1年ほど前に当事業所で作成し、社内研修の実践報告書にて発表したものとして「注意・促しスケール」というものがございます。
「注意・促しスケール」は線維筋痛症の記事でご紹介した「ビジュアルアナログスケール(VAS)」っていう、痛みの度合いをチェックするスケールをベースにしつつ、注意や促しをどのぐらいの強さで行うと良いのかの目安を調べるスケールです。
良くあることかもしれませんが、作った当初はまぁまぁ当事業所で使われていたんですが、ここ最近は全く使わなくなっておりまして、作成から約1年経った今、再度、思い出してもらったり、今後の支援に活かしてもらおうと記事にしてみました。
それでは早速見ていきましょう…!



支援では注意や促しをする場面は必ずある…!しかしどのぐらいの強さで行ったらいいのかが難しい…!

就労支援事業所(就労継続支援A型や就労継続支援B型、就労移行支援など)では、日々、色々な利用者さん(メンバーさんとも言う)の支援をしますが、その中で必ず言わなければいけない事ってのが出来るかと思います。
その時難しいのが「どう伝えるか」です。
例えば、注意をすると言っても、

  • 柔らかい促し
  • 指示に近い促し
  • 指示
  • 指摘
  • 注意

って感じで、強さに違いがあるんですよね。
そして障がいによって注意の仕方で、成長する場合もあれば、ガッツリ体調を崩してしまう方もいらっしゃるんですよ。典型的な例で申し上げますと、

  • 精神障がいの方に、注意をする(ストレートに言う)と、メンタルへのダメージがデカくなりやすいので、察してもらう支援の方が良い。察するのが上手すぎて精神障がいを発症したというのも理由の一つ
  • 知的障がいの方や発達障がいの方には、端的にわかりやすくストレートに言うと良い。察してもらおうと回りくどい言い方をすると理解できないことが起こってしまうのも理由の一つ

みたいな感じです。
もちろん、注意する方の障がい受容の度合いや素直さ、性格、支援者と注意する利用者との信頼関係の度合い、障がいの重複などなど、変数は多岐にわたりますので、それらも考慮し総合的に判断して注意することになりますが。
そのため、なかなか伝えられない、でも伝えないと本人も周りももっと困るみたいなジレンマに支援者が陥ってしまうんですな。
そこで、注意の強さの目安が欲しいという意見が上がりまして、作成したのが「注意・促しスケール」となります。



「注意・促しスケール」を見てみよう…!使ってみよう…!

それでは「注意・促しスケール」を実際に見てみましょう。
「注意・促しスケール」は以下からPDFでダウンロードできます。


中身を見てもらうと分かる通り、誰でもその場ですぐできるようにしたため、かなりあっさりした作りになっております。また「注意・促しスケール」はA4サイズ2ページからなりまして、両面印刷して使うとよろしいかと思います。

次は使い方ですね。
まず1ページ目は以下のようになっております。


ご覧の通り、1ページ目には、注意や促しをしたい状況を書いていく感じです。
具体的には、

  • 注意・促しをするスタッフ名
  • 注意・促しをしたいメンバーさん名(利用者名)
  • 注意・促しをしたいと思った年月日
  • 注意・促しをしたい内容

を書いていきます。
これで誰がどの利用者さんにどのような状況内容について、注意や促しがしたいのかが分かります。
状況を書いて整理したところで、次にこれらを踏まえて注意や促しをしたい利用者の今の「楽しさから仕事へ」の位置を手書きで書いてもらいます。当事業所では、シンプルルールを使い、「楽しさから仕事へ」というルールを作っております。これは、まずは仕事は「楽しい」ということに支援の比重を置き、そこからだんだんと意識を「楽しい事ばかりでなく大変なこともあるけどやりがいがある」といった形のように「仕事へ」の意識に移行していけるよう支援していくっていうコンセプトです。では今回注意や促しをしたい方は、今どのぐらいの位置(割合)にいるのかってことで、支援者が思うところに縦線を書きます。
書き終わったら、定規を当てて、左から何ミリメートルの所に線を引いたのか数を確認します。
これで1ページ目は終了です。2ページ目に行きます。

2ページ目は以下のようになっております。


先程定規で計った数字を四角の中に書き込みます。
最後に、表で当てはまる「長さ」と「障がい受容・素直さ・性格など総合的に見た場合の難易度」を確認して、該当する内容を確認、それを基に、注意や促しをしていきます。

これで「注意・促しスケール」の説明は以上です。
大変そうに見えるかもですが、実際使ってみると、5分ぐらいで出来るかと思います。
最後に繰り返しになりますが、あくまで「注意・促しスケール」は簡易的なスケールの為、様々な事情を考慮して伝えていくことには注意が必要です。



個人的考察

以上、「注意・促しスケール」でした。
是非、注意や促しをどれぐらいの強さで言っていいのか分からない…!って時にお使いください。
また、新人の方など支援に不慣れな方、研修時のグループワークなどで使ってみるのもよろしいかと思います。



参考文献