って記事を書きました。
今回は、知的障がい以外の障がいを持つ場合の平均寿命について見てみます。



ダウン症の人の平均寿命はどうなのか…?

まずはダウン症の方の平均寿命からみていきます。
1987年のブリティッシュコロンビア大学の研究によると、ダウン症の方の平均寿命について調べてみたそうです。
この研究は、1952年から1981年までのブリティッシュコロンビア州の統計データを使ったもので、ダウン症の方をピックアップしていったそうな。すると、ダウン症の方が1,341人見つかったらしい。次にそれぞれの平均寿命を調べていき、まとめて一つのデータにしてみたんだとか。
その結果、

  • ダウン症の方の平均寿命は、世間で言われているよりもはるかに良かった…!

とのこと。
イメージよりもずっと長生きだったみたいですね~。
んでどんな感じだったか詳しく見てみますと、

【先天性心疾患のあるダウン症の方の場合】
  • 1歳までの生存率:76.3%
  • 5歳までの生存率:61.8%
  • 10歳までの生存率:57.1%
  • 20歳までの生存率:53.1%
  • 30歳までの生存率:49.9%

【先天性心疾患のないダウン症の方の場合】
  • 1歳までの生存率:90.7%
  • 5歳までの生存率:87.2%
  • 10歳までの生存率:84.9%
  • 20歳までの生存率:81.9%
  • 30歳までの生存率:79.2%

って感じでした。
つまり、

  • 先天性心疾患のないダウン症の方は先天性心疾患のあるダウン症の方よりも生存率が大幅に高かった…!

とのこと。
ダウン症の有無に関わらず、心疾患ってのは寿命への影響が大きいみたいですねー。


次に一般人口と比べたらどうなのか…?について見ていきます。
1988年のブリティッシュコロンビア大学の研究によると、ダウン症の成人の平均寿命について調べてみたそうです。
この研究は上記と同じ研究者が行ったもので、1908年から1981年にかけてブリティッシュコロンビア州の統計データを使ったと言うもの。その中でダウン症と診断された1,610人を対象に、それぞれの平均寿命を調べていったそうな。
最後にデータをまとめてみた結果、

  • ダウン症の方の68歳までの生存率は、以前の推定値よりは高かった。但し、一般人口と比べるとまだはるかに低かった

とのこと。
やはりダウン症の方の寿命も延びてはきているんだけど、一般人口に比べたらまだ短いみたいですね。
ではこちらも詳しいところをチェックしておきましょう。

【ダウン症の方の生存率】
  • 60歳までの生存率:44.4%
  • 68歳までの生存率:13.6%

【一般人口の生存率】
  • 60歳までの生存率:86.4%
  • 68歳までの生存率:78.4%

60歳で差が約2倍、68歳だと約5.8倍も差が出てしまうんですね。
また同じ研究者が行った1989年のブリティッシュコロンビア大学の研究も見てみますと、

  • ダウン症の方の半数以上は50代まで生存できると予想された
  • ダウン症の方の13.5%は68歳まで生存できると予想された

とのこと。
50歳までの生存率は約50%なんですね。


最後にダウン症+知的障がいの有無で平均寿命が変わるのかも見てみます。
1996年のカリフォルニア大学の研究ではこれらを調べているんですよね。
この研究は、1986年から1991年にかけてカリフォルニア州でサービスを受けている知的障がいの方を対象にしたもので、参加者は118,653人の方々となっております。
集まったデータから平均寿命を出して見ると、

  • 35歳頃までは、ダウン症+知的障がいのある方、ない方を問わず、死亡率は同程度だった
  • その後、ダウン症+知的障がいのある方の死亡率の増加がはるかに急速だった
  • ダウン症+知的障がいのある方の死亡率は6.4年ごとに倍増していた
  • ダウン症+知的障がいのない方の死亡率は9.6年ごとに倍増していた
  • ダウン症+軽度~中度の知的障がいの方の平均寿命は55年だった
  • ダウン症+重度の知的障がいの方の平均寿命は43年だった

とのこと。
35歳ぐらいまでは知的障がいの有無で寿命は変わらないものの、その後は徐々に差が出てきてしまうみたいですね。

一般人口に比べればどうしてもダウン症の方の寿命は短くなってしまうみたいですね。また心疾患や知的障がいの有無でも変わってきそうな感じ。
但し、医学の進歩のおかげか、かなり平均寿命は延びてきているみたいなんで、そこは期待してよろしいのではないでしょうか…?



