毎月恒例の月1社内研修が令和4年1月14日にありましたので、内容を備忘録としてブログに残しておきます。過去の社内研修内容を確認したい場合は下記からご覧ください。


の復習になります。
下記からは当時の社内研修の文章をそのまま使っている為、文章が言い切りの形となっております。ご了承ください。
では行きますね~。



1. 行動療法~新世代の認知行動療法へ

行動療法から新世代の認知行動療法をまずはざっくりみてみると、

  • 第一世代(行動療法):レスポンデント学習オペラント学習
  • 第二世代(認知行動療法):情動(急激で一時的な感情。例:怒り)や顕在的行動(目に見える行動のこと。例:ウロウロする)には行動療法を使い、認知の問題には認知療法を使う
  • 第三世代・新世代(認知行動療法):認知療法的な認知行動療法(認知の内容よりもプロセスに注目した)と行動療法的な認知行動療法(認知も行動とみなした)

というようになる。
認知行動療法に於いて、第一世代=古い、第三世代=新しいではなく、重なって広がっていくイメージとなる(下記画像参照)


それぞれのアルファベットの意味は下記となる。

  • MBSR:マインドフルネスストレス低減法
  • MCT:メタ認知療法
  • MBCT:マインドフルネス認知療法
  • DBT:弁証法的行動療法
  • BA:行動活性化療法
  • ACT:アクセプタンス&コミットメント・セラピー



2. 認知療法的な認知行動療法

認知療法的な認知行動療法では、認知の歪みの残存はうつ病再発の原因ではなく、認知的反応性が深く関わっていることが分かった認知的反応性とは、自動思考(悲観的な思考)から反芻思考(ネガティブループのこと。その気分や思考を何とかしようとして考え続けてしまうこと)が起きてしまう事である。
自動思考の影響を受けず、反芻思考に陥らないための代表的な方法がマインドフルネスであり、脱中心化≒メタ認知的気づき(客観視。巻き込まれない視点のこと)が重要となる。
マインドフルネスとは、今の瞬間の現実に常に気づきを向け、その現実をあるがままに知覚し、それに対する思考や感情には囚われないでいる心の持ち方、存在のありようのこと。マインドフルネスとリラクゼーションの違いは下記の画像のようになる。縦軸がマインドフルネス、横軸がリラクゼーションとなる。


認知療法的な認知行動療法の種類としては、マインドフルネスストレス低減法(MBSR)・マインドフルネス認知療法(MBCT)・メタ認知療法(MCT)がある。


(1) マインドフルネスストレス低減法(MBSR)

テーラワーダ仏教(原始仏教)とはブッダの教えを忠実に守ろうとした仏教であり、テーラワーダ仏教(原始仏教)に由来する瞑想法をジョン・カバットジン博士がプログラム化したものがマインドフルネスストレス低減法(MBSR)である。
ヨガと組み合わせて8週間のプログラムを行う。特に慢性疼痛の改善に使われた。


(2) マインドフルネス認知療法(MBCT)

マインドフルネスストレス低減法と認知療法が合わさったのがマインドフルネス認知療法(MBCT)である。マインドフルネス認知療法は再発性のうつ病(大うつ病)に効果がある(再発が減る)。一度うつ病の診断基準を満たすと、再発率が60%、2回うつ病になると再発率が70%、3回うつ病になると再発率が90%と言われている。そのため、再発を防げるかが治療の課題である。うつ病の半分以上は脳の病気であるため、薬物療法の効果が高い。
うつ病患者に認知療法を使用すると再発が非常に少なくなる。しかし、一人1回50分×15回しなければいけなく効率が悪い。そこで8週間のグループ療法としてマインドフルネス認知療法が役立つ。


(3) メタ認知療法(MCT)

メタ認知療法(MCT)は、エイドリアン・ウェルズが注意、自己注目(自分に注意が向き過ぎること)、メタ認知の認知心理学的研究に基づいて開発した認知療法的介入体系のことである。
メタ認知療法では自動思考を問題と捉えていない。認知療法は自動思考を問題としモニタリング、変えていくことを目標にしていたが、知覚の一つであり内容を変えることはできないためである。そもそも変える必要もないとした。
自動思考はメタ認知的信念によってコントロールされている一部の為、大本であるメタ認知的信念、メタ認知的要因の方を変える必要があると考えたのがメタ認知療法の基本的な考え方である。メタ認知療法はメタ認知の内容を変える認知行動療法であり、特にネガティブなメタ認知的信念に直接介入するのはメタ認知療法だけとなっている。



