アトキンスダイエット(1日の糖質摂取量を20g以下に抑えるダイエット)を代表するように糖質(炭水化物)を制限するダイエットは結構いろいろありまして、一時期、流行っていたのは皆さんも知っての通り。
ですが、極端な糖質制限ダイエット(ハード糖質制限ダイエット)ってデメリットだらけなんですよ…。
今回はそれらについてまとめていきます。



極端な糖質制限ダイエットはバッドステータスのオンパレード

1979年の研究1985年の研究1987年の研究によると、極端な糖質制限を行うとT3ホルモンやテストステロン(男性ホルモン)、コルチゾール(ストレスホルモン)のバランスが崩れてしまうみたいです。
それぞれを見てみると、

  • T3ホルモンの分泌が減る…!
  • テストステロンの分泌が減る…!
  • コルチゾールの分泌が増える…!

って感じ。
T3ホルモンは甲状腺ホルモンの一種で、甲状腺は体の代謝と密接に関わっている器官です。以前に書いた通り、T3ホルモンの分泌量が減ると、代謝が減り、結果、脂肪が燃えにくくなったり、筋肉の機能がダウンしてしまいます。実は極端な糖質制限をするとT3が減る(Low T3 syndrome)に陥ってしまう可能性があるんですよ。甲状腺が頑張ってもT3は減っていくって現象ですね。
この状態になってしまうと、上記に挙げたほかにも、

  • 慢性的な疲労を感じる
  • うつ症状が起きる
  • 脱毛が起きる
  • 肌荒れ
  • 貧血気味になる
  • むくみが起きる
  • 便秘になる
  • 悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が増える

てな感じで、やたらとバッドステータスが多いようです。
因みにT3が増えれば、悪玉コレステロールが細胞に取り込まれやすくなり、逆に減ると血中に留まるため、血中悪玉コレステロールの濃度が大きくなります。つまり、極端な糖質制限ダイエットを行うとコレステロール値が増える可能性もあるってことですね。
そんなダイエットとは真逆の現象が起きる状態に極端な糖質制限ダイエットはなる可能性大。ぜひ気を付けていきたいですね~。



ムチンが足りなくなる…!

糖質はムチンの材料になる事でも有名です。ムチンは胃や腸内の環境整備、関節の保護、涙や唾液などの材料になります。そして、ムチンは主に糖やタンパク質から作られるんですよね。
2001年のウプサラ大学の研究によると、1日に必要なムチンの量を作るとなると、糖質が約100~200kcalも必要と言うことです。
極端な糖質制限ダイエットをすると、糖の代わりにタンパク質を使ってこのムチンを作るみたいなんですが、生産量は1日MAX約270kcalらしく、脳など他の場所でも糖質を使うため、ムチン分がどうしても足りなくなるみたい。
つまり、

  1. 糖質が足りない…!
  2. ムチンの量が減る
  3. 胃や腸内がダメージを受け、環境が悪化…!
  4. 全身の潤いが減る…!

と言ったところ。
結果として、

  • 関節の痛み
  • 便秘
  • 肌荒れ
  • 目の乾き
  • 目の充血
  • 口の渇き

といった状況に襲われます。
むくみがとれるぐらいなら良いんですが、さすがに極端な糖質制限ダイエットまで行くとデメリットが上回ってしまう感じですね。

因みに2004年のカリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究によると糖質はヒアルロン酸(肌の保湿成分)を作るのに1日約5gいるんだそうな。
この当たりも合わせて覚えておきたいところ。



極端な糖質制限ダイエットでネガティブが改善するかも…?

