【まとめ】睡眠の質を上げるためにメラトニンを学習しておきますかー
そこでたまに登場するのが睡眠ホルモンメラトニンです。メラトニンは1958年の研究により、松果体(しょうかたい)の分泌物として最初に発見されたホルモンだったりします。またメラトニンは夜間における血液中の増加を介しているんですよね。
メラトニン合成のメカニズム
まずはメラトニン合成がどうやってコントロールされているのか、その仕組みを見ていきましょう。
2005年のゲーテ大学の研究では、松果体におけるメラトニン合成のメカニズムについて調べておりまして、
とのこと。
つまり、光によってメラトニン合成がコントロールされているってことですな。だから光が少ないとき(夜)に発現すると。
また2015年のカリフォルニア工科大学の研究によると、概日リズム(体内時計)の調節にメラトニンが必要だったそうで、睡眠の質を上げるためになくてはならないホルモンとなっております。
そんなメラトニンですが、2019年の雲南大学の研究によると、トリプトファンから4つのステップで合成されるんだとか。つまりセロトニン同様、メラトニンもトリプトファンを材料に作られるってことですね。
そして2011年の同済大学の研究や2011年のゲッティンゲン大学の研究、2013年のセビリア大学の研究、2013年のセビリア大学の研究、2008年のテネシー大学の研究、2013年の北京体育大学の研究と数多くの研究により、哺乳類は多くの組織や臓器(腸や皮膚、脳内など)でメラトニンの合成がされていることも分かっております。
脳内だけでなく、様々な場所で作られているってのはすごいですよねー。
メラトニンの抗酸化作用はすごい…!
睡眠ホルモンとして注目を浴びがちなメラトニンですが、実は抗酸化作用がすごいことでも有名だったりします。
例えば2016年のテキサス大学の研究によると、メラトニンは様々な方法で酸化ストレスを軽減する効果を発揮しているんだとか。具体的には、活性酸素と活性窒素を直接解毒したり、酸化促進酵素の活性を抑えたり、抗酸化酵素を刺激したりするそうです。
このメラトニンの抗酸化作用、フリーラジカル除去機能は2019年の中山大学の研究や2015年の中国医科大学の研究、2017年のシーラーズ医科大学の研究、2019年の慶尚国立大学校の研究、2020年のケルマーンシャー医科大学の研究と、多数の研究でも見られておりまして、メラトニンはビタミンEよりもさらに効果的に活性酸素種(ROS)と活性窒素種(RNS)という酸化ストレスを与える物質を直接除去しているみたい。素晴らしいですなー。
まとめると、メラトニンには酸化物質を抑えつつ、抗酸化物質を増やすというダブルの効果の抗酸化作用があるみたいです。
メラトニンの健康効果はすごい…!
メラトニンの抗酸化作用がすごいこともあって、健康効果も結構良い感じなんですよね。
ということでここからはその当たりの研究を見ていきます。
メラトニンはがんを抑制する…!
2022年のタブリーズ医科大学の研究によると、メラトニンは概日リズムや気分、睡眠を調節するだけでなく、がんを抑制する効果があるんだとか。
ここ最近の研究により、前立腺がんや乳がん、肝臓がん、口腔がん、肺がん、卵巣がんなどいくつかのがんリスクを軽減するという報告が上がっているらしい。
更にメラトニンのがん抑制効果は、抗増殖作用、抗がん免疫の刺激、細胞周期の調整、アポトーシス、オートファジー、癌遺伝子発現の調整、抗血管新生効果(がんは勝手に新しい血管を作ってしまう)などもあるそうな。
老化を停滞させる…!
2021年の中国疾病予防管理センターの研究によると、メラトニンは抗老化作用があるそうな。
なんでもメラトニンは免疫機能を強化したり、概日リズムを整えたり、フリーラジカルを除去したりする機能があり、これらは全て抗老化の役割を果たしているそうです。
確かに抗酸化作用がこれだけあれば、老化を抑えられるんで納得。
免疫を調節してくれる…!
上でもちょい触れましたが、2020年のカロルダビラ医科薬科大学の研究によると、メラトニンには免疫調節機能があったりします。
メラトニンには、抗酸化作用・抗炎症作用がありますんで、当然、免疫にも深く関わっておりまして、免疫を適切に調節してくれるんですよね。その結果、様々な健康リスクを抑えてくれるんですよ。
逆に言えば、メラトニンが上手く分泌されないと様々な不調が出るということで、代表的なことで言えば、睡眠不足による不調です。
ここらへんについては、
- 睡眠不足って健康や肥満など、どんなデメリットがあるの?
