パワーポーズの効果は本当なのか?
以前に、自信があるフリをすると良いよ…!って話を書きました。
自信がなくてもあえて自信があるような恰好をしていれば、いつかそれは本当になるし、相手も本当だと信じる…!というものですね。このような格好のことをパワーポーズと言いまして、ハーバードビジネススクールのエイミー・カディ博士が、TEDトークでプレゼンしたのはあまりにも有名です。
しかし、以前にチラッと書きましたが、その後、この説に異議を唱える研究結果が出たんで、さー大変。
TEDトークの基になったパワーポーズの研究
まずは、復習から。
パワーポーズが有名になったTEDトークは以下となっております。
う~ん…。何度見ても、感動できるプレゼンですねー。
では、上記プレゼンの基となった研究を早速見ていきましょうか…。
ハーバードビジネススクールのエイミー・カディ博士やカリフォルニア大学バークレー校のダナ・カーニー博士などの2010年の研究によると、自信のある人が自然に取るポーズ(パワーポーズ)を真似れば実際に自信がわいてくるのではないか…?というのを確かめたそうです。つまり、心と体はつながっているんで、片方(体)を変えれば、自然と自信(心)も変わってくるのではないかってことですね。
実験に参加したのは42名で、色々なポーズを数分間、とってもらったそうです。
具体的に自信がありそうなポーズとしては、
- 頭の後ろで腕を組みつつ、テーブルに足を乗っけて座る…!
- 教壇に立っている先生みたいな感じで、両手をテーブルに付きつつやや前のめりになる…!
- 腰に両手をあて、胸を張る…!
を取ってもらったそうな。
逆に、自信がなさそうなポーズとしては、
- 両腕のクロスして反対側の二の腕を触る
- 背中を丸めて小さくなって座る
みたいな感じ。
その後、テストステロンやコルチゾールなどの量を測定して、ギャンブルゲームを行ってもらったとのこと。その際の様子や行動から自信があるかどうかを調べたそうです。
結果、自信がありそうなポーズをしていた参加者は、
- コルチゾールが25%もダウン…!
- テストステロンが20%もアップ…!
していたそうです。また、自信がなさそうなポーズ(背中を丸めて腕組みするみたいな感じ)だと、コルチゾールの量はアップしていたそうです。
このことから、パワーポーズをとれば、ストレスに強くなってリスクを恐れず行動できるようになる、つまり、自信がアップするって結論に至ったそうです。
特別な道具もなく、その場ですぐにできる方法なんで、大変良い方法のように感じますよね。
追試で再現できんかった…!
2015年のチューリッヒ大学の研究では上記パワーポーズの実験の追試を行っております。参加者は男女200名で実験方法は上記と同じ。つまり、参加者の人数を約5倍にしてパワーポーズの効果を再現できるか確かめたってことですね。早速結果をみてみると、
- テストステロンはアップしなかった…。
- リスクを恐れず行動できるようにならなかった…。
って感じだったらしい…。
つまり、パワーポーズの効果を追試で再現できんかった…!ってことですね。
但し、望みはあって、パワーポーズをとった人は一時的に気分が改善した人が多かったらしいんですよ。つまり、パワーポーズは少しの間の主観的な気分改善効果だけある…!ってことですね。
う~ん…。期待していたほど、大きな効果はなさそうですね~。
ちょっと待った~!と追試に対して反論が出る…!
…っと、ここでちょっと待った~!と追試に対して反論が出てきます。
異議を唱えたのは、カディ博士やカーニー博士など。同じ年である2015年の研究としてすぐさま発表したんですよね。
これによると、過去の33件のデータを掘り出してきて、効果が何度も出たことを改めて強調。更に追試の方法が悪かったんじゃないか…?ってことをおっしゃっております。
しかし、この異議には苦しい部分が多くて、例えば、
- 過去の33件のデータの効果が超小さい。つまり、パワーポーズの効果はあっても実践で使えるかはかなりあやしい
って感じなんですよね。
正直、パワーポーズの効果があっても実際に役に立つレベルでなければ意味はないんじゃ…と言っても良いですよね…。
更に気になるのは、追試で悪かったという方法の部分。なんでも、事前にパワーポーズの効果を参加者に伝えたのが悪かったって話なんですよー。更にパワーポーズをとる時間も長すぎるってことなんです…。
でも、これって矛盾してますよね。だって、パワーポーズの効果を知ってしまったら効果がなくなる…!ってことになりますもん…。
自信がある人が無意識でとるポーズで自信がアップするのに、自信がない人に理由も言わずただポーズをとってもらい、本人は分からないけど教えた人だけが(超少しだけ)自信がアップしているのを実感するってことですよね。また、本人はなんでこんなポーズをとるのか理由もなしに納得できるのか、この後の行動から、自信アップの為のポーズか…!って想像もできてしまいそうですよね。
異議としては苦しいな~。
こんなん言われると、追試でもみられた主観的な気分改善効果も、そういう効果がある…!って事前に説明を受けてプラセボ効果が発動しただけなんじゃ…って思ってしまいますよね。
共著者、パワーポーズの研究をやめる…。
エイミー・カディ博士と一緒にパワーポーズの研究をしていたカリフォルニア大学バークレー校のダナ・カーニー博士は2016年にパワーポーズの研究をやめたことを発表しました。理由としては、
- 統計処理でPハッキングなどがあったから
ということ。
Pハッキングとは統計的に有意になるようデータをいじってしまう行為のことを言います。つまり、自分有利な結果が出やすくなってしまうんですよね。
2010年の研究では、
- 参加者にどれだけパワーポーズの効果を実感したか聞くとき、色々な方法で質問し、その中で最も効果が大きそうな質問を採用した
- パワーポーズの効果を確かめる際、参加者の人数を調整して統計的に有意になるよう細工した=Pハッキング
などがあったそうな。
そのため、カーニー博士は、
- パワーポーズの効果をもう信じてはいない
- パワーポーズの効果があると考えてもいない
- パワーポーズの研究をもうしていない
- パワーポーズの研究を他人にもおすすめできない
- パワーポーズを自分の講義で教えてもいない
- パワーポーズについて今後、メディアで話すことはない
- そもそもパワーポーズについてもう5年前(2011~2012年)から話していない
- つまり、追試で異議を唱えられる前からパワーポーズの話はしていない
とのことでした。
共著者は、世間に真実を話して研究をやめ、話すこともやめていたってことですね…。う~ん…。悲しいな…。
以上から、パワーポーズの効果はほぼ間違いだったみたいなのが今の状況です。
個人的考察
パワーポーズで自信がアップ…!はほぼ間違いだったみたいということで残念でした。いや、ほんとに残念…。
しかし、勘違いしてほしくないのが、2015年の追試では、テストステロンの増加とリスクを取って行動しやすくなる…!が再現できなかっただけだということです。
どういうことかというと、
そのため、パワーポーズで自信アップを求めるのではなく、背筋を伸ばす効果を得る方向で考えていくとよろしいかと思います。