【加筆内容】冠動脈疾患(CAD)の患者さんの心臓リハビリでHIITや普通の有酸素運動を行うメリット・デメリットをしっかり調べた!
当ブログではHIITという運動をおすすめしております。
HIITは特に心臓や血管にプラスの効果をもたらす有酸素運動で、短時間で終わるというメリットがあるんですよね。んがしかし、高強度(全力)で行うんで、健康な方はさておき、疾患のある方は負担が強すぎて反って良くないんじゃないか…?って話がございます。
冠動脈疾患(CAD)の患者さんの心臓リハビリでHIITや普通の有酸素運動を行うメリット・デメリットをしっかり調べた…!
2018年のボンド大学の研究によると、心不全と診断されていない冠動脈疾患(CAD)の患者さんを対象に、HIITと中強度の有酸素運動(普通の有酸素運動)が心肺機能の向上をもたらすのか…?デメリットはないのか…?をRCTの系統的レビュー・メタ分析で調べてみたそうです。
そもそも冠動脈疾患(CAD)の患者さんがHIITや普通の有酸素運動を行うとどうなるのかを調べた系統的レビューはいくつか存在しておりまして、例えば、
では、HIITや普通の有酸素運動のどちらでもメリットがあったと報告されております。そしてこれら全ての研究で、HIITの方が普通の有酸素運動よりも心肺機能がアップしたんだとか。
しかし、上記の系統的レビューには気になる点がいくつかあったそうで、例えば、それぞれの研究結果のバラバラさが激しかったり、統計方法があんま適していない方法がとられたりしていたらしい。また、実験期間ごとにどの程度のメリットが出るのかを調べたものもなく、ケガなどデメリットに焦点を当てた研究もなかったんだそうな。
そのため今回、RCTのメタ分析をしてみて、3種類の介入期間でHIITと普通の有酸素運動がどの程度効果があるのか、ケガなどのリスクはどの程度あるのかをチェックしたそうです。
まず研究者たちは、2017年7月までに発表された査読済みの該当RCTをデータベースで検索したそうな。因みにデータベースはEmbase、MEDLINE、CINAHL、SPORTDiscus、Web of Scienceを使ったとのこと。
また、冠動脈疾患(CAD)と診断された人は、
- 心筋梗塞(MI):血管が詰まっちゃって冠動脈の血流が止まり、心筋が壊死しちゃう病気
- 経皮的冠動脈形成術(PCI):脚や腕、手首などの血管にカテーテル(チューブ)を入れて、その先のバルーン(風船)を膨らませて、血管を中から広げる手術
- 冠動脈バイパス手術(CABG):詰まった冠動脈の先にバイパスを作る手術
の経験がある方だったとのことで、更にHIITはVO2maxの85%or90%以上、普通の有酸素運動はVO2maxの50~75%or50~80%ぐらいだったそうな。運動期間は少なくとも4週間以上だったそうで、これらに該当した研究が最初の検索で1,581件も見つかったらしい。
次に重複している研究や質の低い研究を除外、最終的に基準を満たす研究を17件に絞り込んだそうです。
この17件の内訳は、
- アメリカの研究2件
- ベルギーの研究1件
- ブラジルの研究4件
- カナダの研究3件
- ドイツの研究1件
- ノルウェーの研究4件
- 韓国の研究1件
- スペインの研究1件
って感じで、残念ながら日本は含まれておりませんでした。
総サンプル数は953人で、そのうちHIITのサンプルが465人、普通の有酸素運動のサンプルが488人だったそうです。男女については報告していない研究もあったそうですが、分かる範囲でまとめてみると、男性661人、女性119人って感じでその差5.5倍だったみたい。
また各診断のサンプル数は、
- 冠動脈疾患(CAD):123人
- 心筋梗塞(MI):633人
- 経皮的冠動脈形成術(PCI):477人
- 冠動脈バイパス手術(CABG):361人
だったそう。
更に参加者の年齢についてですが、範囲は52~76歳で、10件の研究で平均年齢が60歳未満、7件の研究で平均年齢が60歳以上だったらしい。
運動期間は4週間から12か月の範囲だったそうで内訳が、
- 0~6週間:4件
- 7~12週間:11件
- 12週間超え:5件
とのこと。
運動頻度については、16件の研究で書かれており、
- 週3日:9件
- 週2日:4件
- 週5日:2件
- 1日に4セッション:1件
って感じ。
運動方法は基本的に定番の物がチョイスされておりましてトレッドミルが9件、エアロバイクが4件でした。その他は階段ダッシュ&下り、トレッドミルやエアロバイクなんかの組み合わせ、ウォーキングやジョギングとサイクリングの組み合わせなどだったそうです。
ではVO2maxの結果から見ていきましょう…!
