【まとめ】炎症性腸疾患(IBD)・クローン病(CD)・潰瘍性大腸炎(UC)のアンブレラレビューを見てみよう!
今回は、炎症性腸疾患(IBD)のアンブレラレビューを見てみます。
そもそも炎症性腸疾患(IBD)ってのがどんなものかと言いますと、2011年のハーバード大学の研究によれば、胃や腸内の慢性炎症性の疾患とのこと。そしてクローン病(CD)と潰瘍性大腸炎(UC)という2つの主要な異なる形態で構成されているんだとか。もうちょい具体的に言いますと、消化管の炎症と免疫反応の調節異常を特徴としておりまして、通常、再発と寛解を繰り返す性質がございます。炎症性腸疾患が起こる原因ははっきり分かっていないものの、遺伝要因・環境要因・腸内細菌要因が複雑に相互作用を起こしている様子です。
そんな炎症性腸疾患は、2019年の世界の疾病負荷研究(GBD:世界の疾病負担研究)によれば、世界中で発症が多くなっているらしく、約700万人が診断を受けているそうな。また、2020年の中山大学の系統的レビューとメタ分析によると、どうやら現代のライフスタイルと食事スタイル、つまり西洋スタイルの食事(加工食品・超加工食品の多い食事)が発症率と有病率の増加の原因っぽい感じ。但し、その辺について詳しく分かっていない部分もあったんだとか。
炎症性腸疾患における環境要因についてメタ分析のアンブレラレビューを行ってみた…!
2019年のヒューマニタス大学の研究によると、炎症性腸疾患における環境要因についてメタ分析のアンブレラレビューを行ってみたそうです。
今までにも炎症性腸疾患における環境要因を調べた先行研究はたくさんあったんですが、それらをまとめたアンブレラレビューは出ていなかったんだとか。そこで今回行ってみることにしたらしい。
今までにも炎症性腸疾患における環境要因を調べた先行研究はたくさんあったんですが、それらをまとめたアンブレラレビューは出ていなかったんだとか。そこで今回行ってみることにしたらしい。
まず研究者たちは、2018年9月28日までに発表された該当研究をPubMed、Embase、Scopusで検索してみたそうな。すると、PubMedで1,763件、Embaseで2,951件、Scopusで3,361件ヒットしたとのこと。続いてこの中で重複している物を除きつつ、更に質をチェックしていったそうな。
最終的に選ばれたメタ分析は53件でして、この中には71個の環境要因があったみたい。この71個の環境要因のうち、ある程度信頼出来るものは、9個の危険因子と7個の保護因子だったそうです。では、それらが何だったのか見てみましょう…!
【9個の危険因子】
【7個の保護因子】
以前から紹介しているような腸に良い事・悪い事がズラリと並んだ感じっすね。
食事・食品・栄養素と炎症性腸疾患(IBD)の関係について系統的レビューとメタ分析のアンブレラレビューを行ってみた…!
2024年のベルゲン大学の研究によると、食事・食品・栄養素と炎症性腸疾患(IBD)の関係について系統的レビューとメタ分析のアンブレラレビューを行ってみたそうです。
以前に似たような研究として、2019年のヒューマニタス大学のメタ分析のアンブレラレビューってのをご紹介しましたが、こちらは食事・食品・栄養素といった全体をカバーしていなかったという弱点があったんですよね。またこの研究発表後も、どんどん新たな研究が発表されておりました。
そこで今回、食事・食品・栄養素と炎症性腸疾患(IBD)・クローン病(CD)・潰瘍性大腸炎(UC)の発症率、進行と寛解の関係性についてガッツリ深掘りしてみることにしたそうです。
まず研究者たちは、2023年6月14日までに発表された該当研究をMedline、Embase、Epistemonikosで検索してみたんだとか。すると合計1,170件の研究がヒットしたとのこと。
続いてこの中で重複している研究を除外、その後、質の低い研究も除いていったそうな。最終的に残った系統的レビューは47件でして、このうちの24件にはメタ分析を含んでいたとのこと。
それでは結果を見ていきますかー。
まずは炎症性腸疾患(IBD)の発症率からです。
お次は潰瘍性大腸炎とクローン病の発症率です。
- 潰瘍性大腸炎とクローン病の発症率については、多少の違いはあるものの、概ね炎症性腸疾患の発症率と同じような結果だった…!
- 果物と野菜の摂取量が多いことと、潰瘍性大腸炎とクローン病の発症率の低下は強く関係していた…!
- 食物繊維の摂取量が多いことと、クローン病の発症率の低下は関係していた…!
- 但し、食物繊維と潰瘍性大腸炎の関係はよく分からなかった。
- コーヒーの摂取量が多いことと、潰瘍性大腸炎とクローン病の発症率の低下は関係していた…!
