TVゲームやスマホゲームはなんでこんなに面白いのか…?
私はゲームが超好きなんですが、ある時この疑問が湧きまして、結局、それらを考えて、応用しようと思い、学生時代、勉強などに活かしておりました。のちにこのテクニックが、ゲーム化(ゲーミフィケーション)と呼ばれると知り、あぁ、結構良い方法だったんだな~と改めて感じた次第です。因みにゲーミフィケーションという言葉は、2008年に造られたそうです。
ということで今回は、ゲーム化・ゲーミフィケーションについて書いていきます。



ゲーム化(ゲーミフィケーション)ってなに…?

2013年のAlterSparkの社説によると、ゲーミフィケーション(ゲーム化)とはなんなのか、現時点の情報をまとめてみたそうです。
ということでまずはゲーム化(ゲーミフィケーション:Gamification)ってなに…?って話から。ゲーム化の定義については2011年のハンブルク大学などの研究が参考になりまして以下のようになっております。

  • ゲーム化(ゲーミフィケーション)とは、ゲーム以外の文脈でゲームデザイン要素を使用することと定義される。

う~ん。わかりづらい(笑)
ってことでもうちょい分かりやすく言いますと、

  • ゲーム化(ゲーミフィケーション)とは、ゲームの要素を現実世界で応用して使っていくって考え方

となります。
例えば「毎日服薬をする」みたいなゲームとは関係ない日常生活の行動に「薬を飲むとポイントを獲得できるようにする」って感じでゲーム要素を取り入れることです。
次にゲーム化の効果を発揮しやすい要素なんですが、こちらは以下の7つとのこと。

  1. 目標設定:目標を達成するために全力を出すときにゲーム化を使うと良い…!
  2. 課題を克服する能力:成長や学習する機会にゲーム化を使うと良い…!
  3. パフォーマンスのフィードバック:経験を通じて継続的なフィードバックを受け取る際にゲーム化を使うと良い…!
  4. 強化(行動を増やす):報酬を獲得し、罰を回避するのにゲーム化を使うと良い…!
  5. 進捗の比較:自分と他者の進捗状況を比べるのにゲーム化を使うと良い…!
  6. 社会的なつながり:他者との交流にゲーム化を使うと良い…!
  7. 楽しさと遊び心:別の楽しさや遊び心を持つのにゲーム化を使うと良い…!

これらのことを行う際にゲーム化を取り入れると良いみたいです。
お次はゲーム化の具体的な手段は色々あるけどどれが良いのか…?ってことで、最も人気のあるゲーミフィケーションテクニック10選を決めたそうな。ということで早速チェックしておきましょう…!

  1. 明確な目標を与える:ラスボスの設定など。
  2. 挑戦を提供する:クエストを用意するなど。
  3. レベル制を取り入れる:経験値を積むレベルアップする流れ(段階的なチャレンジする流れ)を作るなど。
  4. ポイントの付与:クリアするとポイントがもらえる、倒すと経験値がもらえるなど。
  5. 進捗状況の表示:どこまで進んだか分かるようにするなど。
  6. フィードバックの提供:重要なキャラクターからアドバイスをもらうなど。
  7. 報酬を与える:物事が進んだりクリアすると、ゲームのようにご褒美がもらえるなど。
  8. 成果に対するバッジの提供:クリアしたらトロフィーや勲章がもらえるなど。
  9. ゲームリーダーの表示:パーティーメンバーのリーダーを分かるようにするなど。
  10. ストーリーやテーマを与える:行っている事の流れや何をすればいいのかをはっきりさせるなど。

やっぱこう見るとRPGを基本にして考えるとゲーム化は分かりやすいですな。
続いてゲーム化の効果の研究についてです。
そもそもゲーム化の研究ってのは2010年ぐらいに開始したため、始まったばかりの分野だと言えます。ただ少しずつ質の良い研究も出てきており、2014年のタンペレ大学の研究では系統的レビューなんかも行われるようになりました。この中で研究チームは、ゲーム化が心理的・身体的影響を与える可能性があることを多数の研究から証明しているんですよね。
一方で、全ての研究でプラスの効果が出たわけではなく、ゲーム化が煩わしいと思う人もいたそうな。またオンライン学習や組織内システム、作業環境などの研究が多く、それ以外の場合の研究は不足気味だったらしい。更に長期的な効果があるのか、短期的な効果しかないのかも分からなかったそうな。まぁ、この辺は今後の研究に期待ってところでしょうな。
その中でもゲーム化の効果が科学的にしっかり証明されている部分は、この社説発表の時点では健康に影響を与える分野のみとのこと。
そしてゲーム化(ゲーミフィケーション)を使っての検証済みの行動変化をゲーム化の効果を発揮しやすい要素に当てはめてまとめてみたそうです。その結果は以下な感じ。

  • ゲーム化を使った項目:検証済みの行動変化
  • 目標設定:目標に向かって行動することを他人と約束する、目標設定を行う。
  • 課題を克服する能力:時間管理や計画管理を行う。
  • パフォーマンスのフィードバック:行動や結果に対してすぐに自分の良かったところ、悪かったところをモニタリングする。
  • 強化(行動を増やす):成功した行動に応じてご褒美を与える。
  • 進捗の比較:行動に対してすぐに自分の良かったところ、悪かったところをモニタリングする。他者の行動に対する分析と情報を伝える。
  • 社会的なつながり:社会的影響力がつく、社会的サポートや変化を計画する。
  • 楽しさと遊び心:該当なし。

上記で最も効果的で統計的に有意なものは上位2つだったそうなんで、目標設定や課題(問題)の克服にゲーム化を使うと良いみたいですね。つまり目標を立ててそれに向かって計画を進めて行くときに使えると。やっぱRPGの要素が一番ゲーム化しやすく効果もありそうですな。
但し、社会的なつながりや楽しさと遊び心を除く、全ての項目は効果があるんじゃないかな~とも社説には書かれておりましたんで、フィードバックや強化(行動を増やす)、進捗の比較にもゲーム化は効果がありそうな感じです。



TVゲームやスマホゲームはなぜ面白いのか…?

ゲームってのは良くできていて、続けたくなる、つまり、モチベーションが下がらず、常に上がっていけるようにうま~く作られております。
その典型的な例がRPGです。
例えば、最初の町をでて、いきなりラストダンジョン近くのモンスターが出てきたら勝てるわけないですよね。それでずっと次の町に進めなかったら、クソゲーとして認定されることでしょう(笑)
つまり、自分のレベルである程度どうにかなる難易度のモンスターやダンジョンになっているんです。そして、同じところからスタートせず、次の町、次の町と色々な場所に移動していきます。つまり、どんどん新たな場所に進んでいくんですよね。当ブログで何度も書いている前に進んでいる感覚(前進感)が味わえるように出来ています
もちろんこれだけではなく、他にも要所要所に前に進んでいる感覚が味わえるようにしております。例えば、新しい武具が出てくるとか、経験値が貯まるとかレベルが上がるとか…。新しい技や魔法を覚えるとか…。こんな感じで、様々なところで常に前に進んでいる感覚を味わえるように設計していますんでゲームって面白いんですよね。

そして、ダンジョンに入っていくと、モンスターと戦いつつ、経験値やレベルアップ、新しい技や魔法を覚えたり、宝箱を開けたりします。そして、少しずつ、HPやMPが減っていき、回復アイテムも減っていきます。
んで、あぁ、きついな~でもここまで進んだ努力が無駄になるのが嫌だな~ってときに目の前に現れるのです。
そう、セーブポイントです。
セーブポイントの配置は絶妙で、もし、途中で失敗(全滅)してもすべて無駄にならないようになっています。まさにモチベーションが下がらないようにした工夫と言えるでしょう。さらに、難しい場面の前にもセーブポイントはあります。
そう、ボス部屋の前です。
あれもよく考えられていますよね。
このようにゲームはモチベーションが下がらないよう、細部に工夫を凝らし、そして如何にモチベーションを上げ達成感を味わえるようにできているかがわかるかと思います。



勉強やダイエットはゲームのように面白くない…!クソゲーに思えてしまうのはなぜか…?

