【加筆内容】葉酸の健康効果についてメタ分析のアンブレラレビューを行ってみた!
「アンブレラレビューを見てみよう!」シリーズその109です。
2020年の新郷医学院の研究によると、葉酸の健康効果についてメタ分析のアンブレラレビューを行ってみたそうです。
まず研究者たちは、2018年5月20日までに発表された該当するメタ分析をMEDLINE、EMBASE、コクランで検索してみたそうな。
すると、
- MEDLINE:582件
- EMBASE:1,539件
- コクラン:336件
の合計2,457件の研究がヒットしたとのこと。
次にこの中で重複している研究や質の低い研究を除いていったらしい。
最終的に残ったメタ分析は108件でして、内訳は、
って感じでした。
それでは、観察研究のメタ分析の概要からチェックしていきましょう。
- 各メタ分析に含まれる観察研究数の中央値:7件(範囲:2~36件)
- サンプル数の中央値:43,063人(範囲:635~59,514,473人)
- 症例数の中央値:3,463人(範囲:11~147,424人)
続いて高品質又は中程度の質の観察研究のメタ分析(25件)をまとめた結果を見てみます。
葉酸(サプリを含む)を摂取すると、
とのこと。
また血中の葉酸値の上昇との関連は、
って感じ。
それと謎な部分として、
だったそうです。
次は、RCTのメタ分析の概要をチェックしてみます。
続いて高品質又は中程度の質のRCTのメタ分析(34件)をまとめた結果を見てみます。
葉酸(サプリを含む)を摂取すると、
葉酸(サプリを含む)を摂取すると、
- 妊娠前における低出生体重のリスク低下
- 食道がんのリスク低下
- 胃がんのリスク低下
- 頭頸部扁平上皮がん(喉のがん)のリスク低下
- 膵臓がんのリスク低下
- 冠状動脈性心疾患(CHD)のリスク低下
- 成人のポリープのリスク低下
- 妊娠後期における低出生体重リスクは有意差なし
- 大腸がんリスクは有意差なし
- 肺がんリスクは有意差なし
- パーキンソン病リスクは有意差なし
- 非症候性口唇裂(上唇が生まれつき割れている状態)のリスク低下
- 在胎不当過小(在胎週数に対して小さい胎児)のリスク低下
- 非症候性口蓋裂リスクは有意差なし
- 喘鳴(呼吸時にヒューヒューやゼーゼーなどと音がすること)リスクは有意差なし
- 急性リンパ性白血病リスクは有意差なし
- 妊娠高血圧症候群・妊娠中毒症リスクは有意差なし
とのこと。
また血中の葉酸値の上昇との関連は、
- 子宮頸がんのリスク低下
- 大腸腺腫(大腸に出来るポリープ)のリスク低下
- アルツハイマー病のリスク低下
- 肺がんリスクは有意差なし
- 冠状動脈性心疾患(CHD)リスクは有意差なし
って感じ。
それと謎な部分として、
- 血中葉酸値と前立腺がんリスクは有意差なし
- 血清葉酸値の上昇は前立腺がんのリスク増加と関連あり
だったそうです。
次は、RCTのメタ分析の概要をチェックしてみます。
- 各メタ分析に含まれるRCT数の中央値:5.5件(範囲:2~25件)
- サンプル数の中央値:3,113人(範囲:28~82,723人)
- 症例数の中央値:653人(範囲:3~39,923人)
続いて高品質又は中程度の質のRCTのメタ分析(34件)をまとめた結果を見てみます。
葉酸(サプリを含む)を摂取すると、
- 胎児異常による選択的妊娠中絶のリスク低下
- 巨赤芽球性貧血(ビタミンB12又は葉酸の欠乏によりDNA合成が上手くいかず、デカくて未熟な赤血球(巨赤芽球)が増えて貧血になること)のリスク低下
- 神経管閉鎖障害のリスク低下
- 元々心血管疾患(CVD)のある人のリスク低下
- メトトレキサートによる肝障害のリスク低下
- 妊娠高血圧症候群(旧、妊娠中毒症)・妊娠高血圧腎症(旧、子癇前症)のリスク低下
- 分娩前血清葉酸値低下のリスク低下
- 2型糖尿病患者及び一般集団の両方におけるハミルトンうつ病評価尺度のスコア及び血漿ホモシステイン濃度の低下
- 出生体重のリスク低下
- 赤血球葉酸値のリスク低下
- 血清葉酸値・血漿葉酸値の上昇のリスク低下
- 既存疾患のある患者における前立腺がんリスク上昇のリスク低下
- 過去に病気になったことがある人における全死亡リスクは有意差なし
- 過去に病気になったことがある人におけるがんにおける死亡リスクは有意差なし
- 低出生体重リスクは有意差なし
- 早産リスクは有意差なし
- 死産・新生児死亡リスクは有意差なし
- 過去に病気になったことがある人におけるがん発症リスクは有意差なし
- 大腸腺腫リスクは有意差なし
- 大腸がんリスクは有意差なし
- 冠動脈バイパス手術(CABG)リスクは有意差なし
- 冠動脈疾患のある患者における拡張期血圧リスクは有意差なし
- 冠動脈疾患のある患者における拡張末期径(心臓が最も膨らんだ状態の直径)リスクは有意差なし
- 過去に病気になったことがある人における心筋梗塞(MI)リスクは有意差なし
- 切断リスクは有意差なし
- 歯肉炎指数リスクは有意差なし
- 流産リスクは有意差なし
- 多胎妊娠(双子や三つ子などの妊娠)リスクは有意差なし
とのこと。
最後に観察研究のメタ分析とRCTのメタ分析の比較結果を見てみます。
まず比較できたのは以下の5つの関連性とのこと。
まず比較できたのは以下の5つの関連性とのこと。
- 口蓋裂
- 神経管閉鎖障害
- 神経管閉鎖障害の再発
- 大腸がん
- 妊娠高血圧症候群(旧、妊娠中毒症)
んで結果は、
- 口蓋裂、神経管閉鎖障害、葉酸暴露量(食事による葉酸摂取量、赤血球葉酸値、血中葉酸値、葉酸サプリメントの摂取量)が大腸がんに及ぼす影響について、関連性や影響が統計的に有意にあると出た…!
- 妊娠高血圧症候群(旧、妊娠中毒症)、神経管閉鎖障害歴のある女性における神経管閉鎖障害の再発について、関連性や影響はありそうなものの統計的に有意ではなかった。
- 観察研究のメタ分析では総葉酸摂取量による大腸がんの影響は関係ありそうだったが、RCTのメタ分析では関係なさそうだった…。
とのこと。
とりあえず大腸がんだけ関係が深そうですな。
個人的考察
ということで、葉酸の摂取はメリットが多くデメリットを上回る様子。死亡率やがん、心血管疾患、代謝関連、出産関連にメリットがありそうなんで、意識して摂取していきたいですねー。
