認知行動療法を一から学ぼう!その6「マインドフルネス認知療法」
毎月恒例の月1社内研修が令和4年3月15日にありましたので、内容を備忘録としてブログに残しておきます。前回、諸事情により「メタ認知療法」を先に行いましたので、今回は飛ばしていた内容を社内研修で行いました。
過去の社内研修内容を確認したい場合は下記からご覧ください。
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1. マインドフルネス認知療法(MBCT)
認知療法的な認知行動療法の一つであるマインドフルネス認知療法(MBCT)は、マインドフルネスストレス低減法と認知療法が合わさったものである。そして、マインドフルネス認知療法(MBCT)とは、マインドフルネス瞑想を練習していく治療法のことを言う。マインドフルネスとは、今の瞬間の現実に常に気づきを向け、その現実をあるがままに知覚し、それに対する思考や感情には囚われないでいる心の持ち方、存在のありようのことを言う。つまり、過去の後悔に囚われず、未来の不安に囚われず、今この瞬間に目を向けるのがマインドフルネスである。
マインドフルネスのルーツは約2600年前にブッダが提唱したテーラワーダ仏教(原始仏教)である。テーラワーダ仏教の中に「身受心法(しんじゅしんほう):お経の名前」というお経があり、マインドフルネス瞑想の進め方の解説となっている。つまり、マインドフルネスが重要だと気付き、更にそれを体験・訓練する方法が瞑想である。
2. 身受心法(しんじゅしんほう)
身受心法は、呼吸を4つの領域から16の視点で見つめるトレーニングシステム(呼吸瞑想)を提供しているマニュアルである。そして、4つの領域とは身体、感受、心、法則性である。(1) 身=身体
身体とは、呼吸に伴う身体の感覚に注意を向ける、その時に考えている事、感じている事、思い出している事、身体で感じている事、それらを感じ取ってそのままにしておくことを言う。つまり、身体とは、アクセプタンスである。身体表現性障害(身体の異常がないのに様々な身体の異常があるように思えてしまう病気。自律神経失調症に多い)の人は身体の症状にこだわってしまうことが多いため、この部分が苦手である。対策としては「身体は自分でコントロールできるので身体のことは身体に任せる」こととなる(つまり、傍観しそのままにしておく)
(2) 受=感受
感受とは、感覚とその直後の動きを合わせた言葉を言う。「見るものは見ただけで、聞くものは聞いただけで、感じたものは感じただけ、考えたことは考えただけでとどまりなさい。そのときあなたは、外にはいない。内にもいない。外にも、内にもいないあなたはどちらにもいない。それは一切の苦しみの終わりである」=感受で止めようって話。
「見るものは見ただけで、聞くものは聞いただけで、感じたものは感じただけ、考えたことは考えただけでとどまりなさい。」とは、見た瞬間、感じた瞬間、考えた瞬間(自動思考が働いた瞬間)、つまり、六根(ろっこん:五感+自動思考)を感じ取り、そこでとどまる、何も考えず傍観する(そこから考えすぎたりするので反芻思考などに陥る)。ただ、気付き、傍観(客観視)する。人は普段見ただけで、感じただけで、考えてしまう(楽・苦・捨を思ってしまう)=マインドフルネスの裏返し状態が起こる。
「そのときあなたは、外にはいない。内にもいない。外にも、内にもいないあなたはどちらにもいない。それは一切の苦しみの終わりである」=外(勝手な思い込みをしない、バイアスにとらわれない)も内(嫉妬をしない)も考えない。そうすると苦しまずにすむ。その為の方法がラベリング(その感情に名前(ラベル)をつける)。
(3) 心=心
心とは、思考が感受で止まらないと貪瞋痴(とんじんち:貪=欲、瞋=怒り、痴=混乱)がでてくる事を言う。これに気付き、観察、そっと呼吸に戻るのがポイント。貪瞋痴が広がらないようにするにはラベリングが有効。(4) 法=法則性
法則性とは、気づきは途切れるので呼吸、感受、心の法則性を観察する事を言う。智慧とは法則性を深く理解する事であり、法則性には無常(常に変化していく事)、苦(常に変化している物を頼りにしてしまうので満足できない事)、無我(常に変化している物はコントロールできない事)がある。
