ステレオタイプに対する対策はあるのか?
ステレオタイプは多数の方が持っている固定概念や思い込み、先入観や差別、偏見意識なんかを言います。例えば以前にブレネー・ブラウン教授のTEDで出てきた男はこうあるべき…!とか女はこうあるべき…!みたいなジェンダー問題なんかはその典型例と言えるでしょう。
ステレオタイプにステレオタイプをやめるよう言うともっとステレオタイプになってしまうという悲しい事実…。では、どうすべきか…?
2015年のバージニア大学の研究によると、ステレオタイプの悪影響と解決策について調べてみたそうです。この研究では実験を全部で4つ行っておりまして、まず結論から言いますと、ステレオタイプにステレオタイプをやめるよう言うともっとステレオタイプになってしまうってことが起きたそうです。例えば、女性差別は稀な事か一般的な事かどちらかを聞かされて、その後、女性について質問した実験によれば、女性差別が一般的と聞かされた人たちは稀な事と聞かされた人たちに比べ、女性差別意識が高まってしまった(女性は仕事に向いていないと思った)そうです。
また別の実験では、経営者に上記と同じ質問をしたらしいのですが、結果は変わらず、女性差別が一般的と聞かされた経営者たちは、女性を採用したくないと答えることが28%も多くなったとのこと。
これらをみると、やはり、人間は社会的な生き物なんだな~っと思いますね。多数決然りで、どうしても大多数の意見が正しそうに見え、同意してしまう傾向があるってのがこのことから分かります。説得のところでご紹介した専門家の正しい意見も素人40人が集まればつぶされてしまうって現象も、まさにこれに近い現象と申せるかと思います。
しかも、本研究によれば、これらは無意識で起きてしまうそうなんで、気づいたら大多数の意見に同意していた…!ってことになりかねないそうな。
なんでも、一般的な考え(大多数の人の考え)だと聞かされることで、社会的に良い考え方なんだ…!と誤変換が無意識で起き、結果として差別意識や行動が増えてしまう…!って流れとのこと。ヒトラーの件なんかはまさにこの現象と言えそうですよね。
じゃあ、どうすりゃ良いのか…?ってことなんですが、対策方法としては、研究者は以下をおすすめしております。
- まず、○○差別のようなことは一般的な考え(大多数の人の考え)であることを伝える
- その上で、○○差別の偏見を大多数の人たちはなくそうと努力している…!ということを伝える
と良いそうです。
上記のように言うと、実験では、女性の採用率が28%も増えたそうな。確かに間違ったことでもまずは一般的なことであると周知、納得し、その上で、でも間違ったことだってみんな知っているからなくせるように頑張っているよ…!って聞くと、考え方を変えられそうですよね…!
まとめると、事実の周知とその事実を変えようと大多数が努力しているということを伝えるのが効果的ってことですね。
個人的考察
因みに2002年のJournal of Studies on Alcoholでは、学生に飲酒事故が多いという事実を言うよりも、優秀な学生ほどお酒を飲まないと伝えた方が飲酒が減ったって話もあります。
この当たりも参考にすると普及啓発ポスターなんかは、
- 考えが間違っている、やってはダメってのは逆効果の可能性が高い
- それよりも、事実の周知と大多数が気を付けている、変えようとしていると伝える
- または、逆の考えやそれをやらない方のメリットを伝える
と良いんではないでしょうか…?
例えば、障がい者の虐待防止を普及啓発するなら、
- 年間の虐待件数を周知しつつ、それをなくそうと年間これだけ大多数の人たちが努力して対策していることを伝える
- 虐待をする可能性はこんなスタッフ…!ってのは言わず、こういったスタッフ・職場環境だと虐待が起きづらい…!ってのを伝える
と良さそうな感じです。
今後、虐待防止委員会に提案してみよう…。