糖質制限ダイエットってのが一時期流行りましたが、当ブログでも、いくつかそれって実際どうなの…?ってのをご紹介してきました。
今回は、そこんところを軽くまとめておこうと思います。



長期の研究では血糖値の上がりやすさはダイエットと関係がないと出ている…!

糖質制限の理由の一つに血糖値の上がりやすさによる空腹感ってのがあるので、そこについてバーッと研究を紹介していきますね。

2003年のトロント大学の研究によると34人の糖尿病予備軍の方を対象に、高炭水化物食と高GI食のグループにランダムに分かれて食事をしてもらったそうな。
結果、高炭水化物食のグループも高GI食のグループも同じ量だけ食後のグルコースが減少したとのことです。

2004年の王立獣医農業大学の研究によると健康で肥満な20歳から40歳の女性45人に協力をお願いして、低脂肪・高炭水化物食ダイエットを実践してもらったらしい。因みにその時に低GIダイエットグループ(23人)と高GIダイエットグループ(22人)に分かれてもらったそうです。
10週間にわたって行われた実験の結果は、食欲または体重調節に関しては違いがほとんど出なかったとのこと。

2006年のシドニー大学のRCTによると肥満体な若者129人を対象に、4つの低脂肪・高繊維食のうちの1つをランダムに振り分けて試してもらったそうです。
12週間行った研究の結果は、高タンパク質食と低GI食のどちらも体脂肪の減りが増加していたとのこと。

2007年のリオデジャネイロ州立大学のRCTによると25歳から45歳の健康な女性203人を対象に、高GI食グループと低GI食グループにランダムに振り分けて、食事の長期的な影響を調べたそうです。この研究では最初の6週間、軽く両食事法を試してもらったのち、高GI食グループと低GI食グループに分かれて18ヶ月様子を見たとのこと。
結果、まず完走できた人は60%だけで、40%の人がリタイアしたらしい。更に18ヶ月後の体重の変化は両グループにほぼ差がなかった(低GI食の方が103gだけ痩せていた)そうです。

2007年のクオピオ大学のRCTによると肥満な男女47人(平均年齢55歳、男性24人・女性23人)を対象に2つの異なる炭水化物食を試してもらったそうです。

  • ライ麦・パスタ食グループ(食後のインスリン反応が低い食事)
  • オート麦・ジャガイモ食グループ(食後のインスリン反応が高い食事)

結果、両グループの体重の変化に違いはなかったそうです。

2008年のインペリアル・カレッジロンドンのRCTによると18人の参加者に、低GI食か高GI食のどちらかをランダムに振り分けてとってもらったそうです。実験は12週間行われたそうですが、完走できたのは14人、うち1人は最終分析から除外したとのこと。
結果、高GI食でも別に太りやすくないって感じだったそうです。


んで、つまり、何が言いたいのかと言うと、

  • 長期的に見たら、変わらない

ってことです。
まぁ、なんで特にダイエット目的では気にしないでいいのかな~っと…。



糖質制限ダイエットとバランス食ダイエットを2年間比べてみた…!

2014年のステレンボッシュ大学系統的レビュー・メタ分析によると、糖質制限ダイエットはバランスの取れた食事ダイエットと比較して効果的に体重が減るのか、また、心血管疾患や糖尿病のリスクなど健康に対しても有効なのかを調べてみたそうです。
この研究は太りすぎや肥満の成人を対象としつつ、最低12週間のフォローアップを行っているランダム化比較試験をピックアップしたそうな。選ばれた研究は19件でサンプル数は3,209人、これを3〜6ヶ月グループと1〜2年グループの2つの期間に分けたとのこと。因みに糖尿病の参加者は別々に分析したそうです。
結果、

  • 3〜6ヶ月グループと1〜2年グループの血圧、LDL、HDL、総コレステロール、中性脂肪、空腹時の血糖値にほぼ違いはなかった…!
  • 糖質制限ダイエットとバランス食ダイエットのどちらでも短期的には体重が減少した…!
  • 2年間のフォローアップまでみたが、2型糖尿病の有無にかかわらず、糖質制限ダイエットとバランス食ダイエットの減量や心血管疾患のリスクにほぼ違いがなかった…!