3. 行動療法的な認知行動療法

行動療法的な認知行動療法では、第二世代の認知行動療法から行動療法の考え方に後退して、再度考え直し、言語行動に着目した。言語行動とは複数の刺激を関連づけ、その刺激の機能を変える行動=関係フレームづけと定義された。分かりやすい例は物に名前を付ける行動のこと。
言語行動のメリットは学習が早い事であり、デメリットは病的な物の学習も早い事である。そのため、体験の回避(嫌悪的状況や心理的事象を回避する事。回避するほど強くなる)がでてきてしまう。この体験の回避がトラウマ(PTSD)や精神病につながっていく。
関係フレームづけが広がっていくことによって、

  • ルール支配行動(自分で考えたこと(ルール)に支配されること)が強くなっていく
  • 反応強化子随伴性(結果が良ければ行動が増えること)が弱くなる
  • 認知的フュージョン(自分の考えと現実がごちゃごちゃになり、区別がつかなくなる現象。現実よりも自分の考えが極端になってしまう)が起こる

ことになる。
行動療法的な認知行動療法の種類としては、弁証法的行動療法(DBT)・行動活性化療法(BA)・アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)がある。また、代表的な技法として、アクセプタンス脱フュージョンなどがある。


(1) 弁証法的行動療法(DBT)

禅を始めたのはボーディダルマで、ボーディダルマはテーラワーダ仏教(原始仏教)の僧侶だったと言われている。この禅と行動療法が合わさったものが弁証法的行動療法(DBT)である。
弁証法的行動療法は、境界性パーソナリティ障害を持つ人に有効な治療法として、1987年のマーシャ・リネハンの研究にて発表されている。この方法で1年間しっかり治療を行うとかなり良くなるとの事。境界性パーソナリティ障害とは、周囲を振り回しやすく、非常に治療が難しい障がいとなる。境界性パーソナリティ障害に限らずパーソナリティ障害は治療が進まないことが多い(なかなか良くならない)。特に境界性パーソナリティ障害は何をしてもダメという考えもあるくらい大変と言われている。


(2) 行動活性化療法(BA)

行動活性化療法(BA)とは、活動スケジュール法+機能分析(ABCDE分析:確立操作(E=Establishing operation)→きっかけ・弁別刺激(Antecedent)→ターゲット行動(Behavior)→結果=短期的な結果(Consequence)・長期的な結果(D=Delayed outcome))の観点を大幅に加えて構成された治療法の事を言う。正の強化が随伴する行動を増やし、負の強化が随伴する回避行動を減らすように介入する(≒良い行動を増やし、悪い行動を減らす)


(3) アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)

アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)とは、思考や感情を抑制しようとする行動(体験の回避)や思考と現実や自己を混合する行動(認知的フュージョン)を減らし、向社会的行動の動機づけを高めて(価値の明確化)、実際にそれを生起させていく(コミットメント)臨床行動分析に基づく介入法のことを言う。つまり、頭でっかちな自分は置いておいて、目の前の現実に注意を向けよう、そして、やりたいこと、やるべきことを今から始めようという治療法のこと。


(4) アクセプタンス

アクセプタンスとは、思考の傍観の事を言う。不快な私的出来事(思考・感情・身体感覚・記憶など)に気づき、そのままにしておく事を言う。
うつ病の人に多い、不安で何も行動ができないパターンはアクセプタンスが有効となる。うつ病の人は、もっと良くなったら行動できるというがそれはいつになってもこないため、行動ができない。そのため、アクセプタンスにより不安でもそれはそれとして行動するのが大事となる。


(5) 脱フュージョン

認知的フュージョンの逆の意味が、脱フュージョンである。

  • 認知的フュージョン:思考と現実や自己を混合する行動のこと。つまり、自分の考えと現実がごちゃごちゃになり、区別がつかなくなることをいう。現実よりも自分の考えが極端になってしまうこともある。
  • 脱フュージョン:思考と現実や自己は別の出来事であると観察できること。つまり、自分の考え、現実、自分自身は別であると区別がついていることをいう。



個人的考察

以上、「新世代の認知行動療法」でした…!
是非、自分や支援で実践し、結果を実践報告書にまとめてみてください。



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参考文献