2004年のトロント大学動物実験によると、ケトジェニックダイエット(極端な糖質制限ダイエット)で気分安定薬と同じような効果が出るのかどうかを調べてみたそうです。
どのような実験だったかというと、片方のラットにはケトジェニック食(極端に糖質制限した食事)を与えて、もう一方のラットには普通の食事をしてもらったんだとか。
結果、ケトジェニック食のラットは、ジッとしている時間が減り、抗うつ薬で治療されたラットのようになったそうです。つまり、極端な糖質制限ダイエットは抗うつ薬の特性を持っている可能性があるってことですね。
上記は動物実験でしたが、病気に苦しむ方を対象とした研究でも似たような結果は出ております。2013年のアデレード大学メタ分析なしの系統的レビューによると、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に苦しむ女性を対象に低炭水化物食を実践したら、生活の質が改善したって話もあります。

他にも、太り過ぎの人を対象とした2012年のデューク大学医療センターの研究では、極端な糖質制限ダイエットを行った参加者は、低脂肪食ダイエットの参加者と比較して、ネガティブな感情が大幅に改善したなんて話もあったりします。
また、似たような研究として2009年のアメリカ退役軍人省医療センターRCTによると、肥満体な参加者119人(平均年齢45歳・女性76%)を対象に、低炭水化物ダイエットグループまたは低脂肪食ダイエットグループにランダムに振り分けたそうです。期間は24週間で、結果、低脂肪食ダイエットグループよりも低炭水化物ダイエットグループの参加者の方がメンタル面が改善されたとのこと。


これらを見ると極端な糖質制限ダイエットでネガティブが改善され、メンタル面が安定する…!って思っちゃいますよね。



だけど、長期的にみると極端な糖質制限ダイエットはメンタル面に良くない…!

短期的に見ると、確かにネガティブが改善され、メンタル安定に良さそうなんですが、そんな旨い話はないんですよね~。
というのも2009年のCSIRORCTによると、肥満な参加者106人(平均年齢50歳)を対象に、低炭水化物・高脂肪食ダイエットグループまたは、高炭水化物・低脂肪食ダイエットグループにランダムに分かれてもらったそうな。
実験期間は1年間で、結果、低炭水化物・高脂肪食ダイエットグループと比較して、高炭水化物・低脂肪食ダイエットグループは気分障害・怒り・混乱・うつ病のメンタルの浮き沈みが大幅に改善されたそうなんですよ。



運動+極端な糖質制限ダイエットもメンタル面に良くない…!

また運動と極端な糖質制限ダイエットを組み合わせるのも怖い感じなんですよね。
1991年のオーバーン大学の研究によると、アスリートレベルの訓練を受けた女性7人(平均年齢22歳)に、低炭水化物食ダイエット、普通の炭水化物食ダイエット、高炭水化物ダイエットをそれぞれ1週間食べてもらったそうです。どの炭水化物食ダイエットかはランダムに決められ、全ての参加者が全ての食事法を試したとのこと。
更に毎週の食事法の終了後には、参加女性全員に、VO2max(最大酸素摂取量:心肺機能の指標になる)の80%の負荷で限界まで、エアロバイクを漕いでもらったそうです。
結果、運動を組み合わせた低炭水化物食ダイエットは、普通の炭水化物食ダイエットや高炭水化物ダイエットと比較して、気分(メンタル)に悪影響を及ぼしたそうです。

以前に紹介した2005年のチェスター大学のRCTで、ストレスが急上昇したということなんで、メンタル面に不調をきたしてもおかしくはないかと思います。



どうして、極端な糖質制限ダイエットは短期と長期で結果が違うのか…?

以上を踏まえると、極端な糖質制限ダイエットは短期的にはメンタルに良いけど、長期的には悪い…!ってことになりますねー。
では、なぜ、極端な糖質制限ダイエットは短期と長期で結果が異なるのか…?その気になる理由について説明していきます。
2012年の研究によると糖質制限ダイエットによって、カテコールアミンの分泌量が増えるそうなんです。カテコールアミンはアドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンの総称で、副腎が作るホルモンです。このカテコールアミンが増えると、

  • 代謝機能がアップする
  • 注意力がアップする
  • 認知機能がアップする

といった感じになります。
頭がさえてテンションも上がるって感じですね。これだけ聞くと良い話なんですが、1950年の研究によると極端な糖質制限が長く続くと徐々に体はその状態に慣れてしまい、カテコールアミンの効果が効き辛くなってしまうそうです。これが実は非常に問題でして、というのもこの状態に入った時は同時に副腎も機能が弱まり、カテコールアミンの分泌量も減っていくみたいなんですよね。その結果、頭は常にボーっとして働かず、その上テンションはガタガタになってやる気が落ちてしまいます。いわゆるうつ症状が起きるわけですね。
まとめると、