学習障がいの人の平均寿命はどうなのか…?

1998年のロンドン大学セントジョージ校の研究によると、学習障がいの方の平均寿命について調べてみたそうです。
この研究は、ロンドンの2つの地域で障がい福祉サービスの利用者として登録されている人を対象にしたと言うもの。登録者のうち学習障害(LD:限局性学習症)を持っていた2,000人を8年間追跡調査してみたんだとか。
そのデータを基に、死亡時の年齢や死因、早期死亡との関係性をチェックしてみたらしい。
結果、

  • 学習障がいの方の主な死因は呼吸器疾患で52%だった
  • 男性の一般人口における呼吸器疾患の死亡率は15%だった
  • 女性の一般人口における呼吸器疾患の死亡率は17%だった
  • つまり、学習障がいの方が呼吸器疾患で亡くなる場合は、一般人口に比べて3倍以上高かった
  • 学習障がいの方の場合、50%未満の方が65歳以上で亡くなっていた
  • 一般人口の場合、83%の方が65歳以上で亡くなっていた
  • 学習障がいの方が50歳未満で死亡するリスクは、イングランドとウェールズ全体よりも58倍も高かった
  • つまり、学習障がいの方の早期死亡リスクが高かった
  • 早期死亡は、脳性麻痺、失禁、移動問題、入院と有意に関係していた

とのこと。
残念ながらこの研究によれば、学習障がいの方は寿命が短い傾向にあったみたいですね。
まぁ、この研究はかなり昔の物なんで今調べたら結果は違う可能性もあると思います。
ただ、この分野の研究は全然進んでいないんで謎な分が多いのが実情です。



眼疾患・視覚障害の人の平均寿命はどうなのか…?

1995年のウィスコンシン大学マディソン校の研究によると、眼疾患・視覚障害の方の平均寿命について調べてみたそうです。
この研究は、ビーバーダム眼研究っていうデータセットを用いたもので、参加者はアメリカウィスコンシン州ビーバーダムに住む43歳から84歳の方々。1988年から1990年の間に測定された視力検査のデータを基に白内障や加齢黄斑変性、緑内障、視覚障害と生存率の関係をチェックしてみたんだとか。
実験スタート時から中央値4年後までで、人口の9.5%(467人/4926人)の方がなくなったそうで、結果、

  • 年齢と性別を調整してみると生存率の低下は、核硬化症(水晶体の老化)の重症度(最重度で5年生存率88.9%、最軽度で5年生存率94.1%)と視覚障害(5年生存率87.5%、健常者91.8%)に関係があった
  • 但し全ての変数を調整してみると、糖尿病のない人における核硬化症の重症度のみが、生存率の低下と有意に関係していた(重症度レベル当たりのHR1.19)

とのこと。
眼疾患と視覚障害が寿命に及ぼす影響はかなり限定的みたいですね。



軽度視覚障害でも死亡リスクは2倍以上増加する

2001年のメルボルン大学の研究によると、視覚障害と死亡リスクの関係について調べてみたそうです。
この研究は、メルボルン視覚障害プロジェクトっていうコホート研究のデータを使ったもので、対象者はオーストラリアのメルボルンに住む40歳以上の方々となっております。始まりは1992年~1994年でして、1997年に5年間の追跡調査を開始したとのこと。
スタート時の参加者の人数は3,271人でして、その後5年間で231人(7.1%)の方が亡くなっていたそうです。また、残りの3,040人のうち、51人(2%)は転居してしまい、83人(3%)は追跡調査できず、312人(10%)は参加を拒否したとのことでした。そのため、亡くなっていない最終的な参加者は2,594人(85%)だったそうです。
それでは、視覚障害の方の死亡リスクをチェックしてみましょう。