しかし、現実世界になると、面白みがなくなることが多々あったりします。例えば、勉強やダイエットのようなものはクソゲーの如く、面白くありません(笑)。それは様々な要因があると思うのですが、個人的に一番思うのは、現実世界では自分のステータス画面が見えないってのが大きいように感じます。
例えば、経験値が手に入っていても、それを実感できるシーンはなかなか少なかったりします。同様に、レベルが上がっても音楽もテロップも何も出てくれません。つまり、本人の気づかないうちに経験値もレベルも上がっているんですが、その達成感は味わいづらい、下手すると気づけずスルーしてしまう、それが現実世界なんですよねー。また、ゲームのように後でステータスを見返してニヤニヤすることもできません(笑)。ここが辛いように思います。レベリングする気なんておきませんよね。
そして、自分のステータスが下がっていくことにも気づけなかったりします。例えば、運動をしないと体力が徐々に落ちるような感じですね。
更に、中間セーブポイントがちょうどいい場所に用意されていないのも辛い仕様となっております。ありきたりな言い方ですが、リセット、コンティニューが出来ないのもつらい仕様です。

このように現実世界をゲームに置き換えると、なかなかのハードモードでして、となると、それなりに対策や攻略のヒントを探す時間、オリジナルの攻略本の作成とやらなきゃいけないことがたくさんあるんですよね。
そこで、ゲーム化を使います。例えば、隠しステータス画面である現実の経験値やレベルを見たければ、常に数値化をしてみる。つまり、見える化(可視化)をしてみましょう。すると、前に進んでいる感覚がゲームほどではないにしても味わうことができます。
同様にこまめに自分で中間セーブポイントを作ったり、すると計画(攻略)がはかどります。自分に対してくるデバフについてはオリジナルの攻略本(コーピングレパートリー)で対応しましょう。
こんな感じで考えていくと現実世界も結構、攻略しがいのあるゲームのような気がしますねー。



ゲーミフィケーションのフレームワーク「スクルの輪(The Wheel of Sukr)」ってなに…?効果はあるの…?

2016年のサウサンプトン大学の研究によると、慢性疾患の自己管理にゲーム化(ゲーミフィケーション)が有効なのか調べてみたそうです。
そもそも2012年のUHNの研究2012年のノルウェー科学技術大学の研究といった先行研究により、ゲーミフィケーションで慢性疾患を持つ患者さんの服薬管理などをちゃんとさせる効果がアップする可能性が見えていたんですよね。
但し、慢性疾患の管理にポイント制とバッジ提供だけで行うと、ゲーミフィケーションの長期的な効果がなくなり、ゲーミフィケーションの目的自体もなくなっちゃう可能性があったんですな。つまりゲーミフィケーションの全てのメリットを利用していくことが大事なんじゃないかとなったそうです。
そこで、それらをまとめたフレームワークとして作られたのが、スクルの輪(The Wheel of Sukr)です。スクルの輪は同研究チームが2015年に発表したものでゲーミフィケーションを利用した初の慢性疾患の自己管理フレームワークとなっております。ゲーム要素や自己管理の実践法、行動変容テクニックを組み合わせた、より健康的な行動を強化する(多く取れる)ようにしたものなんですな。
そんなスクルの輪は、8個のメイン要素と28個のサブ要素からなっておりまして、具体的には以下のような感じです。


では、ここから更に細かく項目を見ていきましょう…!

  • 社交:同じ状況を共有できる人々のグループに入り、社会的なサポートや感情的なサポート得ること。その結果、クリア報酬の価値を高める。要はゲームで同じ目的(ボスを倒すなど)を持っているメンバーでパーティーを組みましょうってこと。そうすればクリアしたときの嬉しさも共有できて一入ですしね。
  • 自己表現:自分の経験に合った難易度設定をすること。その結果、自分にちょうど良い経験が得られる。要はゲームでレベル1のキャラでラスボスに挑んでもムリゲーなんで、まずはスライムやゴブリンから倒していきましょうってこと。そうすればちゃんと今の自分のレベルに合った経験値が得られますしね。
  • 楽しさ:バッジやポイントを得る、挑戦や他者と競争するなどして色々体験すること。その結果、楽しさがアップします。要はゲームでバッジやポイント、トロフィーをゲットする、新しいフィールド、ダンジョンに行く、他人とクリアタイムや記録のランキングを競うなどしてみようってこと。そうすれば楽しいですからね。
  • 自尊心マズローの欲求5段階説の「承認欲求」を満たすこと。その結果、糖尿病の管理(慢性疾患の管理)を精神的にサポートしてくれる。要はゲームで高レベルだったり、レアキャラを持っていたりすること。そうすれば皆から良いな~って言われて嬉しいですからね。
  • 成長前に進んでいる感覚(前進感)を感じられるようにすること。例えば、糖尿病(慢性疾患)なら、ちゃんと管理し、健康的な習慣が出来て、病気に詳しくなるみたいなのが成長ですな。要はゲームでボスが倒せず一向に先に進めないとクソゲー認定されますが、サクサク進むとのめり込んでいくのと一緒ですね。
  • 持続可能性:望ましい効果を維持するために、ちょうどよいレベルの難易度を維持すること。その結果、続くし習慣化できますからね。要はゲームでレベルを上げる→ボスを倒す→武器が手に入る→もっと強い武器が欲しいのでレベル上げを頑張る→強いボスを倒す→もっと強い武器が手に入るって感じでレベリングとか頑張れるのと一緒ですね。
  • モチベーション:内から湧くモチベ、外からくるモチベ、どちらのモチベも得られるようにすること。その結果、モチベがアップし辛くても粘り強くなれますからね。要はゲームで、もっと強くなりたい…!みたいな内側からくるモチベやランキング上位でスゲーみたいに言われる外からくるモチベのこと。そうすれば自ずとモチベはアップしますからね。
  • 自己管理:ログ(記録・日記)をとったり分かりやすく見える化したりすること。例えば、糖尿病だと血糖値やインスリン、食事の摂取量、運動量なんかを記録したり、定期的に振り返ることは基本となります。また血糖値の測定結果があやしいときはすぐに気付く事もできます。その結果、常に自分の状態をチェックできるとともに努力した成果を確認することもできますよね。またセルフコントロールやる気もアップできるんじゃないかと。要はゲームで経験値がどんどん増えていく、レベルが上がるってこと。積み上がっていけば積み上がっていくほど、セーブデータをリセットするのが惜しくなりますからね。

確かに、ゲームにハマる理由をちゃんと分解して考えていくとこのような図式になりますな。
では、このスクルの輪が本当に効果的なのか調べた研究を次にチェックしていきます。この研究では、スクルの輪について専門家のインタビューと患者さんへのアンケートを行ってみたそうで、2つの概要は以下な感じ。

  • 専門家のインタビュー:糖尿病の医師や精神科医、心理学者、ゲームの専門家など8名に聞き取りしてみた。
  • 患者さんへのアンケート:18~40歳までのサウジアラビア(糖尿病が非常に多い国)の糖尿病患者さん42名にアンケートを行ってみた。

んで、専門家インタビューの結果は以下のようになったそうです。

  • 社交:ある専門家は「今日の世界では、SNSが思春期などの若者に与える影響は非常に大きい。実際、医者よりも強い影響力を持っている可能性がある」と述べていた。そのため、社交は他の全ての項目を結び付ける上で不可欠な可能性が高い
  • 自己表現:ある専門家は「自分がやっていることをコントロールしているという感覚(=自己コントロール感)があれば、自分が主体であると感じることができる」と述べていた。そのため、自己表現は自己コントロール感と目標、達成できることと深いつながりがある
  • 楽しさ:糖尿病患者さんに楽しさを提供するというアイディアは専門家から強く歓迎された。ゲームのように楽しみながら進めていくことは自己管理の改善に良い影響があると思われる。
  • 自尊心:自尊心は糖尿病の自己管理に関する行動にポジティブな変化をもたらす可能性がある。
  • 成長:専門家によれば、フィードバックなどは糖尿病の自己管理に不可欠であると述べていた。そのため、成長は重要な項目であり、全ての項目を組み合わせて使うことによって新しい習慣や一貫性を生み出すのに役立つ可能性があるとのこと。
  • 持続可能性:持続可能性は成功には必要不可欠とのこと。またちょうどよいレベルの難易度を維持することで糖尿病の自己管理における行動にプラスの影響をもたらす可能性があると述べている。
  • モチベーション:専門家は「患者さんの中には自分の病気について学んだり、自己管理スキルを学ぶ意欲がない人もいる」と述べていた。また「ゲームの要素や報酬がモチベーションの解決策になる可能性がある」とも述べており、これは「楽しさ」の項目を裏付けている。
  • 自己管理:ゲーム化された自己管理ツールを使うと、患者さんが恥ずかしがったり治療が遅れたりすることなく、簡単かつ自信を持って自己管理ができるようになる

専門家のインタビューをみていると良いんじゃないかな~って感じですね。
では患者さんのアンケート結果はどうだったのか見てみましょう…!

