【まとめ】最初にうつ病と診断されて後に双極性障害と診断されるパターンは多いのか?
精神障がいの方でたまに診断名が変わったって方がいますよね…?
その中でも割と起こるのが、最初にうつ病と診断されて後に双極性障害(躁うつ病)と診断されるってパターンです。
最初にうつ病と診断されて後に双極性障害と診断されるパターンは多いのか…?
2020年のダルハウジー大学のレビュー論文によると、最初にうつ病(大うつ病)と診断されて後に双極性障害(躁うつ病)と診断されるパターンについて先行研究を見直ししてみたそうです。そもそもうつ病を持っている方のうち、ある一定の割合は、実際、双極性障害だったってことがあるそうな。
これには主に3つの理由が考えられるそうで、
- ほとんどの場合、双極性障害はうつ症状から始まる。そして躁状態(ハイな状態)が初めて現れるのは何年も後になるパターンが多い
- うつ病は双極性障害の一部であると考えられている。特に家族歴が強い人の場合、一部のうつ病は双極性障害の変異パターンである可能性がある
- 患者さんによっては、躁状態を見逃す場合がある
とのこと。
そのため、双極性障害なのにうつ病と診断されてしまうことがあるみたい。
また、最終的に双極性障害と診断された人の50~80%の人は、うつ症状が双極性障害の最初の症状として表れるらしい。
いくつか研究を見てみると、
- 2007年のマギル大学の研究:58%の人が最初にうつ症状が表れた。その後、19%の人が特定不能のうつ症状、23%の人は躁状態を経験した
- 2015年のオハイオ州立大学の研究:双極性障害と診断された36人の子孫のうち25人がうつ病の既往歴があった
- 2012年のジュネーブ大学の研究:双極性障害を持つ親の子供は、特に高いうつ病発症率が見られた
って感じ。
更に双極性障害の人が最初のうつ症状から最初の躁状態が出るまでの期間の長さもこの混乱を呼ぶみたいでして、
- 2013年のユトレヒト大学の研究:最初のうつ症状から平均5.6±4.4年後に躁状態を経験…!
- 2007年のメルボルン大学の研究:最初のうつ症状から平均7.6±8.7年後に躁状態を経験…!
- 2009年のソウル大学校の研究:最初のうつ症状から平均5.6±6.1年後に躁状態を経験…!
とのことで、5年以上経って初めて躁状態が出るパターンが多めっぽい。因みに期間は長いだけでなく、個人差もかなり大きいそうな。
これは最初うつ病と診断されてその後、双極性障害に診断が変わっても仕方ない感じがしますね。
それでは次にうつ病から双極性障害への移行率についても見てみましょう。
なんでも最初うつ病と診断された人々のうち、一定の割合が双極I型障害又は双極II型障害に移行するんだとか。
んで、それらのレビューに載っていたポイントの研究はこんな感じ。
- 2005年のチューリッヒ大学の研究:5年目以降に躁状態を経験した人の割合は年間約1%、軽い躁状態が年間0.5%だった
- 1995年のアイオワ大学の研究:以前にうつ病と診断され、その後10年間追跡調査した患者さんのうち約5%が躁状態と軽い躁状態を経験していた
- 2011年のアイオワ大学の研究:平均17.5年間追跡調査したら、うつ病患者さんの躁状態の新規発症率は7.5%、軽い躁状態は12.2%だった
- 2009年のドレスデン工科大学の研究:最初にうつ病を発症した人の3.6%が最大10年後に双極性障害と再診断されていた。また、17歳未満でうつ病を発症した人では双極性障害リスクが9%と大幅に高かった
- 2018年のオーフス大学の研究:平均7.7±5.4年間追跡調査したところ、うつ病から双極性障害への移行率は8.4%だった
これらを見ても、最初にうつ症状が出て、うつ病と診断、何年もあとになって躁状態が出て、そこから調べて双極性障害の診断が出されるってことは結構ありそうですね。
更にややこしくしているのが、躁状態・軽い躁状態を伴わない双極性障害ってのもあるということ。例えば1993年のハーバード公衆衛生大学院の研究によれば、約3分の2が実際は双極性障害だったと推定できたらしい(かなり怪しいデータみたいだけど)。また先程も紹介した2005年のチューリッヒ大学の研究では、50年後に診断が変更された患者さんもいた…!って話なんで、見分けるのは本当に難しそうな様子。
これだけ判断が難しい、うつ病と双極性障害なんですが、診断が変わる可能性が高いパターンってのもあるんだとか。それが、発症年齢が若いこと、つまり若者に良く見られる…!そうです。
いくつか事例を見てみると、
- 2012年のハーバード大学の研究:うつ病の発症年齢が若い場合、双極性障害リスクは成人の4.5倍も高まる…!
