砂糖(ショ糖・スクロース)が使われているお菓子とかってついつい食べ過ぎてしまいますよね。その点、野菜がおいしすぎてついつい食べ過ぎてしまうって話はあまり聞かないかと思います。このように食事によって食べたさに違いが出ることを食事報酬と言い、野菜のようなものを食事報酬の低い食品、お菓子のようなものを食事報酬の高い食品と言います。
そして、食事報酬の高い食品は基本的に脳がはしゃいじゃうんで、もっと食べたくなってしまうんですよね。それが加工食品ともなれば、完全にヒャッハーって脳ははじけちゃうんですよ(笑)
つまり、砂糖は旨い…!だから脳が暴走し食べ過ぎる…!という、まぁ、当たり前な話なんですがご紹介しておきます。



砂糖は旨い…!だから脳が暴走する…!

2010年のミネソタ大学動物実験によると、28匹のラットを使って、慢性的な砂糖の摂取と食事報酬の関係を調べたそうです。
具体的には、

  • 1~3日:1日4時間、普通にエサを与えた
  • 4~7日:1日2時間、普通にエサを与えた(上記よりエサの時間を短くした)
  • 8~11日:固形のエサから粉のエサに変えて与えた
  • 12~20日:上記に慣れたところで、ラットの半分には砂糖を多くした粉末状のエサを与えた。残りの半分のラットには、コーンスターチの粉末状のエサを与えた
  • 21日目:砂糖グループのラットの半分にコーンスターチのエサを与えた。また、コーンスターチグループのラットの半分に砂糖のエサを与えた

ってことです。
つまり、

  1. 砂糖ベースのエサグループ
  2. 砂糖ベース→コーンスターチベースのエサグループ
  3. コーンスターチベースのエサグループ
  4. コーンスターチ→砂糖ベースのエサグループ

の4グループを作って調べたってことですね。
んで、結果、砂糖を多く含むエサを長く食べ続けると、食欲が抑制できなくなり(食欲が暴走し)、慢性的な食べ過ぎを起こしてしまうみたいです。そして、最終的には、体重増加を促進すると予想されるとのこと。
つまり、砂糖でセットポイントが上がる…!ってことですね。



動物実験で、砂糖依存症が見つかった…!

2008年のプリンストン大学レビュー論文によると、砂糖の依存症になる可能性があるのかどうか、過去の砂糖の動物実験をまとめてみたそうです。
結果、ラットに不規則に砂糖を与えたり、与えなかったりしたら、大量のドーパミンとオピオイドが分泌されたそうです。また、砂糖を与えないようにしてみると、砂糖の禁断症状まで出たそうで、これを聞くと、やっぱ砂糖の依存症ってあるのかな~と思ってしまいます。
しかし、これらはいずれも動物実験なんで、エビデンスレベルは低め。つまり、ラットで起きたからと言って人間にも起きる…!とは言えないんですよね。



でも、人間を対象に考えてみると…。

では、実際、人間だとどうなんだろう…?ってことで、参考になるのが、2012年のリューベック大学の研究になります。こちらのレビューは、砂糖の依存症で本当に肥満になるの…?ってことを調べたもので、過去に行われた砂糖やドーパミンの関係についてまとめております。
んで、研究者曰く、結論として、炭水化物依存症が本当に肥満を引き起こすという見解を支持する証拠は見当たらなかった。(中略)動物実験の「砂糖依存症」の調査結果は、過度に人間の肥満と結びつけるべきではない、とのこと。
どうやらラットで起こっている砂糖依存症は、安易に人間でも起きると考えない方が良さそうですね~。
更に2010年のスウォンジー大学の研究でも、砂糖依存症と肥満・摂食障害の関係を調べているんですが、やはり結果は似ていて、動物実験によってみられた砂糖依存症は、人間を対象とした研究では見られなったそうです。



一方で、精製砂糖がヤバいんじゃないの…?って話もある

一方で、砂糖って言っても色々あるよね…?実は精製砂糖がヤバいんじゃないの…?って話もあります。
例えば2012年のカリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究によると、精製砂糖で食欲ホルモンの働きが乱れるかも…!って話があったりしますし、他にも以前紹介した通りソフトドリンクはヤバい…!って話もあります。対してフルーツの果糖は良い…!って話もあります。



結局、1日の総摂取カロリーが大事という当たり前な話

1997年のデューク大学の研究によると、食事から摂取する大量の脂肪で肥満になる…!という要望に応えて、食品業界は多くの低脂肪食品や無脂肪食品を開発しているけど、これらって代わりに砂糖(ショ糖)を使うことが多いが、本当に肥満防止に役立つのか…?について調べてみたそうです。
実験は6週間のダイエットプログラムを行う形でして、高ショ糖又は低ショ糖で低脂肪かつ低カロリー食が及ぼす影響を比較してみたとのこと。因みに高ショ糖食も低ショ糖食も1日の総摂取カロリーは同じに調整済みで、炭水化物が71%、タンパク質が19%、脂肪が11%だったそうな。
更に各グループの参加者情報、ショ糖の割合を見て行くと、

  • 高ショ糖食グループ:女性20人(平均年齢40.6歳、平均BMI=35.93)が参加。1日の総摂取カロリーの43%がショ糖だった
  • 低ショ糖食グループ:女性22人(平均年齢40.3歳、平均BMI=34.93)が参加。1日の総摂取カロリーの4%がショ糖だった

そうです。
んで、気になる結果が、

  • 高ショ糖食グループと低ショ糖食グループも1日の総摂取カロリーを同じにしたらほぼ同じように体重が減った…!