- 全米医学アカデミーから学ぶ慢性的な睡眠不足のデメリット
- 寝ているとき脳内で何が起きているのか?寝る時の姿勢は何がベストなのか?
- 乳がんリスクを下げたい?だったらとりあえず7時間以上寝よう!
の記事をご覧いただくと分かりやすいかと。
適切にメラトニンを分泌させるには、なるべく夜は光(特に強い光)を浴びないようにする、睡眠時間をしっかり確保するのが大事…!
1991年のアメリカ国立衛生研究所の研究によると、夜間のメラトニン分泌と光・睡眠の関係について調べてみたそうです。
そもそも多くの脊椎動物は、季節による日照時間の変化によって夜間のメラトニン分泌に変化が起こることが分かっております。ただ、どの程度変化するかは謎だったそうな。そこで今回、人工光を使ってヒトにおける夜間のメラトニン分泌の変化について調べてみることにしたらしい。
この研究は健康な8名を対象にしたもので、以下の2パターンで光を浴びてもらったそうな。
- 夏の日照時間パターン:16時間光を浴びて、8時間光を浴びない。これを1週間続けた。
- 冬の日照時間パターン:10時間光を浴びて、14時間光を浴びない。これを4週間続けた。
これらを参加者が試した結果、以下のことが分かったとのこと。
- 夏の日照時間パターンにおける夜間のメラトニン分泌持続時間は10.3±0.8時間だった。
- 冬の日照時間パターンにおける夜間のメラトニン分泌持続時間は12.5±1.8時間だった。
- つまり動物と同じく、ヒトも光を浴びないとメラトニン分泌持続時間が長くなる傾向がみられた…!
- 睡眠時間が長いとメラトニン分泌持続時間は11.0±0.8時間だった。
- 睡眠時間が短いとメラトニン分泌持続時間は7.7±0.2時間だった。
- つまり、睡眠時間が長い方がメラトニン分泌持続時間も長くなる傾向がみられた…!
適切にメラトニンを分泌させるには、なるべく夜は光(特に強い光)を浴びないようにする、睡眠時間をしっかり確保するのが大事みたいです。
脳の健康におけるメラトニンの役割について先行研究を見直ししてみた…!
2023年のテキサス大学のレビュー論文によると、脳の健康におけるメラトニンの役割について先行研究を見直ししてみたそうです。
具体的には、脳脊髄液の中に高濃度で存在するメラトニンの脳の保護機能についてまとめてみたんだとか。それでは早速レビューのポイントを見ていきましょう。
脳脊髄液ってなに…?
まず脳脊髄液ってのは、脳と脊髄の内外を循環している無色透明な液体でして、当初は外傷による損傷から中枢神経系を保護する役割しか担っていないと考えられていたそうな。つまり外からの衝撃に対して、脳を保護するクッション液の役割のみあると思われていたってことですね。しかし、過去40年間の研究により、脳脊髄液はもっともっと多くの重要な機能を果たすことが明らかになったとのこと。因みに一般的な成人だと、脳脊髄液は24時間で約500mL作られているらしく、1日に数回更新されているんだとか。
話しを戻しまして、脳脊髄液の中にはメラトニンが含まれており、このメラトニンの濃度は概日リズム(体内時計)の変化によって大きく変わるそうです。もうちょい詳しく言うと、夜間の振幅がかなり大きく、また、日中と夜間の明るさでオンオフのスイッチが急激に入るそうな。
んで、夜間は脳脊髄液の移動が大きくなり、それに伴って老廃物の除去量が増えると、メラトニン、睡眠、徐波睡眠(=超深い睡眠)が増加するみたい。またメラトニンは抗酸化物質としての機能があるため、日中のアミロイドβの蓄積とニューロンやグリア細胞への酸化ダメージが最も高く、夜間は低くなるそうです。
更に規則的な概日リズム(体内時計)は神経変性を防ぐのにも重要であり、メラトニンは神経幹細胞の増殖を刺激し、失われたニューロンの置き換えを助ける可能性があるとのこと。
そんな脳脊髄液とメラトニンなんですが、そもそもメラトニンは動物でも人間でも季節による夜の長さの影響を受けることが分かっております。
そしてその日中と夜間の変動は以下のような感じとのこと。
縦軸がメラトニンの分泌量で、横軸が時間ですね。
脳脊髄液中のメラトニンは、20時から急激に上がっており、夜間を通して高レベルを維持、3時ぐらいから6時にかけてまた急激に下がって、6時から8時にかけて落ち着くって感じ。この夜間の脳脊髄液中メラトニン濃度の上昇幅は平均17倍ってことなんで、如何に脳脊髄液中のメラトニンが寝ている最中にフル活動しているかが分かるかと思います。
脳のお掃除機能についてもうちょい詳しく見てみよう…!