とのこと。
つまり、この系統的レビュー・メタ分析から言えることは、糖質制限ダイエットとバランス食ダイエット(=炭水化物をとる)を2年間、全く同じカロリー量をとって比べてみたけど、減量・健康効果はほぼ同じ…!ってことになりますね。
う~ん。やっぱ糖質制限だから特に痩せやすいってことはないみたいですね~。



糖質の割合を70%にした食事と4%にした食事で減量効果を比べてみた…!

2006年のCSIROの研究によると、高脂肪超糖質制限ダイエットは心血管リスクに悪影響を与えると推測されているけど、本当なのか調べてみたそうです。この研究に参加した方は83名で平均年齢48歳、平均BMI=33だったとのこと。なかなかの肥満な人ですね~。
具体的には参加者を以下の3グループにランダムに振り分けたそうな。

  1. 超低脂肪高糖質ダイエットグループ(糖質:脂肪:タンパク質=70:10:20)
  2. 高不飽和脂肪ダイエットグループ(糖質:脂肪:タンパク質=50:30:20)
  3. 高脂肪超糖質制限ダイエットグループ(糖質:脂肪:タンパク質=4:61:35)

期間は12週間で気になる結果は、

  • どのグループも減量に有意差はなかった…。
  • 但し、高脂肪超糖質制限ダイエットは他のグループに比べ、HDLインスリン濃度を改善するのに効果的だった…!

とのことです。
糖質の割合を70%にした食事と4%にした食事で減量効果に違いが出なかったのは衝撃的ですね。つまり、ここでも糖質制限ダイエットは他に比べ痩せやすいわけではなかったってことになります。



糖質の割合を0%にした食事と72%にした食事で減量効果を比べてみた…!

1971年の研究によると、肥満体型の被験者3人を対象に、糖質量が0%のドリンクと72%のドリンクを飲んでもらい、変化を比べたそうです。因みに1日の摂取カロリーは1,500kcalになるよう統一したとのこと。
実験期間は4週間で結果、糖質72%は糖質0%に比べ、


とのこと。
糖質0%と72%を比べても、やっぱり減量効果に違いは出なかったみたいですねー。残念…。



糖質制限の0~2時間後はどうか…?

ここからは糖質制限の研究を実験期間別にみていき、結局、メンタルに良い効果があるのかないのか考えてみたいと思います。
最初は糖質制限をした直後の研究から見ていきましょう。
2014年のヴァーヘニンゲン大学RCTによると、クロスオーバーデザインを用いて糖質(ブドウ糖とショ糖)の効果を調べてみたそうです。
実験は自己申告による軽度の記憶障害がある高齢者43人を対象としたそうで、非糖尿病の高齢者も含まれていたとのこと。実験はシンプルで、ブドウ糖飲料、ショ糖飲料、プラセボのいずれかを飲んでもらい短期的な効果を比較したそうな。
結果、糖質制限すると抑うつ感や緊張などの気分が少し良くなったそう。
また2004年のブリストル大学の研究によると、3つの実験を行い、カフェイン飲料、糖質飲料、および炭酸飲料の影響を調査したそうです。実験の参加者は健康なボランティアを募ったそうで延べ271人が参加したとのこと。
結果、糖質制限すると疲労感や認知負荷の高いタスク中の気分とパフォーマンスをちょっとだけ維持又は改善することが分かったそうです。

つまり、ここから言えることは、通常飲食をすると血糖値の変動があり、それに伴って気分の浮き沈みが起こるが、糖質制限を行った場合はそれがないので、その間の時間(糖質制限直後から落ち着くまでの0~2時間ぐらい)のメンタルが落ち着いたまま維持できるってことですね。ちょっとの気分の浮き沈みでもヤバいような状態の方(不安症状やうつ症状がひどい方など)には、短期的な効果はあるのかもしれませんね。



糖質制限の4時間後はどうか…?

