非常に難しい障がいである「境界性パーソナリティ障害」とその代表的な治療法である「弁証法的行動療法(DBT)」について学んでおきますかー その4「弁証法的行動療法(DBT)編」
これまで、
と見てきました。
詳しくは上記の各記事をご覧いただきたいのですが、ざっくりまとめると、境界性パーソナリティ障害は、希死念慮(自殺願望)、自殺未遂、自殺による死亡率が高く、非常に難しい精神障がいって感じです。
「境界性パーソナリティ障害」の治療法を考える上で重要な2つのこと
境界性パーソナリティ障害の患者さんの治療法を考える上で、大事な要素が2つあるそうです。
その2つとは、
- 対人関係や機能上の困難を乗り越えるために臨機応変な考え方や行動がとれないこと
- その後の感情コントロールができないこと
とのこと。
例えば、境界性パーソナリティ障害の患者さんは、見捨てられる不安感から、強い恐れや怒りを感じます。そして必死に相手にしがみついたり、困らせたりする言動や行動なんかをとるんですよね。
そしてこれらの言動や行動の後、見捨てられるのは自分が悪いからだと考えるんですな。これは兎に角、見捨てられることを恐れる、つまり1人になりたくないっていう強い気持ちの表れであるらしい。また、こういった時に上手く行く言動や行動のスキルがない、又はあってもそのスキルを発揮できないことが原因なんだとか。
こんな感じで、境界性パーソナリティ障害の患者さんは、自己評価(自己肯定感)が低いと、感情のコントロールが上手くできず、また、その感情のコントロールをするためのスキルがない・発揮できないので、良い代替方法がないまま衝動的に何かを言ってしまったり動いてしまったりして、後で激しく後悔してしまうみたいです。
弁証法的行動療法(DBT)ってなに…?
今まで見てきたことからも分かる通り、非常に難しい障がいである「境界性パーソナリティ障害」はどのように治療すればいいのでしょうか…?
その代表的な治療法が「弁証法的行動療法(DBT)」になります。弁証法的行動療法は、1987年のマーシャ・リネハンの研究にて発表されておりまして、この方法を1年間しっかり行うことで症状がかなり良くなるみたいなんですな。因みに弁証法的行動療法は第三世代の認知行動療法の一つでして、禅と行動療法が合わさったものとされております。
元々、弁証法的行動療法(DBT)は、自殺傾向が高く、複数の診断を受けている精神障がいの患者さんの治療目的で考案された認知行動療法でして、自分の思考のクセや行動パターンを理解・受容し、考え方の幅を広げ、より戦略的・効果的に問題解決していく方法です。更にここに弁証法的枠組みを用いて行う、つまり矛盾を解決したり、両極端な考え方から真ん中を選ぶような考え方(いわゆるアサーション的な考え方)を用いてバランスをとっていくことがポイントになります。
弁証法的行動療法の基本は、毎週行う行動スキルトレーニングがメインです。
このトレーニングにより、境界性パーソナリティ障害の患者さんは、
- 感情をコントロールするスキルを身に付ける
- 苦痛(ネガティブ)に耐えて、他人とうまくコミュニケーションを取るスキルを身に付ける
- 衝動的な行動の制御力を高める
を目指します。
先にも書いた通り、重要なスキルがない又は発揮できない→誤った言動や行動を行う又は続ける→激しく後悔するって流れを行ってしまうんで、それらを総合的に介入していく感じですな。
そして様々な研究により、この弁証法的行動療法でスキルを身に付け、使用すると、自殺や自傷行為、不安や怒りなんかのネガティブの表現の仕方、対人関係の問題解決が改善するそうです。
個人的考察
以上、「弁証法的行動療法(DBT)編」でした。
次回は、具体的な弁証法的行動療法の研究を見ていきます。