  1. 極端な糖質制限を行う
  2. カテコールアミンの分泌量が増える
  3. 頭がさえてテンションも上がって良い感じ…!
  4. そのまま極端な糖質制限を長期にわたって行う
  5. カテコールアミンの耐性がアップ&分泌量がダウン…!
  6. 頭が働かずテンションもガタ落ち…。
  7. うつ症状に…!

といった感じのステップを歩むことに…。
因み過度な運動カロリー制限、断食でもこの現象は起きるのでダイエットで合わせて運動を行う方は要注意です。



ミネソタ飢餓実験から学ぶ、長期間の半飢餓状態の恐怖

以前にも書いた通り、体内の糖質が足りないと、こりゃヤバい…!となって、糖新生(タンパク質をブドウ糖に変える)が行われます。実はこの時、1972年のヴァンダービルト大学の研究1983年の研究1984年の研究によると、肝臓から糖を作ると同時に大量のアドレナリン(エピネフリン)が分泌されるみたいなんですよね。
アドレナリン(エピネフリン)は戦闘モードやストレスがかかった時に分泌されるホルモンで、体温の上昇や活力アップ、注意力・認知機能がアップ、食欲がダウンするなんて効果があります。
これだけ聞くとこのままで良さそうですが、そう上手い話はないってのがポイントです。というのも1944年のミネソタ飢餓実験で、これが如何に危険かが分かっているんですよね。
この研究は、白人男性36名を対象として、以下の4ステップを行ったそうです。

  1. 最初の12週間:ベースラインを調整
  2. 次の24週間:半飢餓実験開始。参加者は元々の体重から平均25%減量した
  3. 回復期12週間:ある程度制限した食事を試してどうなるか調べた
  4. 回復期8週間:いろんな食事を試してどうなるか調べた

結果、分かったことは、ハンパないストレス(半飢餓状態)が長期間にわたると(慢性ストレスだと)、アドレナリンも大量に分泌され続け、耐性がつき(麻痺し)、しまいには1mgのアドレナリン注射にも無反応になってしまうということ。またストレスでアドレナリンが分泌される為、当然コルチゾールも分泌されます。つまり、コルチゾールも常に分泌され続けるんで、健康に良い訳がないんですよね…。
更に恐ろしいのが、長期の半飢餓状態はメンタルが激しくやられるみたいで、実際、実験に参加した人は重度の精神的苦痛やうつ病、ヒステリーが起きやすくなったとのこと。
そして、似た方法を使う極端な糖質制限ダイエットでも同じ状況が起きる可能性は非常に高くなっております。怖っ。
ということで、やっぱり極端な糖質制限ダイエットや長期間の制限ダイエットはおすすめできず…。たまにはチートデイを導入して体に良い炭水化物を補給した方が良いよな~と思いました。



炭水化物(糖質)をしっかり取らないと攻撃的になる…!

2014年のオハイオ州立大学などの研究によると、炭水化物(糖質)をしっかり取らないと攻撃性がアップするのか調べてみたそうです。
そもそも人間ってのは最も親しい人である配偶者に対して攻撃的になる事がよくあるそうな。そして攻撃的な衝動を抑えるには多くのエネルギーが必要とのことで、そのエネルギーってのがブドウ糖、つまり炭水化物(糖質)だというんですよ。
じゃあそのブドウ糖・炭水化物・糖質が足りない状態である、低血糖状態・低ブドウ糖状態だと攻撃性がアップするんじゃないかってことを知らべたのが今回の研究になります。
まず実験に参加したのは107組の夫婦(=参加者214名、平均年齢35.6±10.9歳)で、結婚して平均12年間経っている人たちだったそうです。この参加者たちに配偶者への満足度の質問10個を答えてもらったとのこと。因みに7段階で選ぶ形式(1=すごくそう思わない、7=すごくそう思う)の質問だったそうで、例としては「私は夫婦関係に満足しています」みたいな感じだったそうな。合わせて参加者の血糖値も調べたらしい。
次に配偶者への攻撃性を調べるために、参加者全員に51個のピンとブードゥー人形(≒藁人形)を渡したそうな。そして研究者から、