では、食べて落ち着いたころになる4時間後ではどうなのでしょうか…?
2013年のニューバランス財団肥満予防センターの研究によると18歳から35歳の肥満男性12人を対象に、高GI食と低GI食を2回食べてもらったとのこと。因みに実験はブラインド・クロスオーバーデザインで行ったそうです。
食事をした4時間後に色々調べてみたそうで、結果は、空腹感は低GI食よりも高GI食の方が大きかったそうです。つまり、空腹感によるイライラなどに悩まされずに済みそうな感じです。4時間後でも糖質制限のメリットはありそうな感じですね。でも4時間、4時間か…。



糖質制限の1週間後はどうか…?

次に1週間後はどうかの研究です。
こちらも以前に紹介した1991年のオーバーン大学の研究が参考になります。早速結論を見てみると糖質制限の1週間後、気分(メンタル)に悪影響が出たそうです。
ここで糖質制限によるデメリットが初めて見られましたね。どうやら糖質制限は食べた直後は良いけど、1週間続けるとまずいっぽい感じです。



糖質制限の3週間後・2ヶ月後はどうか…?

今度は3週間後・2ヶ月後はどうかの研究になります。
1989年のアムステルダム自由大学の研究によると、大学生20人を対象に食事による気分とパフォーマンスの影響を調べたそうです。参加者は10人の食事療法グループ(朝食に約70gのタンパク質と25gの炭水化物、夕食に10gのタンパク質と100gの炭水化物を食べる)と、10人の対照群(途中で1人脱落して最終的には9人)にランダムに振り分けたとのこと。
んで3週間後の朝食後と夕食後に気分とパフォーマンスの測定をしたそうな。更に2ヶ月後にも同じく測定したみたい。
結果、糖質が少ないと倦怠感が高く、気分や行動は特に良くならなかったそうです。つまり気分は良くならないので疲労感だけが増したと…。やっぱ悪影響が目立ってますね~。



糖質制限の1年後はどうか…?

最後は1年後どうなるかです。
こちらも以前に紹介した2009年のCSIROのRCTが参考になります。
早速結論を見てみると、高炭水化物・低脂肪食ダイエットグループは気分障害・怒り・混乱・うつ病のメンタルの浮き沈みが大幅に改善されたそうです。
つまり、1年間糖質制限を続けても特に気分が良くなったりせず、どころか、糖質をしっかり取った方がメンタルが安定したみたいです。



糖質制限の各期間を見た結論

色々見てきましたがやはり糖質制限は良くて半日ぐらいしかメリットがないようで、その後はメリットがなく、デメリットが出てきてしまうみたいですね。これは以前に書いた通り、カテコールアミンの慣れ+副腎による分泌量ダウンが大きく影響しております。
ということで、数時間だけメンタルを安定させたい場合以外は、基本的に糖質制限などせず、炭水化物はしっかり食べた方がメンタルには良さそうです。



では低GIダイエットはアリかなしか…?

糖質(炭水化物)制限ダイエットがダメなら、低GIダイエットはどうなのか、次に考えてみたいと思います。
GI(グリセミックインデックス)は、食後の血糖値の上昇度を表すもの。GI値が高いと、血糖値が上がりやすい食材となりますんで、基本的に低い物の方が健康的…!となるわけです。つまり、GI値が低い食品ほど痩せやすくダイエットに向いていると言われております。
そして、このGIを気にしてなるべく低く抑えるようなダイエットのことを低GIダイエットなどと言ったりします。
つまり、GI値の低い食品をなるべくたくさん食べて痩せよう…!みたいなコンセプトですね。皆さんも結構聞いたり、試した方も多いのではないでしょうか…?
ということで、効果の程はどうなのか…?早速研究を見ていきましょう



子どもを対象に低GI食の効果を調べてみた…!

2007年のボン大学の研究によると、朝食のGI値が健康な子どものカロリー消費量にどう影響するのかを調べてみたそうです。
この研究は、2歳、4,5歳、7歳の時の食事記録がある381人の子ども達を対象に行ったそうな。
早速結果を見てみますと、

  • 全ての年齢で朝食時、低GI食を食べていた子ども達は、高GI食を食べていた子ども達よりも1日の残りの時間により多くのカロリーを消費していた…!

とのこと。
低GIダイエットは、カロリー消費量をアップさせる可能性がありそうですねー。



低GIダイエットは満腹感の高め、空腹感を感じ辛くする可能性がある…!

