【加筆内容】統合失調症における抗精神病薬の効果が昔と今では違うのか?
今回はそれに通ずるお話でして、抗精神病薬の効果が昔よりも今の方が低くなっていないか…?って疑問を調べたものになります。
統合失調症における抗精神病薬の効果が昔と今では違うのか…?
2017年のミュンヘン工科大学の研究によると、統合失調症における抗精神病薬の効果が昔と今では違うのかRCTの二重盲検の系統的レビュー・メタ分析を行ってみたそうです。
なんでも抗精神病薬の有効性の基準としてよく使われるのが1964年の研究なんだとか。この研究はアメリカ国立精神衛生研究所が関わった初期の大規模研究とのことで参加者463人を調べたところ、抗精神病薬だと61%症状が改善、プラセボだと22%の改善だったそうな。
ただ、近年は治療薬がプラセボの効果を上回る結果が出ない事も多いらしく、そのため抗精神病薬の有効性が、ここ数十年で低下している可能性があったらしい。そこでこれが本当なのか調べたのが今回の研究になります。
まず研究者たちは、2009年8月までに発表された該当研究をコクランで検索、更に2016年10月までに発表された該当研究をMEDLINE、EMBASE、PsychINFO、コクラン、ClinicalTrials.govで検索してみたそうな。
すると全部で9,212件の研究がヒットしたとのこと。続いてこれらの研究を適格基準と除外基準に従って精査していったらしい。
最終的にピックアップされたRCTの二重盲検は167件でして、特徴は、
- 総サンプル数:28,102人
- 平均罹患期間:13.4年
- 平均年齢:38.7歳
- 実験期間の中央値:6週間(範囲3~28週間)
って感じでした。
それでは結果を見てみましょう。
- 全体的な有効性の標準化平均差(SMD)は0.47だった…!
- 抗精神病薬は、プラセボよりも約2倍(1.93)の反応率だった…!
- 全症状の20%以上(最小限)の回復をしたのが、抗精神病薬だと51%、プラセボだと30%だった…!
- 全症状の50%以上(良好)の回復をしたのが、抗精神病薬だと23%、プラセボだと14%だった…!
- プラセボの参加者は、何らかの理由や治療の無効性により、研究を早期に中止する可能性が高かった…!
- 統合失調症の陽性症状における抗精神病薬の標準化平均差(SMD)は0.45だった…!
- 統合失調症の陰性症状における抗精神病薬の標準化平均差(SMD)は0.35だった…!
- うつ病における抗精神病薬の標準化平均差(SMD)は0.27だった…!
- 抗精神病薬はプラセボよりも生活の質が改善した(SMD=0.35)
- 抗精神病薬はプラセボよりも社会的機能が改善した(SMD=0.34)
- 抗精神病薬の副作用として鎮静作用や体重増加などがあった。
- 効果量の有意な変数は、企業のスポンサー問題とプラセボ効果の増加のみだった…!
- 抗精神病薬の効果は時間の経過とともに安定していた(効果の減少はなかった)
- 小規模研究の影響と出版バイアスを考慮すると、全体的な有効性の標準化平均差(SMD)は0.38だった…!
上記を見ると、抗精神病薬はちゃんと効果があるし、効果も減っていないみたいですね。
また、効果量が変わる原因も企業のスポンサー問題とプラセボ効果のみって感じなんで、特段、取り立てて騒ぐほどでもないかと…。
あとは小規模研究の影響と出版バイアス問題で、これにより効果が低くなっちゃいましたが仕方ないですね。
個人的考察
ということで、主治医の指示の下、抗精神病薬を服薬していくと良さそうです。
気になるのはプラセボ効果が結構侮れないってことですが、プラセボ効果も上手く利用していくって方向性でいけば良いのかな~と思います。