「障がいとBDNFの関係について考える」の話の続きです
今回は発達障がいとの関係を見ていきます。



自閉スペクトラム症(ASD:自閉症スペクトラム障害)の場合は、子ども時代にBDNFレベルが高く、大人になると普通レベルになる…!

まず研究者たちは、2016年2月までに発表された自閉スペクトラム症とBDNFの研究をPubMedやEmbase、コクランライブラリーで検索してみたそうな。すると205件もの研究がヒットしたとのこと。続いてこの中から、重複している研究や質の低い研究を除外していったそうで、最終的には14件の研究が基準を満たしていたらしい。
この14件の研究の内訳ですが、

  • アメリカの研究3件
  • 中国の研究3件
  • 日本の研究3件
  • デンマークの研究1件
  • アイルランドの研究1件
  • サウジアラビアの研究1件
  • インドの研究1件
  • イタリアの研究1件

って感じで、割と様々な国や地域から選ばれておりました。日本も含まれているのが嬉しいですね。
また14件の研究の総サンプル数は2,707名でして、平均年齢の幅は0歳~22.2±2.2歳の範囲だったそうな。
では気になる結果をバーッと見ていきましょう。

  • 自閉スペクトラム症の方は健常者と比較して、BDNFレベルが高かった(標準化平均差(SMD)=0.63)…!
  • ただし、各研究によって、ばらつきが結構あった…!
  • サブグループの分析により、自閉スペクトラム症の方は健常者と比較して、血清BDNFレベル(SMD=0.58)、血漿BDNFレベル(SMD=1.27)ともに高かった…!

全体的にみると、ASDの方はBDNFレベルが高いみたいですね。
またこの研究では、子ども(小児期)の研究10件と大人(成人期)の研究4件を分けてメタ分析をしてくれておりまして、結果は、

  • ASDの子どもを対象とした研究では、健常者と比較して、依然とBDNFレベルが高かった(SMD=0.78)…!
  • しかし、ASDの大人を対象とした研究では、健常者と比較しても、BDNFレベルは変わらなかった(SMD=0.04)…!

とのこと。
どうやらASDの方は、子ども時代にBDNFレベルが高く、大人になると普通レベルになるみたいですね。



個人的考察

せっかくなんで、ここで使われている日本の研究3件も軽くご紹介しておきます。

  • 2006年の千葉大学の研究:自閉症の成人男性18人と同年齢の健常者成人男性18人のBDNFレベルを比べた。結果、自閉症の方の血清BDNFレベルは25.6±2.15ng/ml、健常者の方の血清BDNFレベルは61.6±10.9ng/mlと、自閉症の方の方が明らかに低かった。
  • 2007年の愛知県医療療育総合センター発達障害研究所の研究:自閉症の方と健常者の方の血清BDNFレベルが加齢によりどう変化するのか調べた。結果、概日変化(1日の中での変化)はあったが、季節的な変化はなかった。健常者の血清BDNFレベルは最初の数年間で増加、成人レベルに達するとわずかに減少した。0~9歳(小児)の時の自閉症の方の血清BDNFレベルは、10代や成人の自閉症の方や同年齢の健常者と比べて明らかに低かった。
  • 2004年の筑波大学の研究:自閉症の方18人と精神遅滞(知的障害)の方20人、健常者16人の血清BDNFレベルを比較したパイロット研究。結果、自閉症の方、精神遅滞(知的障害)の方は、健常者よりも血清BDNFレベルが高かった。

いずれも小規模研究ですが、これだけみても結果にばらつきがありますねー。



参考文献