  • 視力をマックスで矯正していた人は死亡リスクが有意に増加(OR2.34)していた。
  • 加齢による死亡リスク(OR1.09)、男性の死亡リスク(OR1.62)長期間の喫煙と死亡リスク(30年より多いとOR2.06)、長期間の高血圧と死亡リスク(10年より多いとOR1.51)、関節炎と死亡リスク(OR1.42)も有意に増加していた。

う~ん。リスクが2倍以上増えるってのはすごいですね。
この結果に研究者曰く、

  • 軽度視覚障害でも死亡リスクは2倍以上増加するようだ

とのこと。
理由は不明ながら今回の研究では視覚障害と寿命は関係ありそうな感じでした。



視覚障害と加齢による白内障における死亡リスクはどうなのか…?

2001年のシドニー大学の研究によると、視覚障害と加齢による白内障における死亡リスクについて調べてみたそうです。
先行研究により、視覚障害と死亡リスクの関係はなんとなくありそう…!って感じが出ておりますが、これらは白内障がポイントの可能性があるそうな。ということで今回研究者たちは、その辺がどうなのかチェックしてみることにしたらしい。
この研究は、ブルーマウンテンズ眼科研究と呼んだそうで、オーストラリアのシドニー西部の特定地域に住む49歳以上の方々を対象にした観察研究とのこと。実験開始は1992年~1994年にかけてでして、住民の参加率は82.4%にも及んだそうな。因みに実験は住民の視力検査をしつつ、眼疾患がないかを見たらしい。その後、1997年~1999年(5年後)まで追跡調査したんだとか。
期間中に死亡した方や地域を離れた人々を除いた後の参加率は87.9%でして、最終的なサンプル数は3,654人とのことでした。最後にデータを統計処理した結果、以下のことが分かったそうです。

  • 1999年6月30日までに604人の参加者(16.5%)が亡くなっていた。
  • 年齢と性別を調整した7年の累積生存率について、最大矯正の視覚障害のある人は74%だった。視覚障害のない人は84%だった。加齢に伴う白内障のある人は78%、ない人は86%だった。
  • 実験開始時、視覚障害のある人の死亡リスクは70%(RR1.7)も高かった。
  • 実験開始時、最大矯正の視覚障害のある人の死亡リスクは80%(RR1.8)も高かった。
  • つまり、視覚障害のある人はない人よりも、死亡リスクが70%~80%も高かった。
  • 実験開始時、核白内障のある人の死亡リスクは40%(RR1.4)も高かった。
  • 実験開始時、後嚢下白内障のある人の死亡リスクは40%(RR1.4)も高かった。
  • 実験開始時、皮質白内障のある人の死亡リスクは30%(RR1.3)も高かった。
  • つまり、加齢に伴う白内障のある人はない人よりも、死亡リスクが30%~40%も高かった。
  • 実験開始時、糖尿病網膜症のある人の死亡リスクは120%(RR2.2)も高かった。
  • 実験開始時、近視のある人の死亡リスクは40%(RR1.4)も高かった。
  • 加齢黄斑症と緑内障は関係なかった。
  • 全ての変数を調整後、視覚障害は死亡リスクを50%~70%も上げていた。
  • 全ての変数を調整後、加齢に伴う白内障は死亡リスクを30%~50%も上げていた。
  • 全ての変数を調整後、近視は死亡リスクを50%も上げていた。

この研究によれば、視覚障害も加齢による白内障も高齢者の死亡リスクを高める、つまり寿命を短くする原因っぽいですね。因みに研究者によれば、この研究はビーバーダム眼研究の研究結果を裏付け、拡張するものとのことです。



