健康診断の問診票の中で、

  • 家族の中で2型糖尿病の人はいますか…?

みたいな質問を見たことがありませんか…?
様々な健康リスクと遺伝の影響は少なからずあるものの、わざわざ2型糖尿病をピックアップし、質問してくるなんてどんなに関係が深いんだろうと疑問に思った方もいることでしょう。てか私がそうでした(笑)
ということで今回は、遺伝的要因(遺伝要因)が2型糖尿病リスクにどれぐらい影響を与えるのか調べた研究を見てみましょう。



2型糖尿病における遺伝の影響について双子で調べてみた…!

1999年のオーデンセ大学病院の研究によると、2型糖尿病における遺伝の影響について双子で調べてみたそうです。
この研究は、デンマークの双生児登録データセットを使用したもので、参加者は606人の双子となっております。まずこの中から双子の片方又は両方が2型糖尿病の方をピックアップしていったそうな。すると62組の双子が該当していたらしい。
次にこの62組の双子のデータから遺伝の影響をチェックしてみたそうです。その結果、

  • 一卵性双生児が0.50、二卵性双生児が0.37と、それほど差はなかった
  • 耐糖能異常を含めると、一卵性双生児が0.63、二卵性双生児が0.43と有意に異なっていた

とのこと。
そしてこれらの結果から、

  • 2型糖尿病それ自体の遺伝率は26%
  • 耐糖能異常の遺伝率は61%

と推定できたらしい。
更に耐糖能異常の発症に関連しているインスリン抵抗性、インスリン分泌、BMI、ウエスト・ヒップ比の遺伝率は以下な感じだったとのこと。

  • インスリン抵抗性の遺伝率:26%
  • インスリン分泌の遺伝率:50%
  • BMIの遺伝率:80%
  • ウエスト・ヒップ比の遺伝率:6%

2型糖尿病や2型糖尿病予備軍、それに関連する健康リスクの遺伝率は割と高そうな感じですね~。



2型糖尿病の遺伝的要因における両親からの影響について調べてみた…!

2000年のマサチューセッツ総合病院の研究によると、2型糖尿病の遺伝的要因における両親からの影響について調べてみたそうです。
この研究は、フラミンガム子孫研究(Framingham Offspring Study)っていうデータセットを使ったというもの。親の2型糖尿病は40年間にわたって2年ごとに追跡調査したものとし、子どもの耐糖能は20年間にわたって4年ごとに追跡調査したものとしたんだとか。
早速結果を見てみると、

  • 2,527人の子どもが1,303の核家族から生まれ、77.6%の家族は2人以上の兄弟姉妹がおり、親の2型糖尿病有病率は24.6%だった
  • 子どもの平均年齢は54歳(範囲26~82歳)で、女性の割合が53%、2型糖尿病率が8.6%、耐糖能異常率が11.4%、親に2型糖尿病がなかった割合が76.3%、母親が2型糖尿病だった割合が10.5%、父親が2型糖尿病だった割合が11.5%、両親が2型糖尿病だった割合が1.7%だった
  • 母親と父親の2型糖尿病発症リスクは、子どもの2型糖尿病発症リスクと同等だった
  • 但し、母親が2型糖尿病の子どもは父親が2型糖尿病の子どもと比較して、耐糖能異常の可能性がわずかに高かった(OR1.6)
  • 母親の2型糖尿病発症時の年齢が50歳未満であった子どもは、2型糖尿病と耐糖能異常の両方のリスクが顕著に高かった

とのこと。
つまり、母親と父親の片方又は両方が2型糖尿病だと子どもの2型糖尿病リスクは上がるみたいですね。また、母親が若くして2型糖尿病を発症している場合、その子どもの2型糖尿病と耐糖能異常(2型糖尿病予備軍)リスクも大幅に上がると…。



個人的考察

以上の結果をまとめてみると、

  • 2型糖尿病における遺伝的要因はかなり大きい…!
  • 2型糖尿病の遺伝率は20~80%と推定される…!

って感じ。
双子研究・親子研究のどちらを見ても2型糖尿病の遺伝の影響はすごいですね…。こりゃ健康診断の問診票で聞く訳だわ…。
因みに上記で挙げた2000年のマサチューセッツ総合病院の研究でチラッと出てきていますが、どうやら2型糖尿病は母親の影響の方が受けやすそうな様子。この辺については2015年のルンド大学の研究2007年のチュニジア国立栄養研究所の研究でも見られておりまして、ざっくりご紹介すると、

  • 2型糖尿病の家族歴がある人は、ない人よりも発症リスクが高い…!
  • 母方に2型糖尿病の家族歴がある人は、父方に2型糖尿病の家族歴がある人よりも、2型糖尿病発症リスクが高い…!

って感じでした。
そのため、特に母親や母方の親戚に2型糖尿病の方がいる場合は要注意です。



参考文献