無常(常に変化していく事)はネガティブなことではなく、ポジティブなことでもある(例:成長していける、ずっと苦しみや痛みが続かない、嫌なことは永遠に続かないなど)
3. サマタ瞑想(フォーカストアテンション)とヴィパッサナー瞑想(オープンモニタリング)
マインドフルネス認知療法の瞑想は大きく2種類からなる。最初に行う方法がサマタ瞑想(フォーカストアテンション)であり、次に行う方法がヴィパッサナー瞑想(オープンモニタリング)である。(1) サマタ瞑想(フォーカストアテンション)
サマタ瞑想(フォーカストアテンション)とは、今、ここに注意を向けて(注意の持続)、注意が途切れたらそれに気づきそっと注意を戻すこと(注意の転換)を繰り返す瞑想のことを言う。オウム真理教はこのサマタ瞑想を集中的に行わせ、快感を味わわせ、その体験を引き起こせるのがグルだと勘違いさせ、依存させていた。あやしい新興宗教やカルト宗教で瞑想をさせることが多いのもこれが主な理由である。
サマタ瞑想の種類としては、呼吸瞑想、ボディスキャン瞑想、歩行瞑想などがある。
サマタ瞑想がある程度できるようになったらヴィパッサナー瞑想へ進む。
(2) ヴィパッサナー瞑想(オープンモニタリング)
ヴィパッサナー瞑想(オープンモニタリング)とは、自分の心を実況中継していく瞑想のこと。心の動き全てに同時に気を配る(注意の分割をする)瞑想のことを言う。何かを考えるには心のキャパシティが必要であり、その心のキャパシティを使っておけば、考えるためのキャパシティが残らないので思考(自動思考)がでてこなくなる。また、反芻を維持するためのキャパシティも足りなくなる。そのため、注意の分割を行う。
集中力にシングルタスクが重要なのは注意の分割を防ぐためである。逆に計算問題を解くと不安(ネガティブ)が消えるのは注意の分割を意図的に行っているためである。
4. 認知療法(第二世代の認知行動療法)からマインドフルネス認知療法(MBCT)へ
当初、注意の訓練を認知療法に取り入れたが、それだけでは足りなかった。理由はシロクマのリバウンド効果が起こってしまうためである。そこで思考や感情を変えようとせず、気づいたままにしておくマインドフルネス・アプローチを十分に機能させるようにした。5. マインドフルネス認知療法(MBCT)の8週間プログラム
マインドフルネス認知療法の8週間プログラムは、マインドフルネス瞑想の実践を中心にグループ療法を行っていく。主な内容は以下の通りとなる。6. マインドフルネスベースの効果
マインドフルネスベースの治療法の効果は2013年のモントリオール大学のメタ分析により確認されている。質の良い209件の研究をまとめたメタ分析で、対象者は12,145人とのこと。結果をまとめると、- 介入前後と比較した効果量は0.55
- ウェイティング(何もしない)群と比較した効果量は0.53
- アクティブ治療(他の治療)群と比較した効果量は0.33
- 他の心理療法群と比較した効果量は0.22
- CBT・BT群と比較した効果量は-0.7
- 薬物療法と比較した効果量は0.13
となっている(効果量は0.2~0.4=小さい効果、0.4~0.7=中程度の効果、0.7~=大きな効果となる)
また、2002年の研究によると、認知療法やマインドフルネス認知療法は認知の内容を変えるのではなく、認知との関係の持ち方が変わることによって再発を減らしていると分かった。つまり、マインドフルネス認知療法を行っていくとメタ認知的気づきが強まっていく。
但し、認知療法を始めた後に体験したことに対してはメタ認知的気づきが働いたが、前の体験ではメタ認知的気づきが働かなかったそうなので、ここは注意が必要である。
個人的考察
以上、「マインドフルネス認知療法」でした…!
是非、自分や支援で実践し、結果を実践報告書にまとめてみてください。
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実践報告書の見本のPDFとフォーマットのPDF・Wordデータは下記からダウンロードできます。
もし、自分の事業所で使いたい…!って方はご活用ください。
参考文献
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