旧石器時代(狩猟採集民)の食事をマネる「パレオダイエット」の効果を見てみよう! その5
乳製品
人類は、他の哺乳類と同様、乳児期に母乳を摂取しております。しかし離乳後、野生の哺乳類は酪農・搾乳するっていうのが難しい為、牛乳や乳製品を摂取することはほぼ不可能であったと言えましょう。研究によれば、羊は約11000年前までに家畜化、ヤギと牛は約10000年前までに家畜化されたそうで、但し、酪農・搾乳の証拠は、イギリスの陶器で発見された乳製品の脂肪残留物からで6100~5500年前まで遡るんだとか。
これらのデータから、乳製品は進化の時間的スケールで見てみると、割と最近と言えるとのこと。
穀物
そもそも野生の穀物は通常に小さく、収穫が難しく、加工や調理をしないとほとんど消化できないっていう弱点がございます。そのため、石の加工道具の登場は、いつ、どこで穀物の農耕を開始し食べられるようになったかを知る良い指標になるんだとか。んで初めて磨いた石のすり鉢やボウル、カップの登場、つまり穀物を食べるための道具が登場したのは、40000年前から12000年前の旧石器時代らしい。一方で世界中の狩猟採集民による穀物の定期的な利用は、約13000年前、レバント(トルコ、シリア、レバノン、イスラエル、エジプトらへん)のナトゥーフ文化が出現して以来みたい。なんでもナトゥーフ文化による、エンマーコムギとヒトツブコムギ(古代小麦)の栽培化が初期農業の始まりを告げるものだったらしく、10000~11000年前までに起こったんだとか。
その後(1万年前から現在まで)に、世界中のほとんどの狩猟採集民は穀物を通年の主食として食べていませんでした(但し乾燥地帯などに住む人など例外有)。
つまり、乳製品と同様、旧石器時代(1万~1万1千年前)及び新石器時代(1万~5500年前)以前は、穀物の消費はほとんど、全く経験していなかったことになります。
一方で、現在のアメリカでは消費穀物のうち85.3%が高度に加工された精製穀物であるとのこと。産業革命以前は、全て穀物は石の製粉道具で加工され、小麦粉がふるいにかけられない限り、全粒穀物だったんですな。ただ19世紀後半に機械が登場し、自動でふるいにかけられる装置が発明されたことで、舌触りの良い精製穀物が誕生したとのこと。そしてこれにより栄養特性も大きく変化したんだとか。
ということで、現在良く食べられている精製穀物は過去150~200年に登場したものであり、進化の時間的スケールで見てみると昨日のことみたいな感じと言えましょう。
精製糖
2000年のアメリカにおける一人当たりの精製糖の消費量は69.1kgであり、1970年の55.5kgに比べて、明らかに急速に多くなっているそうです。このように過去30年間のアメリカにおける精製糖の消費量の増加は、約200年前に始まった産業革命以来の西洋諸国を中心とした世界的傾向と言えましょう。例えばイギリスにおける一人当たりの精製砂糖の消費量は1815年は6.8kgだったのに対し、
1970年には54.5kgへと増えているとのこと。そして産業革命期には、オランダ、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、アメリカでも同様の報告がなされているんだとか。
そんな精製糖の起源を遡ると、紀元前500年頃の北インドで見つかっているそうです。それ以前に摂取できた物と言えば、蜂蜜でして、人類が摂取できた数少ない濃縮糖の1つとのこと。
なんでも蜂蜜は全ての人類種に好まれた食べ物だったと考えられているそうで、一方で、季節によって入手が難しくなるため、定期的な摂取は難しかったと思われるそうな。例えば、同時代の狩猟採集民に関する研究によれば、蜂蜜が1年間に占める割合は、一部の狩猟採集民グループで短期間の入手性が高いにもかかわらず、比較的少ないことが示されているとのこと。またオーストラリアの先住民アボリジニは、様々な季節を代表する4つの1か月間の期間における蜂蜜の平均消費量が1人当たり年間2kgだったそうな。更にパラグアイのアチェ族の蜂蜜摂取を1580日間に亘ってチェックしたそうなんですが、1日の総カロリー摂取量のうち平均3.0%を占めていたらしい。
そして過去30年間で、精製糖の消費量は質的にも量的にも急激な変化をしております。というのも1970年代後半にコーンシロップが大量に製造できるようになって以来、アメリカでは爆発的に精製糖の消費量が増えたんですな。
コーンシロップはブドウ糖+果糖でして、一人当たりの果糖の総摂取量は、1970年が23.1kgだったのに対し、2000年には28.9kgも増えていたそう。
砂糖同様、果糖も工業化や食品加工産業の導入以前は大量に摂取していなかったんで、進化の時間的スケールで考えると、この消費量の増加はあり得ないレベルと言えましょう。
個人的考察
ということで今回はここまで。
次回も引き続き各食品について深掘りしていきます。
参考文献
後でご紹介します。