アンブレラレビューを見てみよう!」シリーズその81です。
今回は、2023年にユトレヒト大学が発表した、建築環境と心血管疾患(CVD)の関係についてのアンブレラレビューを見てみます。



建築環境と心血管疾患(CVD)の関係についてアンブレラレビューを行ってみた…!

2023年のユトレヒト大学の研究によると、建築環境と心血管疾患(CVD)の関係についてアンブレラレビューを行ってみたそうです。
まず建築環境ってのがなんなのか…?って話なんですが、2016年のEXPOsOMICS Consortiumの研究によれば、

  • 建築環境とは、建物や公園、施設、インフラなど、人為的に作られた、又は改変された周囲のあらゆる側面と定義される

とのこと。
要は人工の建築物全般を指すみたいですね。
但し、大気汚染や騒音レベル、温度などの直接的な影響も含まれることがよくあるそうな。そして今回、この建築環境が心血管疾患に与える影響はどうなのか、調べてみることにしたらしい。
まず研究者たちは、2021年4月16日までに発表された該当研究を、MEDLINE、EMBASE、CINAHL、Scopus、コクラン、JBI、PROSPEROという7つのデータベースで検索してみたそうな。すると合計3,361件の研究がヒットしたらしい。また、参考文献もチェックして1件の研究を見つけたんだとか。
次にこの中で被っている研究を除きつつ、質をチェックしたそうです。最終的に選ばれた研究は51件でして、割と世界中の国々を調べた感じでした。
それでは結果を見てましょう。

【大気汚染】
  • 長期的な大気汚染の増加は心血管疾患リスクの増加と関係していた…!
  • 4種類の大気汚染物質が心血管疾患リスクの増加と関係していた…!
  • 大気中の二酸化硫黄(SO2)濃度と一酸化炭素(CO)濃度が高いと、心房細動(不整脈)リスクが増加していた…!
  • 大気中の二酸化窒素(NO2)濃度が10μg/m3高いと、虚血性心疾患(IHD)リスクが増加していた…!
  • 大気中のPM2.5濃度が10μg/m3高いと、脳卒中リスクが増加していた…!
  • 上記は説得力のあるエビデンスだった…!
  • 大気中のPM2.5濃度が高いと、心筋梗塞(MI)による死亡率、虚血性心疾患(IHD)による死亡率、脳血管疾患(CeVD)による死亡率、心血管疾患(CVD)による死亡率、脳卒中リスクが増加していた…!
  • 大気中のPM10濃度が高いと、心房細動(AF)リスクが増加していた…!
  • 大気中の二酸化窒素(NO2)濃度が高いと、心血管疾患(CVD)による死亡率、脳出血(ICH)による死亡率、冠状動脈性心疾患(CHD)による死亡率が増加していた…!
  • 上記は非常に可能性のあるエビデンスだった…!

【自然】
  • 緑地の曝露が10%高いと、心血管疾患による死亡率が低下していた…!
  • 緑地の曝露が高いと、虚血性心疾患(IHD)リスクや死亡率が低下していた…!
  • 上記は可能性のあるエビデンスだった…!

【都市化】
  • 都市化の曝露が高いと、冠状動脈性心疾患リスクが増加していた…!
  • 都市化の曝露が高いと、リウマチ性心疾患(RHD)リスクが低下していた…!
  • 上記は低いエビデンスだった。

【騒音】
  • 航空機の騒音が10デシベル高いと、心血管疾患による死亡率が増加していた…!
  • 上記は説得力のあるエビデンスだった…!
  • 車などの道路交通による騒音が10デシベル高いと、冠状動脈性心疾患リスクが増加していた…!
  • 車などの道路交通による騒音の暴露が高いと、虚血性心疾患リスクが増加していた…!
  • 上記は可能性のあるエビデンスだった…!

【温度】
  • 高温と低温の両方で、心血管疾患リスクが増加していた…!
  • 上記は可能性のあるエビデンスと低いエビデンスだった…!

ポイントは上記の黄色太字部分ですかね。
ちょっとまとめてみると、建築環境で心血管疾患リスクや死亡率が高まるのは、

  • 大気汚染(PM2.5、SO2、CO、NO2)…!
  • 騒音(飛行機や車の交通)…!
  • 気温(高温、低温)…!

って感じで、予防になるのが、


って感じでしょうか。
納得の結果ですね~。



個人的考察

きれいな空気、静か、適度な温度、自然が多いが体に良いってのは分かるんで、出来るところから対策していきたいですな。



参考文献