防衛的悲観主義と戦略的楽観主義の話、その1その2その3その4その5の続きです。
今回もアダム・グラント教授がLinked inで紹介していた研究を見ていきます。
んで前回は主に個人の仕事のパフォーマンスに焦点を当てて、防衛的悲観主義の人が良さそうだよ…!って話をご紹介したんですが、今度は、経営者だとどうなのか見て行こうかと…。
というのも経営者(社長とか企業家とかCEO)って、何かとポジティブな人が多いイメージじゃないですか。では果たして実際のところどうなんか見ていきます。



起業家がポジティブだと新規事業の利益は少ないし成長も遅い…!

2009年の研究によると、楽観主義と会社の業績の関係について調べてみたそうです。
この研究は、起業家がポジティブな場合における、新規事業のパフォーマンスについてチェックしたそうな。
結果、

  • 起業家が楽観主義であればあるほど、新規事業の業績(収益や雇用)は少なくなっていた…!

とのこと。
どうやら起業家が超ポジティブだと、新しい事業の利益は少ないし、成長が遅くなるみたいです。



CEOが楽観主義だとハイリスクをとりやすく借金しやすい…!

2013年のデューク大学の研究によると、CEOのポジティブさと経営の意思決定の関係について調べてみたそうです。
この研究は、1,000人以上のアメリカ企業のCEOやその他の国のCEO、CFO(最高財務責任者)を対象に行ったもので、経営方針やリスク回避、時間優先度、報酬なんかのアンケートに答えてもらったそうな。
まずCEOについて細かく見る前に、CEOとCFOを比較したところから見ていきましょう。どのような感じだったかと申しますと、

  • CEOは同年代の一般人よりも、はるかにリスク許容範囲(ハイリスクをとる可能性)が広かった…!
  • CEOは一般人よりも、はるかに楽観的であった…!また80%以上が「非常に楽観的」と答えていた…!
  • CEOはCFOよりはるかに楽観的であった…!
  • アメリカ企業のCEOやCFOはアメリカ以外の国のCEOやCFOよりも楽観的であった…!

って感じでCEOは楽観主義の方が多そうです。
また楽観主義のCFOは楽観主義のCEOよりも少ない傾向にあるみたい。この辺も面白い結果ですな。

続いてCEOについて見ていきます。
この研究ではCEOが最も影響力を持っている分野である、合併と買収(M&A)について主に聞いてみたみたいで、結果は、

  • CEOのリスク許容範囲が広ければ広い程、その企業はより多くの合併や買収をしていた…!
  • 楽観的なCEOは、それほど楽観的ではないCEOに比べ、多くの短期の借り入れをする傾向にあった…!
  • 男性は女性よりも自信過剰になる傾向があること示す先行研究が増えているが、男性CEOは女性CEOに比べ、負債比率、特に短期の負債比率が高い傾向にあった…!
  • 過去や将来の成長率が高い企業は、リスク許容範囲が広いCEOの可能性が高かった…!
  • 若いCEOほど自信を持っている可能性が高かった…!
  • リスクを回避するCEOは給与で報酬を受ける可能性が大幅に高かった…!
  • 時間優先度が高い(=せっかちな)CEOは、時間優先度に比例して、より多くの給与が支払われることが多かった…!

とのこと。
どうやらCEOが楽観主義であればあるほど、ハイリスクをとりやすく、また、高い借金を負いやすいみたい。それと、もしかしたら、楽観的なCFOがCEOよりも少ない理由はこの借金の部分が関係あるのかもしれませんね。
因みに注意点としては、因果関係は不明であることです。つまり、楽観主義の人はCEOになりやすいのか、それともCEOになると人は楽観主義になるのかが分からないということ。この辺は謎っぽいです。



個人的考察

これらを見ると、楽観主義の人だけで進んでいくのは危険な感じがしますな。やはり何事もバランスが大事で、楽観主義の人の相棒には悲観主義の人がいた方が良さそうですねー。
つまり、防衛的悲観主義と戦略的楽観主義、それぞれの性格にあった戦略を使っている者同士がタッグを組むと会社は上手くいきやすいのかもしれませんね。



参考文献