加齢黄斑変性と白内障があると寿命が短くなる可能性がある

2004年の研究によると、加齢による眼疾患と死亡リスクについて調べてみたそうです。
この研究はAREDSっていう研究データを使ったもので、AREDSは加齢黄斑変性と加齢白内障について調べた前向きコホート研究となっております。参加者は1992年11月13日~1998年1月15日までに登録した55歳~81歳(平均年齢69歳)までの4,757人でして、特定のサプリ(ビタミンC500mg、ビタミンE400IU、ベータカロテン15mg、亜鉛80mg)が上記の眼疾患の発症率と進行に及ぼす影響がどうなのかチェックしたそうな。
1992年11月13日から2001年10月12日までの間にデータのあった4,753名のうち534名(11%)が亡くなったそうで、追跡期間の中央値は6.5年ということでした。このデータを統計処理して加齢による眼疾患と死亡リスクを見てみたらしい。
結果、

  • 加齢黄斑変性の重症度が増すと全死亡リスクも高かった
  • 加齢黄斑変性が進行した参加者は、ほとんどない参加者に比べて、全死亡リスクが41%(RR1.41)も高かった
  • 白内障がある場合、全死亡リスクが40%(RR1.40)も高かった
  • 白内障の手術は全死亡率リスクが55%(RR1.55)も高かった
  • 亜鉛サプリを飲んでいた参加者(亜鉛サプリのみ、抗酸化物質+亜鉛サプリ)はそうでない参加者に比べて、全死亡リスクが27%(RR0.73)も低かった
  • 抗酸化物質サプリは関係なかった
  • 抗酸化物質と亜鉛をランダムに摂取するよう割り当てられた参加者は加齢黄斑変性の進行と視力低下リスクが低かった
  • 視力が低い参加者はそうでない参加者よりも全死亡リスクが36%(RR1.36)も高かった

とのこと。
つまり加齢黄斑変性と白内障があると寿命が短くなる可能性があるってことですね。それともしかしたら亜鉛が対策になるのかも…?って感じでした。



加齢による視力低下で死亡リスクは高まっていたけど色々な要因の可能性がありそう

2005年のジョンズ・ホプキンス大学の研究によると、加齢による視力の低下と死亡リスクの関係について調べてみたそうです。
これまでにも加齢による視力の低下が死亡リスクを高める可能性を示唆する先行研究はあったものの、イマイチはっきりと分かっていなかったそうな。また、その原因がうつ病の発症が関係ありそうって話もあったんで、この度、それらの可能性をチェックしてみたらしい。
この研究は、ソールズベリー眼科評価プロジェクトっていうデータセットを用いたもので、メリーランド州のソールズベリーに住む65歳から84歳の高齢者2,520人を対象にしたと言うもの。まずは実験開始時、参加者の自宅にアンケートを送り基本情報などを答えてもらったりしたそうな。また両眼の視力検査をしたり、うつ症状についてどうかアンケートを用いてみてみたらしい。
その約2年後に再度、参加者に同様のアンケートや検査を実施、そこで亡くなった方や転居した方のデータを除外したそうな。更にそこからうつ病の症状があった人のデータも除外して、因果関係を整理したそうで、最終的なサンプル数は1,991人になったとのことです。
最後にデータを統計処理した結果、以下の傾向があったみたい。

  • スタート時の視力の低下は、死亡リスクの上昇と関係していた(HR1.05)
  • 2年間で視力が2段階以上回復した人は、死亡リスクが低下していた(HR0.47)
  • 2年間で視力が3段階以上低下していた女性は、死亡リスクが上昇していた(HR3.97)
  • 2年間で視力が3段階以上低下していた男性は、死亡リスクに有意差はなかった(HR1.32)
  • これらの結果は、うつ病と関係なかった。

確かに、加齢による視力低下で死亡リスクは高まっていたけど、男女の違いがあったり、うつ病は関係なかったりでイマイチはっきりしなかったっぽい。
この結果に研究者曰く、

  • 視力と死亡リスクに因果関係があるとすれば、それはさまざまな変数による結果が高そうだ

としています。
色々な要因が複雑に絡み合って出た結果みたいなんで、これって原因は分からないみたいですね。



ビーバーダムに住む人を14年間追いかけ眼疾患・視覚障害と平均寿命を調べてみた…!

