この記事は、当事業所の社内研修で行いたかったが時間の都合上出来なかった内容を載せている物になります。
具体的には認知行動療法マップ(CBTマップ)の「認知行動療法の共通基盤マニュアル」を私なりにまとめたものです。
それでは続きをどうぞー。



抑うつ・うつ病・大うつ病の基礎理解

抑うつは基本的な感情のひとつで、正常な落ち込みからうつ病まで、様々な状態でみられます。そして、通常の落ち込みとうつ病の間に厳密な境目を引くことは難しいとのことです。
抑うつの症状は、主に4種類からなりまして、症状と例を挙げておきますと

  1. 気分の症状:抑うつ気分、不安感、イライラ
  2. 行動の症状:興味の喪失,集中力の低下、意欲低下、焦燥
  3. 思考の症状:些細なことへのこだわり、悲観的な考え方、自責感、自殺念慮、自殺企図
  4. 身体の症状:全身倦怠感、易疲労性、不眠、食欲低下、性欲減退、頭痛、頭重、肩こり、口渇、動悸、咽喉頭異常感、胃部不快、頻尿

のようになっております。
このように症状を分けて整理することによって理解や対策を講じやすくなります。

次に抑うつの認知・行動の特徴を見ていきましょう。
まずは認知の特徴についてです。
抑うつ状態における認知の特徴には、3つの否定的な認知の特徴というのがあります。その3つとは自分、周囲、将来でして、これらの考えが現実よりも否定的(悲観的)になっていることを言います。
ではここからもう少しこの3つを掘り下げてみましょう。

  1. 自分のことをマイナスに考えすぎる:「自分はダメな人間だ」「自分の力ではどうすることもできない」など、自分の能力を過度に悲観的に考え、自分を責める。いわゆる自己批判ですな。
  2. 周囲(他者・世界)のことをマイナスに考えすぎる:「周りの人が私を嫌っている」「誰にもわかってもらえない」「世間では、一度失敗したら二度とチャンスは与えられないものだ」など、周囲の評価を過度に悲観的に考える。
  3. 将来(今後)のことをマイナスに考えすぎる:「どうせだめに決まっている」「今の状況はこのまま変わりようがない」「このつらい気持ちは一生続くだろう」「これから良いことは起こらない」 など、将来について悲観的に考える。

また帰属スタイルの誤り(帰属バイアス(帰属エラー))にも注意する必要があります。
帰属スタイルとは、出来事の原因に対する意味づけのことをいいまして、抑うつ状態では、物事がうまくいかない場合にそれが自分のせいであると、現実よりも過度に考える傾向があります(内的帰属)。逆に物事がうまくいった場合には、自分の力によるのではなく他人の力や偶然によるととらえる傾向があります(外的帰属)。
このような傾向は、自責感(過剰に自分を責める)や自己効力感の低下(自分にはできない)、絶望感(状況は変わらない、変えることはできない)につながるんだとか。つまり帰属スタイルは以前に紹介した統制の所在と一緒ってことですな。

続いて行動の特徴を見てみましょう。
抑うつ状態の人には以下のような行動がよく見られるそうです。

  1. 活動量が減り孤立・孤独化する:活動量が減り、結果、楽しみ、達成感が得られにくくなる。他者との接触の機会も減り、周囲から助言や助けを受ける機会も減る。つまりポジティブな出来事が減ってきて、孤立していくってことですね。
  2. ぐずぐず主義:問題解決につながる活動を先延ばしにし、やらなくてはいけないことがたまってしまうこと。問題解決につながらない他のことにふけり、時にはかえって自分の状況を悪くすることもある(飲酒、ギャンブル、インターネットなど)。
  3. 助けを求められない:周囲に相談ができず一人で抱え込む。その結果、ますます問題が大きくなってしまう。まさにトカゲが大きくなる感じ援助希求能力は大事ですからね。



抑うつ・うつ病・大うつ病のアプローチ

抑うつの症状改善のための対策としては以下が有効との事。

  • 心理教育:心理教育を行うことは、利用者が自分自身の状況を理解し、解決への見通しを持つうえでの大切な一歩となるとのこと。
  • 行動療法的な認知行動療法認知療法的な認知行動療法(認知的技法)よりも行動療法的な認知行動療法(行動的技法)の方が理解しやすく、早期から効果があがりやすく、利用者の状態に応じて課題設定がしやすい。そのため、治療の初期は行動療法的な認知行動療法から始めることが多い。利用者の抑うつが少し改善したり、治療に馴染んでやや複雑な課題にも取り組める状態になったら、認知療法的な認知行動療法を取り組むと良い。そのため、重症例ではどちらかというと行動療法的な認知行動療法を中心にし、軽症例ではどちらかというと認知療法的な認知行動療法の方が適応することが多い。イメージとしては以下な感じ。


因みにコーピングレパートリーの記事にも書いた通り、こういった技法(テクニック)は即効性があるもの、基盤になるじわじわ効果のあるものがあるので、認知行動療法も上記を基に大まかに使い分けるのがおすすめ。更に余談ですが、知的障がいを持つ方への認知行動療法も上記に書かれた方法で使い分けると良さそうと研究で出ていたりします



個人的考察

以上「抑うつ・うつ病・大うつ病の基礎理解とアプローチ」でした。
次回は「不安・不安症・不安障害の基礎理解とアプローチ」について見ていきます。



参考文献