もし、自分の事業所で使いたい…!って方はご活用ください。
参考文献
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