遺伝の影響はいか程なのか…?
この問題ってかなり身近ですが、実際どうなのかってイマイチよく分からないですよね…。
例えば、性格。
親の性格とどれぐらい自分は遺伝的に似てしまうのか、更にいえば、精神障がいになりやすいかどうかなんて、知っているとあらかじめ対策も講じることができて、その後の人生にとって有益な情報となるのではないでしょうか…?
ということで今回は、遺伝の影響がどれほど自分を構成する要素になり得るのかについて、超有名な研究からひも解いてみたいと思います。



遺伝の影響

今回、この遺伝の影響について非常に参考になるのが2002年のミネソタ大学ツインシティー校のレビュー論文。これは過去の研究データをまとめたもので、これをみることによって、

  1. 遺伝は性格にどこまで影響を及ぼすのか…?
  2. 遺伝と親の影響はどちらが勝るのか…?
  3. 遺伝は精神障がいにどこまで影響を及ぼすのか…?
  4. 遺伝はIQにどこまで影響を及ぼすのか…?
  5. 遺伝は政治的な考え方にどこまで影響を及ぼすのか…?
  6. 遺伝は仕事の好みにどこまで影響を及ぼすのか…?

が見えてくるんですよね。
でも、こんなのどうやって調べるんだ…?って思いませんか…?
実は一卵性双生児を大量に調べまくったら分かったとのこと。もうちょい詳しく言うと、

  1. 生まれた直後の一卵性双生児が別の家庭に養子としていく。
  2. 別々の親の元で育てられる。
  3. 上記ケースを探しまくる。
  4. その後、二人の一卵性双生児がどんな性格等になったかを調査しまくる。

この調査によって遺伝子は全く一緒だが、全く違う環境で育てられた人の性格等が分かるので、遺伝と周囲の影響を切り離し、遺伝の影響についてリサーチできるといった形です。
いっつも思うんですが、よくこんな上手い方法を思いつくもんだな~。このクリエイティブ性が欲しい…。



1. 遺伝は性格にどこまで影響を及ぼすのか…?

では、まずは遺伝と性格の話から。性格はもちろん皆さんご存知、ビッグファイブで調べておりまして、平均を出した結果は以下のような感じだったそうな。

  • 外向性(社交的か):49%が遺伝…!
  • 協調性(周囲と上手くやれるか):35%が遺伝…!
  • 誠実性(まじめか):38%が遺伝…!
  • 神経症傾向(メンタルが安定しているか):41%が遺伝…!
  • 開放性(好奇心旺盛か):45%が遺伝…!

ここから導き出される大きな結論は、

  • 遺伝は性格に35%~50%程の影響力がある…!

ということ。つまり、自分の性格は親に最大半分も似てしまうみたい。
う~ん。結構大きいですね~さすが遺伝子パワー…。

因みに自分で置き換えて考えても、なるほど、納得の結果でして、特に外向性なんてばっちり当てはまっておりますね(笑)



2. 遺伝と親の影響はどちらが勝るのか…?

よく親の影響力(親の教育)の話ってありますよね。あれってどれぐらいなのかって話ですが、結論から書くと遺伝学では親の影響はほぼなしとのこと。例えば、上記で挙げたように性格は35%から50%も影響を受けるのに対し、教育や家庭環境は約0%から11%しか影響がないんだそうな。もちろん、毒親(虐待とかネグレクト(放棄・放任)する親など)は別ですが、一般家庭で育てられた場合、教育や家庭環境は遺伝パワーに遠く及ばないみたい。
むしろ、教育や家庭環境よりも遺伝パワーに勝るとも劣らない要素は友だちとのことなんで、親は(教育のためではなく)、子どもに合う、同じ趣味趣向の友だちが見つかるように習い事をさせたり、環境を整えていく(子どもに投資していく)ってのが良いみたい。この辺は以前に書きましたが、勉強になりますな~。
あ、これ、今度、職場のお子さんやお孫さんがいる人に伝えよ~っと(笑)



3. 遺伝は精神障がいにどこまで影響を及ぼすのか…?

続きまして、当ブログをお読みの方が気になるジャンルをご紹介。ぶっちゃけ、科学的にみて精神病って遺伝とどこまで関係しているの…?って話です。これは私も非常に気になった項目でして、早速結果を見ていきましょう…!

  • 統合失調症:約80%が遺伝…!
  • うつ病:約37%が遺伝…!
  • 不安症:約28%が遺伝…!
  • アルコール中毒:約60%が遺伝…!

統合失調症の遺伝率がハンパないですね…。
他もなかなか遺伝子パワーが強いご様子…。



4. 遺伝はIQにどこまで影響を及ぼすのか…?

今度は遺伝とIQの影響度についてみていきましょう…!
親の教育によってIQが決まる…!な~んて話をどこかで聞いた覚えがあるような、ないような感じですが果たして結果は如何に…!?って感じですよね…!
では、早速見ていきましょう。結果は、

  • 親の教育はIQにほぼ無力…!
  • 年齢を重ねるごとに遺伝パワーで親のIQに近づいていく…!
  • 最後は遺伝パワーに為す術もなく、遺伝がIQに与える影響は約90%…!

これは…。って感じですよね…。
一応、もうちょい詳しく見ていきますか~。
上記でレビューされた研究は1993年のミネソタ大学ツインシティー校のもので、分かりやすいのが以下のグラフになります。



公開されているIQツイン相関から導出されたIQ分散成分の推定値。 推定値は、ファルコナーの遺伝率の公式で使用される標準的な仮定に基づいています(McGue et al。、1993から)。

「McGue et al.1993 Behavioral genetics of cognitive ability: A life-span perspective」から引用


グラフの説明を書いておくと、

  • 縦軸…影響度
  • 横軸…年齢
  • -○-…遺伝パワー
  • -●-…親の教育
  • -▲-…それ以外の要素

って感じ。
これを表に整理すると大体こんな感じ。




小学校に入る前はまだ親の教育は遺伝パワーに善戦しているんですが、そこから徐々に差が開き始め、20歳を迎える頃にはすっかり遺伝パワーに押し切られてしまっております。
遺伝パワー恐るべし…。

つまり私のIQは遺伝パワーに完全に負け、遺伝90%、自分と親の努力が0%ってことですね…。
う~ん。残酷…。ほんと残酷…。



5. 遺伝は政治的な考え方にどこまで影響を及ぼすのか…?

あとはオマケ的内容なんでサクッとご紹介します。
政治的な考え方も遺伝は影響するようで、


だったそうです。まぁ、考え方や価値観も50%前後の影響を受けるってことですね~。



6. 遺伝は仕事の好みにどこまで影響を及ぼすのか…?

最後は仕事の好みと遺伝の関係を見ていきます。
親の仕事を継ぐ…!みたいな習慣は現代の日本にとっては薄れつつありますが、果たして、仕事の好みって遺伝と影響があるんですかね~?
これの結果は、

  • 遺伝が及ぼす仕事の好みの影響度は36%…!

だったそうです。
まぁまぁな影響度ですね~。



個人的考察

以上、遺伝の影響についてでした。
結構、残酷な結果が多いのですが、まぁ、それほど遺伝パワーが強いってことですね。
遺伝パワーに抗うのは基本ムリゲーなんで、ここは諦めて、残りの部分を努力や対策でカバーしていきたいと改めて思った次第です。
因みに遺伝はダイエットにも多大な影響をもたらします。この辺については下記に書いておりますので、是非合わせてお読みください。




参考文献