【加筆内容】知的障がい児・者への現実的に実現可能な運動プログラムを調べてみた!
知的障がい児・者への現実的に実現可能な運動プログラムは週2日1日50分間の有酸素運動+筋トレ…!
2011年のゲント大学の研究によると、知的障がい児・者への現実的に実現可能な運動プログラムを調べてみたそうです。そもそも知的障がいを持つ児童や青少年、成人の方は平均よりも低い運動機能を持っていることが多いとされております。
その主な理由は、
など知的障がい特有の問題が関係しているんだとか。
その結果、筋力低下や心肺機能の低下、筋肉量の低下や脂肪量の増加といったことが起こり、また代謝が低下、更に肥満や糖尿病、心血管疾患リスクの増加ってな具合なルートを進むことが増えてしまうらしい。最後は、これら全ての条件が重なり、体力が更に低下するという悪循環に陥ってしまうそうな。
そこで運動が大事…!となるんですが、どのような運動をどれぐらいすればいいのか先行研究では、まだよく分かっていなかったんですよね。それでも基準になりそうな研究はありまして、例えば、
を見てみますと、どうやら有酸素運動を少なくとも週3日、1日30分を10週間続けると体力が大幅にアップしたみたい。
しかし2009年のアメリカスポーツ医学会(ACSM)の過体重・肥満の成人向けガイドラインを見てみると、少なくとも週150分の中~高強度の有酸素運動が必要だとしているんですよね。因みにこれはこの間ポケモンGOの記事で紹介したアメリカ合衆国保健福祉省(HHS)がアメリカ人向けに作った2008年の運動ガイドラインや2010年のWHOの身体活動ガイドライン、以前に紹介した2011年のカナダ版身体活動ガイドラインでも同じラインを引いております。
一方で1998年のアメリカスポーツ医学会(ACSM)の健康な成人向けガイドラインでは、心肺機能や体組成、筋力なんかの増加と維持には、週3~5日、1日20~60分の中~高強度の有酸素運動が必要だということなんですよね。
でもこれらのガイドラインはいずれも障がいのない方を対象とした研究を基に作成しているので、知的障がいの方にはハードルが高い過ぎるんですよ。特に難しいのが週3日ってところでこの頻度をずーっと続けるモチベが続かないんですな。
なんで知的障がいの過体重・肥満の青少年を対象にした専用トレーニングプログラムの作成と必要な頻度をチェックする為、今回実験を行ってみたそうです。
まず研究者たちは、ベルギーにある2つの支援学校の生徒70名に協力をお願いしたそうな。その生徒たちの情報はこんな感じ。
- 年齢の範囲:14~22歳(青少年)
- IQの範囲:45~70
- 性別:男女
- 教育:同じ教育形態で勉強している
- BMIの範囲:23~48(過体重・肥満)
- 身体障がいの程度:トレーニングプログラムや測定に支障をきたす可能性のある重度の身体障がいを持つ方はいなかった
- 他の障がい:広汎性発達障害や自閉症、てんかん、注意欠陥多動性障害を持っている方もいた
- 理解度:トレーニング中やテスト中の理学療法士の指示を理解することができた
実験は参加者70名を以下の3グループに分けたそうです。
- 週3日運動グループ:15名
- 週2日運動グループ:15名
- コントロールグループ:40名
続いて、週3日運動グループと週2日運動グループの運動プログラムを見てみましょう。
週3日運動グループ
週3日運動グループの概要は以下な感じ。
- 体育の授業の代わりに行った。
- 週3日、1日50分間を10週間行った。
- 有酸素運動+筋トレを行った。
運動プログラムの流れは以下な感じ。
- ウォームアップ(ストレッチとゆる~く有酸素運動):5分間
- エアロバイクを漕ぐ:10分間
- 腕の筋トレ(上腕二頭筋と上腕三頭筋):10分間
- ステッピング(ステップの昇降):10分間
- 脚の筋トレ(大腿四頭筋とハムストリングス)10分間
- クールダウン(ストレッチとゆる~く有酸素運動):5分間
最後に強度についても見ておきます。
- 有酸素運動(エアロバイク・ステッピング)
- 第1週~第3週:最大心拍数の60%
- 第4週~第6週:最大心拍数の70%
- 第7週~第10週:最大心拍数の75%
- 筋トレ(腕・脚)
- 第1週~第3週:1RMの60%で、15回を2セット
- 第3週~第6週:1RMの70%で、12回を2セット
- 第7週~第10週:1RMの80%で、8〜10回を3セット
- セット間の休憩は60秒
有酸素運動と筋トレを交互に行いつつ全身筋トレっていうオーソドックスな感じですな。
週2日運動グループ
週2日運動グループの概要は以下な感じ。
- 体育の授業の代わりに行った。
- 週2日、1日50分間を15週間行った。
- 有酸素運動+筋トレを行った。
運動プログラムの流れは以下な感じ。
- ウォームアップ(ストレッチとゆる~く有酸素運動):5分間
- エアロバイクを漕ぐ:10分間
- 腕の筋トレ(上腕二頭筋と上腕三頭筋):10分間
- ステッピング(ステップの昇降):10分間
- 脚の筋トレ(大腿四頭筋とハムストリングス)10分間
- クールダウン(ストレッチとゆる~く有酸素運動):5分間
最後に強度についても見ておきます。
- 有酸素運動(エアロバイク・ステッピング)
- 第1週~第5週:最大心拍数の60%
- 第6週~第10週:最大心拍数の70%
- 第11週~第15週:最大心拍数の75%
- 筋トレ(腕・脚)
- 第1週~第5週:1RMの60%で、15回を2セット
- 第6週~第10週:1RMの70%で、12回を2セット
- 第11週~第15週:1RMの80%で、8〜10回を3セット
- セット間の休憩は60秒
つまり週3日運動グループと運動プログラムの流れは同じで、運動の合計回数も同じ30回になるようにしたって感じですね。また強度についても可能な限り同じになるようにしたと…。
因みにコントロールグループの参加者は、普通に体育の授業を受けてもらったそうで、また毎日の全ての学校活動にも参加したそうな。
併せて、参加者は運動プログラムの最初と最後に、体組成や体力(心肺機能や筋力)、HDL・LDL・総コレステロールを盲検化された人によって測定してもらったみたい。
最後に集まったデータを統計処理した結果、以下のようになったそうです。
- 週3日運動グループはコントロールグループと比較すると、体重が大幅に減少…!BMIが大幅に低下…!ウエストが大幅に減少…!脂肪量(総コレステロールが大幅に減少…!LDLが大幅に減少…!HDLが大幅に増加…!)が大幅に変化…!筋肉量が大幅に増加…!
- 週3日運動グループと週2日運動グループを比較すると、体重、BMI、ウエスト、脂肪量に同程度の効果が見られ、統計的な有意差はなかった…!
- 週3日運動グループは脚の筋力のみ週2日グループよりアップしていた…!
つまり、週3日運動グループ≒週2日運動グループ>普通の体育の授業って感じですな。因みに参加者全員が怪我やきつすぎ無理的な訴えを起こすこともなく運動プログラムを終えられたということで、このメニューを週2日なら続けやすそうで大変よろしいですね。
個人的考察
知的障がい児・者への現実的に実現可能な運動プログラムとしてかなり使えそうですね。週2日、1日50分間、有酸素運動+筋トレを行ってみてはどうでしょうか…?