次にこの脳のお掃除機能をもうちょい詳しく見ていきましょう。
上記からも分かる通り、睡眠は夜間の脳脊髄液の流れを促進、脳脊髄液中のメラトニン濃度も上昇させ、脳内に溜まった老廃物の除去、神経系とグリア細胞を保護しております。
そして代謝老廃物や損傷・壊れたタンパク質を脳から除去することで、加齢に伴う認知機能・神経機能の低下を抑える可能性があるみたいです。
というのもメラトニンは脳をシャープに保つ為に色々な役割を果たしている可能性があるんですな。具体的に上げていくと、
- 活性酸素や活性窒素を取り除き、酸化ダメージの蓄積を防いでくれる…!
- 脳を細菌やウイルスから守ってくれる…!
- 細胞内外のゴミの蓄積を防いでくれる…!
って感じ。
また、アルツハイマー病の主要な特徴であるアミロイドβを睡眠中に脳から洗い流すこともしてくれるとのこと。
逆に、アミロイドβの産生が除去量を超えると、
- 神経沈着が増加する(=お掃除が追い付かずアミロイドβというゴミが脳内に残る)…!
- 酸化ダメージによる損傷が起こる…!
- 神経の炎症が起こる…!
- アポトーシス(細胞の自殺)が起こる…!
って感じになっちゃいます。
そのため、脳にゴミが溜まる→掃除してなくなるというサイクルを繰り返すことは、健康な神経組織を維持するための重要なプロセスなんだとか。
一方でヒトの研究により、ノンレム睡眠中に脳脊髄液の動きが活発化することが分かっておりまして、更にメラトニンは睡眠を促す効果があり、徐波睡眠中に中枢神経系からの老廃物除去が最も高くなるそうな。そのため、脳のお掃除機能をしっかり動かすためにも睡眠は非常に大事だと言えそうです。
しかし、実は加齢によってこの脳のお掃除機能は約40%減少するという研究結果があったりします。同様に、睡眠効率とメラトニンの産生と循環レベルも加齢によって著しく低下し、老廃物の蓄積と老廃物のお掃除のサイクルバランスが崩れ、結果、老廃物が蓄積しやすくなる可能性があるそうな。
んで重要なのが、睡眠障害が高齢者のアルツハイマー型認知症や認知機能低下の一因となっていると考えられているということです。そしてメラトニンは睡眠促進によく使用される薬剤で、服薬により高齢者の睡眠の量や質を改善されることが結構あるんですな。
以上をまとめると、
- 良い睡眠はメラトニンレベルを上げ、それが毎晩脳に溜まったゴミを除去してくれる。これによって加齢に伴う神経機能の低下を遅らせてくれる
- 一方で睡眠不足や夜間の光、加齢によって夜間のメラトニンレベルが上がらないと、脳の老廃物処理が追いつかなくなり、結果、神経機能が低下する
って感じです。
因みにアルツハイマー病などの認知症の患者さんは、健康な高齢者よりも概日リズム(体内時計)が著しく乱れているケースが多いんだとか。またこの乱れによりメラトニンも抑制されていることが多いみたい。
更に加齢による認知症の患者さんは、松果体で合成と放出されるメラトニンが非常に抑制されているらしく、また、神経変性疾患(アルツハイマー病や認知症、パーキンソン病など)の患者さんの脳には共通点があり、それがニューロンとグリア細胞のアポトーシスによる大量の細胞死とのこと。いや~話がつながってきている感がありますね。
メラトニンは脳を酸化ダメージから守ってくれる…!
