【加筆内容】キタバ族とアチェ族にニキビの人は事実上存在しない!狩猟採集民にとって皮膚トラブルはかなり稀!
この間の記事で、微生物との多様性がある人は皮膚トラブルが少ない…!免疫機能障害であるアトピーも少ない…!って話を書きました。
では、微生物との多様性が今でも多い人、つまり今でも残っている狩猟採集民のお肌はどうなのか…?
キタバ族とアチェ族にニキビの人は事実上存在しない…!狩猟採集民にとって皮膚トラブルはかなり稀…!
2002年のコロラド州立大学の研究によると、ニキビは西洋化が原因なのかを調べてみたそうです。そもそも先行研究によると、西洋化が進んだところに住んでいる人たちとニキビの関係は、
- 25歳以上の男性40%、女性54%は顔にある程度のニキビがある…!そのうちの男性3%、女性12%は中年期になっても顔のニキビが出来ていた…!
- 10~12歳の子どものうち28~61%の人はニキビがあると診断されていた…!
- 16~18歳の青年のうち79~95%の人はニキビがあると診断されていた…!
- 4~7歳の子どもでさえ、にきびと診断されている人がいた…!
って感じで、青年を筆頭にほぼ皆が悩む皮膚トラブルなんですよね。
一方で、
- ブラジルの農村地域に住む6~16歳の子ども9,955人を対象に行った研究では、ニキビの人は2.7%しかいなかった…!
- 南アフリカのプレトリアに住む15~19歳のバントゥー族の青年510人を対象に行った研究では、ニキビの人は16%だった。それに対して同じプレトリアに住む15~19歳の白人の青年1,822人の中でニキビの人は45%だった…!
- 全年齢のバントゥー族3,905人を調べるとニキビの人は2%だった。それに対して全年齢の白人16,676人を調べるとニキビの人は10%だった…!
って感じで、西洋化が進んでいない地域の人たちのニキビ率はかなり低かったみたいなんですよ。
これらを踏まえて今回研究者たちは、パプアニューギニア近くのトロブリアンド諸島に住むキタバ族と、パラグアイのアチェ族という2つの狩猟採集民を調べてみたそうです。
ではそれぞれの狩猟採集民の概要とニキビの人がどれぐらいいたのか見ていきましょう…!
キタバ族
キタバ族が住んでいるのは、パプアニューギニアのミルン湾州にあるトロブリアンド諸島の一つキタバ島というサンゴ礁の島です。キタバ島の面積は25kmで、畑での自給自足や漁師を行っており2,250人ほどのキタバ族が住んでいるとのこと。因みに電機や電話、自動車といったものは1990年にはまだなかったそうです。
キタバ族は20~400人の村に住んでいるそうで、パプアニューギニアの本土からの商品はほとんどなく、西洋化が最小限にとどまっている場所となります。
キタバ族は心疾患や脳卒中といった病気がほぼなく、また、肥満や高血圧、栄養失調とも無縁な暮らしをしているとのこと。更にインスリンやレプチンも非常に理想な状態とのことで、一生インスリン感受性が高いらしい。それと男性は基礎代謝の約1.7倍も運動レベルが高いらしく、にもかかわらず、男女4人中3人が毎日タバコを吸っているそうです。
一般的な死因は感染症、事故、妊娠時の合併症、老化で、平均余命は新生児で45歳、50歳で75歳以上とのこと。この辺は狩猟採集民によくある感染症への対策(抗生物質)のなさといった現代医療がないデメリットが大きく出ていそうですね。特に乳幼児の死亡率が高くなっちゃいますから…。
キタバ族の食事は主に根菜類、果物、魚、ココナッツです。そしてほぼ西洋スタイルの食事の影響はないとのこと。例えば、乳製品やアルコール、コーヒー、紅茶の摂取量はほぼゼロで、植物油やマーガリン、シリアル、砂糖や塩の摂取量はごくわずかみたい。
キタバ族の特徴は炭水化物摂取量の多さで1日の摂取カロリーの約70%が糖質(ほぼいも類)なんですよね。代わりに脂肪の摂取量が20%ぐらいと少なかったり致します。
キタバ族の概要はこんな感じでして、続きましてニキビの調査の概要と結果です。
キタバ族とニキビの調査は1990年に7週間行ったそうです。494世帯のキタバ族を訪ねて10歳以上のキタバ族1,200人(うち15~25歳までのキタバ族は300人)を対象に一般的な健康診断を行い、合わせてニキビを含む皮膚トラブルについて検査してみたらしい。因みに男性は顔、胸、背中のニキビをチェック、女性は顔、首のニキビをチェックしたそうな。
結果は、
とのこと。
- 1,200人中、ニキビの人は0人だった…!
- 最もニキビになりやすい15~25歳の300人にもニキビの人はいなかった…!
皮膚トラブルってなに…?みたいなレベルですね。羨ましい…。
アチェ族
続いてアチェ族をご紹介していきます。アチェ族が住んでいるのはパラグアイの東部でして、1970年代半ばに西洋文明と接触するまでは、パラグアイ川とパラナ川の間の20,000kmで暮らしていた狩猟採集民です。
西洋文明と接触後は伝統的な狩場の近くに小さな村を作って定住し、現代は狩猟採集と農業経済というハイブリッドな生活を送っておられます(余談ですが近年ではますます近代化・西洋化が進んでいる)
1970年代後半以降は西洋文明との接触による近代化・西洋化によって全体的な健康面は変わりつつありますが、感染症による死亡率はやはり高く、しかし一方で慢性疾患(糖尿病や喘息、高血圧、その他の心血管疾患など)は稀とのこと。
アチェ族の食事は狩猟採集と西洋スタイルのハイブリッド型で、地元で栽培されたものや西洋スタイルのものも食べられていたりします。食べ物の内訳は、野生植物が最も多い69%、次いでジビエ肉17%、その他として西洋スタイルの食事が8%、国産肉が3%、密林産の物が3%といった感じらしい。
主食は甘いキャッサバ(タピオカの原料、いも)で、他にピーナッツやトウモロコシ、米といった感じ。西洋スタイルの食事はパスタや小麦粉、砂糖、パンなど。
アチェ族の概要はこんな感じでして、続きましてニキビの調査の概要と結果です。
アチェ族とニキビの調査は1997年9月~2001年6月までの843日間にわたって繰り返し行ったとのことで、ニキビや皮膚トラブルについて調べたらしい。
実験に参加したアチェ族の方は16歳以上の男女59人と16歳未満の少年少女58人の平均115人だったそうで、そのうち15~25歳のアチェ族の人は15人だったとのこと。この参加者全員を6ヶ月おきに皮膚チェックしたそうな。因みに調べた箇所は顔、胸、首、背中だったらしい。
結果は、
- 115人中、ニキビの人は0人だった…!
- 但し、18歳の男性の1人のみ、過去にニキビがあった跡があった…!
とのこと。
やはりニキビってなにそれ…?レベルですね。羨ましい…。
以上の結果から研究者曰く、
- キタバ族とアチェ族に、ニキビの人は事実上存在しない…!
としています。
また、これらの結果は遺伝的な違いのみが原因ではなく、環境要因の可能性も高いとのこと。やっぱ西洋スタイルの食事はニキビを筆頭に皮膚トラブルを呼ぶみたいですね。