【社交】
  • すごく良い・良い:68%(28/42)
  • どちらでもない:19%(8/42)
  • 悪い・すごく悪い:13%(5/42)

糖尿病患者さんは自分の良い結果をお互いに共有し、同じ病気を持った仲間を増やしたいと考えている感じだったとのこと。


【自己表現】
  • すごく良い・良い:43%(18/42)
  • どちらでもない:36%(15/42)
  • 悪い・すごく悪い:21%(9/42)

「自己管理スキルをアップさせることで自分の健康に気を配ることは重要です」のみだと、すごく良い・良いは55%(23/42)で、悪い・すごく悪いは14%(6/42)だった。おそらくオンライン上での自己表現が重要なんじゃないかとのこと。


【楽しさ】
  • すごく良い・良い:76%(32/42)
  • どちらでもない:19%(8/42)
  • 悪い・すごく悪い:5%(2/42)

大多数の患者さんが重要だと思っていた。糖尿病ってのは退屈な作業の繰り返しなんで楽しさは重要なポイントみたい。また、自己管理の努力が評価される機会やお互いに積極的に競争する機会が得られるのもポイントとのこと。


【自尊心】
  • すごく良い・良い:79%(33/42)
  • どちらでもない:11%(5/42)
  • 悪い・すごく悪い:9%(4/42)

大多数の患者さんが重要だと思っていた。スコアボードやプログレスバー(進捗状況が分かるバー、パソコンとかでコピーすると何パーセント完了みたいなバーが出るがあれ)などは、患者さん同士がお互いのスコアや進捗状況を確認できる。そのため自己管理を促すことができ、更に患者さん同士がお互いをサポートし励まし合う機会にもなるとのこと。


【成長】
  • すごく良い・良い:88%(37/42)
  • どちらでもない:9%(4/42)
  • 悪い・すごく悪い:3%(1/42)

大多数の患者さんが重要だと思っていた。血糖値、食事の摂取量などに関するフィードバックを受け取ると、自分の状態を自己管理できるようになるとのこと。


【持続可能性】
  • すごく良い・良い:68%(28/42)
  • どちらでもない:21%(9/42)
  • 悪い・すごく悪い:11%(5/42)

自己管理アプリを定期的にアップデートするなどして、患者さんがアプリを使用する意欲を維持し、継続できる方法で自分の状態を管理し続けるようにするのが大事とのこと。


【モチベーション】
  • すごく良い・良い:76%(32/42)
  • どちらでもない:12%(5/42)
  • 悪い・すごく悪い:12%(5/42)

大多数の患者さんが重要だと思っていた。モチベーションが高いと、自分の状態を管理する上での自分の役割をしっかり認識し、病気をコントロールすることに熱心になるので重要とのこと。


【自己管理】
  • すごく良い・良い:73%(31/42)
  • どちらでもない:13%(5/42)
  • 悪い・すごく悪い:14%(6/42)

大多数の患者さんが重要だと思っていた。日誌やデータの可視化により、より良い自己管理習慣を身に付けられるようになるみたい。


ということで、まとめると、

  • ゲーミフィケーションによって糖尿病などの慢性疾患の自己管理力が向上する可能性は高い…!
  • 専門家はスクルの輪の8つの項目(社交・自己表現・楽しさ・自尊心・成長・持続可能性・モチベーション・自己管理)について、良いと感じていた…!
  • 患者さんの71%(30/42)がスクルの輪について良いと感じていた…!

って感じ。
専門家も患者さんもスクルの輪というゲーミフィケーションを取り入れることで、慢性疾患、特に糖尿病の自己管理が上手くできるようになりそう…!って思ったみたいですね。



糖尿病とゲーミフィケーションの研究の特徴をまとめてみた…!

2020年のイラン医科大学の研究によると、糖尿病とゲーミフィケーションの研究について系統的レビューを行ってみたそうです。
ゲーミフィケーションは、学習やトレーニングの質を高め、モチベをアップし、他者と競い合うために使用される効果的なツールですが、これが、糖尿病分野で用いられることがあったんですよね。
そこで今回これらの先行研究をピックアップし、特徴をまとめてみることにしたんだとか。
まず研究者たちは、2018年10月14日から16日にかけて該当する研究をPubMedやOvid、Cochrane、Scopus、Web of Science、ProQuest、Springer、Embase、Science Directといったデータベースで検索してみたそうな。
その結果、

  • PubMed→184件
  • Ovid→200件
  • Cochrane→257件
  • Scopus→527件
  • Web of Science→60件
  • ProQuest→408件
  • Springer→0件
  • Embase→129件
  • Science Direct→29件

の合計1,794件の研究がヒットしたらしい。
続いてこの中から重複しているものや質の低い物を除いていったそうで、最終的には35件の研究が選ばれたみたい。
因みにこの35件の研究のうちで、最も古い糖尿病とゲーミフィケーションの研究は1987年の研究だったとのこと。そんな昔から研究があったんですね。すごい…。
更に35件を見てみますと日本人の方がされた研究が2件ピックアップされておりました。どちらも同じ研究者が行ったものでして、2005年の研究2004年の研究になります。余談ですが、どんなゲームか試しにやってみようと思ったんですが、研究が古くて残念ながら見つけることが出来ませんでした(どうやら1型糖尿病の子ども向けに開発したオリジナルゲームっぽい)
また、糖尿病とゲーミフィケーションに使われたゲームはオリジナルゲームとメーカーから販売されたものの2種類に分かれておりまして、中でも任天堂のWii Fit Plusが人気でしたね。他では、何故かマリオブラザーズをチョイスしていたり、ダンレボ(ダンスダンスレボリューション)が使われているものもありました。
但し、全体的にみてほとんどのゲーミフィケーションで使われたゲームはアメリカで制作されておりまして、日本人向けの物はなさそうな感じです。これは残念。
んで、まずゲームの特徴の大枠なんですが、

  • 全てのゲームは糖尿病の患者さんを学習させ、スキルが身に付けられるようになっており、また行動を改善することを目的としていた
  • そのため、医療従事者や健康な方を目的としていなかった

とのこと。
また、ほとんどのゲームが携帯ゲームだったそうでこれも納得の結果ですね。
次に細かく糖尿病のゲーミフィケーションの特徴を見てみますと、

  • デジタルゲーム、フィットネスゲーム、ボードゲームが多かった
  • ゲーミフィケーションにおけるタスクとゴールの方法を使用していた
  • 自然と学習できるようになっており、ミッションやタスク、クリア、失敗を通して糖尿病を学ぶのを手助けしてくれる感じだった
  • フィットネスゲームを除いて、ゲームは質問に選択式で答えていくものが多かった
  • ゲームの中身は身体活動と栄養についての物が多かった

そうです。なるほど、これは確かに長期戦になる治療には向いてそうですね。
そしてゲーミフィケーションにより、糖尿病の知識やスキルを反復して覚えることやフィードバックすることも楽しみながら出来るんだとか。
糖尿病とゲーミフィケーションの研究の特徴をまとめたものを見てみましたが、他の分野でも共通していそうな感じでした。特に長期的な目標を達成したい時にゲーミフィケーションは威力を発揮しそうですね。



ゲーミフィケーションを用いた歩数アップ効果は1日1,200歩以上…!

2024年の千葉大学コホート研究によると、ゲーミフィケーションを取り入れることによって歩数がアップするのか調べてみたそうです。
この研究は、全国展開しているイオンモール株式会社のスマホアプリ「イオンモールアプリ」の「モールでウォーキング」を使ったと言うものでして、アプリは以下のものとなっております。


アプリにはイオンモールの入店時に1日1回ウォーキングプログラムへ参加することが出来まして、モール外の歩数も含めて1日の歩数をカウントしてくれるんですな。
んで1日1000歩以上歩くと抽選でクーポンが当たる仕組みとなっております。またクーポンを利用すると0~500ポイント(1ポイント1円相当)が当たるチャンスにも応募できる感じ。そこで研究者はこのデータを利用して歩数がアップするのか見てみることにしたんだとか。
因みに、2021年の東京大学の研究2021年の京都大学の研究により、コロナで1日の歩数は少なくなっておりまして、特に日本では2020年4月の緊急事態宣言の前後で、女性や若者の歩数が減少したみたいです。
なんで、コロナ禍で減少した歩数を取り戻す、むしろ増やせるかが今回の研究のキーとなります。
次に実験のざっくりした流れなんですが以下のようになっておりました。

  1. まずアプリについて、イオンモール内とオンラインで宣伝した。
  2. アプリ登録時、生年月日や性別、身長や体重、住んでいる都道府県などを登録してもらった。
  3. 2021年1月1日~12月31日までに登録した方の毎日の歩数データやプロフィールを使った。
  4. 277,061人の登録データがあった。ここから、データが不足しているもの、データの少ない物を除外していった。
  5. 併せて、イオンモールがある都道府県の人口データや都市部か郊外か田舎か、イオンモールが小規模か大規模かなどのデータも収集した。
  6. 最後にデータを統計処理してアプリの使用と歩数の関係を比べてみた。

最終的なサンプル数は以下のようになっております。

  • 合計サンプル数:217,344人
  • 男性サンプル数:62,728人(28.9%)
  • 女性サンプル数:154,616人(71.1%)
  • 65歳以上のサンプル数:18,014人(8.3%)
  • 65歳未満のサンプル数:199,330人(91.7%)
  • 65歳以上の平均年齢:69.9歳
  • 65歳未満の平均年齢:44.0歳

では気になる結果を見てみましょう。

  • ウォーキングプログラムに参加した日の1日の平均歩数は7,415歩だった…!
  • ウォーキングプログラムに参加しなかった日の1日の平均歩数は5,281歩だった…!
  • 性別と年齢を調整すると、ウォーキングプログラムに参加した日は参加しなかった日に比べて、1日の平均歩数が1,219歩も増えていた…!
  • イオンモールの場所別にみてみると、ウォーキングプログラムに参加した日は参加しなかった日に比べて、田舎だと1,130歩、郊外だと1,403歩、都市部だと1,433歩も増えていた…!
  • イオンモールの大きさ別にみてみると、ウォーキングプログラムに参加した日は参加しなかった日に比べて、大規模イオンモールだと1,422歩、小規模イオンモールだと1,059歩も増えていた…!
  • 男女別にみてみると、ウォーキングプログラムに参加した日は参加しなかった日に比べて、女性は男性よりも728歩多く歩いていた…!
  • 年齢別にみてみると、ウォーキングプログラムに参加した日は参加しなかった日に比べて、65歳以上の参加者は65歳未満の参加者よりも228歩多く歩いていた…!