2006年のウィスコンシン大学マディソン校の研究によると、眼疾患・視覚障害の方の平均寿命について調べてみたそうです。
これは上記で紹介した1995年のウィスコンシン大学マディソン校の研究のチームが行ったもので、研究発表から10年が経ったので更新したと言うもの。対象者はビーバーダム眼研究に参加した、アメリカウィスコンシン州ビーバーダムに住む43~84歳の4,926人でして、開始は1988年3月1日~1990年9月14日となっております。
今回の区切りは2002年12月31日となっておりまして、追跡期間の中央値は13.2年とのことでした。この間亡くなった方は全体の32%、1,576人だったそうで、そのデータを基に眼疾患・視覚障害と平均寿命の関係をチェックしてみたらしい。
では、14年間追いかけた結果を見てみましょう。年齢や性別、その他の変数を調整した結果、

  • 皮質白内障の方は死亡リスクが21%(HR1.21)も高かった
  • 白内障の方は死亡リスクが16%(HR1.16)も高かった
  • 糖尿病網膜症の方は4段階の重症度が1段階上昇すると死亡リスクが36%(HR1.36)も高かった
  • 視覚障害の方は死亡リスクが24%(HR1.24)も高かった
  • 核硬化症の方は重症度が増加すると死亡リスクが7%(HR1.07)とわずかに高かった
  • 加齢黄斑変性は死亡リスクと関係なかった
  • 緑内障は死亡リスクと関係なかった

とのこと。
因みに男性の方が女性よりもわずかに関係性が強かったそうです。
まとめると、白内障、糖尿病網膜症、視覚障害は平均寿命が短くなる要因っぽいですね。
どうやら加齢による眼疾患や視覚障害の場合は寿命に影響しそうな感じですね。



シドニー西部に住む人を11年間追いかけ眼疾患・視覚障害と平均寿命を調べてみた…!

2007年のシドニー大学の研究によると、ブルーマウンテンズ眼科研究を用いて眼疾患・視覚障害と平均寿命の関係を調べてみたそうです。
この研究は上記で登場したブルーマウンテンズ眼科研究を使ったもので、始まりは1992年~1994年となっております。サンプル数は3,654人でして、2003年12月31日までの死亡率と死因をチェックしたそうな。つまり上記の研究をアップデートしてみたってことですね。
最後にデータを統計処理してみたところ、

  • 追跡期間:累積追跡期間は11年、中央値は10.7年だった
  • サンプル数:最終的なサンプル数は3,633人だった
  • 亡くなった方:1,051人(28.9%)の方が亡くなっていた。そのうち483人(13.3%)は血管系が原因で亡くなっていた
  • 亡くなった方の特徴:高齢、男性、喫煙者、低体重、糖尿病歴あり、高血圧歴あり、狭心症歴あり、急性心筋梗塞歴あり、脳卒中歴ありだった
  • 視覚障がい者の割合:視覚障がい者は132人(3.6%)だった。そのうち24人は75歳未満の参加者だった。108人はスタート時点で75歳以上だった

という特徴があったみたい。
では結果を見てみましょう。

  • 年齢調整死亡率(年齢別死亡率)で見てみると、全死亡率は視覚障がいのある人が54.0%、視覚障がいのない人が34.0%だった。
  • 視覚障がいと生存率低下の関係を見てみると、年齢と性別を調整した場合、40%(HR1.4)高かった。
  • 視覚障がいと生存率低下の関係を見てみると、全ての変数を調整した場合、30%(HR1.3)高かった。但し有意差はなかった。
  • 75歳未満だと、視覚障がいで全死亡率が高くなりそうだった(HR2.9)
  • 75歳未満でも視覚障がいで全死亡率が高くなりそうだったが、変数(中性脂肪やフィブリノゲン、学歴、歩行障害)を調整すると低くなった(HR1.97)
  • 年齢調整死亡率(年齢別死亡率)で見てみると、加齢黄斑変性による死亡率は視覚障がいのある人が45.8%、視覚障がいのない人が33.7%だった。
  • 加齢黄斑変性と生存率低下の関係を見てみると、全ての変数を調整した場合、有意差はなかった(HR1.0)
  • 75歳未満だと、加齢黄斑変性で全死亡率が高くなりそうだった(HR1.7)
  • 75歳未満における加齢黄斑変性の全死亡率は、変数(中性脂肪やフィブリノゲン、学歴、歩行障害)を調整した後も、変わらなかった(HR1.6)
  • 75歳未満で、早期に加齢黄斑変性になった場合の全死亡率(HR1.5)、後期に加齢黄斑変性になった場合の全死亡率(HR2.5)ともに有意に高くなっていた。
  • 年齢調整死亡率(年齢別死亡率)で見てみると、全白内障による死亡率は視覚障がいのある人が39.2%、視覚障がいのない人が29.5%だった。
  • 白内障による全死亡率は30%(HR1.3)高かった。
  • 皮質白内障による全死亡率は30%(HR1.2)高かった。
  • 核白内障による全死亡率は30%(HR1.2)高かった。
  • 後嚢下白内障による全死亡率は30%(HR1.3)高かった。