  • このブードゥー人形は配偶者を表しています。毎日の終わりに配偶者に対する怒りの程度に応じて、ブードゥー人形に0~51個のピンを刺してください。この時、配偶者に見られずあなた一人で行ってください

と言われたそうです。なかなかヤバい感じのする実験ですね(笑)
更に参加者にはブードゥー人形に刺したピンの数をメモしてもらったとのこと。合わせて毎日、朝食前と就寝前に血糖値もチェックしてもらったそうです。
これで攻撃性と血糖値の関係が分かるってことですね。
実験期間は21日間で、最終日、参加者は全員ラボにきてもらい攻撃性の行動測定をしたそうです。どのようなことをしたのかと言いますと、こんな感じ。

  1. 夫婦同士でコンピューターゲームをしてもらう。
  2. ゲームの内容は四角形のマークが赤くなったら素早くボタンを押すというもの。
  3. ゲームに勝つと負けた方に罰ゲーム(ヘッドフォンで嫌な音を爆音で聞かせる)をすることができる。
  4. 嫌な音ってのは、黒板を爪でひっかく音とか歯医者のドリル音とか救急車のサイレン音とか。
  5. 爆音のレベルは60~105dB(火災警報器ぐらいの音)の範囲。
  6. 勝者は罰ゲームの時間(0.5秒~5秒まで)を好きに選べる。
  7. しかし実は対戦相手は配偶者ではなくNPC。
  8. 全部で25回対戦し、参加者は13回負けるようになっていた(負けるタイミングはランダム)
  9. NPCが勝った時の罰ゲームレベルはランダム設定。

これらの実験から分かったことは、

  • 毎日の夕方の血糖値は、夫婦関係の満足度や性別などを調整した後でも、刺したピンの数と関係していた…!
  • 血糖値が低い参加者はブードゥー人形にたくさんピンを刺していた…!
  • 夫婦関係の満足度が高いと毎日刺したピンの数が少なかった…!
  • 血糖値が低い参加者は罰ゲームを行う時、より大きな爆音で、より長い時間を聞かせていた…!
  • つまり低血糖状態・低ブドウ糖状態だと攻撃性がアップしていた…!

とのこと。
やっぱり糖質制限ダイエット慢性的なカロリー制限はやめておいた方が良さそうですね~。
ってことで、炭水化物はバランスを考えつつ、食べた方がよろしいかと思います。



ケトジェニックダイエット(極端な糖質制限ダイエット)をして運動パフォーマンスがどうなるのか調べてみた…!

1983年の研究によると、ケトジェニックダイエット(極端な糖質制限ダイエット)をして運動パフォーマンスがどうなるのか調べてみたそうです。
この研究は、普段から持久力トレーニング(エアロバイクを漕いでいる)をしている5名を対象に行ったそうで、まず初めに、

  • 1日の炭水化物摂取量=体重(kg)×35~50kcal
  • 1日のタンパク質摂取量=体重(kg)×1.75g
  • 残りのカロリー摂取量は3分の2が炭水化物、3分の1が脂肪

というバランス食を1週間食べてもらったそうな。
続いて、バランス食と同じカロリー量になるよう調整しつつ、1日20g未満の炭水化物を摂取するケトジェニックダイエット(極端な糖質制限ダイエット)を毎日食べてもらったらしい。因みにケトジェニックダイエットの期間は4週間だったとのこと。
また、バランス食もケトジェニックダイエットも、ビタミンやミネラルは1日の推奨量を満たすよう調整されていたみたい。

更に上記に合わせて、運動パフォーマンスも調べております。運動パフォーマンスはエアロバイクを使ってVO2max(最大酸素摂取量)をチェックしておりまして、具体的にはVO2maxの62%~64%のパワーで疲労感が出るまで漕いでもらい耐久時間をチェックするというものだったそうです。これをバランス食の時と、ケトジェニックダイエットの時のそれぞれで計測しておりました。
結果は、

  • バランス食:147分…!
  • ケトジェニックダイエット:151分…!

