【まとめ】頭を良くしてうつ症状の予防と改善にもつながる「葉酸」入門
葉酸ってなに…?
葉酸は水溶性のビタミンB群の一種。認知機能に関係しており、記憶力や頭の回転を良くする効果があります。また、妊婦さんが気にすべき栄養素としても有名ですよね。そんな大事な葉酸について、早速いくつか研究を見ていきましょう…!
不足すると認知機能が低下する…!
2005年のカリフォルニア大学デービス校の研究によると、60歳以上のラテン系アメリカ人の高齢者1789人を対象に、葉酸と認知機能の低下、認知症の関連性について調べたんだそうな。結果、葉酸が不足すると認知機能がかなり下がり、認知症の発症リスクもアップしていたとのこと。
高齢者が対象の研究ですが、気になりますね~。
うつ症状の予防や改善につながるかも…!
2012年のカリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究によると葉酸はうつ病予防になるんだとか。なんでも葉酸欠乏症とうつ症状の関係は半世紀前から分かっていたらしく、今回は2つの実験をしたとのこと。
一つ目の実験では、うつ病患者148人を対象に1日7.5mgの葉酸グループとプラセボグループを比較したそう。8週間後、葉酸グループとプラセボグループに効果の違いはなかったそうです。しかし少数で試していた1日15mgの葉酸グループは有効性が見られたそうです。
これを基に次は75人の患者さんを対象に1日15mgの葉酸グループとプラセボグループで実験してみたそうで、結果は想像通り、葉酸グループに有効性が見られたらしいです。
つまり、葉酸はうつ症状の予防や改善につながる可能性がある…!ってことで、うつにお悩みの方は積極的に葉酸を含む食品を摂取してみてはいかがでしょうか…?
葉酸低下とうつ病リスク上昇は関係している…!
2007年のヨーク大学の研究によると、葉酸とうつ病は関係あるのか系統的レビューとメタ分析を用いて調べてみたそうです。
そもそも1967年の研究や1970年の研究によって、うつ病の患者さんはかなりの割合で葉酸値が低いってことが分かっております。また2003年のオックスフォード大学の系統的レビューによれば、葉酸を使ってうつ病の治療を強化し、改善できるって話もございます。
葉酸はセロトニンなどの中枢神経系の神経伝達物質の合成に密接に関わっているのが理由っぽいです。しかし、一方で矛盾した結果が出ている研究もあるんですよね。
そこで研究者たちは、既存の研究結果をまとめてみたり、メタ分析にかけてみることにしたんだとか。
まず2005年11月までに発表されている該当研究をMedlineやEmbase、PsycINFO、BIOSIS、CAB Abstracts、Science Directで検索してみたそうです。すると全部で2,145件もの研究が見つかったらしい。
続いてこの中から基準を満たす質の高い研究を選んで行ったそうで、最終的には19件の研究がピックアップされたとのこと。この19件で系統的レビューを行いつつ、更に19件の研究のうちの11件でメタ分析にかけてみたそうな。
って感じで、総サンプル数については、
- 総サンプル数:15,315人
- うつ病患者さんの総サンプル数:1,769 人
- 対照群の総サンプル数:13,546人
って感じ。
では、葉酸不足とうつ病リスクの関係がどうなったか見てみましょう…!
- 葉酸とうつ病の間には有意な相関関係(1.55)があった…!
- 交絡調整後も依然として葉酸とうつ病との間に関係(1.42)があった…!
- うつ病の方は葉酸値が低く、葉酸値の低下がうつ病と関連しているということが分かった…!
- 但し、葉酸値の低下がうつ病リスクを上げるのか、うつ病になると葉酸値が低下するのかという因果関係はよく分からなかった…。
卵と鶏問題はよく分からないけど、とりあえず葉酸低下とうつ病リスク上昇は関係しているのは間違いなさそうですね。
うつ病の発症にビタミンB12、ビタミンB6、葉酸が効果的なのか調べてみた…!
