アンブレラレビューを見てみよう!」シリーズその75です。

って記事で、慢性閉塞性肺疾患(COPD)と喘息について触れているんですが、今回はこの2つの危険因子を調べつつ、違いと共通点をチェックしたというアンブレラレビューを見てみます。



慢性閉塞性肺疾患(COPD)と成人の喘息リスクにおける違いと共通点

2023年のユトレヒト大学の研究によると、慢性閉塞性肺疾患(COPD)と成人の喘息リスクについてアンブレラレビューを行ってみたそうです。
そもそも慢性閉塞性肺疾患(COPD)は最も一般的な慢性呼吸器疾患の1つでありまして2018年のイェール大学のナラティブレビュー2012年のRTI Health Solutionsのレビュー論文によると、その有病率は3.6~10.1%なんだとか。またWHO(最終更新日2024年11月6日)によれば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)は世界で4番目に多い死亡原因らしい。
一方で2004年のGlobal Initiative for Asthma(GINA)の研究によると、喘息は世界中で3億人の子供と大人が苦しんでいると推定されているそうな。また2013年のアムステルダム大学の研究を見てみると、成人の喘息リスクは小児喘息よりも研究がされていないが、発症率は過去20年間、増加傾向にあるみたい。

  • 喘息患者の中には、慢性閉塞性肺疾患を発症する人がいる
  • 慢性閉塞性肺疾患患者の中には、喘息のような症状がある人がいる

って感じで関係ありそうな様子なんですよね。
つまり2つは症状やリスク要因に共通点がありそうってことです。一方で違いはあるのか…って疑問もあったりします。そこで今回、初めてアンブレラレビューを用いて調べてみることにしたんだとか。
まず研究者たちは、2023年2月1日までに発表された該当研究を、PubMedで検索してみたそうな。また参考文献もチェックしたらしい。すると2,040件の研究が見つかったそうです。
次にこれらの研究を基準に従い精査していったそうな。
最終的に選ばれた研究は75件でして、これらのうち45件は慢性閉塞性肺疾患を、28件は喘息を、2件はその両方をチェックしていたとのこと。また、45件はメタ分析とナラティブレビューを含み、12件はメタ分析のみ、18件はナラティブレビューのみだったんだとか。
それでは結果をバーッと見てみましょう…!
まずは成人発症喘息における危険因子とその効果量についてです。

  • 室内でのホルムアルデヒドの曝露:OR1.81
  • 大気汚染(NO2、PM10、O3):OR1.03~1.22の範囲
  • 農薬の曝露:OR0.41~3.67の範囲
  • フタル酸エステルの曝露:OR1.55
  • 塗料の暴露:OR1.60
  • 低出生体重:OR1.25
  • 幼少期のビタミンD欠乏症:OR0.57
  • 高出生体重:OR1.26
  • 小児期の高体重:OR1.32
  • 早産:OR1.86~1.14の範囲
  • 過体重:OR1.38
  • 肥満:OR1.92、OR2.02
  • BMI:1kg/m2増えること事にRR1.05
  • ビタミンB12:RR0.99
  • 鉄:RR0.92
  • 葉酸:RR0.80
  • リノール酸:RR0.89
  • アルコール摂取:RR0.95
  • 血中亜鉛濃度:SMD-0.26
  • 血中セレン濃度:SMD-0.06
  • 清掃用品:RR1.67、OR1.50~3.00の範囲
  • 木材粉塵の曝露:RR1.53
  • 有機粉塵(木材、繊維など):紙・木材OR1.62、小麦粉・穀物OR1.48、繊維OR1.50
  • 初潮年齢が若い:OR1.37
  • 思春期年齢(早いと平均で比較):RR1.10
  • 思春期年齢(遅いvs平均で比較):RR0.93
  • 喫煙:56%、RR0.97、OR1.66
  • 受動喫煙:OR1.44
  • 住宅問題(カビなど):OR1.43~1.73の範囲
  • アセトアミノフェンの使用:OR1.63
  • 都市部に住む:OR1.89
  • 低所得層:OR1.38
  • 女性:58~75%
  • 男性:OR1.30
  • 屋内での菌の曝露:OR1.25
  • 気温が下がる:OR1.00
  • 室内で飼える毛皮のペット:OR1.58