2003年のユタ大学の研究によると、太りすぎの青年を対象に低GI食や高GI食を試してもらい、代謝やホルモン、満腹度に違いが出るのか調べてみたそうです。
実験はRCTのクロスオーバーデザインを採用したそうで、男女16人(男性8人、女性8人)に異なる3つの日にちに調べてみたとのこと。
結果、

  • グルコースは、低GI食の方が高GI食よりも43~46%も低かった…!
  • インスリンも、低GI食の方が高GI食よりも36~51%も低かった…!
  • カロリー摂取量に差はなかった…。
  • しかし、高GI食の方が低GI食よりも追加の食事をしたくなった…!(高GI食は3.1時間、低GI食は3.9時間で追加の食事を欲した)

だったみたい。
どうやら低GIダイエットには満腹感の持続力や空腹感を感じ辛くする効果があるのかもしれないですね~。
この結果に研究者も、低GIダイエットは長期の満腹感を与え、結果、カロリー摂取量を減らし、ダイエットが長期にわたって成功する方法と言えるだろう、としています。



どうやら年齢や体型に関係なく、低GIダイエットは満腹感の持続力が高そう…!

上記研究は参加者が子どもだったり、肥満体型の方を対象としていましたが、健康で普通体型の方には効果があるのか見ていきたいと思います。
2003年のTNORCTのクロスオーバーデザインによると、低GIの炭水化物と高GIの炭水化物を食べてもらい、空腹感や満腹感などに違いが出るのか調べてみたそうです。
今回実験に参加したのは、健康な男性26名でして平均年齢は34歳、平均BMIは23.4だったそうな。流れとしては、朝食で低GIの炭水化物か高GIの炭水化物を食べてもらい、その後4時間ごとに1日中測定し続けたらしい。
結果、

  • 高GIの炭水化物を食べると食後30分で、ブドウ糖とインスリンレベルが上昇した…!
  • 高GIの炭水化物の方が低GIの炭水化物よりも、食後180分で中性脂肪、食後180分と240分で遊離脂肪酸が高かった…!
  • 低GIの炭水化物の方が高GIの炭水化物よりも、食後から90分間の満腹感が高かった…!

そうです。
どうやら年齢や体型に関係なく、低GIダイエットは満腹感の持続力が高そうですねー。

でも実は、全く逆の結果がでている研究もあるんですよね。



高GI食は低GI食よりも食欲を抑制し、満腹感を高める働きがあった…!

2014年のエクセター大学RCTのクロスオーバーデザインによると、低GI食と高GI食が食欲やカロリー摂取量、カロリー消費量、代謝などにどのように影響するのか調べてみたそうです。
実験は、日常的にアクティブな男性14人(平均年齢34.5歳、BMI=22.8)を対象に、2日間に分けて低GI食と高GI食を食べてもらい行ったそう。因みに実験室で朝食や昼食、夕食、軽食を食べてもらい、食欲やカロリー摂取量、カロリー消費量をチェックしたそうな。
結果、

  • 高GI食は低GI食よりも、明らかに食欲が減っていた…!
  • カロリー摂取量やカロリー消費量、代謝などは違いがなかった…。

とのこと。
この結果に研究者曰く、これらの結果は、以前の報告とは異なり、高GI食を摂取すると低GI食よりも食欲が抑制されるが、アクティブで標準体重の男性のエネルギーバランスに影響はしなかったことを示している、としています。
う~ん。全く逆の結果ですねー。

また1997年のトロント大学の研究によると、非糖尿病の標準体重の男性13人を対象に3つの食事法を試してもらい、血糖値と満腹感について食後30分と食後120分の2回にわたって測定して調べてみたそうです。
結果、GI値の違いで満腹感は変わらなかったみたい。
やはり、真逆の結果ですねー。

更に面白いのが2008年のルンド大学の研究でして、こちらは健康な参加者を対象にじゃがいも製品を食べてもらい、血糖値と満腹感を調べてみたそうです。実験は全部で2回行われたみたいで、最初の実験には13名が参加し、2つ目の実験には14名が参加したとのこと。
最初の実験では、まず、実験前日の夕食から断食をしてもらい、朝食に以下の食べ物をランダムに振り分け食べてもらったそうな。