2008年のサウスメトロポリタンヘルスサービスのRCTによると、うつ病の発症にビタミンB12、ビタミンB6、葉酸が効果的なのか調べてみたそうです。
この研究は、うつ病がない(ベックうつ病尺度(BDI)のスコアが18未満)75歳以上の男性299名が参加したものでして、参加者全員を以下の2グループにランダムに振り分けたそうな。
- ビタミンB12+葉酸+ビタミンB6グループ(150名):1日にビタミンB12を400mg、葉酸を2mg、ビタミンB6を25mg摂取してもらった。
- プラセボグループ(149名):プラセボを飲んでもらった。
実験期間は2年間とのこと。
また実験開始時、6ヶ月後、12ヶ月後、18ヶ月後、24ヶ月後にベックうつ病尺度(BDI)を用いて、うつ病を発症していないかもチェックしたんだとか。
結局、2年間のうちに19.4%の方がドロップアウトしたそうで、最終的なサンプル数は、ビタミンB12+葉酸+ビタミンB6グループが118名、プラセボグループが123名とのことでした。
最後にデータをまとめてみた結果、
- 2つのグループ間に差はなかった…。
- BDIのスコアも有意な変化はなかった…。
って感じだったそう。あれま~残念…。
但し、コックス比例ハザードモデル(統計手法)を使ってみると、ちょっと結果が変わっておりまして、
- グループ間の差は有意ではなかったものの、ビタミンB12+葉酸+ビタミンB6グループは、うつ病を発症しない可能性が24%も高かった…!
ってことなんですよね。
また2年間を経て研究が終了したときには、
- ビタミンB12+葉酸+ビタミンB6グループは84.3%が臨床的にみて重大なうつ病の症状が見られなかった…!
- プラセボグループは79.1%が臨床的にみて重大なうつ病の症状が見られなかった…!
って感じだったみたいです。
男性は葉酸が重要…!女性はビタミンB12が重要…!
2009年のラス・パルマス・デ・グラン・カナリア大学の研究によると、葉酸・ビタミンB6、ビタミンB12の摂取量とうつ病の関係性について調べてみたそうです。
そもそも血中の葉酸やビタミンB6、ビタミンB12の濃度の低下と抑うつ症状には関係がある…!って研究がいくつも報告されておりますが、じゃあ、葉酸やビタミンB6、ビタミンB12の摂取量とうつ病の発症率は関係あるのかと言いますと、これがよく分からなかったんですよね。そこで今回チェックしてみることにしたんだとか。
まず研究者たちはSUNコホート研究というデータセットを用いて、9,670人分の食事アンケートをチェックしてみたそうな。次にそこから葉酸やビタミンB6ビタミンB12の摂取量を計算し、うつ病の発症率と関係あるのか照らし合わせて行ったらしい。
まず研究者たちはSUNコホート研究というデータセットを用いて、9,670人分の食事アンケートをチェックしてみたそうな。次にそこから葉酸やビタミンB6ビタミンB12の摂取量を計算し、うつ病の発症率と関係あるのか照らし合わせて行ったらしい。
因みに年齢やBMI、運動頻度、婚姻の有無、喫煙の有無、失業の有無、アルコールの頻度などの変数は調整済みとのことでした。
その結果、
- 男性4,211人を調べてみた結果、ビタミンBの摂取量とうつ病発症率に関係はなかった…。
- 但し、葉酸の摂取量とうつ病発症率とは有意ではないが逆相関の関係があった…!
- 現在喫煙している男性、不安レベルが低い男性の場合、葉酸の摂取量の少なさとうつ病の発症率に有意な正の相関関係があった…!
- 女性5,459人を調べてみた結果、ビタミンB12の摂取量とうつ病発症率の間に有意な逆相関の関係があった…!
- 競争力レベルが低い女性、不安レベルが低い女性の場合、ビタミンB12の摂取量とうつ病発症率の間に有意な逆相関の関係があった…!
- 中程度の身体活動レベル(1週間に最大17MET-h)を報告した女性でビタミンB12をある程度摂取していた人は、うつ病リスクが60~70%低かった…!
- 女性の場合、葉酸摂取量とうつ病リスクは関係なかった…。
- 男女ともビタミンB6とうつ病リスクは関係なかった…。
そうです。
男性は葉酸がポイントで、女性はビタミンB12がポイントみたいですね。そしてビタミンB6は関係ないと。
これらを見ると、やはり葉酸やビタミンB群もメンタル不安定の予防的な役割として使えそうですな。
葉酸やビタミンB12のうつ症状軽減効果は短期的にはダメ、長期的には良いかも…!
