カテゴリー⑨:ADHDの経済的損失ってどれぐらい…?

ADHDに関連する多くの悪影響を考慮すると、本人、家族、社会に多大な経済的損失をもたらしていることは、特段驚くべきことではないだろう、とのこと。

137. 2014年の系統的レビューによると、ヨーロッパ人数十万人を対象に調べた結果、オランダにおけるADHD関連の総費用は患者1人あたり年間9,860~14,483ユーロ(≒1,712,700~2,515,720円)と推定され、国の年間費用は10億ユーロ(≒1737億円)を超えるとされた。
138. 2019年のオーストラリアADHD専門家協会の研究によると、オーストラリアに住む児童、青少年、成人を対象にADHD関連費用を調査してみた。すると、年間総費用は200億オーストラリアドル(約2兆円)、ADHD患者1人あたり2万5000オーストラリアドル(約250万円)を超えると推定された。
139. 2012年の系統的レビューでは、アメリカ人数十万人を対象にADHD関連費用をチェックしてみた。その結果、ADHDは年間1430億ドルから2660億ドルの費用を国内で負担しており、そのほとんどは成人(1050億ドルから1940億ドル)が関係していた。また、ADHD患者の家族が負担する費用は330億ドルから430億ドルに上った。
140. 2008年の研究によると、10か国7,000人以上の労働者を調査した結果、ADHDを持つ人は、ADHDを持たない人に比べて、職務遂行能力(業務遂行能力)を失っている日数が年間平均22日多かった。
141. アメリカのフォーチュン100企業の10万人以上を対象にした2003年の研究では、ADHDの若者と非ADHDの対照群の医療費を比較してみた。すると家族1人当たりの年間平均費用がADHD患者の家族の場合2,728ドル、非ADHDの家族は1,440ドルでほぼ2倍高かった
142. 2019年のドイツの研究によると、ADHD患者2万5000人以上を対象に調べた結果、ADHD患者は非ADHD患者に比較して年間約1,500ユーロ多く医療費がかかっていた。主な費用は入院、精神科、心理療法士の費用だった。また、気分障害、不安障害、物質使用障害、肥満はADHD患者で有意に多く見られた。これらの疾患により追加でかかる費用は、患者1人あたり最大2,800ユーロにも上った。
143. 2020年の韓国の研究によると、19歳以下の人口(ADHDと診断された69,353人)の国民健康保険請求データをチェックした結果、ADHDによる年間の経済的負担総額は4,755万ドルと推定された。
144. 2019年のデンマークの研究によると、小児期にADHDと診断されず、成人期にADHDと診断された5,000人以上の成人の経済的損失をチェックしてみた。最終的に460組の兄弟姉妹で比較してみたが、ADHDの成人は、ADHDのない兄弟姉妹と比較して、平均で年間2万ユーロ強の経済的負担を負っていた
145. 2020年のスウェーデンの研究では、44万5000人以上を対象に、3グループ(小児期にADHDを発症し成人期まで続いた人、成人期にADHDが寛解した人、ADHDがない人)の医療費を比較してみた。その結果、ADHDのない人の年間医療費は平均304ユーロだった。成人期にADHDが寛解した人の医療費は2倍、小児期にADHDを発症し成人期まで続いた人の医療費は3倍以上だった。
146. 2020年のデンマークの研究では、ADHD患者83,000人以上と、非ADHD対照群334,446人を対象にADHDの純社会経済的コストを算出してみた。結果、対照群と比較して、医療費・所得・雇用の減少による純損失は、ADHD患者1人あたり年間平均16,000ユーロ強となった。ADHD患者のパートナーの場合、1人あたりの年間平均追加コストは約5,500ユーロだった。
147. 2020年のドイツの研究によると、データベースを用いて、500万人の健康保険加入者記録を調査し、成人期に初めてADHDと診断された2,380人をピックアップした。この方々の診断後の1年間の直接的な医療費は平均4,000ユーロだった。ドイツのガイドラインではADHD治療薬が明確に推奨されているにもかかわらず、実際に薬を処方されたのは全体の3分の1に過ぎず、4年後には8分の1にまで減少していた。3分の2は心理療法を受けていた。研究者は「ガイドラインの推奨事項は、日常的なケアにおいてまだ包括的に実施されていない」と結論付けた。



個人的考察

長くなったので今回はここまで。



参考文献

最後にまとめてご紹介します。