アンブレラレビューを見てみよう!」シリーズその84です。
今回は、2023年にアイルランド王立外科医学院(RCSI)が発表した、自傷行為のリスク要因と保護要因についてのアンブレラレビューを見てみます。



若者たちにおける自傷行為のリスク要因と保護要因についてのアンブレラレビュー

2023年のアイルランド王立外科医学院(RCSI)の研究によると、若者たちにおける自傷行為のリスク要因と保護要因についてアンブレラレビューを行ってみたそうです。
まず研究者たちは、2010年から2021年10月12日までに発表された該当研究をOvid Medline、Embase、APA PsycInfo、コクラン、CINAHL、Scopusで検索してみたそうな。すると合計2,384件の研究がヒットしたとのこと。続いて重複研究を除外し、各研究の質をチェック、精査していったんだとか。
最終的に選ばれた系統的レビューは61件でして、若者の年齢層は10~25歳が多かったらしい。
それでは結果を見てみましょう。
まずは自傷行為のリスク要因として多かったものです。

  • 小児期の虐待/ネグレクト(特に性的虐待)
  • うつ病/不安障害
  • いじめ
  • トラウマ
  • 精神疾患(うつ病/不安障害を除く)
  • 薬物使用/乱用
  • 両親の離婚
  • 家族関係の悪化
  • 友人の少なさ
  • 他者の自傷行為への曝露

然もありなんってものばっかですね。
次に自傷行為との関連性が強いリスク要因を見てみます。

  • 行動障害
  • パーソナリティ障害
  • うつ病/不安障害

やはり障がい、特に精神障がいは自傷行為のリスクが高まるみたいですね。
では、逆に保護要因はどんな感じなのか見てみましょう。

  • 良好な家族関係
  • 良好な友人関係

調べた研究自体が少なかったみたいなんですが、上記は保護要因として挙げられることが多かったらしい。因みにその他では、十分な睡眠と学校との良好なつながりってのもありました。リスク要因と保護要因を見てもポイントなのは人間関係の良好さって感じがしますよね。
またこの研究では、自殺意図のない自傷行為と自殺意図のある自傷行為でリスク要因に違いがあるのかもチェックしているんですが、若干の違いはあるものの、多くのリスク要因が共通していたようです。
こうなってくると自傷行為をする理由が気になってくるんですが、多岐にわたっていたとのこと。例えば、

  • 対処方法として自傷行為をしていた…。
  • 刺激を求めて自傷行為をしていた…。
  • 心理的苦痛を回避する為に自傷行為をしていた…。
  • 人間関係が上手くいかない時の感情を制御する為に自傷行為をしていた…。

などがあったんだとか。
う~ん。こちらもなんとなく想像通りですねー。基本的にはネガティブな事からの体験の回避(回避行動)と言えるかと…。
更にこの研究では自傷行為への効果的な対策も載っておりましたので下記にまとめておきます。


やっぱ認知行動療法は良いんですねー。



個人的考察

自傷行為を防ぐためにもソーシャルサポートはかなり重要だな~と思いました。



参考文献