今回は、2018年に四川大学が発表した、うつ病の再発予防における認知行動療法やマインドフルネス認知療法が有効なのかの系統的レビューとメタ分析を見ています。
短期や長期、抗うつ薬を服薬し続けることと比較するなど、結構勉強になります。



うつ病の再発予防における認知行動療法やマインドフルネス認知療法が有効なのか系統的レビューとメタ分析を行ってみた…!

2018年の四川大学の研究によると、うつ病の再発予防における認知行動療法マインドフルネス認知療法が有効なのか系統的レビューとメタ分析を行ってみたそうです。
アメリカ国立精神衛生研究所(NIMH)のサイトを見てみると、うつ病(大うつ病性障害・大うつ病:MDD)とは、最も一般的でメジャーな精神障害の1つでありまして、活力の低下、気分の落ち込み、自信の低下、理由のない活動意欲の低下や嫌悪を特徴としております。
そして、うつ病の恐ろしいところは、新しいうつ病エピソードが起こるたんびに、うつ病の状態が悪化し、次の再発リスクが高まることなんですよね。つまり「思考のクセ」が身に付いちゃうんですな。この辺は2000年のバージニア・コモンウェルス大学の研究1988年のレビュー論文なんかにも載っていまして、当ブログでも「うつ病は再発しやすい!は本当なのか?再発率はどれぐらいなのか?」で紹介した通りです。
具体的な再発リスクについては、「認知行動療法を一から学ぼう!その5「新世代の認知行動療法」」の部分を引用すると「一度うつ病の診断基準を満たすと、再発率が60%、2回うつ病になると再発率が70%、3回うつ病になると再発率が90%と言われている」って感じでして、こちらの研究に載っていた2004年のリグショスピタレットの研究2001年のワシントン大学の研究によると、

  • うつ病エピソードを1回経験した後の再発リスクは50%…!
  • うつ病エピソードを2回経験した後の再発リスクは80%…!
  • うつ病エピソードを3回経験した後の再発リスクは90%…!

になる可能性があるみたい。
多少の違いはありますが、繰り返すほど癖になるのは間違いない感じです。
そのため、再発防止はうつ病治療にとって超重要となるんですな。
そこで一般的なのが薬物療法です。但し、いくつか問題もありまして、例えば、

  • 副作用がある
  • (徐々に中止に向かっても)薬を中止すると再発する可能性がある

って感じで、どうもうまくいかない場合があるんですな。
そこで期待されているのが、認知行動療法(CBT)やそこから発展したマインドフルネス認知療法(MBCT)です。
じゃあ、本当にこれらの治療法がうつ病の再発や軽減に役立つんか…?ってことで、今回、短期・長期などを含めて、ガッツリ調べてみることにしたんだとか。
ということでまず研究者たちは、1976年~2016年9月1日までに発表された該当研究をPubmed経由のMEDLINE、OVID経由のEMBASE・PsycINFO、コクラン、中国のデータベース4つ(CBM、CNKI、VIPデータベース、Wanfangデータベース)で検索してみたそうな。更に関連研究や参考文献なんかを手作業でチェックしたり、WHOのICTRPやclinicaltrials.govなんかで、未発表の研究も探してみたらしい。
片っ端から探していった結果、データベースで1,567件、関連研究・参考文献・未発表研究で330件の研究が見つかったんだとか。
次にこの中で被っている研究や質の低い研究を除外していったそうな。
最終的に選ばれた研究は20件でして、このうちの18件でメタ分析を行ってみたそうです。
また20件の研究の特徴なんですが、

  • 総サンプル数:1,945名
  • サンプル幅:40~424名
  • 平均年齢:46.8歳
  • 年齢範囲:24~75歳

って感じでした。
それと今回のマインドフルネス認知療法の方法は大体が一般的な方法を使用していたらしく、毎週2時間のグループワークを8回行っていたそうです。
それでは気になる結果を見てみましょう…!

  • 認知行動療法やマインドフルネス認知療法は、対照群と比較して、1年間におけるうつ病再発リスクが37%(HR0.63)低かった…!
  • 認知行動療法は、対照群と比較して、1年間におけるうつ病再発リスクが50%(HR0.50)低かった…!
  • マインドフルネス認知療法は、対照群と比較して、1年間におけるうつ病再発リスクが有意に改善せず(HR0.78)、高い異質性(各研究結果の差)があった…。
  • マインドフルネス認知療法は、抗うつ薬を服薬し続けることと比較して、1年間におけるうつ病再発リスクが24%(HR0.76)低かった…!
  • 認知行動療法は、対照群と比較して、2年間におけるうつ病再発リスクが76%(HR0.24)低かった…!
  • マインドフルネス認知療法は、抗うつ薬を服薬し続けることと比較して、2年間におけるうつ病再発リスクが有意に改善しなかった(HR0.89)
  • 認知行動療法は、対照群と比較して、5年半におけるうつ病再発リスクが29%(HR0.71)低かった…!この効果は過去のうつ病エピソードの数が多い程大きかった…!
  • 認知行動療法は、対照群と比較して、過去のうつ病エピソードが4回以上の場合の5年半におけるうつ病再発リスクが54%(HR0.46)低かった…!
  • 認知行動療法は、対照群と比較して、過去のうつ病エピソードが4回未満の場合の5年半におけるうつ病再発リスクが有意に改善しなかった(HR0.86)
  • 認知行動療法は、対照群と比較して、6年間におけるうつ病再発リスクが64%(HR0.36)低かった…!
  • 認知行動療法は、対照群と比較して、4年間におけるうつ病再発リスクが55%(HR0.45)低かった…!
  • 認知行動療法は、対照群と比較して、過去のうつ病エピソードが3回以上におけるうつ病再発リスクが69%(HR0.31)低かった…!
  • マインドフルネス認知療法は、対照群と比較して、過去のうつ病エピソードが3回以上におけるうつ病再発リスクが54%(HR0.46)低かった…!

ちょっとポイントをまとめてみると、

  • 短期(1年間)では、認知行動療法はうつ病再発リスクに効果的…!
  • マインドフルネス認知療法は、過去のうつ病エピソードが3回以上ある人のうつ病再発リスクにのみ効果的…!
  • 短期(1年間)では、マインドフルネス認知療法は、抗うつ薬を服薬し続けることよりも、うつ病再発リスクに効果的…!
  • 長期(2年以上)では、認知行動療法はうつ病再発リスク予防効果が2~6年間続く…!

って感じでしょうか。
認知行動療法はかなり良い結果が出てますねー。一方でマインドフルネス認知療法はイマイチ良い感じの効果が出ていない印象ですな。



個人的考察

いずれにしても、うつ病の再発予防・反芻思考対策に、認知行動療法やマインドフルネス認知療法は使えそうな感じです。



参考文献