つまりまとめると、

  • 視覚障がいと死亡率は関係なさそう
  • 加齢黄斑変性は49歳から74歳の人の死亡率と関係ありそう
  • 白内障は49歳以上の人の死亡率と関係ありそう

という形みたい。
また研究者曰く、

  • 視覚障害、加齢黄斑変性、白内障、死亡率の関係は互いに独立しているようだ

とのこと。
つまり眼疾患・視覚障害と平均寿命の関係は別々に考えた方が良さそうだと…。
これらを見るに、眼疾患は平均寿命と関係ありそう、視覚障害は平均寿命と関係なさそうって感じですね。



視覚障害と寿命の関係についての系統的レビューとメタ分析

2021年のミシガン大学などの研究によると、視覚障害と寿命の関係について系統的レビューとメタ分析を行ってみたそうです。
そもそも高齢化により、世界中で視覚障害を持つ人の数は増えております。そして2016年の青島大学のメタ分析により、29件の前向きコホート研究をまとめた結果、視力障害と死亡リスクの増加には関係がありそうと言うことが分かったんですよね。
ただ、このメタ分析には弱点もございまして、例えば視力検査を客観的に調べたのが15件しかなく他は自己申告だったり、各研究のバイアスリスクやエビエンスチェックをしていなかったんですな。そこで今回その辺を踏まえて系統的レビューとメタ分析を行ってみたんだとか。
まず研究者たちは、2020年2月1日までに発表された該当する研究をMEDLINE(Ovid)、Embase、Global Healthで検索してみたそうです。またこの時、40歳以上の人で且つ1年以上追跡調査した該当研究であること、前向きコホート研究又は後ろ向きコホート研究であることに絞って探したみたい。その後、この調べる基準を修正して再度検索し直したところ3,845件の研究がヒットしたそうな。
続いてこの中で重複するものや質の低い物を除いていったそうで、最終的に28件の研究が選ばれたとのこと。これらの特徴は、

  • 28件中25件は観察研究だった
  • 28件中3件はRCTだった
  • 5大陸、12か国の成人を対象にしていた(日本の研究なし)
  • 総サンプル数は446,088人だった
  • サンプルサイズは193人から359,984人の間だった
  • 男性と女性の参加者はほぼ同数だった
  • 追跡期間は17か月から210か月の間で平均追跡期間は103.3か月だった

って感じ。
それでは結果を見てみましょう。
視覚障害がある人とない人を比べた場合の全死亡リスクは、

  • 視力が<6/12と≥6/12だとHR1.29
  • 視力が<6/18と≥6/18だとHR1.43
  • 視力が<6/60と≥6/18だとHR1.89
  • 視力が<6/60と≥6/60だとHR1.02