イオンアプリによるゲーミフィケーションを用いた歩数アップ効果で1日1,219歩多く歩くようになるみたいですね。また、都市部、イオンモールが大きい、女性、65歳以上の人の方が効果が出やすいみたい。
因みに2020年のダーラムVAメディカルセンターの系統的レビューによれば、1日1,000歩増えると、全死亡リスクが6%~36%、心血管疾患リスクが5%~21%減るそうなんで、これはなかなか良い感じと言えるのではないでしょうか…?



皮膚科を目指す医大生の勉強にゲーミフィケーションが役立つのか調べてみた…!

2021年のコロラド大学ナラティブレビューによると、皮膚科を目指す医大生の勉強にゲーミフィケーションが役立つのか調べてみたそうです。
そもそもゲームベースのアプローチであるゲーミフィケーションは、医療分野の教育において注目が高まっているんだそうな。例えば、2010年のボストン大学の系統的レビュー2010年のプリマス大学の研究によれば、ゲーミフィケーションは学生などが勉強してスキルアップしたり、自信をつけたりするのに安全でリスクの低い環境(例えば、手術の練習をゲームを用いてするなど)を提供できるそうな。確かに自動車教習所でやったアーケードゲームみたいなのとかそうですよね。
また最近ではデジタルゲームが広く普及し、趣味として楽しまれることが多くなっているんで、学生や一般の方はゲームに慣れている人が多く、学びに使うにはうってつけな環境ということです。実際、2015年のATスティル大学の研究2013年のフライブルク大学の研究なんかを見てみますと、視覚や聴覚、運動感覚などを使う勉強を楽しんで行いたい場合、従来の教育カリキュラムよりもゲーミフィケーションを用いた教育カリキュラムの方が皆に好まれていたらしい。
ではどうやって勉強にゲーミフィケーションを取り入れるかですが、大枠は2002年の研究が参考になるそうです。この研究では、学習におけるインプット→プロセス→結果のゲームモデルっていう一般的モデルを作っておりまして、

  • インプット:勉強内容とゲームデザイン(ゲーム要素)を混ぜる=つまり勉強にゲーミフィケーションを取り入れるってことですな
  • プロセス:学んだ内容について判断・行動・フィードバックを反復勉強するというゲームサイクルが起こる=つまり勉強でRPGのレベル上げ(レベリング)のようなことが起こるってことですな
  • 結果:スキルアップ(実技試験で問われるスキル)や医学知識の習得(筆記試験で問われる知識)、プロ意識の向上(学んだことに対して自信がつく)が起きる=つまり勉強した本人にとって望ましい結果が出るってことですな

のようになっております。
図にすると以下な感じですね。


そして2017年のカーディフ大学の研究を見てみますと、てんかん患者さんにゲーミフィケーションを用いることによって(この研究では「スクルの輪」を取り上げていた)、

  • クイズや毎日のヒントを出して教育を促せる
  • 服薬遵守などにおける習慣化を目指せる

そうです。
この辺は今までに見てきた研究で納得できますな。
ここまでゲーミフィケーションが使えそうだと分かってきている中で、じゃあ、一般的な医学研修や皮膚科の医大生の教育、皮膚科の患者さんサポートにおけるゲーミフィケーションについてどうなのか今回チェックしてみることにしたみたい。因みになぜ皮膚科なのかと言いますと、視覚的で手順的な医療分野であるため、ゲーミフィケーションによるアプローチをたくさん取り入れやすいからなんだそうな。
ということでまず研究者たちは、2021年1月から2月にかけて該当する査読済み論文をPubMedやGoogle Scholar、Research Gateで検索してみたそうな。次にその中から重複したものなんかを除いていったらしい。
最終的にピックアップされた研究は、

  • 一般的な医学教育におけるゲーミフィケーションの研究:6件
  • 皮膚科におけるゲーミフィケーションの研究:7件

って感じだったそうです。
因みにゲーミフィケーションは新しい分野で研究数が少なく、また、皮膚科に絞ると全然研究がなかったみたいで、今回は一般的な医学教育の研究も見てみたとのこと。
では、レビューのポイントを見ていきましょう。
まずは一般的な医学教育におけるゲーミフィケーションの研究から。

  • 一般的な医学教育におけるゲーミフィケーションの研究の一例として2017年の研究が挙げられる。この研究はWebベースの多肢選択式問題を学生に解いてもらうもので、毎日問題に答えるか、複数の問題に連続して正解すると、達成バッジをもらえるというものだった。また2018年のアメリカ医師会(AMA)の記事によると、webベースのみだったがAndroidやiPhoneのスマホアプリもリリース予定ということ。更にチーム課題でのボスバトル機能やチームランキングの表示機能などもつくみたい。
  • 国際泌尿器科学会(SIU)の2020年の記事によると、公式教育用ゲーム「SIU uRCADE」ってのを2019年にリリースしたらしい。「SIU uRCADE」はWebベースのゲームで膀胱がんと腎臓がんについて勉強できるようになっているそうな。因みに記事によれば圧倒的な需要があったらしい。
  • 2020年のスタンフォード大学の研究によると、VR(Oculus Goを使ったみたい)を使って大量殺傷事件の治療訓練を行ってみた。高校での銃乱射事件後のけが人の治療という想定で207人に参加してもらった。参加した人達にアンケートを取った結果、魅力的で楽しいと答えた人が多かった。因みにその時の様子は以下な感じとのこと(これは楽しく学べそう…)


  • 2018年のトーマス・ジェファーソン大学の研究では、脱出ゲームを用いて医療グループのチームワークやコミュニケーションアップを計ってみた。グループでパズルを解き、制限時間内にタスクを完了するというゲームは、救急医療研修医のチーム構築とマルチタスクのスキルを向上させた。これらのゲームは、チームワークなど、大学で教えるのが難しい能力をアップさせる効果的なアプローチである可能性がありそうとのこと。
  • 2019年のモンテフィオーレメディカルセンターの研究2015年のワシントン大学の研究によれば、既存の教育カリキュラムにゲームベースの要素をプラスしても効果があったそう。外科研修医のパフォーマンスをポイントに変換してチームでランキングを競い合う形式にしたことで、研修医の満足度やトレーニングスコア、試験の合格率がアップしたとのこと。
  • 2021年のオタワ大学の研究ではビデオゲームベースのトレーニングで医学生の外科手術スキルがアップするのか系統的レビューで調べてみた。16件の研究がピックアップされ、575人の参加者を対象に先行研究結果をまとめてみた結果、ビデオゲームベースのトレーニングは、特に腹腔鏡手術やロボット手術における外科技術教育に効果を発揮するみたい。

まとめると、ゲーミフィケーションは、従来の教育にプラスすることで、相乗効果を生み、楽しく効果的に勉強できるようになるみたい。
次に皮膚科の医大生の教育、皮膚科の患者さんサポートにおけるゲーミフィケーションの研究なんですが、こちらは検索した文献全体でたった7件しかなかったそうです。
研究者曰く、

  • 現時点では、皮膚科に特化したゲーミフィケーション研究はほとんど存在せず、そうした研究の多くはサンプル数が少ないか、研究デザインが不十分であるものだった。例えば、ゲーミフィケーションを行わなかったコントロールグループがない物が多い。サンプル数や効果サイズの少なさ、研究デザインの不十分さは、報告されたエビデンスの質に悪影響を及ぼしていた

とのこと。
皮膚科におけるゲーミフィケーションの影響は更なる研究が必要って感じですね。う~ん。残念…。
ということで皮膚科に特化した結果は分からなかったものの、一般的な医学教育におけるゲーミフィケーションは良さそうな感じ。特にモチベーション・楽しさ・成績がアップするみたいなんでやっぱ勉強に取り入れていきたいですな。
また、今回の研究によれば、筆記試験・実技試験、グループワークみたいなものと幅広く使えそうなんで、医療教育に限らず、広く一般の勉強に使えるかと思います。



仕事にもゲーミフィケーションは役立つ…!幅広い分野とスキルに使えてモチベ・エンゲージメント・パフォーマンスがアップする…!