- 加工度の低い食品(未加工食品・カロリーの質の高い食品)の摂取量が多いことと、潰瘍性大腸炎の発症率の低下は関係していた…!
- 超加工食品の摂取量が多いことと、クローン病の発症率の増加は関係していた…!
- 但し、超加工食品の摂取量が多いことと、潰瘍性大腸炎には関係がみられなかった…!
- 西洋スタイルの食事(超加工食品・加工食品中心の食事)とファストフードの摂取量が多い人は少ない人に比べて潰瘍性大腸炎とクローン病の発症率が増加しており、強く関係していた…!
- 但し別のメタ分析では、クローン病のみ関係があり、潰瘍性大腸炎は関係ないと出ていた。
- んがしかし、このメタ分析では潰瘍性大腸炎の異質性(各研究結果の差)が大きいと出ていた。
- 肉・肉製品の摂取量が多い人は少ない人に比べてクローン病の発症率の増加と有意ではない潰瘍性大腸炎の発症率の増加がみられた…!
- 肉の種類によっての明確な違いは見られなかった。
- 但し、赤身肉を1日100g増やすと、ヨーロッパとアメリカでは炎症性腸疾患のリスク要因が増加していた…!
- 再分析したところ、赤身肉と加工肉の摂取量が多いと、潰瘍性大腸炎の発症率が有意に増加し、クローン病の発症率が有意ではないが増加していた…!
- 糖質の摂取量が多いと潰瘍性大腸炎とクローン病の発症率が増加していた…!
- 脂肪の摂取量が多いと潰瘍性大腸炎とクローン病の発症率が増加していた…!
- アルコール、炭水化物、コレステロール、卵、魚、オメガ3脂肪酸、オメガ6脂肪酸の関係はよく分からなかった。
続いて炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病の進行についての関係です。
- 食物繊維を多く含む食事は、クローン病の進行の減少と生活の質の向上に強く関係していた…!
- 地中海式ダイエットは、炎症性腸疾患の症状の改善と生活の質の向上に関係していた…!
- 特定低炭水化物ダイエット(穀物、糖類、乳糖が少ない食事)は、炎症性腸疾患の症状の改善と生活の質の向上に関係していた…!
- 但し、特定低炭水化物ダイエットと寛解については、矛盾するエビデンスがあった。
最後は炎症マーカー・炎症性サイトカインとの関係です。
- ベジタリアンや半ベジタリアン、地中海式ダイエット、サーモンを多く摂取すると、炎症性腸疾患の患者さんにおけるC反応性タンパクなどの炎症マーカーが改善していた…!
- キャノーラ油からオリーブオイルへ切り替えると、潰瘍性大腸炎の患者さんにおけるC反応性タンパクが低下していた…!
- マンゴーの摂取量が多いと、炎症性サイトカインが減少していた…!
- 6週間、自己免疫プロトコル(穀物、野菜、卵、牛乳、コーヒー、アルコール、ナッツや種子類、精製糖、添加物、加工食品を食べない食事スタイル)の実践で、クローン病の患者さんにおける炎症有意に減少していた…!
ということで色々見てきましたがポイントをまとめると以下な感じです。
- 炎症性腸疾患の発症・進行の増加に関係するものは、赤身肉・加工肉、加工食品・超加工食品、精製糖の摂取量が多いこと…!野菜、果物、食物繊維の摂取量が少ないこと…!
- 炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎との明確な関係はよく分からなかった…!
- クローン病、潰瘍性大腸炎のリスク因子は若干の違いがあった…!
- 食物繊維の摂取量が多いこととクローン病の発症率は逆相関していたが、潰瘍性大腸炎は関係なかった…!
- 地中海式ダイエット、ベジタリアン食、特定低炭水化物ダイエット(穀物、糖類、乳糖が少ない食事)は、炎症性腸疾患の発症・進行の低下と関係していた…!
やはり炎症対策になる食べ物・食事スタイルがキーになるって感じですな。
上記を見ていると、地中海式ダイエットとカロリーの質の高い食事が、大方をカバーできるので良いんじゃないかな~と思いました。やっぱ地中海式ダイエットはおすすめだぜ…。
個人的考察
併せて、
の記事をお読みいただくとより理解が深まるかと思います。
- 腸内細菌・腸内フローラは超重要!あらゆる不調や脳の支配率、精神障がい・発達障がいにも関わっている件
- 気づかぬうちに忍び寄る悪夢!「慢性炎症」入門
- 身近に潜む恐怖!「リーキーガット症候群・腸透過性」入門
- 人類最古のお友達「衛生仮説・旧友仮説」入門
の記事をお読みいただくとより理解が深まるかと思います。
個人的には衛生仮説を強く感じる内容だと思いましたね。