非常に難しい障がいである「境界性パーソナリティ障害」とその代表的な治療法である「弁証法的行動療法(DBT)」について学んでおきますかー その3「続 治療が難しい理由編」
境界性パーソナリティ障害の患者さんにおける希死念慮(自殺願望)、自殺未遂、自殺による死亡率についての系統的レビューとメタ分析
2025年のテヘラン社会福祉リハビリテーション科学大学の研究によると、境界性パーソナリティ障害の患者さんにおける希死念慮(自殺願望)、自殺未遂、自殺による死亡率について系統的レビューとメタ分析を行ってみたそうです。これまで見てきたように、境界性パーソナリティ障害は感情や気分、行動が複雑且つ激しく変わる疾患でして、主に人間関係の維持や不安感から起こります。
んで、一般人口の約1~2%が発症しているっぽく、男女ともに発症するものの、女性の方が多い傾向がみられるんだとか。
そんな境界性パーソナリティ障害ですが、先行研究により、希死念慮、自殺未遂、自殺による死亡率が一貫して高いと出ております。今回はそれらの個々の研究結果をまとめて、より質の高い結果を出して見ることにしたそうです。
まず研究者たちは、2024年6月末までに発表された該当する観察研究をPubMed、Scopus、Web of Science、Embaseで検索してみたそうな。すると合計2,464件の研究がヒットしたとのこと。次にこの中で重複している研究を除きつつ、更に質をチェックしていったんだとか。最終的に選ばれた観察研究は35件でして、総サンプル数は34,832名だったそうです。
それでは結果を見てみます。境界性パーソナリティ障害の患者さんにおける各リスクは以下のようになっておりました。
- 希死念慮(自殺願望):80%
- 自殺未遂:52%
- 自殺による死亡率:6%
やはり境界性パーソナリティ障害の患者さんにおける希死念慮(自殺願望)、自殺未遂、自殺による死亡率はいずれもかなり高いですね。因みに研究者によると、境界性パーソナリティ障害の特徴である、衝動性や情緒不安定さが原因なんじゃないか…?ってことでした。
またこの研究では他にも分かったことがありまして、
- 若者は、希死念慮率と自殺未遂率が有意に高かった
- 入院患者さんは、自殺未遂率が有意に高かった
- 外来患者さんは、自殺による死亡率が有意に高かった
とのこと。
一方で境界性パーソナリティ障害+うつ病の場合の影響度は依然としてよく分からなかったみたい。
個人的考察
「精神障がいの方の平均寿命は本当に短いのか?」にもあるように、境界性パーソナリティ障害の方の平均寿命は15年ほど短く、また、パーソナリティ障害+ADHDの自殺率は23倍って感じなんで、希死念慮(自殺願望)、自殺未遂、自殺による死亡率が高いのも頷けるかと思います。
これだけ難しいパーソナリティ障害の治療にはどんな介入が良いのか…?ってことで、次回に続きます。