まず研究者たちは、2014年6月6日までに発表された該当する先行研究をPubMedやPsycINFO、Embase、コクランのデータベースで検索してみたそうな。その結果、269件の研究がヒットしたんだとか。
次にこの中から、
などに該当する研究をピックアップしていったそうで、最終的に基準を満たしたものは11件だったとのこと。これらを用いて系統的レビュー・メタ分析にかけてみたそうです。
気になる結果はこんな感じ。
- 数日から数週間、ビタミンBを使用した場合、抗うつ薬で治療されている成人の大うつ病患者さんのうつ症状は改善しなかった(5件の研究、標準化平均差(SMD)=-0.12)
- 数週間から数年、ビタミンBを使用した場合、抗うつ薬で治療されている成人の大うつ病患者さんのうつ症状の再発リスクが低下する可能性があった(1件の研究、オッズ比=0.33)
- ビタミンBを使用した場合、重大なうつ症状リスクを減少させる可能性があった(2件の研究、リスク比=0.65)
つまり、葉酸やビタミンB12のうつ症状軽減効果は短期的にはダメ、長期的には良いかも…!って感じだったってことですね。但し、質の高い研究はまだまだ少なく、個々の研究の結果もバラバラだったんで、その辺は注意ということでした。
ということで、メンタル安定・改善には葉酸やビタミンBが少なくならないよう長期的に意識していくことが大事みたいです。
葉酸の健康効果についてメタ分析のアンブレラレビューを行ってみた…!
2020年の新郷医学院の研究によると、葉酸の健康効果についてメタ分析のアンブレラレビューを行ってみたそうです。
まず研究者たちは、2018年5月20日までに発表された該当するメタ分析をMEDLINE、EMBASE、コクランで検索してみたそうな。
すると、
- MEDLINE:582件
- EMBASE:1,539件
- コクラン:336件
の合計2,457件の研究がヒットしたとのこと。
次にこの中で重複している研究や質の低い研究を除いていったらしい。
最終的に残ったメタ分析は108件でして、内訳は、
って感じでした。
それでは、観察研究のメタ分析の概要からチェックしていきましょう。
- 各メタ分析に含まれる観察研究数の中央値:7件(範囲:2~36件)
- サンプル数の中央値:43,063人(範囲:635~59,514,473人)
- 症例数の中央値:3,463人(範囲:11~147,424人)
続いて高品質又は中程度の質の観察研究のメタ分析(25件)をまとめた結果を見てみます。
葉酸(サプリを含む)を摂取すると、
とのこと。
また血中の葉酸値の上昇との関連は、
って感じ。
それと謎な部分として、
だったそうです。
次は、RCTのメタ分析の概要をチェックしてみます。
続いて高品質又は中程度の質のRCTのメタ分析(34件)をまとめた結果を見てみます。
葉酸(サプリを含む)を摂取すると、
葉酸(サプリを含む)を摂取すると、
- 妊娠前における低出生体重のリスク低下
- 食道がんのリスク低下
- 胃がんのリスク低下
- 頭頸部扁平上皮がん(喉のがん)のリスク低下
- 膵臓がんのリスク低下
- 冠状動脈性心疾患(CHD)のリスク低下
- 成人のポリープのリスク低下
- 妊娠後期における低出生体重リスクは有意差なし
- 大腸がんリスクは有意差なし
- 肺がんリスクは有意差なし
- パーキンソン病リスクは有意差なし
- 非症候性口唇裂(上唇が生まれつき割れている状態)のリスク低下
- 在胎不当過小(在胎週数に対して小さい胎児)のリスク低下
- 非症候性口蓋裂リスクは有意差なし
- 喘鳴(呼吸時にヒューヒューやゼーゼーなどと音がすること)リスクは有意差なし
- 急性リンパ性白血病リスクは有意差なし
- 妊娠高血圧症候群・妊娠中毒症リスクは有意差なし
とのこと。
また血中の葉酸値の上昇との関連は、