2023年のマラヤ大学の研究によると、職業教育訓練におけるゲーミフィケーションとゲームベースの学習について系統的レビューを行ってみたそうです。
それでは本題に入る前に、職業教育訓練・ゲーミフィケーション・ゲームベースの学習が何なのか見ていきます。

  • 職業教育訓練(VET):職場で必要な知識やスキルを身に付けるための学習訓練のこと。色々な職種・業種における教育、訓練、スキル開発を指すそうな。
  • ゲーミフィケーション:人々を熱中させ、行動や学習を促進し、問題解決を促すためにゲームベース・ゲーム思考を取り入れること。近年、商業や雇用、健康や環境、教育など幅広い分野で注目を集めている。良く使われるゲーム要素は、ポイント、バッジ、リーダーボード(スコア表示・ランキング表示)。このようなゲーム要素を使うことで学習プロセスを楽しむ可能性が高くなる。但し、職業教育訓練でのゲーミフィケーションの効果は謎。
  • ゲームベースの学習(GBL):構造化されたゲーム学習のこと。ゲームを通じて楽しく学びつつ思考スキルや自己学習の発達を促すよう設計されている。記憶力ゲームやシミュレーションゲーム、クイズゲームなんかが良く使われる。

因みにゲーミフィケーションとゲームベースの学習の違いは、

  • ゲーミフィケーション:レベルやポイント、バッジ、スコア・ランキング、アバター、クエストなどのゲーム要素を使用して、学習プロセス全体をゲーム化する
  • ゲームベースの学習:特定の学習成果を達成するために、ゲームを教育カリキュラムに組み込んでいる

って感じ。
まぁ、研究者もおっしゃっておりましたが、境界線はかなり曖昧みたいで、実際、どっちもゲームベースのアイディアや戦術を駆使して、問題解決し、学習を促進することを目的としております。そのため、ゲーミフィケーションとゲームベースの学習はほぼ同じ物と考えてよろしいでしょう。

それでは本題に入りましょうか。
まず研究者たちは、該当する先行研究をScopusやWeb of Science、Science Direct、PubMedというデータベースで検索してみたそうです。またこの時、古い研究が含まれないよう2018年~2022年の間に発表されたものに絞って探してみたらしい。更にGoogle Scholarで手作業で探してみたとのこと。その結果、1,092件もの研究が見つかったそうな。
次にこの中から、重複しているものや基準を満たしていない研究を除外していったそうで、最終的には2018年~2022年にかけて発表された17件の研究がピックアップできたんだとか。
この17件の研究を用いて系統的レビューを行ってみた結果はこのようになっておりました。

  • 職業教育訓練におけるゲーミフィケーションとゲームベースの学習の研究は2020年以降劇的に増えていた…!
  • これは学生のモチベーションや関わり方、満足度、成績をアップさせるためのテクニックへの関心が高まっていることを示している…!
  • また職業教育訓練におけるゲーミフィケーションとゲームベースの学習が成長している研究分野であることも示している…!
  • 研究の76%は専門学校又は大学に焦点を当てていた。研究の18%は専門的な訓練に焦点を当てていた。これら両方を対象とした研究は6%しかなかった。
  • 職業教育訓練におけるゲーミフィケーションとゲームベースの学習の研究であったものは、コンピューター、電気、電子、自動車の空調、看護や医療系、英語と数学の勉強、食品サービスと観光だった。
  • つまりゲーミフィケーションとゲームベースの学習は幅広い分野とスキルに適用されている…!
  • ほとんどの研究は、モチベーション、エンゲージメント(職場環境や労働条件の満足度)、トレーニングのパフォーマンスにプラスの影響があったと報告していた…!

つまり仕事のスキルアップという分野でのゲーミフィケーション・ゲームベースの学習は注目されており、幅広い分野とスキルに使え、しかもモチベ・エンゲージメント・パフォーマンスがアップしたみたいですね。素晴らしい…。



パ・リーグウォークで身体活動が増えるのか…?

2022年の東京大学準実験によると、パ・リーグウォークで身体活動が増えるのか調べてみたそうです。
パ・リーグウォークってのは、2016年3月にリリースした日本プロ野球のパ・リーグ6球団公式アプリでして、ゲーミフィケーションを活用した歩数計スマホアプリとなっております。んでこいつの面白い所が、好きな球団を1つ選択し、歩いた歩数に応じてそのチームを応援できるところなんですな。また、同じチームを応援するファン同士の歩数で試合を応援したり、1日1万歩達成で選手図鑑がもらえたりする(2016年10月実装)んですよ。
まぁ詳しくは、以下のGoogle Play又はApp Storeをご覧くださいませ。


話しを戻しまして、日本では野球ファンが多いんで、今回、このアプリを使って身体活動が増えるのか、長期的な影響を調査してみたんだとか。
はじめにスマホの加速度計についてチェックしたそうなんですが、Androidスマホは歩数測定の精度がイマイチだったみたいで今回は、iPhoneユーザーのみで分析することにしたそうな。またデータは2016~2017年の18歳以上のユーザーのものを使ったそうで、サンプル数は47都道府県のアプリ使用者20,052名(女性42%、平均年齢33.6歳)とのこと。この方々の歩数をチェックしつつ、更にコントロール群も用意し歩数をチェックしたということでした。
最後に集まったデータを統計処理した結果、

  • 1日1万歩達成で選手図鑑がもらえるようになってから、毎日の歩数が1万歩ぐらいになることが明確に多くなっていた…!
  • 選手図鑑実装前で1日1万歩を達成した日が24.4%だったが、実装後は27.5%に増えていた…!
  • しかも選手図鑑実装は2016年10月のため、これから冬のオフシーズンに入るのに増えていた…!
  • アプリインストール後、1日の平均歩数が2ヶ月で506歩(25~986歩の間)、3ヶ月で574歩(83~1064の間)も増えていた…!
  • 1日の平均歩数の増加は、アプリインストール後4ヶ月でピークを迎え、559歩(72~1047歩の間)も増えていた…!
  • 1日の平均歩数の増加は、9ヶ月後(559歩(99~1018歩の間))まで維持されていた…!
  • 歩数が増える人の共通点は、40〜68歳、学歴や年収が低い、スタジアムに足しげく通うファンだった…!

とのこと。
パ・リーグウォークで身体活動量は増えるし、季節やオフシーズンは関係ないし、9ヶ月後まで効果は続いたしで、なかなかよろしい結果ではないでしょうか…?

毎週月曜日にご紹介しているポケモンGO(位置情報ゲーム)の研究でも運動に使える…!って研究が多いので、こちらも同様の結果が出たのは納得ですね。
因みに何年か前、利用者さんの支援でこのアプリを使ったことがあります(笑)



運動にゲーミフィケーションは役立つのか…?RCTの系統的レビュー・メタ分析で調べてみた…!

2022年のグルノーブル・アルプ大学の研究によると、運動にゲーミフィケーションは役立つのか…?RCTの系統的レビュー・メタ分析で調べてみたそうです。
これまで運動にゲーミフィケーションが使えるのか調べた先行研究はいくつもあったんですが、よく指摘されていたのが質の高い研究が不足しているということ。そのため、ランダム化比較試験(RCT)で調べた方が良い…!という話が挙がる事が多かったんですよね。また、メタ分析も行われていないって感じでした。
しかし近年の研究により、十分なRCTがそろった…!メタ分析を行う時が来た…!ってことで、今回研究者たちは行ってみることにしたんだとか。
ということで、研究者曰く、

  • この研究は、ゲーミフィケーションによる身体活動への介入の効果を定量化した初めての研究だ

とのこと。この一文だけでワクワクしてしまいますな(笑)
また、この研究では、ゲーミフィケーションの運動効果だけでなく、長期的な効果、どんな人にも使えるのか…?ってのもチェックしていて大変よろしい感じでした。では一緒に見ていきましょう…!
まず研究者たちは、2010年1月1日(2010年はゲーミフィケーションという用語が広まった時)から2020年12月31日までに発表された該当する先行研究をPubMed、Embase、Scopus、Web of Science、コクランという5つのデータベースを用いて検索してみたそうな。またこの時ランダム化比較試験(RCT)の研究に絞って検索してみたとのこと。すると3,110件もの研究がヒットしたんだとか。
続いてこの中から、重複しているものや質の低い研究を除いていったそうで、最終的には16件の研究がメタ分析の基準を満たしていたらしい。この16件の研究の概要は以下な感じでした。

  • 年齢:9〜73歳、平均35.7歳
  • 総サンプル数:2,407人
  • サンプル幅:20〜602人
  • 成人の割合:67%(18件中12件)
  • 青年(18歳未満)の割合:33%(18件中6件)
  • 慢性疾患(肥満、2型糖尿病、心血管疾患)の方の割合:22%(18件中4件)
  • 方法:スマートフォンアプリが10件、ウェブベースが3件、その両方が4件
  • 実験期間:1~24週間、平均11.8週間、一番多かった実験期間は24週間