- 17件中16件でHIITは普通の有酸素運動よりも有意な結果が出ていた…!
- 残りの1件は普通の有酸素運動を指示していたがメタ分析では有意ではなかった。
- 全体的にみて、HIITは普通の有酸素運動よりも、VO2maxが有意に(SMD=0.34mL/kg/min)アップしていた…!
- 0~6週間の場合、HIITは普通の有酸素運動よりも、VO2maxがアップしていた(SMD=0.19mL/kg/min)。但し、有意ではなかった。
- 7~12週間の場合、HIITは普通の有酸素運動よりも、VO2maxが有意に(SMD=0.43mL/kg/min)アップしていた…!
- 12週間越えの場合、HIITは普通の有酸素運動よりも、VO2maxが有意に(SMD=0.32mL/kg/min)アップしていた…!
やっぱりHIITは普通の有酸素運動よりも心肺機能の向上に優れているみたいですねー。しかも冠動脈疾患(CAD)の患者さんでも効果が出るってのはすごいですな。但し、注意点もあって7週間以上続けないとはっきりとした効果は出ないみたい。
続いて、気になるデメリット(ケガのリスク)について見ていきます。
- どの研究でも、運動で死亡や入院を必要とする心臓病の報告はなかった…!
- 17件中13件の研究で運動介入によるデメリットが書いてあったが、どのようにデメリット情報を収集したのか、ルールの記載がなかった。
- 1件の研究で、普通の有酸素運動中に3件(運動の24時間後、運動後すぐ、運動中)の心臓のデメリットが発生していた。
- 1件の研究で、HIITも普通の有酸素運動も狭心症による脱落者がいたらしいが詳しくは不明だった。
- HIITのデメリットは3件の研究で見つかった。具体的には、足関節の骨折や脚や股関節の痛み、気管支炎、胃腸炎、膵炎、間歇性跛行(かんけつせいはこう:歩くと足に痛みやしびれを感じて歩けなくなる、しばらく休むと治まるが歩くとまたなる)
- 普通の有酸素運動のデメリットは5件の研究で見つかった。具体的には、膝関節の損傷、心嚢液貯留(しんのうえきちょりゅう:心臓と心膜の間に液体が溜まる)、消化管からの出血、気管支炎、膝関節の手術、腰痛・精神疾患、運動とは無関係の筋骨格系の損傷、下肢の痛み。
- 更に2件の研究で追加のデメリットが報告されていたがどっちの運動だったか不明。
- 全体的には、HIITが9件、普通の有酸素運動が14件、どっちか不明が5件デメリットが書かれていた。
まぁ、運動すれば当然ケガのリスクはありますからねー。これらの結果は仕方ないかと。ポイントは心臓に関する死亡と入院がないのと、HIITでも有酸素運動でもケガはあったということですかね。
最後に実験のドロップアウトの人数についてですが、そもそもグループごとに報告をしていたのが17件中6件のみで、HIITが39人、普通の有酸素運動が42人だったそうです。
以上の結果から研究者は、
- HIITは普通の有酸素運動と同じくらい安全な運動だよー
とおっしゃっておりました。
個人的考察
最後に研究者がまとめてくれていた冠動脈疾患(CAD)の患者さんリハビリ用運動ガイドラインを見ておきます。といっても内容は別に健康な方でも十分使える物なんで誰でも実践してみてよろしいかと。では下記に記しておきますねー。
- 運動期間:7~12週間は続ける
- 運動頻度:少なくとも週3日は実践すべし
- ポイント:正確な強度の維持がカギ…!
- HIITの場合の強度:VO2maxの85%以上
- 普通の有酸素運動の場合の強度:VO2maxの50~75%をキープ