脳は大量の酸素を使用する臓器でして、呼吸によって吸収した酸素の約20%を使用すると言われております。すごい使用量ですよね~。一方で脳の重さってのは体重のわずか2%に過ぎないんですな。
そんなに酸素を使うもんですから、当然、フリーラジカル(≒多いと酸化ダメージ・老化を引き起こす)も脳(中枢神経系)で良く見られるんだとか。そして酸化ストレスとは、フリーラジカルの生成が体内の抗酸化力を上回った場合のことを言うんですよね。
んで、この酸化ストレス(酸化ダメージ)は、多くの神経変性疾患の発症に関わっております。
例えば、
- アルツハイマー病
- パーキンソン病
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
- ハンチントン病
などが挙げられます。
一方でメラトニンは、活性酸素種(ROS)と活性窒素種(RNS)という酸化ストレス物質を直接除去する働きがあります。また抗酸化酵素を活性化する機能もあり、このダブルの効果で酸化ストレスを防いでくれるんですよね。
しかもメラトニンは脳神経に簡単に入り込むことができ、しかも脳のバリアを簡単に通過できないんで、脳に長く留まる事ができるんですよ。これにより、他の抗酸化物質よりも酸化ダメージをより効果的に軽減することが出来るんだとか。スゲー。
こんな感じで、メラトニンは加齢に伴うニューロンやグリア細胞への酸化ダメージを軽減し、脳内のゴミを除去することで、神経変性疾患や認知機能低下を予防してくれるみたいです。
高齢者は特にメラトニンを意識した方が良さげ…!
上記でも書いた通り、高齢者はメラトニンの相対的な減少がみられ、また抗酸化力も同時に低下していたりします。そのため、高齢者の場合、特にフリーラジカルによる酸化ストレス(酸化ダメージ)を防ぐ力が低下している可能性があるんですな。それにより、認知症発症リスクが高まる感じみたい。
そして現時点において、メラトニンは、潜在的なアミロイドβの蓄積を防ぎ、それを中枢神経系から排除し、ニューロンとグリア細胞を保護できる唯一の生理学的分子とのこと。これらを見ても、高齢者の場合は特にメラトニンを意識した方が良さげです。
メラトニンの安全性はかなり確立されている…!
こんなに良い尽くしだけど、メラトニンの安全性ってどうなの…?って疑問の答えを最後に見ておきましょう。そもそもの考えとして、動物・植物を問わず、全ての生物は生涯を通じて生理的濃度のメラトニンを合成しております。…ってことは、メラトニンが常に作られ体の中にあるってことなんで、そう考えると重要で有害でないってのは容易に想像がつくかと。
またメラトニンの期間・用量についてもかなりたくさんの研究で調べられているんですよね。睡眠問題でメラトニンは使われることが多いんで、自然と何年にも亘ってヒトに使われることが多いんですよ。
例えばメラトニンを1~3年間毎日摂取した臨床試験では、眠気や頭痛などのちょっとしたものが出ることがある程度で毒性と言えるものは出ていないそうな。また1か月間、1日300~1,000mgという非常に高用量のメラトニンを摂取した研究もありますが、実質的な毒性は発見されていないとのこと。
一方でメラトニンは低コストでありますんで、コスパが良くて害もほとんどみられない、そして効果が高いって感じです。やっぱメラトニンは素晴らしいですな…!
個人的考察
以上、メラトニンでした。
惜しむべきは、メラトニンサプリが日本のAmazonなんかでは買えないことですかね~。一応メラトニンの材料になるトリプトファンのサプリは買えるものの、それなら普通に鶏肉を食べれば良いんじゃないかな~と思ったり。
因みにiHerbなんかを使って、国内にいて個人輸入すれば買うことが出来ます。
なんかは結構良さそうな感じ。
更に余談ですがメラトニンサプリは一般的な成人の場合1~5mgが適量であります。まぁ、寝る前に3mg飲めば普通は十分なんで、サプリメントで超有名なNOW社のものが丁度良いかと。
でも一番は、やっぱり規則正しく寝ることです。
メラトニン合成をちゃんとする為にはしっかり寝ることが大事なんで…。
もし睡眠に問題が…って方は以下の記事を参考にしてみると良いかもしれません。
参考文献
https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/ja01543a060
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16399907/
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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31057485/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22025877/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21193011/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23609496/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23889107/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18155917/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23410151/
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