【加筆内容】コーヒー(カフェイン)の効果を見ていくよー その18「認知障害・認知症・認知機能低下編5」
先週の続きです。
これまでご紹介した、コーヒーと認知障害・認知症・認知機能低下の関係の研究を軽く復習しておきますと、
って感じ。
つまり、ある程度まではコーヒーで認知障害予防が出来るんだけど、飲みまくると逆効果になっちゃう可能性があるってことですね。因みに1日1~2杯のコーヒーが良さそうな感じでした。
1日100~400mgという適度な量のカフェインをコーヒーか緑茶で摂るのが理想的…!
2020年のアムステルダム自由大学医療センターの研究によると、コーヒーなどのカフェインの摂取と認知機能低下・認知症の関係について系統的レビューで調べてみたそうです。
今まで見てきた通り、そもそも先行研究では、カフェインと認知症・認知機能低下リスクの関係の結果がまちまちで本当のところどうなのか分かっていなかったんですよね。
そこで今回研究者たちは、
- カフェインと認知症・認知機能低下リスクは関係あるのか…?
- すでに認知障害のある人、つまり軽度認知障害や認知症患者の認知能力とカフェインに関係があるのか…?
- カフェイン源や量、年齢や性別によって結果に違いが出るのか…?
の3点をチェックしていくことにしたんだそうな。
まず2020年6月2日までに発表されているカフェインと認知機能低下・認知症リスクの先行研究をPubMedとWeb of Scienceという2つのデータベースを用いて検索してみたそうです。次に英文のヒトを対象とした研究であるか、査読済みであるか、質が低い研究でないか、重複した研究でないかなどをチェックしつつ精査していったらしい。
因みに多くの研究で、軽度認知障害と認知症患者がごちゃ混ぜになっていたので、認知障害のある人としてまとめたそう。
またカフェインの摂取量については、
- 低カフェイン摂取:1日100mg未満
- 中カフェイン摂取:1日100~400mg
- 高カフェイン摂取:1日400mgより多い
の3段階に分けたとのこと。
更にこれだけだとよく分からんので、飲料を例に見てみると、
- コーヒー:150mlで71~220mgのカフェイン
- 紅茶:150mlで32~42mgのカフェイン
って感じみたい。
つまり、
- 低カフェイン摂取:コーヒー1日1杯未満・紅茶1日3杯未満
- 中カフェイン摂取:コーヒー1日1~4杯・紅茶1日3~10杯
- 高カフェイン摂取:コーヒー1日4杯より多い・紅茶1日10杯より多い
が目安となります。
話しを戻しまして、研究を検索した結果、最初629件がヒットしたそうで、最終的に基準を満たしていた研究は61件だったそうです。
この61件の内訳は、
- コホート研究:48件
- ケース・コントロール研究:9件
- ランダム化比較試験:3件
- パイロット研究:1件
って感じとなっておりました。
また61件の研究は1990年~2020年の間に発表されておりまして24か国で実施されていたんだとか。この内訳も一応記載しておきますと、
- アメリカ:10件
- 日本:9件
- 中国:8件
- イギリス:4件
- フィンランド:2件
- オランダ:3件
- 台湾:3件
- カナダ:2件
- フランス:2件
- ポルトガル:2件
- シンガポール:2件
- イタリア:1件
- オーストラリア:1件
- ブラジル:1件
- ドイツ:1件
- イラン:1件
- アイルランド:1件
- ヨルダン:1件
- ノルウェー:1件
- スコットランド:1件
- 韓国:1件
- スペイン:1件
- スウェーデン:1件
- スイス1件
- フィンランド・イタリア・オランダの共同研究:1件
って感じです。
世界中の国や地域から選ばれているのも良い感じですし、日本の研究が9件も選ばれているのも嬉しいですな。因みに総サンプル数は153,359人(対照群を除く)とのことでこちらもなかなかよろしいのではないでしょうか。
では結果を見てみましょう…!
まずは、カフェインと認知症・認知機能低下リスクは関係あるのか…?についての結果です。
まずは、カフェインと認知症・認知機能低下リスクは関係あるのか…?についての結果です。
- 該当する研究は61件中57件だった(総サンプル数153,070人)
- 153,070人のうち40,707人(27%)が、カフェインと認知症・認知機能低下リスクには正の相関関係があるとの結果だった…!
- 153,070人のうち71,219人(47%)が、カフェイン摂取量やカフェインを含む食品の種類、性別、年齢、カフェインの摂取期間(短期or長期)などによっては効果があるとの結果が出ていた…!
- 153,070人のうち41,144人(27%)が、カフェインと認知症・認知機能低下リスクには関係がないとの結果だった…!
これを見るに効果があるなしは同じ割合なんですねー。そして条件によって効果がある場合の割合が一番大きいと…。
続きまして、すでに認知障害のある人、つまり軽度認知障害や認知症患者の認知能力とカフェインに関係があるのか…?についての結果です。
- 該当する研究は4件の研究(総サンプル数289人)だった。
- すでに認知障害のある人(軽度認知障害や認知症患者)289人のうち272人(94%)で、カフェインと認知能力にプラスの効果があった…!
