知的障がいの方の老化スピード・認知症スピードの話の続きです。
日本国内台湾の研究を見てきましたが、今回はイギリスで行われた研究を見ていきます。



ダウン症のない知的障がいのある高齢者を対象に認知症の発症率を調べてみた…!

2013年のユニバーシティ・カレッジ・ロンドン前向きコホート研究によると、高齢知的障がい者の認知症発生率について調べてみたそうです。
そもそも以前から知的障がいのある高齢者は健常者に比べ、認知症になるのが早いのでは…?って話があったんですよね。また一方で、ダウン症の方のアルツハイマー病リスクが高いこと、ダウン症を持つ方の認知機能低下が多いことは先行研究で明らかになっておりました。

…っとここで一応ダウン症について復習しておきましょう。
ダウン症は、皆さんご存知ダウン博士が見つけた病気でして、通常、ヒトの染色体は2本で対になっており、1~23番までの合計46本となっております(余談ですが、23番目の染色体がXXだと女性、XYだと男性です)。しかし、ダウン症の方は21番目の染色体が2本ではなく、1本多い3本になっているんですよね。
んで、ダウン症の方は筋緊張低下(筋肉の緊張が低いこと)や発達の遅れ、精神発達の遅れといったことが見られます。また合併症も多く、知的障がいを持っている場合も非常に多かったりします

そのため、ダウン症を持つ知的障がいの方の認知症リスクについては研究が進んでいるんですが、ダウン症のない知的障がいの方の認知症については、あんまよく分かっていなかったりしたんですよね。
そこで今回研究者たちは、ダウン症のない知的障がいのある高齢者を対象に認知症の発症率を調べ、健常者と比べてみたんだとか。

まず研究者たちはロンドンの5つの区に住んでいるダウン症のない60歳以上の知的障がい者に協力を依頼したそうな。結果、222名の方がOKしたとのこと。因みに参加者の平均年齢は68.8歳で年齢の範囲は下は60、上は94歳だったらしい。平均追跡期間は2.9年だったそうで、その間、国際疾病分類(ICD)DSM-IVの基準に従って認知症と診断されたかどうか見てみたとのこと。最後に集められたデータから、十分な情報を得られなかった方や死亡した方、ドロップアウトした方なんかを除外していったそうです。
では結果を見てみましょう。

  • スタート時の調査で認知症のなかった高齢知的障がい者のうち、生存していた方は134名だった。134名中、21名(15.7%)が認知症と診断された…!
  • 65歳以上の知的障がいの方の認知症発症率は、一般の高齢者と比較して約5倍(4.98)だった…!
  • 一般の高齢者は90歳を超えても認知症発症率は増加しているのに対し、高齢者の知的障がいの方の発症ピークは70~74歳だった…!

ダウン症の方を除いた知的障がいの方を見てみた結果もやっぱり同じ感じで、認知機能低下のスピードは早いみたいですねー。
しかもそのスピードが5倍っていうんだから驚きです。また、認知症の発症率は通常、右肩上がりになるはずなのに70~74歳がピークってのも気になりますな。これは単に認知機能低下が早いからなのか、平均寿命との関係なのか…。
いずれにしてもやはり知的障がいの方の認知機能低下スピードは早そうです。



個人的考察

知的障がいを持つ方は認知機能低下が早いのは日本、海外ともに同じ結果だったんで、やはり支援していくときはこの当たりも踏まえていきたいですね~。



参考文献