先週の続きです
今回は、知的障がい児の方を対象としたリバウンドセラピーの研究を見てみます。



週3日1日30分の有酸素運動+リバウンドセラピー(トランポリン)で下半身の持久力とバランス感覚が大幅にアップする…!

2019年のグダニスク体育大学RCTによると、知的障がい児の方を対象に有酸素運動+リバウンドセラピーの効果を調べてみたそうです。
ということでまずはリバウンドセラピーの説明から。
日本ではあまり聞きなれない言葉なんですが、リバウンドセラピー(Rebound Therapy)ってのは、知的障がいや自閉スペクトラム症、身体障がいの方が楽しくリハビリできるよう考案された運動法のことで、トランポリンを使用して行うものとなります。理学療法士の方がサポートしつつトランポリンの上で飛び跳ねることによって、

  • 身体活動の促進
  • バランス感覚アップ
  • 体の認識力アップ
  • 筋緊張の増減のサポート
  • リラクゼーション効果
  • 身体感覚力アップ
  • 運動能力のアップ
  • コミュニケーションスキルの向上

が得られるということです。確かにトランポリンで跳ねていたら楽しく運動できそうですよね。因みに実際にリバウンドセラピーを行っている様子はこんな感じとなっております。




いや~やっぱ楽しそうですな。
知的障がいの方は運動をする機会がどうしても少なくなりがちですし、続けるのも難しいんで良い感じですねー。
では具体的な実験内容について見ていきましょう。
今回この研究に参加したのは13~17歳の知的障がい児の女の子24人でして、IQは50~70(軽度から中度)の間だったそうな。この参加者たちを以下の3グループにランダムに振り分けたらしい(1グループ8人)

  1. 有酸素運動10分間+リバウンドセラピー20分間を行うグループ
  2. 有酸素運動20分間+リバウンドセラピー10分間を行うグループ
  3. 何もしないコントロールグループ

実験期間は8週間で、その間、運動をしたグループは運動と運動の間を2日間(48時間)以上空けつつ週3日で行ったみたい。
因みに具体的な運動メニューは以下な感じだったそうな。

  1. ウォーミングアップ:10~15分間、ジョギングやストレッチなんかを行う。
  2. 1グループは有酸素運動10分間とリバウンドセラピー20分間の30分間運動を行う。
  3. 2グループは有酸素運動20分間とリバウンドセラピー10分間の30分間運動を行う。
  4. リバウンドセラピーでは、1分間飛び跳ねる→1分間休むを繰り返した。たまに5分間の休憩も挟みつつ、挟んだ後の最初は2分間飛び跳ねてもらう。

併せて、実験開始終了の前後に体力や運動機能テストを行ったらしい。
最後に集まったデータを照らし合わせてみた結果、

  • 運動した1グループ・2グループはコントロールグループよりもテストの結果が良かった…!

とのこと。
まずは効果があったみたいですねー。
次に1グループ・2グループのパフォーマンスの変化を見てみましょう。

  • テスト内容:1グループ:2グループ
  • 持久力:620±40.58→747.87±100.02:534.75±119.20→634.25±46.12
  • 下半身の持久力:6.75±3.45→11.25±5.49:5.12±2.23→8.87±3.18
  • 心肺機能:29.72±0.28→30.29±0.43:29.7±0.58→29.95±0.64
  • 静的バランス:3.25±1.48→6.75±3.19:3.5±1.60→5.37±2.5
  • 動的バランス:1.62±0.91→4±1.69:1.87±0.83→3.12±0.8
  • 動作スピード:13.87±2.30→10±1.17:16.15±4.23→11.6±1.8

一応補足として、

  • 静的バランス:動かない状態をキープする時のバランス感覚。例えばその場に同じ姿勢で立っている、座っているなど
  • 動的バランス:動いている状態のバランス感覚。歩いたり跳ねたりした時、転ばないようにするなど

のようになります。
持久力、特に下半身の持久力とバランス感覚が非常にアップしていますねー。心肺機能に関しては維持って感じだと。
因みに上記結果からも分かる通り、

  • 有酸素運動10分間+リバウンドセラピー20分間と有酸素運動20分間+リバウンドセラピー10分間の間に有意差はなかった

そうです。
この感じだとお好みで選べそうですな。



個人的考察

運動を続けるために楽しさは必須ですが、そこにリバウンドセラピーが使えそうですねー。難しいのは日本でトランポリンを使えるところが少ないことでしょうか。



参考文献