って感じだったとのこと。しかも、ケトジェニックダイエットを行っても、低血糖症のような症状は見られなかったそうです。
この結果から研究者たちは、糖質制限ダイエットでも運動パフォーマンスは落ちない…!と主張しているわけですな。

…んがここには注意点が潜んでおりまして、参加者5名のデータのばらつきが結構あるんですよね。バランス食の時とケトジェニックダイエットの時の差をみてみると、

  1. Aさん:-48分
  2. Bさん:-51分
  3. Cさん:+3分
  4. Dさん:+31分
  5. Eさん:+84分

って感じで、確かに運動パフォーマンスがアップしている人もいるんですが、逆にダウンしている人もいたんですよ。平均すると確かに4分アップしているから運動パフォーマンスは変わらない…!問題ない…!って結論にできますが、ちょっとな~って感じです。



ケトジェニックダイエット(極端な糖質制限ダイエット)と運動パフォーマンスの関係についてレビューしてみた…!

2004年の研究によると、ケトジェニックダイエット(極端な糖質制限ダイエット)と運動パフォーマンスの関係についてレビューしてみたそうです。余談ですが、この研究は上記で紹介した1983年の研究を行った研究者と同じとなっております。つまり糖質制限賛成派ってことですね。
まず結論から申しますと、

  • 運動パフォーマンスには糖質が重要というけど矛盾した結果がこんなにあるよ…!

っていうのをズラズラ~っと書いております。
そもそも糖質制限ダイエット、つまりケトジェニックダイエットと運動パフォーマンスの関係はいつから証明されたとなっているのでしょうか…?
研究者によれば、最古の記録の一つとして1878~1880年のシュワトカ遠征隊の記録が挙げられるそうです。シュワトカ遠征隊はフランクリン遠征隊の捜索隊でして、1879年4月に白人4人、イヌイットの3家族、合計18人で出発したそうです。
持ち物は1か月分の食料(セイウチの肉)と狩猟用ライフルと弾でして、ツンドラ地帯をひたすら歩くんですが、食料がなくなっちゃうんですよ。すると遠征隊は追加の食料源として狩猟や漁業、つまり、炭水化物がほぼない食事になってしまったそうです。
その時、持久力をどう維持したかですが、捜索隊の日記によれば、

  • 最初にトナカイの肉を丸ごと食べたとき、十分な栄養がないような感じに陥った。明らかに身体は衰弱し、激しい疲労を伴うようになり、旅を続けることが出来なくなった。しかし、これは2~3週間ですぐに治まった

としているそうです。
更に日記によれば、ゴールまでのラスト100マイル(≒161km)を48時間以内に歩いて帰国したというんだから驚きです。

次にハーバード大学の人類学者ヴィルヤルムル・ステファンソンの話に続きます。ステファンソンは一度で最大18ヶ月間もカナダの北極圏の僻地でイヌイットを一緒に暮らしたそうです。イヌイット(エスキモー)はほぼ肉しか食べない人たちなんで、当然炭水化物の摂取量がほぼありません。そこに1年半も一緒にいても問題なかったから糖質なんてなくても体力はOKという話みたいです。

そして、現代の研究でも糖質がなくても運動パフォーマンスは問題ないと話があるそうな。
例えば、バーモント大学の研究ではラボにこもって6週間、ケトジェニックダイエットをしてもらったとのこと。
トレッドミルでパフォーマンステストをしてみると、

  • 2週間の体重維持期間と6週間後のケトジェニックダイエット後のVO2maxは変わらなかった…!