  1. 茹でじゃがいも
  2. フライドポテト
  3. マッシュポテト

食後240分に血液を採取し、更に主観的な満腹感も調べたそうです。
2つ目の実験では、朝食の食べ物を変えたそうで、フライドポテトに含まれる炭水化物量に相当する4つの食事を用意して食べてもらいつつ、食後180分に血液を採取し、同じように主観的な満腹感も調べたそうです。
結果、

  • 茹でじゃがいもはフライドポテトよりも主観的な満腹感が高かった…!
  • 茹でじゃがいもに油を加えたもののGI値は131、茹でじゃがいもに油を加えないもののGI値は111、フライドポテトのGI値は77だった…!(つまり高GI食の方が満腹感が高いことになる)

とのこと。
また研究者によれば、茹でじゃがいもはフライドポテトよりも満腹感があり、その効果は食後初期に最も顕著だったそうなんで、はやり全く逆の結果が出ていたりします。う~ん。難しい…。
まぁ、以前にご紹介した食品の満足度も圧倒的に茹でじゃがいもが高かったんで納得できる結果ではありますが、これらをみると低GIダイエットの効果に疑問符がついてしまいますねー。



そもそもGI値だけで考えようとするのは無理なのではないか…?

そもそもGI値だけで考えようとするのは無理があり過ぎまして、例えば、加工食品と生の野菜フルーツのGI値を合わせて同じく考えよう…!とはならんのですよ。
もうちょい具体的に言うと全粒穀物・精製穀物の記事のところで紹介した2008年のGI値とGL値の国際表によれば、


って感じでほぼ同じGI値で考えてみても、明らかにアイスクリームやポテトチップス、ソフトドリンク、ポップコーンの方が太りやすいですよね。これを一括りにするのはちょっと無理がありますよね…。
更にいえば、GI値だけでダイエットを考えるには大事なパーツが抜け落ちていまして、それがカロリーの質です。やはり食事報酬の観点が抜け落ちた状態ではいくらGI値を気にしても意味がないのかなーと思います。



低GIダイエットを見た結論

結局のところ、GI値を基準にしたダイエットの効果はよく分からないって結論になっちゃうんですが、個人的には、関連性の錯誤が起きているのかなーと思ったりしています。つまり、GI値を気にする結果、自然と野菜多めの食事になっていったり、カロリーの質を気にした食事になっていったりするのではないかと…。
いずれにしても、低GIダイエットを試すのであれば以前に紹介した地中海式ダイエットDASHダイエットMINDダイエットあたりを試す方が良いと思いますねー。



耐糖能が問題ない人は低GI食で気分・記憶力がアップ…!また低GI食のメリットを受けるのは耐糖能が高い人…!

2014年のスウォンジー大学RCT・二重盲検によると、耐糖能の個人差によって認知機能や気分に違いが出るのか調べてみたそうです。
この研究は健康な45~80歳の中高年の方155人に参加を協力したそうで、まずは全員のベースラインをチェックしたそうな。
続いて以下の3グループにランダムに分かれてもらい、朝食(8:45~9:00)を取ってもらったとのこと。朝食は糖質カットジャムをつけたトースト(60kcal)×2と、低脂肪プレーンヨーグルト100gだったみたいで、このヨーグルトに以下の甘みを15gつけたらしい。

  1. ブドウ糖
  2. ショ糖
  3. イソマルツロース(グルコース+フルクトース

合わせて上記のうちの1つを25g使って甘くしたオレンジ風味ジュースも飲んでもらったそうです。
更に朝食後、30分後、105分後、195分後に参加者の気分と認知能力をチェックしたとのことでした。
んで結果が、

  • 耐糖能が問題ない人は、高GI食よりも低GI食の後の方が気分やエピソード記憶ワーキングメモリが良かった…!この効果は食後105~195分に最も強くなっていた…!
  • 耐糖能が低い人の方が、低GI食のメリットを受けると考えられていたが、実際には耐糖能が高い人の方がメリットを受けていた…!