- 2019年のスタンフォード大学の研究:うつ病と双極性障害が混在するパターンは若者によく見られる…!
とのこと。
若いうちにうつ症状やうつ病と診断されても、後に躁状態がやってきて双極性障害になるパターンが多いみたいっすね。
最後にレビューには載っていないんですが、2017年のコペンハーゲン大学の研究も参考になるので併せてご紹介しておきます。
こちらはうつ病から双極性障害への移行率を年間で見てみたんですが、最初の診断から、
- 最初の年まで:3.9%
- 1~2年目:3.1%
- 2~5年目:1.0%
- 5~10年目:0.8%
って感じでした。
つまり時間の経過とともに減少していたんですよね。
これを見ても、
- 発症した年齢で変わりそう
- 最初にうつ症状からスタートが基本なんで見分けがつきづらい
- 躁状態が出てくるまでのラグが結構えぐい
って感じでますます判断が難しそうです。
うつ病から双極性障害へ診断が変わるケースについて系統的レビューとメタ分析を行ってみた…!
2017年のメルボルン大学の研究によると、うつ病から双極性障害へ診断が変わるケースについて系統的レビューとメタ分析を行ってみたそうです。
なんでも、うつ病と診断された人の中には、双極性障害の発症前段階の人がいるそうで、早期発見や予防につながる可能性があるんだとか。そこでうつ病の方を対象とした、先行の前向きコホート研究の結果をまとめて、双極性障害への移行率を見てみることにしたらしい。
まず研究者たちは、データベースを用いて該当する先行研究を検索してみたそうな。すると5,554件の研究がヒットしたとのこと。次にこれらの研究を適格基準と除外基準に照らし合わせて精査していったらしい。
最終的に選ばれた研究は56件でして、平均追跡期間は12~18年だったそうな。
では結果を見てみましょう。
- うつ病の成人・青年の約4分の1(22.5%)が双極性障害を発症していた…!
- うつ病から双極性障害への移行率が最も高かったのは、うつ病と診断されてからの最初の5年間だった…!
やはり、最初にうつ病と診断されて後に双極性障害と診断されるパターンって結構多いんですね。しかも最初の5年間が特に多いと…。
更にこの研究ではメタ分析を行い、うつ病から双極性障害への移行率が高い場合の特徴ってのもチェックしておりました。
ちょっと見てみますと、
- 家族歴(OR2.89)
- うつ病発症時の年齢の低さ(g=-0.33)
- 他に精神病があるか(OR4.76)
って感じでした。
つまり、家族にもうつ病の人がいたり、若いときにうつ病が発症したり、精神障がいにおける二次障害があると、双極性障害になる・実は双極性障害だったってパターンが多くなるってことですね。確かに有り得そうですね…。
私が支援していた方でも長年うつ病と診断されていて、入院した時、双極性障害と診断が変わったって人がいたんで、結構身近に起こる事なのかもしれませんな。
個人的考察
因みにうつ病から他の精神障がい(精神疾患)への診断変更パターンの割合については、2020年のヘルシンキ大学の研究が参考になります。
15年間のうちにうつ病から診断変更されたパターンの割合は、
- 双極性障害:7.4%…!
- 統合失調症:2.5%…!
- 統合失調感情障害(統合失調症+双極性障害):1.3%…!
って感じだったそうな。
双極性障害が圧倒的に多いものの、統合失調症や統合失調感情障害への移行もまぁまぁあるんですね~。
精神障がいの診断ってやっぱり難しいと改めて感じますよね。