【加筆内容】ケトジェニックダイエットは小児てんかん(難治てんかん)に有効なのか先行研究結果を見直し・まとめてみた!
先週の続きです。
ケトジェニックダイエットは小児てんかん(難治てんかん)に有効なのか先行研究結果を見直し・まとめてみた…!
2024年のカリフォルニア行動神経科学心理学研究所のレビュー論文によると、ケトジェニックダイエットは小児てんかん(難治てんかん)に有効なのか先行研究結果を見直し・まとめてみたそうです。
なんでも国際抗てんかん連盟(ILAE)によると、薬剤抵抗性てんかん(DRE)とは、抗てんかん薬を服薬しても、持続的な発作症状がなくならない状態と定義しているそうな。つまり薬理学的介入は効果的ではないため、手術や迷走神経刺激療法、食事療法などの代替療法が検討されているらしい。
一方で、ケトジェニックダイエットは、1世紀にもわたっててんかんの治療法として用いられてきております。そして過去15年間、小児てんかん(難治てんかん)の治療において関心が高まりつつあるんですな。また、それに伴い効果や安全性なんかを調べた研究も進んできているらしい。
そこで今回、それらの知見をまとめて大きな結論を出して見ることにしたんだとか。
まず研究者たちは、2023年10月2日までに発表された該当研究をPubMed Central(PMC)、MedLine、Science Directを用いて検索してみたそうな。すると合計936件の研究がヒットしたとのこと。次に重複している研究を除外しつつ、各研究の質をチェックしていったらしい。
最終的に選ばれた研究は11件でして内訳は、
- RCT:4件
- 系統的レビュー:2件
- ナラティブレビュー:5件
って感じでした。
んで、早速結論から言っちゃうんですが、
- ケトジェニックダイエットは種類に関係なく、小児の薬剤抵抗性てんかんに対して、短期的な効果があった…!
- 特に修正アトキンスダイエットは、忍容性(薬の副作用の程度のこと)が高い(=耐えられる程度の薬の副作用のこと)、てんかん発作を50%以上減少させる可能性が高い、てんかん発作を90%以上減少させる可能性も他のケトジェニックダイエットと同程度という素晴らしい結果だった…!
とのこと。
元々ケトジェニックダイエットは薬剤抵抗性てんかんの治療法として開発されたものですが、やっぱ効果があったんですねー。そしてその中でも修正アトキンスダイエットが一番良い感じだったと…。
ってことで、結論は以上になります。…と言ってもこのレビューでは他にも色々書いておりまして、個人的に勉強になりました。
もうちょい詳しく知りたい…!って方のみ以下をご覧ください。
ケトジェニックダイエットの種類
今回のレビューで出てきた主なケトジェニックダイエットの種類は以下だったそうです。
- ケトジェニックダイエット(cKD:いわゆる古典的ケトジェニックダイエット):高脂肪食を特徴とし、脂肪とタンパク質+炭水化物の比率が3~4:1になるようにする。また1日の摂取カロリーの75~80%を脂肪から摂取する。因みに水分摂取量は体重に基づいて決定される。またビタミンとミネラルのサプリを必要に応じて摂取する。減量目的ではないので最初は病院で開始し、栄養士や医師の指示に従って行う。また必ず検査結果を基にサプリの量と摂取を決める。治療戦略の一環として低血糖コントロールを重視する。
- 中鎖脂肪酸(MCT)ケトジェニックダイエット(MCTKD):高脂肪食の割合を調整し、中性脂肪をケトン体産生に利用する。通常、水分摂取量に制限はない。こちらも減量目的ではないので最初は病院で開始し、栄養士や医師の指示に従って行う。食事中の中性脂肪の割合は調整され、食事管理は綿密に計算される。また必ず検査結果を基にビタミンとミネラルのサプリが処方される。こちらも治療戦略の一環として低血糖コントロールを重視する。
- 修正アトキンスダイエット(MAD):高脂肪・低炭水化物食。特定の割合や食品の制限はないのが特徴。炭水化物の制限は、小児の場合は1日10gから開始される。通常、水分摂取量に制限はない。外来診療で開始できる上に特別な食事プランがないのも特徴。また、タンパク質と脂肪の摂取量を柔軟に調整できる、ビタミンとミネラルのサプリ摂取も可能。低血糖コントロールを重視する。
- 低GIダイエット(LGIT:低GI食):炭水化物摂取量を1日40~60gに制限し、脂質を60%、タンパク質を20~30%と多めに摂取する。食べる炭水化物は全て低GIのものとなる。通常、水分摂取量に制限はない。必要に応じてビタミンとミネラルのサプリを摂取する。また、低血糖コントロールを重視する。
