【加筆内容】障がいとBDNFの関係について考える その14「自閉スペクトラム症編4」
今回は「障がいとBDNFの関係について考える」シリーズのラストとして、自閉スペクトラム症(ASD)の子どものBDNFレベルがそうでない方よりも高いのであれば、新生児の時点でBDNFレベルをチェックしてASDと診断できる、つまりバイオマーカーとしてBDNFが使えるのか調べた研究を見てみましょう。
新生児の時点でのBDNFレベルからASDかどうかを判断するのはちょっと難しそう…?
2021年の首都医科大学の研究によると、新生児のBDNFレベルと、自閉スペクトラム症の関係について調べてみたそうです。
まず研究者たちは、2020年9月16日までに発表されたBDNFレベルと自閉スペクトラム症の研究をMEDLINEとWeb of Scienceで検索したそうな。更にヒットした研究の参考文献もすべてチェックしていったとのこと。次にこの中から質の高い研究をピックアップしていったみたい。
最終的に基準を満たした研究は全部で5件だったそうで、これらを用いて系統的レビュー・メタ分析を行ったそうです。
結果、
- 後に自閉スペクトラム症と診断された新生児とそうでない新生児との間にBDNFレベルの違いはなかった(SMD=0.261)…!
- 但し、それぞれの研究の結果は、かなりバラバラだった…!
とのこと。
微妙な結果ですが、新生児の時点でのBDNFレベルからASDかどうかを判断するのはちょっと難しいっぽいですね。
個人的考察
自閉スペクトラム症(ASD)の遺伝的要素について、2015年のボストン小児病院とマサチューセッツ工科大学の研究なんかをみてみると、一卵性双生児のASDの一致率が二卵性双生児のASDの一致率よりも高いってことが実証されてまして、ゲノム解析でASDとの関係性がありそうな変異体も見つかっているみたいなんですよね。
ということはASDは遺伝の要素が高いってことになるんですが、一方で、2016年のカリフォルニア大学デービス校の研究によると、一卵性双生児と自閉症や関連疾患の一致率は100%未満らしく、これはASDが遺伝だけでなく、環境要因もあるんじゃないかともなっております。
こうなってくると、遺伝要因のASDと環境要因のASD、2つが合わさったASDという3つの可能性が出てくることになりますが、BDNFレベルの違いがこれら全てで出るのか、もしかしたら遺伝要因の場合のみ出るのかが気になりますね。ASDとBDNFレベルの先行研究結果がバラバラなのもここが原因だったりして…。
そうなると上記結果に書いた、それぞれの研究結果がバラバラってのも納得ですし、そうなると、今後の研究によっては覆ってくる分野なのかもしれませんな。
ということで「障がいとBDNFの関係について考える」シリーズは以上になります。全14回を振り返って思うのがやっぱBDNFは大事だよな~ってのと運動頑張ろう…ってことですかね。