そうなんですよね。
内訳をみると、スタートしてから1週間後はガクンと落ちていますが、その後の6週間でスタート時よりも大幅に体力がついたそうです。

またマサチューセッツ工科大学の研究では自転車レーサーを対象に5週間ラボで実験したそうです。
流れは、

  1. 普通に炭水化物(67%)を摂取してもらった
  2. 続いて、カロリーの83%を脂肪、15%をタンパク質、3%未満を炭水化物というケトジェニックダイエットを行った

って感じ。
​​ケトジェニックダイエットは4週間続けてもらったそうで、この間カリウムやナトリウム、カルシウム、マグネシウムといったミネラルも気にしており、サプリで補ったらしい。
自転車のパフォーマンスを見比べた結果、ケトジェニックダイエットで、

  • 主観的なパフォーマンスが適度に回復していた…!
  • 有酸素運動のパフォーマンスに変化はなかった…!
  • 但し、糖質制限期間中にスプリント能力は戻らなかった…。

って感じだったらしいです。

これらの結果から研究者は、

  1. 炭水化物を制限すると最初の1~2週間でパフォーマンスが低下する
  2. しかし、その後は有酸素運動パワー(VO2max)が60~70%になった
  3. つまり、持久力が完全回復したんだ…!

って結論に至ったそうです。
んで最後に今までの糖質制限の矛盾の原因は、

  • 適応することを計算に入れていない…!
  • ナトリウムとカリウムを計算に入れていない…!
  • タンパク質の摂取量を計算に入れていない…!

だから糖質なんていらん…!ケトジェニック最高…!という話で締めくくられております(超雑な意訳)


ということで、糖質制限賛成派にとっては持久力(体力)の面でも問題なし…!というなんとも頼もしい結論になっておりました。
しかし、よ~く見てもらうとあやしい部分がありまして、例えば、

  • 長期研究として挙げられているのはいずれも個人の体験談
  • パフォーマンスが問題なし…!という研究は1ヶ月しかみていない。つまり長期的になったらどうなるのか謎
  • スプリント能力はダメという結果だった

って感じです。
そう考えると個人的にはちょっとエビデンスとしては弱いかな~ってのが正直な感想ですね。



持久力と高脂肪食(=低炭水化物食)・高炭水化物食(=低脂肪食)の関係をメタ分析してみた…!

2005年のカンザス州立大学の研究によると、メタ分析を用いて、持久力のパフォーマンスには、高脂肪食(=低炭水化物食)と高炭水化物食のどちらが望ましいのか調べてみたそうです。
まず研究者たちは、いろんな食事とそれに伴う運動パフォーマンスの先行研究を検索してみたそうで、結果、20件の研究をピックアップできたんだとか。
次にこの20件の研究をメタ分析にかけてみたらしい。
その結果、

  • 高炭水化物食を摂取した場合、運動で限界が来るまでの時間がより長くなった(平均効果量-0.60)
  • 実験参加者が普段からトレーニングを行っているか否かで、効果量は変わっていた…!
  • 普段トレーニングを行っている参加者は、効果量の差が-0.05だった…!
  • 普段トレーニングを行っていない参加者は、効果量の差が-2.84だった…!

そうです。
つまり、高炭水化物食に関してはメリットがあったけど、高脂肪食(=低炭水化物食)には持久力アップの効果は見られなかったってことですね。



過去20年分の糖質制限ダイエットと持久力パフォーマンスの関係をレビューしてみた…!

2007年のカンザス州立大学の研究では、糖質制限ダイエットと持久力パフォーマンスの関係についてレビューしたそうです。
この研究は、アスリートがベストパフォーマンス出すためにアスリートや科学者は、今まで糖質制限ダイエットの効果を見てきたけど、実際どうなのか20年分の先行研究を見直ししてみたらしい。
まず糖質制限ダイエットの主な主張は、

  1. 糖質制限を行う
  2. 脂肪燃焼効果がアップ…!
  3. 筋グリコーゲンが節約される…!