- 子宮頸がんのリスク低下
- 大腸腺腫(大腸に出来るポリープ)のリスク低下
- アルツハイマー病のリスク低下
- 肺がんリスクは有意差なし
- 冠状動脈性心疾患(CHD)リスクは有意差なし
って感じ。
それと謎な部分として、
- 血中葉酸値と前立腺がんリスクは有意差なし
- 血清葉酸値の上昇は前立腺がんのリスク増加と関連あり
だったそうです。
次は、RCTのメタ分析の概要をチェックしてみます。
- 各メタ分析に含まれるRCT数の中央値:5.5件(範囲:2~25件)
- サンプル数の中央値:3,113人(範囲:28~82,723人)
- 症例数の中央値:653人(範囲:3~39,923人)
続いて高品質又は中程度の質のRCTのメタ分析(34件)をまとめた結果を見てみます。
葉酸(サプリを含む)を摂取すると、
- 胎児異常による選択的妊娠中絶のリスク低下
- 巨赤芽球性貧血(ビタミンB12又は葉酸の欠乏によりDNA合成が上手くいかず、デカくて未熟な赤血球(巨赤芽球)が増えて貧血になること)のリスク低下
- 神経管閉鎖障害のリスク低下
- 元々心血管疾患(CVD)のある人のリスク低下
- メトトレキサートによる肝障害のリスク低下
- 妊娠高血圧症候群(旧、妊娠中毒症)・妊娠高血圧腎症(旧、子癇前症)のリスク低下
- 分娩前血清葉酸値低下のリスク低下
- 2型糖尿病患者及び一般集団の両方におけるハミルトンうつ病評価尺度のスコア及び血漿ホモシステイン濃度の低下
- 出生体重のリスク低下
- 赤血球葉酸値のリスク低下
- 血清葉酸値・血漿葉酸値の上昇のリスク低下
- 既存疾患のある患者における前立腺がんリスク上昇のリスク低下
- 過去に病気になったことがある人における全死亡リスクは有意差なし
- 過去に病気になったことがある人におけるがんにおける死亡リスクは有意差なし
- 低出生体重リスクは有意差なし
- 早産リスクは有意差なし
- 死産・新生児死亡リスクは有意差なし
- 過去に病気になったことがある人におけるがん発症リスクは有意差なし
- 大腸腺腫リスクは有意差なし
- 大腸がんリスクは有意差なし
- 冠動脈バイパス手術(CABG)リスクは有意差なし
- 冠動脈疾患のある患者における拡張期血圧リスクは有意差なし
- 冠動脈疾患のある患者における拡張末期径(心臓が最も膨らんだ状態の直径)リスクは有意差なし
- 過去に病気になったことがある人における心筋梗塞(MI)リスクは有意差なし
- 切断リスクは有意差なし
- 歯肉炎指数リスクは有意差なし
- 流産リスクは有意差なし
- 多胎妊娠(双子や三つ子などの妊娠)リスクは有意差なし
とのこと。
最後に観察研究のメタ分析とRCTのメタ分析の比較結果を見てみます。
まず比較できたのは以下の5つの関連性とのこと。
まず比較できたのは以下の5つの関連性とのこと。
- 口蓋裂
- 神経管閉鎖障害
- 神経管閉鎖障害の再発
- 大腸がん
- 妊娠高血圧症候群(旧、妊娠中毒症)
んで結果は、
- 口蓋裂、神経管閉鎖障害、葉酸暴露量(食事による葉酸摂取量、赤血球葉酸値、血中葉酸値、葉酸サプリメントの摂取量)が大腸がんに及ぼす影響について、関連性や影響が統計的に有意にあると出た…!
- 妊娠高血圧症候群(旧、妊娠中毒症)、神経管閉鎖障害歴のある女性における神経管閉鎖障害の再発について、関連性や影響はありそうなものの統計的に有意ではなかった。
- 観察研究のメタ分析では総葉酸摂取量による大腸がんの影響は関係ありそうだったが、RCTのメタ分析では関係なさそうだった…。
とのこと。
とりあえず大腸がんだけ関係が深そうですな。
ということで、葉酸の摂取はメリットが多くデメリットを上回る様子。死亡率やがん、心血管疾患、代謝関連、出産関連にメリットがありそうなんで、意識して摂取していきたいですねー。