とのこと。
どうやら耐糖能の個人差によって、高GI食・低GI食による認知機能や気分の違いの出やすさが変わるみたいですねー。
ってことで、基本的に低GI値の食事を取った方が気分良く過ごせそうな感じ。また記憶力を使う行動(勉強など)を行う場合もなるべく低GI値の食事を取った方が良さそうですね~。



テスト前はGI値が48ぐらいの物を食べるべし…!

2011年のラフバラー大学RCT・クロスオーバーデザインによると、低GIの朝食は記憶力や注意力なんかをアップする…!って話だけど、子どもの場合はどうなのか…?調べてみたそうです。
今回実験に参加したのは12~14歳の子どもたち52人でして、最後までやり遂げたのは41人だったそうな。
んで、まず子ども達には普通に学校に登校してもらい、着いたら10分間、椅子に座って休んでもらったそうです。続いて、毛細血管から血液サンプルを摂取したとのこと。
ベースラインをチェックしたところで、以下の3グループにランダムに振り分けて、朝食をとってもらったそうです。

  1. 低GIの朝食(GI値=48)
  2. 高GIの朝食(GI値=72)
  3. 朝食なし(実験終了後朝食を食べる)

朝食の時間は15分間で、その後更に15分間休憩してもらったそうな。
そして、朝食をとってから30分後と120分後に認知力テスト(ストループテストやフランカー課題など)を行ってもらったとのことです。
因みに血液サンプルの採取は、朝食開始前を0分として、0分、15分後、30分後、60分後、120分後に行ったみたいです。
イメージはこんな感じ。


この実験を7日間の間隔でスケジュールし、行ったとのことでした。


…っとここで、まだ当ブログでご紹介していなかったフランカー課題について触れておこうかと思います。
フランカー課題(フランカータスク)ってのは選択的注意(注意の持続)をテスト・アップする方法となっております。因みに選択的注意(注意の持続)ってのは、自分が向けたい注意の方向に注意を向け続ける能力のことを言いまして、要は集中力のことですね。
んで、フランカー課題が具体的にどんなもんかと言いますと、

  1. 矢印や魚(子供の場合魚のイラストが多い)が5つ(5匹)画面に表示される
  2. その中の真ん中の矢印・魚が向いている方向(右か左)を瞬時に判断して、選択する(ボタンを押す)
  3. 画面が切り替わるので、また向きを見て選択する。これを時間いっぱい繰り返す…!

って感じとなります。
矢印・魚の表示時間は0.4~4秒ぐらいで、選択するまで矢印・魚は画面に表示し続けられます。
例を挙げておくと、

  • →→→→→なら、右
  • ←←←←←なら、左
  • →→←→→なら、左
  • ←←→←←なら、右

となります。
当然、全ての向きが同じ方が答えやすく、向きが混ざっている方が難しい感じです。
そして兎に角、真ん中の情報以外を無視して答え続けられるかがポイントになります。
ちょっとやってみたい…!って方は以下からどうぞ。

【魚のフランカー課題】


【矢印のフランカー課題】


それと余談ですが、フランカー課題以外で選択的注意(注意の持続)をアップさせる方法としては、


がございます。


…話を戻しまして、以上の実験を行い、最後にデータを統計分析して、GI値が認知機能に与える影響をまとめてみたそうです。
気になる結果は、

  • 低GIの朝食後の判断スピードは、大幅な改善があった…!
  • 低GIの朝食の方が高GIの朝食よりも認知力テストの結果が良かった…!
  • 低GIの朝食と高GIの朝食の間にインスリンの違いはなかった…!

とのこと。
つまり、テスト前など頭を使う作業前の食事は、

  • GI値が48ぐらいの物を食べると良い…!
  • GI値が72ぐらいの物を食べるとダメかも…!

って感じですね。
やっぱり低GI値、つまり血糖値を安定させた食事が良さそうですね。



糖質制限ダイエットをやめた方が良いかどうかの判断基準

糖質制限ダイエットも当然個人差があり、合う合わないがございます。
またどこからが極端な糖質制限で、どこからがマイルドな糖質制限かも難しい所です。
そこで、ポイントを軽くまとめておきます。
もし、下記の状況だな~と思う場合は、チートデイを導入し、いったん炭水化物を食べてみた方がよろしいかと…。


疲労感がハンパない…!