また研究は、

  • ヨーロッパ:6件
  • アメリカ:4件
  • オーストラリアとニュージーランド:3件
  • カナダ:3件(但しメタ分析に使われたのは1件)
  • アジア:2件

から選ばれておりました。
因みにアジア2件のうちの1件がイスラエル、1件が日本でした。日本の研究は2014年の大阪工業大学の研究とのことで、ご興味のある方はリンクから飛んでご覧くださいませ。
続いて使われたゲーミフィケーションのテクニックも見ておきます。

  • 1位:バッジ、メダル、トロフィーなどの報酬とランキング:72%(18件中13件)
  • 2位:レベル:50%(18件中9件)
  • 3位:ポイントまたはスコア:39%(18件中7件)

ゲーミフィケーションの王道な方法がつかわれていたみたいですね。
因みにチームプレイ、SNS、メッセージ機能などの他者との交流機能が含まれているものも非常に多かったみたい(83%、18件中15件)
それと身体活動の測定方法は様々で、総身体活動時間やMVPA時間(中~高強度運動時間)、座り時間、1日の歩数、歩行時間や活動時間(分)などなど。
最後に追跡調査については、6件の研究で行われておりまして、実験終了後12~30週間(平均14.4週間)行っていた様子。
これらのデータを基にメタ分析をかけてみた結果、以下のことが分かったそうです。

  • 全体的に見ると、介入後の全ての身体活動結果(MVPA時間(中~高強度運動時間)、1日の歩数、活動時間、歩行時間)は統計的に有意な小~中程度の効果(SMD=0.43)を与えていた…!
  • 同様に介入前後においても統計的に有意な効果(SMD=0.38)を与えていた…!
  • 大きなバイアスリスクなどを除外した結果も同様で、ゲーミフィケーションによる介入は身体活動に統計的に有意な小~中程度の効果(SMD=0.42)を与えていた…!
  • 成人と青年、健康な方と慢性疾患を持つ方の間で統計的な有意差は見られなかった…!
  • 年齢や性別、BMIなどの変数も関係なかった…!
  • つまり、ゲーミフィケーションの運動効果は様々な方に効果がある可能性が高かった…!
  • ゲーミフィケーショングループは何もしていないグループよりも統計的に有意な効果(SMD=0.58)があった…!
  • ゲーミフィケーショングループはゲーミフィケーションしていない運動グループよりも統計的に有意な効果(SMD=0.23)があった…!
  • ゲーミフィケーションによる追跡期間後の総身体活動時間(MVPA+1日の歩数)は統計的に有意ではなかった(SMD=0.09)
  • ゲーミフィケーション介入後、総身体活動時間(MVPA+1日の歩数)は12~24週間(平均14週間)、統計的に有意な非常に小~小程度の効果(SMD=0.15)を与えていた…!
  • つまり、長期的な効果はあるものの非常に弱かった…!
  • 2件の研究を除外して、ゲーミフィケーションの1日の歩数アップ効果を調べてみると、統計的に有意な効果(SMD=0.49)があった…!
  • この効果は、1日当たり1,609.56歩増えることを意味していた…!
  • ゲーミフィケーションは中~高強度運動時間(MVPA時間)に統計的に有意な影響を与えなかった(SMD=0.09)

この結果に研究者曰く、

  • 平均12週間のゲーミフィケーション介入が総身体活動に対して統計的に有意な効果をもたらした。この効果は小~中程度であり、ゲーミフィケーション介入が健康な方と慢性疾患の方の両方で身体活動を促進するのに役立つだろう

としています。

ゲーミフィケーションを取り入れることによって、様々な方の運動量がアップするというお話でした。また、ゲーミフィケーションの実験終了後も3ヶ月半ぐらいは効果が続くみたいです。但し、それ以上の長期的効果はあんまり期待しない方が良いのと、時間の経過とともに効果が弱くなっていくのは注意しておくと良さげでした。
それとこの研究では、ゲーミフィケーションで1日約1,600歩増える…!ってのも素晴らしいかと。
やっぱゲーミフィケーションは運動にも使えそうですね…!



ゲーミフィケーション+アイディア法でクリエイティブ性・コラボレーションスキル・コミュニケーションスキルがアップする…!

2023年の国立高雄科技大学の研究によると、ゲーミフィケーションでクリエイティブ性などがアップするのか調べてみたそうです。
そもそも最近の学生教育ではクリエイティブ性を育てるのが大事だ…!ってのが強調されつつあります。またクリエイティブ性は21世紀における重要な能力の1つと考えられておりまして、上手くアップする方法を日々探している状態なんですな。

  • ゲーミフィケーションは、クリエイティブ性をアップするための効果的な教育方法かも…!

って話があるんですよ。

  • 喜びと楽しさを感じられるゲーミフィケーションを使うと、学生のクリエイティブ性が高まった…!

って結果が出たみたいですし…。
更に2019年のラッペーンランタ・ラハティ工科大学の研究によると、ゲーミフィケーションで個人やグループのクリエイティブ性を促進できる…!って結果が出ていたり、2021年のシラパコーン大学の研究では、ゲーミフィケーションが学生のクリエイティブな問題解決スキルをアップさせた…!となっているんですな。こんなに良い結果が出ていると期待しちゃいますよね。
しかし、これまでの研究には弱点があって、というのもクリエイティブ性をアップすることを目的とした研究ってそのほとんどが一つのクリエイティブ性をアップする為の方法しか試していないんです。そのため、いろんなクリエイティブ性をアップする為の方法が及ぼす影響ってのはよく分からないんですな。また、ゲーミフィケーションを使い複数の方法を用いた場合、クリエイティブ性やコラボレーション、コミュニケーション(これらも4C)といったスキルに及ぼす影響はどうなのかも不明なんだとか。
そこで今回研究者は、6つのアイディア法+ゲーミフィケーションで学生のクリエイティブ性、コラボレーション、コミュニケーションスキルがどのような影響を受けるのか、階層分析法(AHP)を用いて調べてみたそうです。
実験の説明の前に、この研究でのクリエイティブ性の定義、6つのアイディア法、階層分析法(AHP)について見ておきましょう。まずは、この研究でのクリエイティブ性の定義ですが、

  • 斬新で有用なアイディアや製品を思いつく能力

としております。ここは皆が思うイメージ通りですね。
続いて、6つのアイディア法ですが、

  1. 拡散的思考
  2. バルーンコンテスト
  3. 焦点オブジェクト方法(MFO)
  4. 強制関係法
  5. SCAMPER法
  6. マンダラ思考

となります。
それではどんな方法か見ていきますかー。

  1. 拡散的思考1967年の南カリフォルニア大学の研究によると、拡散的思考はクリエイティブ性の重要な要素であり、評価するために広く使用されているのが代替用途テスト(AUT)なんだとか。また、2020年のライデン大学の研究では、この拡散的思考が多くのアイディアを生み出す思考スタイルを象徴しているらしい。因みに代替用途テスト(AUT)ってのは、ある物(ペンやクリップなど)の別な使い方を可能な限り考え多く挙げるみたいな感じ(よくある定番のアイディアが思い浮かぶかのテストですな)
  2. バルーンコンテスト:この研究のために今回オリジナルで考えた方法とのこと。座れる風船の椅子を考えてもらい、学生の創造力を刺激するようにしたんだとか。具体的には、限られた時間内に与えられた材料を使って特定の荷重に耐えられる風船オブジェクトを作るみたいな感じ。
  3. 焦点オブジェクト方法(MFO)1958年の書籍に出てくる焦点オブジェクト方法(MFO)は想像力や連想力、創造的思考力を高めるための方法とのこと。具体的には、メインとなるオブジェクトを決め、それと全く関係のない別のオブジェクトをランダムに選択し、それと組み合わせて新たな物を作る感じ。ブルートシンク法に近い考え方ですな。
  4. 強制関係法:強制関係法とは2016年のピッツバーグ大学の研究に載っている方法。強制関係法は焦点オブジェクト方法(MFO)と似ているが、メインとなるオブジェクトがない。つまり、無関係な2つのオブジェクトの特徴をランダムに関連付けて、新たなアイディアを生み出す感じ。こちらもブルートシンク法に近い考え方ですな。
  5. SCAMPER法1972年の研究によると、SCAMPER法は、S(substitute)代替、C(combine)組み合わせる、A(adapt)適応させる、M(modify)修正する、P(put to another use)別の用途に使う、E(eliminate)除去する、R(rearrange)並べ替える、の各頭文字をとったもので、新しいアイディアを生み出すための異なる方法を表しているそうです。また2015年のイスタンブール大学の研究により、SCAMPER法で創造的思考を刺激することが証明されているそうな。更に2017年のアジア開発銀行の研究を見てみると、学生は1つ又は複数の方法を使用するだけで、多くのアイディアを生み出すことができたらしい。
  6. マンダラ思考2021年の国立台湾師範大学の研究ではマンダラチャートと呼ばれ、また2014年の国立台湾師範大学の研究では9マスマンダラと呼ばれていたものがマンダラ思考です。当ブログでも過去に登場しましたよね。マンダラ思考は創造性を高めるための人気の方法でして、3×3マスの中段中央にトピックを書き、次に周囲の8つの3×3マスそれぞれに関連する内容を書き込んでアイディアを生み出す方法となります。因みに大谷翔平選手が書いたマンダラチャートはこのサイトでみられます。17歳でこれを書くなんてすばらしい…。

