当ブログでは日本食の研究をあんまり取り上げておりません。
理由は、意外にも日本食の研究ってあんま進んでいないからです。
そんな中でも、これは…!みたいな研究がいくつかありますんで何度かに亘ってチェックしておきましょう。



伝統的な日本食は塩分・高血圧が多いのに心血管疾患による死亡リスクが低下する…!

2007年の東北大学前向きコホート研究によると、日本人の食事パターンと心血管疾患(CVD)リスクについて調べてみたそうです。
なんでも研究者曰く、この時点で日本の食事パターンが心血管疾患による死亡率の低下と関係あるのか調べた研究がなかったらしい。そこで今回チェックしてみることにしたんだとか。
この研究は、以前にも紹介した大崎国保コホート研究っていうデータセットを用いたと言うもの。参加者は1994年の実験開始時、糖尿病や脳卒中、心筋梗塞、がんの病歴のない40~79歳の日本人男女、40,547人となっております。追跡期間は1995年1月1日から2001年12月31日までの7年間でして、この間の食生活情報を基に日本人の食事パターンと心血管疾患(CVD)リスクを見てみたみたい。
集まったデータを統計処理した結果、日本人の食事パターンは大きく以下の3グループに分かれたんだとか。

  1. 伝統的な日本食グループ:大豆製品、海藻、野菜果物緑茶塩分を多く摂取している食事パターン。
  2. 動物性食品グループ:牛肉や豚肉ハム、ソーセージ鶏肉、レバー、バターなど動物由来の食品をメインにしつつ、コーヒーアルコールを多く摂取している食事パターン。
  3. 洋食グループ:牛乳やヨーグルトなどの乳製品マーガリン果物、ニンジン、カボチャ、トマトなどの野菜を多く摂取し、米や味噌汁、アルコールを少なく摂取している食事パターン。

続いて、これら3グループの特徴を見ていきます。

  1. 伝統的な日本食グループ:年配者が多い。歩くことが多い。高血圧の方が多い。現在の飲酒率や喫煙率が低い。
  2. 動物性食品グループ:若い男性に多い。現在の飲酒率や喫煙率が高い。高血圧の方が少ない。
  3. 洋食グループ:女性に多い。歩くこと、学歴、高血圧の有無を除いて、伝統的な日本食グループと似ていた。

イメージ通りの特徴だな~ってところですかね。
では、心血管疾患(CVD)の死亡リスクとの関係を見ていきます。

  1. 伝統的な日本食グループ:心血管疾患(CVD)の死亡リスクが低下していた…!
  2. 動物性食品グループ:心血管疾患(CVD)の死亡リスクが上昇していた…!
  3. 洋食グループ:心血管疾患(CVD)の死亡リスクは関係なかった…!

伝統的な日本食は塩分が多く高血圧の方も多いのに、一方で心血管疾患リスクが低いんですねー。面白い…。
またこの研究では、年齢や性別、喫煙、歩行時間、学歴、総カロリー摂取量といった変数を調整したうえで、伝統的な日本食グループと動物性食品グループの忠実度を4段階に分類、それぞれの心血管疾患による死亡リスクもチェックしております。
その結果がこちらです。

【伝統的な日本食グループ】
  • 忠実度低:心血管疾患による死亡リスクを0%(HR1.00)とした。
  • 忠実度普:心血管疾患による死亡リスクを24%(HR0.76(0.63〜0.93))ダウン…!
  • 忠実度高:心血管疾患による死亡リスクを29%(HR0.71(0.58〜0.87))ダウン…!
  • 忠実度最:心血管疾患による死亡リスクを27%(HR0.73(0.59〜0.90))ダウン…!

【動物性食品グループ】
  • 忠実度低:心血管疾患による死亡リスクを0%(HR1.00)とした。
  • 忠実度普:心血管疾患による死亡リスクを7%(HR0.93(0.76〜1.13))ダウン…!
  • 忠実度高:心血管疾患による死亡リスクを13%(HR1.13(0.92〜1.38))アップ…!
  • 忠実度最:心血管疾患による死亡リスクを22%(HR1.22(0.99〜1.51))アップ…!

つまり、基本的に忠実に守れば守るほど、伝統的な日本食の場合心血管疾患リスクが減少(30%弱)し、動物性食品グループは上昇(約20%)するってことですね。因みにBMIと高血圧の変数を調整しても結果は変わらなかったらしい。
更に伝統的な日本食グループと動物性食品グループが心血管疾患リスクと関係していたため、冠状動脈性心疾患(CHD)リスクと脳卒中の死亡リスクはどうなのかについても見てみたそうな。その結果がこちら。

【伝統的な日本食グループ】
  • 忠実度低:冠状動脈性心疾患による死亡リスクを0%(HR1.00)とした。
  • 忠実度普:冠状動脈性心疾患による死亡リスクを16%(HR0.84(0.56〜1.26))ダウン…!
  • 忠実度高:冠状動脈性心疾患による死亡リスクを30%(HR0.70(0.45〜1.08))ダウン…!
  • 忠実度最:冠状動脈性心疾患による死亡リスクを20%(HR0.80(0.51〜1.25))ダウン…!

【動物性食品グループ】
  • 忠実度低:冠状動脈性心疾患による死亡リスクを0%(HR1.00)とした。
  • 忠実度普:冠状動脈性心疾患による死亡リスクを12%(HR1.12(0.73〜1.72))アップ…!
  • 忠実度高:冠状動脈性心疾患による死亡リスクを38%(HR1.38(0.89〜2.15))アップ…!
  • 忠実度最:冠状動脈性心疾患による死亡リスクを49%(HR1.49(0.94〜2.34))アップ…!

【伝統的な日本食グループ】
  • 忠実度低:脳卒中による死亡リスクを0%(HR1.00)とした。
  • 忠実度普:脳卒中による死亡リスクを30%(HR0.70(0.54~0.92))ダウン…!
  • 忠実度高:脳卒中による死亡リスクを34%(HR0.66(0.50~0.87))ダウン…!
  • 忠実度最:脳卒中による死亡リスクを36%(HR0.64(0.47~0.85))ダウン…!

【動物性食品グループ】
  • 脳卒中による死亡リスクは関係がなかった。

つまり、基本的に忠実に守れば守るほど、伝統的な日本食の場合冠状動脈性心疾患リスクが減少(20~30%)し、動物性食品グループは上昇(最高49%)するってことですね。
また、脳卒中の死亡リスクについても、伝統的な日本食は基本的に忠実に守れば守るほど減少(30~40%)するみたい。
この結果に研究者曰く、

  • 伝統的な日本食は、塩分の摂取量が高く、また高血圧の方の多さとも関係があったのにも関わらず、心血管疾患による死亡リスクの低下と関係していた

とのこと。
普通は塩分が多い→高血圧(血管がカチカチ)→心疾患(心血管疾患)…!って流れなのに謎ですねー。おそらく塩分の高さや高血圧のデメリット以上にメリットが上回っているのが日本食なんでしょうね。