って感じだったんで、ここに的を絞ってチェックしてみたそうです。
レビューしていった研究者のポイントを下記に記しますと、

  • 糖質制限で確かに脂肪燃焼効果はアップしそう
  • 但し、より多くの炭水化物の摂取と比較すると、高強度の運動を維持する能力が損なわれているか、少なくとも関係ないように見える
  • そうは言っても、臨床試験による結果、特に短期間の結果では、糖質制限ダイエットは、同じカロリー量の低脂肪食(=高炭水化物食)よりも体重と脂肪が大幅に減っていることは間違いない
  • したがって、低炭水化物・高脂肪食は、運動パフォーマンスは意味なし又はマイナスだが、ダイエットには使えるかもしれない

ということでした。
持久力運動の場合はゼロかマイナスにしか働かないみたいですね~。但し、このレビューによればダイエットには使えるかも…!って感じです。

但し、個人的にはダイエットにも懐疑的な見方をしております。
詳しくは、


をご覧いただけると幸いですが、長期的にみたら変わんなそうだし、そもそも高脂肪とか高炭水化物とかじゃなく、単に摂取カロリーの問題な感じなんですよね。
なので、脂肪だろうが炭水化物だろうが、食べれば太るし、食べなければ痩せるっていう当たり前な結論に私は落ち着いております。



2014年時点での糖質制限ダイエットと運動パフォーマンスを調べた研究をチェックしてみた…!

カナダスポーツ研究所のトレント・ステリングワーフ博士が2014年11月16日にあるツイートをしたんですよね。
このツイート内容は、糖質制限ダイエットと運動パフォーマンスを調べた研究をチェックしてみたら、こんなんなっていたぞ…!って内容が書かれております。
ではどんなだったか見ていきましょう(画像をクリック又はタップで拡大できます)


まず糖質制限ダイエットと運動パフォーマンスを調べた研究は全部で21件あったそうです。そもそも21件しかないんですね~。意外と少ない…。
次にその21件の研究の結果を大きく3つに区分けしてみたんだとか。
すると、

  • 糖質制限+運動でパフォーマンスがダウンした研究が12件…!
  • 糖質制限+運動のパフォーマンス効果は謎とした研究が7件…!
  • 糖質制限+運動でパフォーマンスがアップした研究が2件…!

って感じだったらしい。
これをみると2件の研究が過剰に注目されているだけで、実際は糖質を抜くとパフォーマンスは下がるという普通の結論みたいですね。そして、謎が7件もあるんで、そもそもよく分からん部分も多いと…。

ということで、そのときたまたま一度だけ糖質を抜いて運動しても良いのかもしれませんが、中長期的に行うのは待った方が良さそうな感じ。
やはり、普通に炭水化物を補給して運動をするのが良さそうですね。



炭水化物を増やすのはどうしても抵抗が…って方はカーボサイクルを行う

だけど、炭水化物を増やすのはどうしても抵抗が…って方は、カーボサイクルを試してみるとよろしいかと思います。カーボサイクルは炭水化物を大量に食べる時とそうでない時にメリハリをつける方法で、例えば、

  • 1,2日目は炭水化物を少なくする、3日目は炭水化物を大量に食べる。これを繰り返す
  • 朝昼晩の食事のうち、1食だけ大量に炭水化物を摂る、残りの2食は少なくする。これを繰り返す

などです。
良ければお試しください。



個人的考察

セットポイントの観点から見ても極端な糖質制限ダイエットはおすすめできず。やっぱ、マイルドな糖質制限ダイエットが良いな~と改めて思いました。
それと糖質制限ダイエットを行うと上記に書いた通り、体内の水分量が減って体重がスタートで一気に落ちます。ダイエットが長続きし、リバウンドも起きづらくなるためには、最初の1ヶ月で体重を一気に落とすのが有効…!って研究もありますんで、ダイエット1ヶ月目にマイルドな糖質制限を行ってモチベーションをアップさせ、その後、セットポイントやカロリーの質に気を付けたダイエットに移行するのが良いのかな~と私は思っていたりしております(そうすれば、ホルモンバランスが崩れて脂肪を溜め込むのを防げそう)



参考文献