今回は、ADHDにまつわる部分を掘り下げたスウェーデンの研究を見てみます。



ADHDの子どもと成人における早期死亡リスクと精神疾患の合併症の早期死亡リスク

2019年のカロリンスカ研究所の研究によると、ADHDの子どもと成人における早期死亡リスクと精神疾患の合併症のパターンの早期死亡リスクについて前向きコホート研究を行ってみたそうです。
ADHDは発達障害の一種でありまして、世界中の子供や青少年の約5%、成人の2.5%が持っていると言われております。
そんなADHDですが、先行研究により、早期死亡リスクが高いと出ているんですよね。ただ、ADHDが直接どのように関わっているのか、精神疾患との併存性(併存リスク・二次障害・併存疾患・重複障害)は関係あるのかなどほとんどわかっていない部分もあったみたい。
そこで今回研究者たちは、ADHDにおける全死亡率、原因別の死亡率をチェックしつつ、精神疾患との併存性も見てみることにしたんだとか。
この研究は、スウェーデンの国民登録簿を使用したもので、まず1983年1月1日~2009年12月31日にかけてスウェーデンで生まれた2,675,615人(男性1,374,790人(51.4%)、女性1,300,825人(48.6%))をピックアップしてみたそうな。次にこの中で追跡中にADHDだと診断された86,670人(3.2%、男性57,919名、女性28,751名)を見つけ出したらしい。その後、この方々を2013年12月31日まで追跡調査してみたんだとか。
最後に集まったデータを統計処理した結果、以下のことが分かったそうです。

  • 研究登録時の平均年齢は6.4歳だった。
  • 追跡期間中、ADHDの方424人とADHDではない方6,231人が亡くなった。
  • ADHDを持つ子どもは、ADHDを持たない子どもに比べて、死亡率が1.4倍(HR1.41)高かった。
  • ADHDを持つ成人は、ADHDを持たない成人に比べて、死亡率が4.6倍(HR4.64)高かった。
  • つまりADHDを持つ子どもよりもADHDを持つ成人の方が死亡率が高かった。
  • ADHDのみ持つ成人の死亡率は1.4倍(HR1.41)だった。
  • ADHD+1つ以上の併存疾患を持つ成人の死亡率は3.7倍(HR3.71)だった。
  • ADHD+2つ以上の併存疾患を持つ成人の死亡率は7.5倍(HR7.51)だった。
  • ADHD+3つ以上の併存疾患を持つ成人の死亡率は13.5倍(HR13.52)だった。
  • ADHD+4つ以上の併存疾患を持つ成人の死亡率は25倍(HR25.22)だった。
  • つまりADHDと精神疾患が併存している場合、その併存疾患数が多い程、死亡率も高くなっていた。
  • ADHDと精神疾患が併存する場合、最も死亡率に影響を与えるのは物質使用障害で、8倍(HR8.01)だった。
  • 成人におけるADHDの早期発症と後期発症の精神疾患併存の死亡率を見てみると、自殺による死亡(HR1.13)の有意差はなくなったが不慮の事故死(HR2.14)、その他の外的要因による死亡(HR 1.75)は依然として有意だった。

ADHDを持つ子どもよりも大人の方が死亡率が高く、併存疾患が多い程、更に死亡率が高まるみたいですね。そして一番の原因は物質使用障害だと。



個人的考察

ということでADHD+精神疾患の重複障害は死亡リスクに影響を与える感じでした。



参考文献