すでに認知機能に問題がある方にもカフェインが効果的…!ってのは嬉しい結果ですな。
最後は、カフェイン源や量、年齢や性別によって結果に違いが出るのか…?についての結果です。
まずはカフェイン源ですが、研究の内訳を見てみますと、
- コーヒーベース:29件(総サンプル数103,321人)
- お茶ベース:30件(総サンプル数59,309人)
- 複数のカフェイン源:15件(総サンプル数25,928人)
- 純粋なカフェイン:2件(総サンプル数70人)
って感じで更にお茶ベースを細かくすると、
- 緑茶:13件(総サンプル数32,295人)
- 紅茶・ウーロン茶:7件(総サンプル数19,635人)
- その他のお茶又は指定がないお茶:19件(総サンプル数37,648人)
って感じ。
まずコーヒーベースを使った場合はこんな結果でした。
- 103,321人のうち29,515人(29%)で、コーヒーによるカフェイン摂取により認知症・認知機能低下リスクと正の相関関係があるとの結果だった…!
- 103,321人のうち31,681人(31%)がコーヒーの摂取量(適量が効果的)、性別(女性の方が効果的)、年齢(65~74歳の高齢者の方が効果的)、期間(長期よりも短期の方が効果的)との結果だった…!
- 103,321人のうち42,125人(41%)は、コーヒーによるカフェイン摂取により認知症・認知機能低下リスクには関係がないとの結果だった…!
- 2件のコーヒーの研究では、長期的な場合や習慣的な摂取はマイナスの効果だったが、短期的な場合と適度なカフェイン摂取頻度や濃度の場合はプラスの効果だった…!
続いてお茶ベースを使った場合はこんな結果でした。
- 59,309人のうち25,381人(43%)で、お茶ベースによるカフェイン摂取により認知症・認知機能低下リスクには効果的だった…!
- 59,309人のうち9,372人(16%)で、お茶ベースによるカフェイン摂取により認知症・認知機能低下リスクには関係がないとの結果だった…!
- 紅茶・ウーロン茶(29%)に比べて緑茶(39%)やその他のお茶又は指定がないお茶(37%)は効果的だという研究が多かった…!
- 19,634人のうち14,603人(74%)というほとんどの研究で、紅茶・ウーロン茶は認知症・認知機能低下リスクには関係がないとの結果だった…!
お茶は全体的にみたら効果アリだけど、これは緑茶のおかげみたいですね。んで紅茶やウーロン茶は意味がないと。
お次はカフェイン量をチェックしておきましょう。
- 低カフェイン摂取(1日100mg未満)の研究は29件で総サンプル数は68,470人だった。
- 中カフェイン摂取(1日100~400mg)の研究は35件で総サンプル数は111,776人だった。
- 高カフェイン摂取(1日400mgより多い)の研究は14件で総サンプル数は69,039人だった。
- 低カフェイン摂取(29件中11件)と高カフェイン摂取(14件中5件)の研究では、認知症や認知機能低下リスクに関する関係は見当たらなかった…!
- 中カフェイン摂取(35件中27件)の研究では、認知機能とのプラスの関係性が見つかった…!
- 中カフェイン摂取は、特に緑茶で摂取すると、認知症・認知機能低下リスクを低下させる可能性があった…!
つまり、1日100~400mgという適度な量のカフェインをコーヒーか緑茶で摂るのが理想的…!ってことですね。この辺もコーヒーの摂取量と認知障害の発症リスクの関係はJ字型だったっていう話と通じますな。
また研究者によれば、データからはカフェイン摂取が認知機能に及ぼす悪影響の証拠は限定的だったそう。基本は気にしなくてOKみたいですね。
最後は年齢と性別をチェックします。
- 65~74歳と35~64歳を比べた研究、70歳以上と70歳未満を比べた研究、90歳と70歳を比べた研究では、高齢者の方がカフェインの効果をより受けやすかった…!
- しかし60歳以上と70歳以上を比べた研究と特に70歳未満で効果が見られることが示された研究というのもあった…!
- 男性に比べて女性の方がカフェインの効果をより受けやすかった…!
年齢の方は高齢者が有利そうなものの確定って感じではないですね。
また男性よりも女性の方が効果が出た理由ですが、研究者たちは2011年のニューヨーク州立大学バッファロー校の研究結果から、テストステロンやエストロゲンなどのホルモンレベルが関係しているんじゃないかな~?って思っているみたいです。
個人的考察
1日100~400mgのカフェインの摂取をコーヒーや緑茶で摂ると、認知症や認知機能低下を予防したり、すでに認知障害のある人の認知機能低下を防ぐ可能性がありそうですね。またこの効果は女性の方が受けやすそうだと。
更に研究者はカフェイン量は少なすぎても多すぎても良くないと強調しておりまして、特に過剰なカフェイン摂取は不安などのデメリットが出てしまい、メリットを上回る可能性があるから注意した方が良いよ…!とおっしゃっておりました。
それとカフェイン耐性による個人差にも触れておりまして、同じ量を摂取しても人によって効果に違いがあるかもしれないよ~ってことでした。
以上を踏まえつつも、やはりコーヒー(カフェイン)は積極的に飲んでいきたいですな。