最後に階層分析法(AHP)についても見ておきましょう。

  • 階層分析法(AHP)1980年の研究を見てみると、階層分析法(AHP)は1971年にピッツバーグ大学のトーマス・L・サーティ教授によって開発されたものなんだそうで、多基準意思決定分析っていう、いろんな評価項目で複数の案を評価していき一番良い案を決める方法のことを言うそうな。因みに意思決定の場面で広く使われており、学生が使用するのに適したシンプルで効率的な意思決定方法とのこと。

バルーンコンテストを除き、5つのアイディア法はいずれも定番のテクニックなんで、アイディアが欲しいときの為に、ぜひとも覚えて使っていきたいですね~。また階層分析法も名前は知らんけど使ったことがある…!って方はいるのではないでしょうか…?

では、本題の実験内容をチェックしていきます。
この研究は、12学部から33人の大学生が参加したもので、そのうち2名は下記アンケートに回答しなかったためデータから除外されたとのこと。そのため最終的なサンプル数は31人(男性15人、女性16人)の大学生になりまして、年齢は19~22歳、平均年齢20.26歳だったそうな。また、学部は外国語学部(39%)、商学部(39%)、工学部(22%)からの参加だったらしく、ほとんどの方は初対面だったらしい。
んで、実験の流れについては、

  • 第1週:グループ作り(1グループ4~5人)、ゲーミフィケーションの導入、6つのアイディア法の説明
  • 第2週:拡散的思考
  • 第3週:バルーンコンテスト
  • 第4週:焦点オブジェクト方法(MFO)
  • 第5週:強制関係法
  • 第6週:SCAMPER法
  • 第7週:マンダラ思考
  • 第8週:プレゼンテーション、賞品、アンケート

って感じ。
因みに6つのアイディア法はそれぞれ週2時間ずつ実施したらしい。
では実際に第2週から第7週まで行われた6つのアイディア法の内容をチェックしておきましょう。

  1. 拡散的思考:1つ目は「ペンの他の用途を考える」、2つ目は「プラスチックカップの他の用途を考える」と言うものだった。各チームは付箋にアイディアを書き込み(KJ法みたいな感じですな)、各課題に約30分かけて取り組んだとのこと。最も汎用性が高いものを見つけたチームが優勝としていた。
  2. バルーンコンテスト:水のボトル1本(約600g)の重さに耐えられる風船の構造物を30分かけて作った。1回目は、各チームに2つの丸型風船と20個の縦長風船が渡され、これを使って作ったとのこと。因みに風船が割れた場合の交換は受け付けておらず使用できるのは風船のみ。なんで他の材料は使えない感じ。2回目は、1回目の結果に基づいて材料が追加された(最下位のチームが最も多く材料が追加された)。材料の交換も自由に出来た。水のボトル1本(約600g)の重さに耐えられる風船の構造物を作り、テーブルから一番高い場所にその水のボトルがあるチームが優勝としていた。
  3. 焦点オブジェクト方法(MFO):チームはメインとなるオブジェクトを自由に選択し、新しいアイディアで出した無関係なオブジェクトを最低5つランダムに選択する。チームは全ての新しいアイディアを話し合い、評価、スケッチする2つの候補に絞っていく。最後に参加者全員がオンラインで投票し(各自が最大3回投票できる)、最も多くの票を獲得したチームが優勝としていた。
  4. 強制関係法:チームは2つの無関係なものを自由に選択し、想像力を使ってできるだけ多くの新しいアイディアを出した。チーム内で話し合い、評価、スケッチする2つの候補に絞っていった。最後に参加者全員が投票し、最も多くの票を獲得したチームが優勝としていた。
  5. SCAMPER法:各チームはワークシートを使用して、できるだけ多くのアイディアを出した。約60分を使い、SCAMPERの各アルファベットの手順に従い話し合い評価した。最もクリエイティブなアイディアを出したチームと投票で最も多くの票を獲得したアイディアを出したチームが優勝としていた。
  6. マンダラ思考:各チームは9つの正方形とその各正方形の中に更に9つの正方形があるワークシート(一般的なマンダラチャートですな)を使用し、ワークシートの中央の9つの正方形を書き込んだ。次に周囲の8つの正方形を使用してアイディアを考えた。その中からチーム内で話し合い、評価、スケッチする2つの候補に絞っていった。最後に参加者全員が投票し、最も多くの票を獲得したチームが優勝としていた。

いや~どれも面白そうなグループワークですな~。
次にアンケートについても見ておきます。
アンケートでは、自己評価の質問票の回答と階層分析法(AHP)の質問票の回答を行ったそうです。
この2つのアンケートによって、

  • 自己評価の質問票:参加者のクリエイティブ性、コラボレーション、コミュニケーションの3つのスキルとゲーミフィケーションに関する認識を測定した。答え方は1(全く同意しない)から7(すごく同意する)の7段階から選ぶ形式で平均点を出したそう
  • 階層分析法(AHP)の質問票:参加者が目標を達成するためにより効果的であると考えるベストなアイディア法を特定した

みたい。こちらも丁寧に調べている感じで良いですな。
ついでに取り入れたゲーミフィケーションもチェックしておきます。

  • チーム競争型のシミュレーションとした。
  • チーム練習時間は、それぞれのアイディア法でほぼ同じ(合計約60分)
  • 公平性と競争性を保つため、獲得できる最大ポイントとポイント間隔は毎週同じとした。1位は14ポイント、2位は12ポイントなど。
  • 各チームのポイント数は毎週発表した。
  • クリエイティブ性教育の実施結果とゲーミフィケーションポイントを計算し、学生に確認した。
  • 賞品は現金の入った赤い封筒とした。

いや~色々なゲーム化を取り入れていますが、結構基本的なテクニックを使っている印象ですね。
こんな感じで実験を行い、最後に集められたデータを分析したそうです。
ではまず、6つのアイディア法の結果と様子から見ていきましょう…!


【拡散的思考】
  • 拡散的思考のみだと、ほとんどのチームは30~40個のアイディアしか浮かばなかった…。
  • 拡散的思考+ゲーミフィケーション(競争させる)だと、1位のチームは、1つ目の課題「ペンの他の用途を考える」で63個、2つ目の課題「プラスチックカップの他の用途を考える」で62個もアイディアが浮かんでいた…!
  • つまり、ゲーミフィケーション(競争させる)を使った時の方が使わなかったときに比べて1.5~2倍ぐらい多くのアイディアが浮かんでいた…!

いや~やっぱゲーム形式で競争するってのは効果があるんですな。
因みに実際の様子は以下な感じだったそうです。



【バルーンコンテスト】
  • バルーンコンテストの雰囲気は皆、挑戦的で、刺激的で、楽しく行っていた…!
  • 1位のチームは89cm、2位は70cm、3位は65cmの高さだった…!
  • バルーンコンテストでもゲーミフィケーション(競争させる)を使った方がより高くすることが出来ていた(アイディアが浮かんでいた)…!

今回オリジナルな方法であるバルーンコンテストでもゲーミフィケーションは効果があったみたいですね。
因みに実際の様子は以下な感じだったそうです。



【焦点オブジェクト方法(MFO)・強制関係法】
  • 焦点オブジェクト方法(MFO)・強制関係法は似たテクニックの為、結果は一緒に発表された。
  • 1位は「ポータブルインターネットデスク」、2位は「充電式ペンケース」だった。

面白いアイディアが出ていますね~。
因みに実際の様子は以下な感じだったそうです。



【SCAMPER法】
  • SCAMPER法は、専用のワークシート(下記画像参照)を使ってアイディアを出した。
  • 最も多くのアイディアが浮かんだチームは28個だった…!
  • ベストアイディアは修正テープ付きボールペンだった…!

こちらも良い感じだったみたい。
因みに実際の様子は以下な感じだったそうです。



【マンダラ思考】
  • マンダラ思考も専用のワークシート(下記画像参照)を使ってアイディアを出した。
  • ベストアイディアは投影可能なリングと自動温度制御魔法瓶だった…!

マンダラ思考を使って良いアイディアが浮かんだみたいですね~。投影可能なリングとかSFで出てきそうで良いですな。
因みに実際の様子は以下な感じだったそうです。



次に大学生の反応と自己評価のそれぞれの結果を見てみましょう…!

