昨日の続きです
引き続き、ダウン症のない知的障がいと認知機能の低下について見ていきます。



ダウン症の有無に関わらず、知的障がいの方の認知症の可能性には注意を払って支援した方が良さそう

2018年のニューサウスウェールズ大学の研究によると、オーストラリアのお医者さんに対する知的障がいの方の認知症ガイドラインっていうのを作ってみたそうです。
この中に知的障がいにおける認知症発症率等についてのレビューがあるんですよね。早速そのレビュー部分のポイントを記してみますとこんな感じ。

  • 知的障がいのある方は、知的障がいのない方に比べて、認知症リスクが明らかに高い。
  • ダウン症は認知症、特にアルツハイマー病のリスクが高い。しかも比較的若いときから発症する事が多い。
  • 例えば2000年のイリノイ大学シカゴ校の研究によると、60歳以上のダウン症の方のうち、大体50~70%の方が認知症の症状があった(因みに一番多い診断はアルツハイマー型認知症)
  • ダウン症のない知的障がいの方の認知症に関する研究は非常に少なく、真逆の結果が出ていることもある。
  • 例えば、1997年のセント・メアリーズ病院の研究では、ダウン症のない知的障がいの方は一般集団と比較して、認知症の発症率が高かった。
  • 一方で、2004年のニューヨーク州立発達障害基礎研究所の研究では、ダウン症のない知的障がいの方は一般集団と比較して、認知症の発症率が同等又はそれ以下だった。
  • 更に2014年のグロスターシャーヘルスアンドケアNHS財団トラストの研究によると、ダウン症のない知的障がいの方は一般集団と比較して、認知症の発症率が平均で10歳程若かった。

上記の2014年のグロスターシャーヘルスアンドケアNHS財団トラストの研究をもうちょい詳しく見てみると、一般集団、知的障がいの方、ダウン症の方の認知症発症率は以下のようなグラフになっております(クリック又はタップで拡大できます)


一般集団は60歳ぐらいから認知症リスクが上がっていっておりますが、知的障がいの方は50歳ぐらい、ダウン症に至っては30歳ぐらいから徐々に上がっております。このグラフを見ても、やはり知的障がいの方の老化・認知症は健常者に比べ10~20歳ぐらい早そうですね。
上記の結果から研究者曰く、

  • ダウン症の有無に関わらず、知的障がいの方の認知症の可能性には注意を払っていく必要があるだろう

としています。



個人的考察

年を取るにつれて誰しも認知機能は落ちてしまいますが、知的障がいの方を支援する場合は特に認知機能の低下、認知症を意識していった方が良さそうですね。



参考文献