2021年に世界ADHD連盟が示したコンセンサスを見てみよう! その12「学校教育・物質使用障害・その他」
「2021年に世界ADHD連盟が示したコンセンサスを見てみよう!」シリーズの続きです。
ADHDの影響:学校教育
125. 2011年の研究によると、アメリカの成人約3万人を対象に調べたところ、他の精神障害を考慮しても、ADHDを持つ人は高校を卒業できない可能性が2倍高かった。
126. 2017年のスコットランドの子ども75万人以上を対象にしたコホート研究によると、ADHDを持つ子どもは、薬を処方されていたにも関わらず、同年代の子どもと比較して、学校成績が低い可能性が3倍以上、16歳未満で学校を中退する可能性が2倍以上、特別な教育が必要と記録がある可能性が8倍以上、怪我をする可能性が50%、失業する可能性が40%高かった(社会経済的状況やその他の精神疾患は調整済み)
127. 2017年のメタ分析によると、830人の若者を調べた結果、ADHDは、全体的な言語能力、表現力、受容力、実用的な言語能力におけるパフォーマンスの低下と強く関係していた。
ADHDの影響:物質使用障害(SUD)
128. 2011年のメタ分析によると、5,400人以上を調べた結果、ADHD患者はニコチン依存症になる可能性が約3倍高かった。また約2,400人のデータをまとめた結果、ADHD患者は非ADHD患者に比べて、薬物依存症又はアルコール依存症の発症リスクが50%高かった。129. 2017年のメタ分析によると、ADHDはアルコール依存症、ニコチン関連障害のオッズ比が2倍以上高かった。
130. 2015年のスウェーデンの研究では、50万人以上を対象に調べた上で、性別と親の教育を調整してみた。結果、ADHDと薬物依存症の間に3倍以上の関係があった。
ADHDの影響:その他
131. 2017年のデンマークの研究、2019年のスウェーデンの研究、2020年の台湾の研究を見てみると、ADHDを持つ女の子はADHDを持たない女の子よりも10代での妊娠率が高かった。また2014年のスウェーデンの研究、2015年のフィンランドの研究、2017年のヨーロッパ8カ国からなる研究といった大規模研究によると、10代の母親の子どもは、そうでない母親の子どもよりもADHDになる可能性が高かった。
132. 2012年のアメリカの研究によると、36,000人以上を調べた結果、ADHDによってギャンブル依存症、浪費、無謀な運転、計画なしに突然仕事を辞めるリスクが高まっていた。
133. 2019年の台湾国民健康保険データベース(NHIRD)の研究によると、ADHDの成人はそうでない成人に比べて、認知症発症リスクが3.4倍高かった(他の精神疾患、居住地の都市化レベル、収入は調整済み)
134. 2018年のメタ分析によると、約150万人を調べた結果、ADHDは子どもの中毒リスクを3倍高めていた。また2014年の台湾の研究でもADHDの子どもは意図的な中毒リスクが4倍以上高かった。
135. 2014年のアメリカの縦断研究によると、青少年15,000人を対象に調べてみた結果、ADHDを持つ人はADHDを持たない兄弟に比べて雇用率が12%低く、収入も34%低かった。
136. 2020年のデンマークの研究では、7歳~18歳までの若者67万5000人以上を対象に調べてみた。結果、ADHDの若者は、そうでない若者と比べて、性犯罪の被害者になる可能性が3.7倍高かった。また、親からの暴力、親の精神疾患の入院、親の自殺傾向又はアルコールの乱用、親の長期失業、家族の別居、養護施設での保護といった変数を調整した後でも、ADHDの若者が性犯罪の被害者になる可能性が約2倍高かった。
個人的考察
長くなったので今回はここまで。
続きは来週です。
参考文献
最後にまとめてご紹介します。