常に疲れた感じが抜けず、運動から趣味など何もやる気が起きないパターン。特に運動を習慣化している方は、エネルギーとして糖質を使うので補給しないとガス欠になってしまいます。糖新生(タンパク質をブドウ糖に変えちゃう動き)も起きるんで糖質を補給しておきたいところ。


運動がきつい&無駄になる…!

上記で書いた通り、糖質は運動の際にエネルギーとして使われるんでこれがないと、以前にできていたレベルの負荷の筋トレや有酸素運動が出来なくなってしまいます。
更に、糖新生のせいで、せっかくタンパク質を補給し、筋肉成長を促そうとしても糖質の代わりに使われちゃうんで一向に育たずという悪循環。
特に運動後は、使ったエネルギーを補充しておきたいので、しっかり炭水化物を食べておきたいところ。因みに運動後腹が減って食べ過ぎる…!ってことについては個人差がありそうですが、おおむね関係なさそうな感じ。むしろ痩せる人もいるみたいですしね…!


万年冷え症&太る…!

糖質制限で甲状腺ホルモンに異常が出ると、様々なバッドステータスが出てきます。特に代謝のダウンは冷え性を呼ぶんで注意が必要。
そして代謝が下がるともちろん脂肪燃焼効果もダウンしますんで太ってしまうことに…。
これじゃあ本末転倒なんで、心当たりのある方は炭水化物を摂取しましょう。


慢性ストレス状態に…!

糖質を制限した状態を続けるというのは、半飢餓状態を続けるということになります。そして、ミネソタ飢餓実験の通り、半飢餓状態の継続はコルチゾールを激しく分泌させ、メンタルを蝕んでいきます。結果、慢性ストレスとなってしまいますので要注意です。
その結果、上記で挙げたような様々なバッドステータスを喰らいダイエットどころではなくなってしまいますんで、やはり適度に炭水化物を補給し、メリハリをつけていきたいところ。


寝れない&たっぷり寝ても寝た気がしない…!

糖質は睡眠の質に大きく関わっているので、当然足りない状態が続くと睡眠の質に影響が出てきます。糖質は、セロトニンメラトニンの生成に深く関わっているので当然ですね。そのため、寝る2時間前に炭水化物を摂取するとよろしいかと思います。例えばキウイフルーツ白米などですね。合わせてタンパク質を摂取しておくと筋肉の成長にも良さそうなんで、プロテインを飲むのも効果的かと思います。


上記に挙げたような状態が続くようなら炭水化物を摂取してみると良さそうだと思います。



脳の進化の過程で炭水化物は重要な役割を果たしていた…!

2015年のバルセロナ自治大学などの研究によると、人類の進化に炭水化物は超重要だったそうです。
というのも以前の研究では野菜の食事から肉を食べるようになったことが脳やその他のヒトの進化に重要だったと言われているんだけど、実は進化によって成長する脳の代謝増加に対応するために炭水化物も必要だったそうなんですよね。つまり、脳の巨大化や発達に炭水化物は必須だったと…。

また炭水化物は、消化性と嗜好性をアップさせるための調理にも重要な役割があったそうです。調理された炭水化物は脳や赤血球、胎児の成長など高いエネルギーを必要とするようになった人類の進化を支えていたみたい。

更にアミラーゼ遺伝子のコピー数が増えたため、デンプンを上手く消化できるようにもなったそうな。このアミラーゼ遺伝子の変化は約100万年前にはすでに起こっていたそうで、人類史の初期から炭水化物が重要な役割を担っていたそうです。

糖新生によってブドウ糖を補うこともできなくはないですが、これじゃあ全然脳の維持の為のエネルギー量が足りない訳で、やっぱり炭水化物の摂取は必須。そのため極端な糖質制限ダイエットはせずに、炭水化物をしっかり摂取しておかないと脳機能の維持は難しそうですね。



高GI値の食事とうつ病は関係あるのか…?