とのこと。
つまり、

  • 視力が悪い人は問題ない人に比べて全死亡リスクがアップする
  • 視力が低下すればするほど死亡リスクはアップする

って感じ。
視覚障害の方は寿命が短くなる可能性が高いみたい。残念な結果ですね。


以上、眼疾患・視覚障害の方編でした。
視覚障害の場合も死亡リスクは高くなるみたいなんで平均寿命は下がりそうな感じでした。



視覚障害のみ・聴覚障害のみ・視覚障害と聴覚障害、それぞれの死亡リスク

2006年のマイアミ大学の研究によると、視覚障害のみと聴覚障害のみ、視覚障害と聴覚障害の方をそれぞれの死亡リスクについて調べてみたそうです。
そもそも視覚障害と聴覚障害は加齢とともに増加し高齢者によく見られる現象です。そして70歳以上のうち18%が片目または両目の失明やその他の視覚障害を報告し、また33%が聴覚障害を報告、9%が視覚障害と聴覚障害の両方の問題を報告しているんだとか。
そして視覚障害と聴覚障害の死亡リスクについてはいくつか先行研究がありまして、

  • 1992年のブラウン大学の研究:65歳以上の高齢者1,408人を対象に障害のない参加者と視覚障害と聴覚障害、視覚障害と聴覚障害のある参加者を比較した。1年後の死亡リスクは、視覚障害の方が34%(RR1.34)高く、聴覚障害の方が30%(RR1.30)高く、視覚障害と聴覚障害の方が18%(RR1.18)高かった
  • 1999年のカリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究:55歳から74歳の成人5,444人を対象に障害のない参加者と視覚障害と聴覚障害、視覚障害と聴覚障害のある参加者を比較した。変数を調整後、平均追跡期間10.1年での死亡リスクは、視覚障害の方が20%(RR1.20)高く、聴覚障害の方が12%(RR1.12)高く、視覚障害と聴覚障害の方が10%(RR1.10)高かった

とのこと。
但し、これらはいずれもサンプル数が少なく、また視覚障害と聴覚障害の両方を持っている方が少ないと言う弱点があったんだとか。そこで今回その辺を踏まえて調べてみることにしたらしい。
この研究はアメリカ国民健康インタビュー調査(NHIS)のデータセットを使ったと言うもの。1986年~1994年にかけてNHISに参加し、インタビュー時に18歳以上だった116,796人を対象にデータを統計処理して視覚障害のみと聴覚障害のみ、視覚障害と聴覚障害の方のそれぞれの死亡リスクを計算してみたそうな。
そこでまず分かったこととして、116,796人のうち、

  • 3,620人(3.1%)の方が視覚障害のみを持っていた
  • 12,330人(10.6%)の方が聴覚障害のみを持っていた
  • 1,461人(1.3%)の方が視覚障害と聴覚障害を持っていた

とのこと。
また平均追跡期間は7.0年で、その間に亡くなった方は8,949人だったみたい。そこから年齢、婚姻、教育などの変数を調整し、死亡リスクを出してみた結果、以下のようになったそうです。

【男性】
  • 障害の有無:アフリカ系アメリカ人:白人:その他の人種
  • 障害なし:1.00:1.00:1.00
  • 視覚障害あり:1.04:1.08:1.10
  • 聴覚障害あり:1.31:0.99:0.64
  • 視覚障害と聴覚障害あり:1.50:1.23:2.47

【女性】
  • アフリカ系アメリカ人:白人:その他の人種
  • 障害の有無:障がいなし:1.00:1.00:1.00
  • 視覚障害あり:1.62:1.31:3.74
  • 聴覚障害あり:0.94:1.09:2.03
  • 視覚障害と聴覚障害あり:0.92:1.63:2.23

ちょっとポイントをまとめてみると、

  • 女性における視覚障害のみの方の死亡リスクは人種に関係なく高かった
  • 聴覚障害のみの方は男女ともに人種によって違い結構あった
  • 視覚障害のみ、聴覚障害のみよりも視覚障害と聴覚障害の方が死亡リスクが高かった

といったところでしょうか。
視覚障害と聴覚障害の両方があると死亡リスクは高まりそうですが、視覚障害のみ、聴覚障害のみの方はイマイチよく分からない感じですね。
ということで聴覚障害の方の平均寿命についてはあんまりよく分からない感じでした。



個人的考察

知的障がいの方の寿命等については、

の記事が勉強になるかと思いますので、併せてご覧ください。



参考文献