ざっくり見ていくと、喫煙や高BMI、木材粉塵、ホルムアルデヒドや有機化合物への曝露、住宅内の化学物質への曝露が危険因子って感じですね。

お次は慢性閉塞性肺疾患における危険因子とその効果量についてです。

  • NO2の曝露:HR1.07、RR1.02
  • 大気中のPM2.5の曝露:HR1.18、OR1.73
  • 屋内のバイオマス燃焼:OR1.52~3.16の範囲、
  • 農薬の曝露:OR1.05~4.10の範囲
  • 汚染地域に住む:OR1.63
  • VGDF(バルサンみたいな害虫駆除用品)の曝露:OR1.43
  • 低出生体重:OR1.58
  • 小児喘鳴:RR5.31
  • 幼少期の呼吸器疾患:OR2.23~3.44の範囲
  • 小児喘息:OR3.00~7.87の範囲
  • 児童虐待:OR1.30
  • 小児期のタバコ煙の曝露:OR1.30、RR0.88
  • 母親の喫煙:OR1.42
  • 早産:OR1.17
  • 過体重:OR0.80~0.96の範囲
  • 肥満:OR0.86
  • 低BMI:OR3.83~1.96の範囲
  • 赤身肉の摂取:HR1.08
  • 西洋スタイルの食事・不健康な食事:OR2.12、OR1.22
  • ビタミンD欠乏症:OR1.77
  • 飲酒歴:OR0.82
  • 健康的な食事:OR0.88
  • 粉塵曝露(木材、鉱物):OR0.97~1.79の範囲
  • 農作業:OR1.77
  • 喫煙:OR2.89~5.50の範囲
  • 受動喫煙:RR/OR1.20~1.56の範囲
  • 噛みタバコ:OR12.90
  • 親の慢性閉塞性肺疾患:OR1.57、OR2.07
  • 再発性の呼吸器感染症:OR15.02
  • 関節リウマチ歴:OR1.99
  • 乾癬歴:OR1.45
  • 結核歴:OR2.80、OR5.98
  • 水タバコ:OR3.18
  • 住宅の換気が悪い:OR3.99
  • 低所得層:OR0.80~1.61の範囲
  • 年齢:OR1.50~4.70の範囲
  • 男性:OR1.47~2.10の範囲
  • 血中ホモシステイン:MD3.05
  • 血中の炎症マーカー:SMD0.87~2.34の範囲
  • 交通量:OR1.26、OR1.30
  • 高地での生活:OR1.18
  • 都市部に住む:OR1.20
  • 田舎に住む:OR1.40

こちらもざっくり見ていくと、喫煙や二酸化窒素を含む大気汚染、低BMI、屋内のバイオマス燃焼、小児喘息、職業による粉塵曝露、食事なんかが危険因子って感じですね。

では、違いと共通点とまとめてみますかー。
【違い】
  • BMI:高BMIは喘息の危険因子、低BMIは慢性閉塞性肺疾患の危険因子、高BMIは慢性閉塞性肺疾患の保護因子
  • 性別:男女は喘息の危険因子、男性は慢性閉塞性肺疾患の危険因子。但し、喫煙によって男女の慢性閉塞性肺疾患リスクはほぼ同じっぽい

【共通点】
  • 低出生体重は危険因子、早産も危険因子だが統計的な有意差なし
  • 職業上の粉塵曝露は危険因子
  • 喫煙と受動喫煙は超危険因子
  • 二酸化窒素(NO2)と粒子状物質(PM2.5やPM10など)による大気汚染は危険因子
  • 農薬の曝露と職場における塩化物などの刺激物への曝露

冒頭の記事の通り、やっぱタバコ、大気汚染が入ってきましたね。また、職業によってはリスクがあるものもあるみたい(まぁ、日本はきちっとしているんで海外よりリスクは大分低いと思いますが)。それとBMIを見ると極端に太っているor痩せているとどちらかのリスクが高まるみたいで適正体重がベストみたいですな。