こうみると、ケトジェニックダイエットにも結構色々な種類があるんですね。あと医療として考えたケトジェニックダイエットと、減量目的として考えたケトジェニックダイエットは、ちょっとニュアンスが変わってきますね。
ケトジェニックダイエットの種類ごとにおける三大栄養素
次はケトジェニックダイエットの種類ごとにおける三大栄養素を見てみます。
- ケトジェニックダイエットの種類:脂肪:炭水化物:タンパク質
- ケトジェニックダイエット:90%:4%:6%
- 中鎖脂肪酸(MCT)ケトジェニックダイエット:70~75%:15~18%:10%
- 修正アトキンスダイエット:60~65%:5~10%:30%
- 低GIダイエット:60%:10%:30%
こちらは減量目的でお使いになりたい場合の指標として役立ちそうだと思いました。
ケトジェニックダイエットの種類ごとにおける効果
ケトジェニックダイエットの種類ごとにおける効果は下記のようになっておりました。
- ケトジェニックダイエットの種類:効果:備考
- ケトジェニックダイエット:3ヶ月で52%、6ヶ月で43%、12ヶ月で40%、24ヶ月で33%、3年で30%、発作が減少した。また3ヶ月で58%~63%、発作が減少した:長期的な効果が期待できる
- 乳児におけるケトジェニックダイエット:1ヶ月で68%、6ヶ月で82%、12ヶ月で91%、発作が減少した。また1ヶ月で20%、6ヶ月で29%、12ヶ月で27%、発作がなくなった:脂肪:タンパク質+炭水化物を1:1から始め、その後3:1は、乳児のタンパク質必要量を達成するために使用される。2歳未満の子供はケトジェニックダイエットを開始するのに理想的な年齢層である可能性がある。生後6週間の乳児にも安全かつ効果的
- 中鎖脂肪酸(MCT)ケトジェニックダイエット:ケトジェニックダイエットと比較しても発作の減少に有意差は認められず、3ヶ月目までに64.3%の方が50%以上の発作が減少した。また27.6%が発作がなくなった:いくつかの研究で良い結果が出ている
- 修正アトキンスダイエット:いくつかの研究により30%以上、50%以上、発作が減少した:食事制限が非常に厳しいため、家族は子どもに合われた食事レシピを考えるのが大変。全体的な効果は1~2歳児を除いてケトジェニックダイエットと同等。但し、2歳以上の子どもではケトジェニックダイエットよりも発作の頻度の減少が大きく、2歳未満の子どもでは逆にケトジェニックダイエットの方が発作の頻度の減少が大きかった
- 低GIダイエット:50%を超える発作の減少が1ヶ月で42%、3ヶ月で50%、6ヶ月で54%、9ヶ月で64%、12ヶ月で66%と徐々に増加した:発作の種類による効果の有意差はなし。有望ではあるが、長期データは限られていた
これらを見ると、古典的ケトジェニックダイエットから開始して、2歳ぐらいから徐々に修正アトキンスダイエットへ移行するのが良さそうですねー。
ケトジェニックダイエットの副作用と対策
最後はケトジェニックダイエットの副作用と対策を見てみましょう。
- ジャンル:副作用:対策
- 胃腸:便秘、胃腸障害。胃食道逆流症(GERD)の悪化。嘔吐。吐き気。便秘。胆石。肝炎:食物繊維の摂取量の調整
- 心血管系:血中脂質の上昇。QT間隔の延長。中性脂肪の増加。高コレステロール。動脈機能の変化。心筋症。潜在的な心臓異常:マグネシウムとセレンの適切な摂取量の確保
- 腎臓・泌尿生殖器:腎臓結石。アシドーシス。脱水症状。過度なケトーシス状態。高尿酸血症。ケトーシス誘発性腎臓結石症。尿酸結石・カルシウム結石:結石予防のためクエン酸カリウムを摂取する。腎臓結石の発生をモニタリングし、介入
- 骨格:骨密度の低下。骨の健康状態の低下、骨折、骨粗鬆症、骨粗鬆症リスクの増加:定期的にDXAで確認。骨の健康状態をモニタリングし、サプリメントを摂取
- 成長:場合によって成長障害が発生。体重減少。成長への様々な影響。身長パーセンタイル値の低下。場合によっては成長率の低下:個別化された食事プランとサプリメントの摂取。成長と栄養状態のモニタリングを実施
- その他:疲労感。食事拒否・食欲減退。低血糖。あざ。アレルギー症状:対策の記載なし
まぁ、この当たりは医師の指示に従ってやるのが安全と言えましょう。もし減量目的でケトジェニックダイエットを行う場合は上記のリスクや症状には注意が必要です。
個人的考察
ということで色々見てきましたが、ケトジェニックダイエットのてんかんの治療効果は期待してよろしいような感じ。発作の減少と神経保護効果がありそうなんで。
但し、潜在的な副作用、特に小児の成長への影響は注意深くモニタリングすることが重要であると研究者はおっしゃっておりました。またそれぞれに合わせた多科的アプローチが不可欠ともおっしゃっており、その通りだろうな~と思った次第です。