【大学生の反応】
  • 参加した大学生は、ゲーミフィケーションを使った結果を高く評価していた…!
  • ゲーミフィケーションがクリエイティブ性、コラボレーション、コミュニケーションの3つのスキルを高め、学習意欲と興味をアップさせると感じさせていた…!

【自己評価】
  • 全ての質問の平均スコアが5.2を超えていた…!
  • つまり大学生は従来型の講義よりもゲーミフィケーションの講義が良いと感じていた…!
  • ゲーミフィケーションは、学習への意欲や姿勢、興味をアップさせ、結果、クリエイティブ性やコラボレーション、コミュニケーションといった3つのスキルをアップさせると感じさせていた…!

どうやらゲーミフィケーションは、大学生の反応・自己評価共に良い感じだったみたいですね~。
最後に階層分析法(AHP)の結果を見てみましょう。
こちらでは、コラボレーション・コミュニケーション・クリエイティブ性の中で重要な能力は何なのか、コラボレーション・コミュニケーション・クリエイティブ性のそれぞれで最も効果的なテクニックは何だったのか見ていきます。それぞれトップ3を挙げていきますんでご覧ください。

【重要な能力トップ3】
  • 1位:コラボレーション(0.361)…!
  • 2位:コミュニケーション(0.356)…!
  • 3位:クリエイティブ性(0.283)…!

【コラボレーションで最も効果的なテクニックトップ3】
  • 1位:バルーンコンテスト(0.307)…!
  • 2位:マンダラ思考(0.182)…!
  • 3位:SCAMPER法(0.153)…!

【コミュニケーションで最も効果的なテクニックトップ3】
  • 1位:マンダラ思考(0.243)…!
  • 2位:バルーンコンテスト(0.1750)…!
  • 3位:SCAMPER法(0.1748)…!

【クリエイティブ性で最も効果的なテクニックトップ3】
  • 1位:SCAMPER法(0.213)…!
  • 2位:強制関係法(0.193)…!
  • 3位:マンダラ思考(0.184)…!

つまりまとめると、

  • コラボレーションスキルは、コミュニケーションやクリエイティブ性よりも重要な能力だと考えていた…!
  • コラボレーションスキルを高めるのに最も効果的なテクニックは、バルーンコンテストだった…!
  • コミュニケーションスキルを高めるのに最も効果的なテクニックは、マンダラ思考だった…!
  • クリエイティブ性を高めるのに最も効果的なテクニックは、SCAMPER法だった…!

って感じになります。
コラボレーションスキルが一番重要ってのは面白い結果ですな。まぁゲームで考えると、確かにコラボレーションつまり戦略を共有出来る人が重要と考えるのは納得ではありますが。
それとコラボレーション・コミュニケーション・クリエイティブ性の全てに対して、最も効果的なテクニックのトップ3なんですが、

  • 1位:マンダラ思考…!
  • 2位:バルーンコンテスト(但し1位と超僅差)…!
  • 3位:SCAMPERテクニック…!

となりました。
これらを見ると、汎用性の高いマンダラ思考はやっぱ素晴らしい方法ですね…!

ゲーミフィケーションを取り入れることによって、クリエイティブ性、コラボレーション、コミュニケーションという3つのスキルをアップさせることができるみたい。また学習への意欲や姿勢、興味をアップさせるのが大きいみたいですね。その理由は、ゲーミフィケーションにより学習を楽しく競争的な雰囲気にするからみたいでした。
ということで実践するなら、マンダラ思考+ゲーミフィケーションを行ってみてください…!



高校生や大学生の勉強モチベアップにゲーム化が使えるのか系統的レビューを行ってみた…!

2023年のアルガルヴェ大学の研究によると、高校生や大学生の勉強モチベアップにゲーム化が使えるのか系統的レビューを行ってみたそうです。
ゲーム化(ゲーミフィケーション)の導入は、教育の分野で増えてきておりまして、特にモチベアップ効果が期待されているんですよね。んでモチベがアップすれば欠席や中退が減ったり、勉強に対する不安が減ったりします。
では、実際のところどうなのか…?ってことで、今回、学校教育現場でのゲーム化について調べてみることにしたらしい。
具体的には、

  1. 高校や大学ではゲーム化によるモチベアップ評価をどうやって行っているのか…?
  2. 高校や大学ではどのようなゲーム化が行われているのか…?
  3. 高校や大学ではゲーム化がモチベーションに与える影響はどうなのか…?

の3つについてチェックしたみたい。
ということでまず研究者たちは、2013年1月1日から2022年11月1日までに発表された該当研究をWeb of Science、Eric、PsycInfoで検索してみたそうな。すると全部で569件の研究がヒットしたらしい。
続いてこの中で重複している物、質の低い物を除外していったそうな。
最終的に残ったのは40件の研究でして、

  • 研究:縦断研究26件、横断研究14件、症例対照研究17件
  • 国:スペインやアメリカのものが17件で半分ぐらいを占めていた。因みに日本の研究はなし
  • サンプル範囲:22〜683人
  • 学校:ほとんどは大学生を対象にしていた。高校生の研究は4件のみ

って傾向だったそうです。
では結果を見ていきましょう。
まずは、「1. 高校や大学ではゲーム化によるモチベアップ評価をどうやって行っているのか…?」です。

  • 内発的動機付け尺度(IMI:Intrinsic Motivation Inventory)っていう、興味と楽しみ、認識された能力と努力、プレッシャーと緊張、認識された選択肢、価値と有用性を評価するスケールを使っていることが多かった。
  • 他にも様々なスケールを使っていたり、中には独自の尺度を開発したパターンもあった。

まぁ、ここはオマケ情報なんでさらりと見てもらえればと。

続いて「2. 高校や大学ではどのようなゲーム化が行われているのか…?」の結果を見てみましょう。
特に人気の高かったゲーム化の方法は、

  1. ポイント:75%
  2. 競わせる:65%
  3. ランキング:55%
  4. バッジ:52.50%

って感じ。どれも王道ですな。
他にもストーリーテリング(物語にそって行っていくみたいな感じ)が22.50%、レベルが17.50%って感じでこちらもまぁまぁ良い感じだったみたい。
更に複雑なゲーム化を取り入れた場合では、

  • RPG要素
  • アバター
  • イベント発生
  • ボス戦
  • クエスト

などを組み込んだ感じだったそうな。
確かにこれらは手軽に導入できないけどよりよくなりそうですよね。

最後に「3. 高校や大学ではゲーム化がモチベーションに与える影響はどうなのか…?」も見ておきましょう。

  • ゲーム化された学習スタイルを長期間を行うとモチベが低下する可能性があった。
  • そしてゲーム化された長期間の学習と成績には負の関係もあった。
  • そのため、ゲーム化による学習は短期的には強力なモチベアップ効果がありそうだが、一旦「目新しさ」がなくなると、刺激が少なくなりモチベが上がらず成績が下がる可能性もあった。
  • 但し逆の報告もあった。縦断研究ではゲーム化された学習スタイルを3年間にわたって実装したがモチベーションにプラスの影響を与えていた…!
  • また、ほとんどの横断研究でもゲーム化された学習によりモチベーションが高かった…!

ゲーム化による学習でのモチベアップ効果は短期間はほぼありそう、長期間だとよく分からないって感じですね。まぁ、ゲーム化された学習スタイルに慣れてくると効果が弱くなるって話はあり得そうですな。
因みに長期間でモチベが低下した研究のほとんどは「目新しさ」と「個人差」の影響を見ているものだったらしく、ともなれば、飽きやすい人は効果が弱くなる…!って結論にもなりそうな感じ。そうなると、ゲーム化は関係なくてセルフコントロールの低さとか個人差の問題になってしまいますね。
更に、この系統的レビューの研究のほとんどではモチベーションレベルの上昇が報告されていたそうで、研究者も、

  • ゲーム化は学生のモチベーションに定期的なメリットをもたらしそうだ

とおっしゃっておりました。
ポケモンGOの研究結果も併せて考えてみると、ゲーム化は「きっかけ」として使うのが一番効果的なのかな~と思っております。その後続くかは、習慣化のテクニックなどを上手く使う必要があるかと。また、性格セルフコントロールの高さも重要になってくるのかな~とも思います。
いずれにしてもゲームが好きな人は現実の世界に活かしていくとよろしいかと思います。



個人的考察

ゲームは何の役にも立たん…!っていう人もいるかもしれませんが、私は非常に役立っておりまして、ゲームが好きでよかったーと常々思いますね~。
最後に併せて下記記事もご覧ください。




参考文献

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22564332/
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1877050915025053?via%3Dihub
https://dl.acm.org/doi/10.1145/2583008.2583023
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0883035519315988?via%3Dihub
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S014829631830537X?via%3Dihub
https://dl.acm.org/doi/10.1145/3468978.3468999
https://gwern.net/doc/iq/1967-guilford-thenatureofhumanintelligence.pdf