【加筆内容】精神障がいの方の平均寿命は本当に短いのか? その13
台湾における重度の精神疾患患者の死亡率と寿命
2020年の亞東記念医院の研究によると、台湾における重度の精神疾患患者の死亡率と寿命について調べてみたそうです。
これまで見てきたように、残念ながら統合失調症や双極性障害、うつ病の患者さんの死亡リスクは一般人口よりもはるかに高いことが分かっております。また、平均余命に関しても一般人口よりも大幅に短いことが示されているんですよね。そして重度の精神疾患(統合失調症や双極性障害、中~重度のうつ病)の方の平均余命は10~25年程短くなるみたいです。
ただ、台湾の場合もこれに当てはまるのかよく分かっていなかったそうで、今回調べてみることにしたんだとか。
この研究は、台湾の国民健康保険のデータベースを使ったもので、2005年と2010年のデータを使用したそうな。因みに台湾の人口は約2,300万人らしく、2008年には合計2,292万人が国民健康保険制度に加入しているそうで、このデータは台湾の人口の99%をカバーしているとのこと。すごいですよね。
んで、2005年と2010年のデータの概要は以下のようになっていたそうです。
- 2005年のデータ:統合失調症の患者さん95,632人、双極性障害の患者さん45,392人、うつ病の患者さん395,006人。平均年齢47.45歳。
- 2010年のデータ:統合失調症の患者さん104,561人、双極性障害の患者さん58,317人、うつ病の患者さん435,585人。平均年齢49.95歳。
これらのデータから、標準化死亡比(SMR)を計算してみたそうです。
では結果を見てみましょう。
【標準化死亡比(SMR)】
では結果を見てみましょう。
【標準化死亡比(SMR)】
- 精神疾患名:2005年→2010年
- 統合失調症:3.65→3.27
- 双極性障害:2.65→2.39
- うつ病:1.83→1.59
どうやら全体的に一般人口より高いものの、減少傾向にあるみたいですね。
【統合失調症における自然死のSMR・非自然死のSMR】
- 自然死のSMR・非自然死のSMR:2005年→2010年
- 自然死のSMR:3.30→3.23
- 非自然死のSMR:8.25→5.79
統合失調症の自然死は横ばい、非自然死は大幅な減少傾向にあるみたいですね。
【双極性障害における自然死のSMR・非自然死のSMR】
- 自然死のSMR・非自然死のSMR:2005年→2010年
- 自然死のSMR:2.28→2.13
- 非自然死のSMR:9.40→7.90
双極性障害の自然死も横ばい、非自然死は減少傾向にあるみたいですね。
【うつ病における自然死のSMR・非自然死のSMR】
- 自然死のSMR・非自然死のSMR:2005年→2010年
- 自然死のSMR:1.80→1.57
- 非自然死のSMR:5.30→4.57
うつ病は自然死も非自然死も減少傾向にあるみたいですね。
因みに45歳以上の方の死亡率低下が主な要因だったそうです。
【特定の死因によるSMR】
- うつ病:がん、心血管疾患、糖尿病による死亡率の差が最小限に抑えられていた。
- 統合失調症:糖尿病がわずかに減少していた。
- 統合失調症とうつ病の自殺による死亡率の差が減少していた。
- 但し双極性障害では減少せず、むしろ自殺による死亡リスクが悪化している可能性を示していた。
基本的には減少傾向にあるみたいですね。
【平均余命】
- 精神疾患名:男性:女性
- 統合失調症:14.97〜15.50年短い:15.15〜15.48年短い
- 双極性障害:14.71~15.53年短い:12.69~12.82年短い
- うつ病:11.99~12.43年短い:6.83~7.29年短い
2005年の一般人口の平均余命が男性74.5歳、女性80.8歳、2010年の一般人口の平均余命が男性76.15歳、女性82.66歳だったそうで、統合失調症、双極性障害、うつ病の平均余命は、いずれも台湾の一般人口よりも大幅に低かったという結果でした。