とのこと。
1日の総摂取カロリーが大事という当たり前な話だったってことですね。



そもそも果糖ブドウ糖液糖ってなに…?

そもそも果糖ブドウ糖液糖ってのは何なんでしょうか…?
果糖ブドウ糖液糖はソフトドリンクなんかに良く使われる成分ですが、これは異性化糖の一種となります。異性化糖(いせいかとう)とは、デンプンを使って作るブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)を混ぜ混ぜした液体のことを言いまして、果糖の含有率で呼び方が分かれるんですよね。因みにデンプンは皆さんご存知、トウモロコシやじゃがいも、サツマイモなんかの物を使います。
んで、異性化糖は農林水産省の「異性化液糖及び砂糖混合異性化液糖の日本農林規格」というJAS規格で規定されておりまして、以下の3種類からなるそうです。

  1. 果糖の含有率が50%未満のもの:ブドウ糖果糖液糖
  2. 果糖の含有率が50%以上90%未満のもの:果糖ブドウ糖液糖
  3. 果糖の含有率90%以上のもの:高果糖液糖

つまり、ざっくり覚えるなら、

  1. ブドウ糖の方が果糖よりも量が多いと名前の先頭にブドウ糖がきてブドウ糖果糖液糖
  2. 果糖の方がブドウ糖よりも量が多いと名前の先頭に果糖がきて果糖ブドウ糖液糖
  3. 果糖がめっちゃ多いと高果糖液糖

になります。
因みに3種類の液糖の総称をコーンシロップと呼びます
更に余談ですが、一時期盛り上がったストレス緩和・睡眠の質の向上を謳った製品には、ブドウ糖果糖液糖&高果糖液糖が使われるというダブルのヤバさがあったりします。更に更に余談ですが、この製品の謳い文句である、ストレス緩和・睡眠の質の向上の根拠となる論文をチェックすると、サンプル数が47名94名という小規模実験だったり、睡眠改善のメカニズムが不明だったり、そもそも業界から資金提供を受けた研究だったりなど気になる点もあったりします。
話しを戻しまして、ブドウ糖を作る際のじゃがいもサツマイモは優良食材ですし、果糖が多く含まれる果物(フルーツ)も優良食材なんですが、いかんせん、やはり加工度が増すとカロリーの質が落ちてしまう…!って感じです。



果糖ブドウ糖液糖と砂糖はどちらがダイエットに使えるのか…?

2007年のマーストリヒト大学の研究によると、果糖ブドウ糖液糖とスクロース(砂糖)の満腹感について調べてみたそうです。
この研究は2つの実験からなっておりまして最初の実験の参加者情報はこんな感じ。

  • 健康な男女30人が参加した。
  • 男性15人、女性15人が参加した。
  • 男性の平均年齢は21.5±1.8歳だった。
  • 女性の平均年齢は21.1±1.5歳だった。
  • 男性の平均BMI=22.5±1.8だった。
  • 女性の平均BMI=21.6±1.9だった。

2つ目の実験の参加者情報はこんな感じ。

  • 健康な男女40人が参加した。
  • 男性20人、女性20人が参加した。
  • 男性の平均年齢は22.3±4.5だった。
  • 女性の平均年齢は21.2±2.2だった。
  • 男性の平均BMI=22.8±2.0だった。
  • 女性の平均BMI=22.0±2.1だった。

んで、参加者には果糖ブドウ糖液糖やスクロース(砂糖)、牛乳を含む飲料や食事(シリアルやヨーグルト)を飲食してもらい、満腹感やカロリー摂取量に違いが出るかどうか見てみたとのこと。
結果、

  • 果糖ブドウ糖液糖(果糖55%、ブドウ糖45%)もスクロース(スクロース66%、グルコースシロップ34%)も満腹感やカロリー摂取量に違いは出なかった…!

とのこと。
う~ん…。どうやら砂糖の代わりに果糖ブドウ糖液糖を使ってもダイエット効果は期待できそうにない感じですね…。

砂糖の代用品として果糖ブドウ糖液糖を使うのは意味がないっぽい感じ。人工甘味料も効果はありそうですが気になる部分もありますし、そう上手い話はない感じですね。
やはり、液体からカロリーを摂取するな…!を基本にしつつ、黙って生のフルーツを食べるのが良さそうですね。



個人的考察

これらをみると、砂糖依存症や砂糖で太るって話はなかなか複雑な感じなんですよね。そのため、砂糖を少しでも食べたら、即セットポイントが狂いだす…!って話ではないかと思います。むしろ人工甘味料で痩せる可能性がある…!(特に短期的には期待して良い…!)みたいな話もありますし、結局、1日の総摂取カロリーが同じであれば砂糖や人工甘味料で直接太るってのはなさそうな感じ。
つまり原因は他にあるってことでして、それは砂糖や人工甘味料などの糖質の摂り方が問題なんですよ…!
つまり、砂糖や人工甘味料を使った


などになると一気に肥満リスクがアップするってことです。1日の総摂取カロリーもオーバーしやすいですし…。こう考えると食事報酬を刺激してセットポイントが狂うので、上記の結果や砂糖で太るってつい考えちゃうのにも納得がいきますねー。