2021年に世界ADHD連盟が示したコンセンサスを見てみよう! その17「ADHD治療薬の副作用」
「2021年に世界ADHD連盟が示したコンセンサスを見てみよう!」シリーズの続きです。
カテゴリー⑫:ADHD治療薬の副作用
178. 2015年のメタ分析によると、刺激性薬剤は総睡眠時間を中程度減少させ、入眠を遅らせ、睡眠効率(実際に寝ている時間の割合)を軽度から中程度低下させていた。また2017年のメタ分析によると、メチルフェニデートを服薬している子どもと青年は、腹痛を訴える可能性が50%高く、食欲減少、体重減少を経験する可能性も3倍以上高かった。更に2020年のネットワークメタ分析とRCT・観察研究のメタ分析のアンブレラレビューでは、精神障害のある小児・青年を対象に80種類の向精神薬の有害事象をチェックした。結果、食欲不振(アトモキセチン、デキストロアンフェタミン、リスデキサンフェタミン、メチルフェニデート、モダフィニル)、不眠症(デキストロアンフェタミン、リスデキサンフェタミン、メチルフェニデート、モダフィニル)、体重減少(アトモキセチン、メチルフェニデート、モダフィニル)、腹痛(メチルフェニデート、グアンファシン)、有害事象による中止(リスデキサンフェタミン、グアンファシン)、高血圧(アトモキセチン、リスデキサンフェタミン)、鎮静(クロニジン、グアンファシン)、QT延長(グアンファシン)が有意に悪化していた。
179. 2013年の成人3,300人以上を対象にしたメタ分析によると、アトモキセチンはプラセボよりも有害事象による治療の中止率が約40%高かった。また2017年のメタ分析によると、メチルフェニデートはアトモキセチンよりも不眠症が2倍以上高かった。一方で吐き気や嘔吐は約半分、眠気は6分の1程少なかった。更に2019年のメタ分析によると、メチルフェニデートはプラセボよりも有害事象が55%高かったが生命を脅かすものではなかった。有害事象としては食欲不振が5倍、不眠症が4倍以上高かった。
180. 2008年の研究によると、刺激性薬剤を服薬している子どもは、身長の伸びが1~2年で平均2cm程遅かった。但し時間の経過とともに軽減し、治療を中止すると元に戻ることも少なくなかった。また刺激性薬剤の治療についてADHDの小児32,999人と対照群11,515人を比較してみた。すると、4年間にわたって身長の伸びが予想よりも継続的に低下していた。一方で2018年のドイツの研究では、メチルフェニデートで治療されなかった男の子3,806人と治療を受けた男の子118人を比較してみた。結果、メチルフェニデートは関係なかった。
181. 2014年のデンマークの研究では、70万人以上を対象に10年程追跡調査を行ってみた。結果、ADHD患者8,300人を対象とした調査で、刺激性薬剤の使用者は非使用者に比べて心血管イベント(主に高血圧)の発生率が2倍以上高かった。
182. 2018年の43,000人以上の子どもを対象にしたメタ分析によると、メチルフェニデートとアトモキセチンの心臓に関する有害事象は見られず、775人の成人を対象にしたメタ分析でもメチルフェニデートとプラセボの心臓に関する有害事象は見られなかった。
183. 2019年の全年齢層を対象にしたメタ分析によると、メチルフェニデートは全死亡リスク、心臓発作リスク・脳卒中リスクと関連がなかった。
184. 2018年の研究によると、妊婦によるメチルフェニデート(アンフェタミンではない)の使用は、先天性心疾患リスクの上昇と関連があり、乳児1,000人あたり12.9~16.5人まで増加するようだった。また2020年の女性300万人を対象にしたメタ分析でもメチルフェニデートで先天性心疾患リスクが上昇していた。
185. 2018年のメタ分析ではアトモキセチンの安全性をチェックしてみた。結果イライラの増加と関係がなかった。また2017年の研究や2014年の研究によると、青少年における治療の中止率の増加は見られなかった。一方で2013年の成人3,300人以上を対象にしたメタ分析によると、治療の中止率が40%増加していた。そのためアトモキセチンは成人のADHD治療においてメリットとデメリットのバランスが悪いと結論付けた。
186. 2017年の研究では、メチルフェニデートを服用している25,000人以上の患者を対象に調査してみた。その結果、メチルフェニデートの治療開始前の90日間において、ADHD患者の自殺未遂リスクが治療後と比べて6倍以上高かった。また治療継続後はADHD患者の自殺未遂リスクは上昇しなくなった。
187. 2016年の研究では、ADHD患者がメチルフェニデートを服薬していた期間としていなかった期間を比べてみた。結果、精神病のリスクに差は見られなかった。
188. 2019年の青少年・若年成人23,000人以上を対象にしたスウェーデンの研究によると、メチルフェニデートと精神病に関連性は見当たらなかった。また、メチルフェニデートの開始から1年後、精神病歴のある患者では治療開始直前と比較して精神病イベントの発生率が36%低下し、精神病歴のない患者では18%低下していた。
最後にまとめてご紹介します。