2015年のコロンビア大学など縦断研究によると、高GI値の食事とうつ病は関係あるのか調べてみたそうです。
そもそも加工食品ソフトドリンクなんかの摂取量とうつ病リスクの増加は関係しているって先行研究で出ているけど、これって食事のGI値が関係しているからでは…?ってなったみたいです。
実験はWomen's Health Initiative(WHI)っていう、1994年9月1日~1998年12月31日までに行われた50歳~79歳までの女性93,676人のデータセットを用いたもので、スタート時に食事アンケートやうつ病スケールに答えた87,618人の中から、3年間の追跡調査が出来た方69,954人を対象に行ったそうな。
それでは集まったデータを統計処理した結果を見てみましょう。
まずは、GI値が高い食事を取る人の共通点ですが、


とのこと。
では次に高GI値の食事を取る方とうつ病の関係を見てみると、

  • 年齢が若かった…!
  • BMIが高かった…!
  • 運動頻度が少なかった…!
  • 飽和脂肪酸(SFA)や一価不飽和脂肪酸(MUFA)、多価不飽和脂肪酸(PUFA)トランス脂肪酸の摂取量が多かった…!
  • 果物野菜・食物繊維の摂取量が少なかった…!
  • 健康的な食事スコアが低かった…!
  • ヒスパニック系の方が多かった…!
  • 低学歴の方が多かった…!
  • 低所得の方が多かった…!
  • 糖尿病の方が多かった…!
  • 高血圧の方が多かった…!
  • 脳卒中の方が多かった…!
  • 心血管疾患の方が多かった…!
  • がんの方が多かった…!
  • アルツハイマーの方が多かった…!
  • ホルモン補充治療を受けていない方が多かった…!
  • タバコを吸う方が多かった…!
  • ストレスの多い生活を送っている(=慢性ストレスを抱えている)方が多かった…!
  • 社会的支援が少ない方が多かった…!

とのこと。
一言で言うと高GI値を取る人は、不健康な食生活や持病を持っているなどあったみたいです。これだけ見てもいろんな要因が考えられそうですな。
更に詳しくて見てみますと、

  • 炭水化物の摂取量が多い人(食事のGI値が高い人)は少ない人に比べて、うつ病リスク(1.22)が高かった…!
  • うつ病と血糖値はU字型の関係があった。つまり極端に多すぎず少なすぎずな人が最もうつ病リスクが低かった…!
  • 食事に使われている砂糖の量が多いと、うつ病リスク(1.23)が高かった…!
  • 最も砂糖の摂取量が多いグループの人たちは、3年後にうつ病を経験している可能性が超高く、その傾向は顕著だった…!
  • 食物繊維の摂取量が高いと、うつ病リスクが減少していた…!
  • 全粒穀物の摂取量が高いと、うつ病リスクが減少していたが、完全調整モデルではその有意差はなかった…!
  • 精製穀物の摂取量が高いと、うつ病リスクが高く、最も精製穀物の摂取量が多いグループの人たちは、うつ病リスクがさらに高かった…!
  • 果物野菜の摂取量が高いと、3年後のうつ病リスクは減少し、その傾向は顕著だった…!
  • 完全調整モデルでは、果汁を除き、果物と野菜の摂取量がある程度高い~一番高いグループの人たちは、うつ病リスクが超低かった…!
  • ナッツや種子豆類はうつ病リスクと関係なかった…!

とのこと。
つまりまとめると、

  • 確かに高GI値の食事でうつ病リスクはアップしていた…!
  • 但し、他の要因でもうつ病リスクはアップしていた…!

って感じ。
更にいえば、他の要因ってのが上記の通り、かな~り広範囲なんで、少なくとも高GI値の食事のみがうつ病の原因とは言えませんなー。



個人的考察

更に以前紹介した通り、


なんて話も踏まえていくと、特に他の制限ダイエット系より痩せやすいってことはないけど、

  • スタートで勢いが付きやすいからそれでダイエットに成功する人が多くて、他の制限ダイエットより良いのではないか…?
  • 糖質を制限する代わりにタンパク質の摂取量が多くなるからではないか…?
  • 糖質を制限することによって単純に総摂取カロリーが減るからではないか…?

と想像しております。
まぁ、いずれにしても、極端な制限ダイエットはやめた方が良いと思いますね~。



参考文献