狩猟採集民は古代の生活を今も続けている人たちのこと。
世界には未だにわずかですが狩猟採集民は残っております。ですが、年々近代化が進んでおりまして減少傾向にあったりします。そのため狩猟採集民のデータは非常に貴重なんですよね(現地に行かないといけないし)。
更にその狩猟採集民の中でも特に重要なのがタンザニアに住むハッザ族(Hadza・ハヅァ族)という部族です。
ハッザ族は今でも古代の生活をほぼそのまま維持している超珍しい部族で、当時の暮らしや健康状態、腸内環境などを知るうえで非常に貴重なデータがとれるんですよね(これ以外は糞石サンプルなどから予想するしかない)
ということで今回はハッザ族の腸内細菌を調べた研究をご紹介します。



狩猟採集民であるタンザニアのハッザ族(Hadza・ハヅァ族)の腸内細菌はどうなのか…?

2014年のマックス・プランク進化人類学研究所などの研究によると、狩猟採集民であるタンザニアのハッザ族(Hadza・ハヅァ族)の腸内細菌は、先進国の人とどう違うのかについて調べてみたそうです。
まずハッザ族の概要はこんな感じとなっております。

  • 今回実験に参加したハッザ族は2つのキャンプから集められた27人で、年齢は8〜70歳で平均年齢は32歳だった。
  • 2つのキャンプは、タンザニアの北西部にあるエヤシ湖近くのデダウコキャンプとセンゲレキャンプ。
  • 27人は200~300人いるハッザ族の一部だそう。
  • ハッザ族は小さな移動キャンプに住んでいて、通常30人程のグループとなっている。
  • 暮らしはほぼ狩猟と採集の両方で、在来の野生生物・食物を対象としている。
  • ハッザ族は現在もいる部族だが、人類の進化の研究にとって重要な地理的場所に住んでおり(初期のヒト族が住んでいた場所と同じ東アフリカ地域に住んでいる)、人類の祖先が利用したものと同じ資源を使っている。
  • つまり、ハッザ族の暮らしは旧石器時代の暮らしに最も近い
  • ハッザ族の食事は、肉、蜂蜜、バオバブ、ベリー類、根菜類の5つのカテゴリーに分けることができた。
  • ハッザ族は農耕・畜産を一切せず、外部からは最小限の量の農産物(カロリーの5%未満)しか受け取っていなかった。
  • デダウコキャンプとセンゲレキャンプの違いと性別の違いについて調べたが有意差はなかった。
  • ハッザ族の女性は根菜類や野菜・フルーツを主に採取しつつ、キャンプで子どもや家族、親しい友人と多くの時間を過ごしていた。
  • ハッザ族の男性はたくさん移動をして中央のキャンプ場から遠く離れた場所に行き、動物の狩猟と蜂蜜を手に入れていた。
  • 食べ物は全てキャンプに持ち帰って共有していた。

因みにタンザニアのハッザ族がすんでいるところのイメージは下記画像みたいな感じです。


ということで27人のハッザ族に協力をお願いし、2013年1月に2週間にわたって糞便を採取、分析して腸内細菌について調べてみたそうな。
また比較対象として、この研究では以下の3つを用意したそうです。

  1. イタリアのボローニャの都市部に住む16人の成人イタリア人(年齢は20〜40歳で平均年齢は32歳だった)で、糞便サンプルは2013年3~4月の間に収集した。
  2. アフリカのブルキナ・ファソの農村グループに関する以前に公開されたデータ(「新石器時代の子どもの食事は今に比べ食物繊維が約2倍!なのにカロリーは3分の2!腸内細菌がめっちゃ豊富!痩せ菌が多くデブ菌が少ない!」で紹介したデータ)。ブルポン村のモシ族の5〜6歳の子ども達11人と、イタリア人の3〜6歳の子ども達12人のデータを使用した。
  3. アフリカのマラウイの農村グループに関する以前に公開されたデータ(2012年のワシントン大学などの研究)。マラウイの4つの農村(チャンバ、マクワラ、マヤカ、ムビザ)に住む20〜44歳の若年成人22人のデータと、アメリカに住む24〜40歳の成人17人のデータを使用した。

さてと…。概要は以上です。
では気になる結果を見ていきましょうか。
まずはハッザ族とイタリアのボローニャの人を比べたものはこうなっておりました。

  • イタリアの食事は、ほぼ完全に市販の農産物をメインとし、地中海式ダイエットの食事に近い物だった。具体的には豊富な野菜、新鮮な果物、パスタやパン、オリーブオイル、低中程度の量の乳製品鶏肉赤身肉、更に炭水化物の大半(54%)は消化しやすいデンプンと砂糖(36%)だった…!
  • 様々な測定をしたがその全てで、イタリア人のサンプルよりもハッザ族のサンプルの方が、はるかに高い腸内フローラを持っていた…!
  • ハッザ族はバクテロイデスが多く、ファーミキューテスは少ないという特徴があった…!

これらをみるとハッザ族の食事スタイルは地中海式ダイエットを上回る可能性がありそうですね。すごい…!
続いてハッザ族と他のアフリカの農村グループの人を比べたものはこんな感じ。

  • ハッザ族の腸内細菌は他のアフリカの農村グループと似ている部分があった…!
  • またハッザ族には特有の他の特徴もあった…!
  • 但し今回1回だけの比較研究では、ハッザ族、ブルポン村のモシ族、マラウイ族の間で見られた違いははっきりそうだとは言えなかった…。

つまりはっきりとは言えない結果だったみたいですね。
更に研究者によると、

  • ハッザ族の腸内細菌はファーミキューテスやバクテロイデスの他にもたくさんの種類の腸内細菌が住んでおり、また分類されていない腸内細菌も豊富にいた…!
  • ハッザ族の年間の食事の大部分(カロリーの約70%)は野菜やフルーツ、根菜類だった…!
  • 残りの約30%の食事は鳥や小中大型のジビエ肉だった…!
  • ハッザ族の腸内には何故かビフィズス菌が存在していなかった(ビフィズス菌は一般的な成人には 1~10%いるが、全く存在しないのは他のどのグループでも報告されていないらしい)
  • この研究ではハッザ族の全腸内細菌のうちの33%以上が未知の物だった…!

ってことで、まだまだ謎な部分も多そうな感じです。



個人的考察

現代に生きる狩猟採集民であるハッザ族は、腸内フローラがかなり充実している様子ですし、未知の腸内細菌もかなりいるみたいです。それだけ腸内細菌の多様性があるってことですね。
最後にこれらを含むまとめ記事が下記になりますので良ければご覧ください。




参考文献