今回は、台湾における双極性障害の方の死亡率について調べた研究を見てみます。



台湾における双極性障害の方の死亡率(2023年バージョン)

2023年の長庚記念病院縦断研究によると、台湾における双極性障害の方の死亡率について調べてみたそうです。
この研究は、台湾の国民健康保険のデータベースを使ったもので、2003年から2017年の間のデータを使ったと言うもの。因みに以前にも書いた通りこのデータは台湾の人口の99%をカバーしているそうな。
このデータベースから、この間亡くなった方を検索したそうで、サンプル数は双極性障害の方と対照群の方を合わせた167,515人だったらしい。
これらのデータを統計処理し、原因別の死亡率(全死因、自然死、非自然死(事故・自殺))を見てみたそうです。
変数を調整した結果、双極性障害の患者さんの原因別の死亡率は以下のようになっていたとのこと。

  • 1番高い死亡原因は自殺で9倍以上(HR9.15)高かった。
  • 2番目に高い死亡原因は非自然死で5倍(HR4.94)高かった。
  • 3番目に高い死亡原因は偶然的な死亡で2倍(HR2.15)高かった。
  • 4番目に高い死亡原因は自然死で1倍(HR1.02)と変わらなかった。

残念ながら先行研究と似たような結果が出てしまいましたね。
それとこの研究では双極性障害とは別に持っている障害(発達障がい)で死亡率が変わるのかも見ております。その結果を見てみますと、

  • 双極性障害+注意欠陥多動性障害(ADHD)の方の原因別の死亡率は関係なかった
  • 双極性障害+自閉症スペクトラム障害(ASD)の方の原因別の死亡率は関係があった

のようになっておりました。
更に詳しく見てみると、双極性障害+自閉症スペクトラム障害(ASD)の方の原因別の死亡率で特に関係していたのは以下だったそうな。

  • 自然死での死亡リスクが3倍高かった(HR3.00)
  • 偶然的な死亡での死亡リスクが7.5倍高かった(HR7.47)

あと、この研究では双極性障害の方の精神科の入院頻度と原因別の死亡率の関係もチェックしておりました。
こちらも見てみますと、

  • 精神科の入院頻度と原因別の死亡率はグラフにすると直線的な傾向を示していた。つまり入院頻度が多くなればなるほど死亡リスクも高くなる傾向があった
  • 毎年2回以上入院していた双極性障害の方は、自殺による死亡リスクが34.63倍も高かった

とのこと。
これらから、双極性障害の患者さんは一般人口に比べて死亡リスク(特に自殺リスク)が高く、また、自閉症スペクトラム障害(ASD)も持っていると死亡リスクが高まり、更に入院頻度が多いと自殺リスクがかなり高まるみたいです。